第109回:マレーシアの使用済み2輪車の行方

7.まとめ

 本稿で見たように、マレーシアでは2輪車解体業者は一部で存在する。ただし、日本と同様、少量生産型の中古部品販売業者と想定される。しかも中古部品販売のライセンスによる参入障壁があり、その数はごくわずかと考えられる。

 また、同国の経済発展、人件費の増大により、2輪車の解体、部品取りでは十分な利潤を得られないという事情がある。よって、ライセンスという制度に違反するリスクを冒してまで2輪車を回収するインセンティブもない。使用済み2輪車は相応に発生しているはずだが、この中古部品販売業者がその受け皿とは考えにくい。

 日本では、使用済みとなりうる2輪車の多くは、輸出が受け皿と考えられる。台湾では資源回収目的で2輪車を解体するいわゆる2輪車専門の解体業者が存在し、その受け皿となっている。一方、マレーシアはこのどちらも当てはまらない。資源回収目的のスクラップ回収業者が有力なはずだが、あまり受け入れていなさそうである。

 4輪車の場合、使用済み自動車を山積みにしている解体業者やスクラップ回収業者は、今回の限りで6、7軒は目にした。使用済みの4輪車は相応に発生しており、静脈市場に流通している。

 しかし、使用済みの2輪車については山積みになっている光景は見なかったし、そのような場所についてヒアリングでも聞くことはなかった。これらを考慮すると、マレーシアの使用済み2輪車は流通していない、すなわち廃棄の行方の有力説は、放置、退蔵なのではないかと感じる。

 阿部(2020a)で見たように、マレーシアの2輪車の保有台数は既に日本を上回っている。よって、ある程度の量の使用済み2輪車が静脈市場に出てきてもおかしくはない。しかし、現地調査の限りでは静脈市場に出てきていない。問題は、車両の放置を暗黙の了解としてきたこと、使用済み2輪車が有償で売却できないことにあると考えられる。

 マレーシアの放置車両の背景として、現地の記事でも、経済成長により都市化が進んでいること、消費者の所得が向上し、廃棄を早めるようになったこと、それと同時に生産者側の販売競争が激しくなったことが指摘されている(The Star,2017年8月8日)。

 これに対して、本稿で見たように、昨今、放置車両対策が図られている。つまり、時代の転換点に位置しており、廃棄の増大に制度を対応させ、それにより静脈市場に流通させようとしている段階にある。そして、それからさらに有償で流通する仕組みを考える必要がある。

 一方、ほんの一部であったが、過去には2輪車の解体業者は存在したという証言はあった。経済成長とともに静脈市場が縮小することは多々ある。それは新品市場との競合関係や規制によるコスト増加などが影響する。そのような時代の流れとともに2輪車の静脈市場がどのように変わっていくのか、さらに調査することは多いと思われる。

 

参考文献

The Edge Markets, “Local authorities can now attend to abandoned cars in shorter time frame”, January 10, 2020, https://www.theedgemarkets.com/article/wan-azizah-local-authorities-can-now-attend-abandoned-cars-shorter-time-frame

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