第107回:2輪車リサイクル市場は存在するか:台湾の予備的調査

山口大学国際総合科学部 准教授

阿部新

1.はじめに

 筆者は2019年11月に台湾の台北市を訪問した。周知の通り、台湾では2輪車(バイク)が多く走っている。筆者は、阿部(2020)において、台湾の自動車保有台数等のデータを示した。台湾においては自動車の保有台数の6割強が2輪車であり、1割程度の日本の構造とは大きく異なる。

 また、台湾の人口は日本の5分の1程度であるが、2輪車の保有台数は日本を上回っている。この結果、1,000人あたりの2輪車保有台数は、日本が85台(2018年)であるのに対し、台湾は584台(2017年)となっている。

 そのような構造の違いが静脈市場に違いを生むかどうかである。2輪車のリサイクル会社は存在するか、2輪車の放置の問題は存在するかに関心がある。本調査はその予備調査的なものである。まずは台湾に行ってみて、中古2輪車販売店や部品販売店などに訪問し、2輪車リサイクルに関する情報を収集した。以下ではその記録を示しておく。

 

2.2輪車・4輪車のリサイクル会社

 筆者はまず、台北市内のリサイクル会社を訪問した。台湾に訪問する前に、インターネットの記事により2輪車のリサイクル業者が存在することを確認していた。

 その記事では、古い2輪車はアフリカのバイヤーにより、買い付けされるなどと書かれており、その行先は南アフリカ、ナイジェリア、ケニア、マダガスカル、イラクとある。また、2輪車本体のみならず、部品も輸出されていることから、解体をする者が存在することは確認できていた。

 筆者が訪問したリサイクル会社は、2輪車のみならず、4輪車も解体する会社であった。2輪車は入口の前に多く置かれていたが、他にも置場があり、そこにより多く置かれているという。4輪車と2輪車を引き取り、共に解体しており、どちらかに特化しているわけではない。見た限りでは、4輪車の方に重点が置かれているように感じた。

 政府の認定会社であるため、ユーザーがインターネットの関連情報を見て、ここに引き渡すという。また、ユーザーが2輪車の販売店などに問い合わせ、そこから紹介を受けることもある。ユーザーが持ち込む場合もあれば、動かない場合などは取りに行ったりすることもあるようだ。

 引取料は無料であり、買い取ることはないようである。代わりにユーザーは政府より補助金をもらえると言う。その補助金は最大で4,000元(1元=3.61円、三菱UFJ銀行2020年1月30日)であり、車種よって異なるとのことだった。

 行政院環境保護署のホームページによると、「奨励金」という制度があり、10年以上の4輪車に対して1,000元、7年以上の2輪車に対して300元が支払われるという記述がある。外川(2001)を見ると、「奨励金」については大気汚染の観点から新車への買い替えを奨励するもののようである。

 また、外川(2001)によると、放置車両の未然防止、処理業者のレベルアップから自動車にデポジットリファンド制度が導入されていることが分かる。その導入当初のデポジット額が3,000元と記されている。

 上記の会社で言及された最大4,000元というのはこれらのことを示すのだろうか。いずれにしろ、台湾の使用済み自動車関連の制度を丁寧に理解する必要がある。

 訪問したリサイクル会社の工場内は、解体後の4輪車と2輪車が混在した形で山積みされていた。これらは資源リサイクルとしてスクラップ会社に引き渡される。ただし、それは回収した2輪車の4割程度であり、半数は輸出されるという。

 貿易会社に引き渡しているので、具体的にはどの国かは分からない。アフリカのバイヤーが買いに来ることもあるようだ。輸出が半数というのは以前からあまり変わっていないようである。

 実際に解体している様子も見た。ハンマーと思われる道具を持ち、人力で叩き、プラスチックなどを取り外していた。1日50台解体するとのことだった。また、安全性の問題か、再組立ての問題かは分からないが、エンジンの国内での再販はできないという。よって、中古エンジンの部品取りはするものの、輸出向けのようである。

 2輪車と4輪車が混在している

3.中古部品の集積地

 筆者は、次に自動車中古部品の販売店の集積地である赤峰街に訪れた。ここは地下鉄(MRT)の淡水信義線(赤色)、松山新店線(緑色)の中山駅の近くで、台北市でも中心地域に位置すると思われる。その歴史はあまり分かっていないが、その雰囲気からは日本の東京都墨田区の堅川地域と重なる。

 その通りには中古部品の店舗は残りつつも、リノベーションにより若者向けのカフェなどもある。日本のガイドブックにも新たな観光スポットとして掲載されるほどである。この赤峰街で、自動車中古部品の店舗を訪問し、2輪車の静脈市場について何らかの情報を得ることとした。

 全部で10軒ほどだったか、小さな店舗が連なり、自動車の中古部品が並べられている。東南アジアなどでよく見る中古部品の集積地と類似する。3軒ほど話を聞いたが、部品は日本から輸入されたもののほか、台湾国内の使用済み自動車からの部品もあるようだ。

 ただし、訪問した会社では解体をやっていない。また、取り扱う部品は国内向けであり、輸出はしていないとのことだった。

 話をしてくれた会社は、30年から40年ほどビジネスをやっているとのことだった。よく写真を撮られると言い、撮って良いと言われた。その時に若者がノスタルジックな感じなのか、熱心にカメラを構えていた。別の会社も30年ビジネスをやっていると言っていた。

 2輪車についてはやっていないとのことだった。仕入れ先や売り先が異なるだろうから、それはある程度は予想していた。2輪車の部品販売店の存在などヒントとなる情報を得たかったが、それさえも知らないとのことだった。

 この部品の販売店の近くに2輪車の販売店があったので、立ち寄った。部品街にあるため、何らかの関連情報を得られるかと期待したが、関連性はなかった。2輪車の中古部品の販売はあまり儲からないとのことである。また、その後に行こうと思っていた2輪車の販売店の集積地のことを言っており、そこに行ってみてはどうかと言われた。

 

赤峰街の中古部品販売店

4.2輪車販売店

 筆者は事前にインターネットで中古2輪車販売店の位置を確認し、集積のような地域を特定できていた。そこは延平北路四段という通りにある。地下鉄では中和新蘆線の大橋頭駅の辺りにある。予想していた通り、2輪車販売店は集積していた。日本の東京都の上野においても2輪車の販売店が集積していたが、同じようなものなのか関心を持った。

 そのうちの1店舗の従業員の方に話を聞いた。そこでは、顧客のニーズに合わせて高年式も低年式も扱っている。新車もやっている。廃車になるもの(国内では販売できないもの)は無料で引き取り、リサイクル会社に引き渡すとのことである。

 先に訪問したリサイクル会社は、廃車を直接ユーザーから引き取り、2輪車販売店などを経由して引き取ることはないと言っていた。この点の市場構造については、制度と共に改めて確認する必要がある。

 この集積地は30年以上も前からあるそうだ。以前はもっと多くの店舗が連なっていたという。地価高騰やインターネットの売買などでそのようになるのは十分に想定される。オークションのようなものはインターネット上にあり、この近辺ではやっていない。

 広いスペースがないとオークションは成立しないが、台北にはそこまでの土地がないとのことだった。インターネット上のオークションまたはショッピングモールであれば、土地は関係ないと思うのだが、そこまでして問うような問題ではなかった。

2輪車販売店の集積地

 

 以前、インドネシアに行った時、父親がまず2輪車を買い、その使い古しを母親に、さらにその使い古しを子供にという家庭内循環があるとの話があった。台湾のこの店でその話を、「インドネシアでは中古2輪車の市場が小さいようだ」と前置きしながら伝えたが、台湾ではそういうことはないという回答だった。

 子供は新車を欲しがるし、親は子供に良いものを買ってあげたい、よって家庭内循環は起きず、中古2輪車は市場に出てくるということだった。民族性などもあるだろうが、所得水準や新車の価格も各国・地域の市場の違いを生んでいることを改めて認識した。この点はもう少し深く議論する必要がある。

 他にも様々なことを聞いた。2輪車の放置はあるかどうかについては、あまりないとのことだった。その理由は放置をすると税金を払い続けなければならないからだという。日本と同じような構造になっているものと思われる。

 この点の制度は、改めて確認する必要がある。また、地方から買い付けに来る人はいるかと聞いたら、結構いるとのことだった。台湾の中でもこの集積地の取扱量が多いからだろうとのことだった。地方への流出についてはデータで把握するのは難しいが、地域別の保有台数や人口比などを見る必要がありそうだ。

 さらに、外国人が来るかについては、たまに来るが、台湾在住の外国人であり、輸出のためのバイヤーではないとのことだった。バイヤーについてはたまに引き合いはあるようだが、見積もりが異常に安く、取引には繋がっていないようである。1台あたり4,000~5,000元と言っており、それはありえないとのことだった。

 リサイクル会社に引き渡した方が高く買ってくれるということか、あるいは輸出バイヤーがある程度のクオリティの商品に対して安い金額を要求しているのか。いずれにしろ、中古2輪車市場において、国内向けと輸出向けは分かれており、リサイクル会社に引き渡される水準のものが輸出されている印象を持った。

 中古部品については、部品取りに手間がかかるので、割に合わず、やっていないという。例えば、新品が1,000元とすると、中古部品は500元であるという。手数料や工賃を考慮すると、それでは採算は合わないようだ。新品を扱っているところからすると、そういう見方なのだろう。

 そして、中古部品を扱っている店はこの先にあると言っていた。その後は、中古2輪車のチェーン店に行こうと思っていたが、予定を変更し、中古部品を扱っている店に行くことにした。

 なお、この店では、最近流行っているという電動2輪車Gogoroのバッテリーステーションを設置中だった。Gogoroは日本でも日本経済新聞を始めとして大きく報道されている2輪車バッテリーのシェアリングサービスである。

 具体的には、車両の本体は個人所有であり、バッテリーのみを共有し、その利用料金も定額制になっている。バッテリーの残量が少なくなったら、特定のステーションにアプリから予約をし、バッテリーを交換する。

 大気汚染の問題から政府も電動2輪車の購入に補助金を出している。その費用の低減と手軽さからさらに普及するのだろうという話だった。

 

Gogoroのバッテリーステーション

5.2輪車に重点を置いたリサイクル会社

 上記の2輪車販売店で、2輪車の中古部品を扱っている店があると聞いた。筆者は部品の店舗かと思い、2輪車販売店の近くのいわゆる商業地に立地しているのかと思っていたが、そうではなかった。通訳は通りの名前だけを聞いたのだろう。

 タクシーでその近辺を通ったが、次第に店舗が連なるというエリアではなく、郊外の工場、倉庫が連なるような風景になった。そこに古い2輪車が大量に置かれた場所があった。そこでタクシーを降りようと通訳に言い、その会社に飛び込みで入った。

 ここは2輪車に重点を置いたリサイクル会社だった。飛び込みだったため、写真撮影はあまり歓迎されず、遠慮したが、工場の案内など丁寧に応対してくれた。

 この会社へは販売店経由または直接に2輪車が入ってくるとのことだった。先に訪問したリサイクル会社と同じで、ユーザーは補助金をもらえるという。この会社は、有償または無償で2輪車を引き取る。その価格は当然ながらブランド、状態によって異なる。ヤマハの2輪車は丈夫で輸出に人気があり、購入価格は高くなるなどの話だった。

 回収された2輪車は輸出または解体し、中古部品も販売されている。輸出先はカンボジアなど日本の輸出先と同じのようである。この会社は、最初は4輪車の解体ビジネスをやっていたが、その後15年ぐらい前から2輪車に重点を置くようになったようである。

 先のリサイクル会社と同じでエンジンはやはり再販できないようで、さらに解体して資源リサイクルをするとのことだった。この会社も手解体で、プラスチックなども分別していた。4輪車についてはなくはないが、ほとんどが2輪車とのことだった。

 帰国後、この会社のホームページを見たが、2輪車のみならず、4輪車の廃車手続きの方法などが書かれており、4輪車も受け入れているようだった。

 この会社に、台湾では2輪車の放置はあるかという質問をしたが、あるとのことだった。それに対して政府が強制的に回収し、ユーザーを特定し、連絡するという。そして罰金を取るという仕組みのようだ。

 警察はエンジン番号を調べれば持ち主を特定できる。連絡がつかない場合は3ヵ月待った後に、入札があり、このようなリサイクル会社に運ばれるという。また、このような放置の問題は都市の方が多く、地方は少ないのではないかとの意見だった。

 

6.論点整理

 東南アジアなどで使用済自動車の発生量の増大が予想される。ただし、モータリゼーションの発展形の違いから、日本の高度経済成長期と同じような状況になるとは限らない。2輪車が多く使用されていることから、使用済みの4輪車は日本ほどに増大しない可能性がある。

 一方で、使用済みの2輪車が大量に発生し、4輪車よりも先に何らかの社会問題を起こすかもしれない。静脈市場もそれに応じた整備が求められる。

 その点、台湾は2輪車が多く保有されていることから、東南アジアの未来は日本よりも台湾が近いのかもしれない。今回、調査に協力的であるかを含めて、台北市の関係業者に主に飛び込みで聞き取り調査をしたが、相応に次に繋がる論点を得ることができた。以下ではこれを整理しておきたい。

 まず、今回の限りでは、台湾で2輪車の解体ビジネスが成り立っていると言うことができる。それは資源リサイクルのみではなく、国内外のリユース向けの部品も収入源としている。日本では周知の通り4輪車の解体業者は多く存在するが、それに対して2輪車の解体業者は少ない。

 今回、2輪車・4輪車を同時に受け入れる会社と2輪車に重点を置いた会社に訪問したが、そのどちらの形態も日本ではあまり見ない。メーカーの自主規制の下で行われる2輪車リサイクルについてもシュレッダー業者が資源リサイクルの一環で回収することが多い。

 解体ビジネスが成り立つのは、当然ながら1台を解体するコストに対して収入が十分にある場合である。その違いが日本と台湾での静脈市場の違いに影響を与えるが、この構造は単純ではない。多くの要素を考慮し、より慎重に丁寧に議論する必要がある。

 部品取りが個人や販売店により行われ、インターネットなどで売買されることで、2輪車の解体段階でビジネスを成り立たなくさせているということもあるかもしれない。新品部品の価格も影響するだろう。

 台湾の行政院環境保護署資源回収管理基金管理会のホームページを見てみると、廃車回収の依頼を申し込むと思われるページがある。そのページを進むと、認定会社と思われる会社の一覧が書かれている。

 台湾の行政区分(6直轄市、3省轄市、13県)別に会社数を数えたものが図5である。これは2輪車を解体している業者のみでなく、4輪車の解体業者を含むものである。

 これを見ると、台北市は4社と少ない。台中市が27社と最も多く、桃園市(24社)、彰化縣(21社)、新北市(19社)が続いている。今回訪問した2社は、どちらも2輪車を回収していた。それらの形態は2輪車・4輪車両方を受け入れるタイプ、2輪車に重点を置いているタイプと異なるが、果たして台湾の他の地域でも同様なのか確認しておきたい。

台湾の自動車リサイクル会社数(行政区分別、2020年1月2日時点)

出典:行政院環境保護署資源回収管理基金管理会ホームページより筆者作成

 同じく行政院環境保護署資源回収管理基金管理会のホームページの英語版を見ると、台湾の抹消登録台数(廃車台数)がグラフになっている(https://recycle.epa.gov.tw/en/recycling_materials_02.html)。これは、自動車保有台数と新車販売台数のデータにより推計されたものであり、1997年~2018年の2輪車と4輪車の数量が分けられて示されている。

 これを見ると、2輪車の抹消登録台数は2011年から2015年は20万台前後であり、それ以前も30万台前後である。これに対して、直近3年間で急増し、2016年に50万台弱、2017年に70万台弱、2018年に70万台強となっている。

 日本では、阿部・木村(2017)において、同じように自動車保有台数と新車販売台数から2輪車の抹消登録台数を算出している。それを見ると、日本では1993年~1998年は120万台程度、1999年~2008年は60万台から80万台程度、2009年以降は40万台程度である。

 2輪車の解体ビジネスが成り立つかどうかの議論において、この数量の影響を見ていく必要はある。関連データを今一度確認しつつ、議論を進める必要がある。

 また、上記の抹消登録台数は中古車輸出を含むものである。阿部・木村(2009)で見たように、日本では、抹消登録台数の9割超が輸出され、国内で資源リサイクルされる量はわずかである。よって、抹消登録台数が多くても、輸出が大半であれば国内の解体ビジネスは成り立たない可能性がある。

 今回、訪問した会社では、回収した2輪車の半数が輸出とのことだが、台湾全体でもそうなのだろうか。外川(2001)の時点では輸出は27%とある。現在はどの程度かは関心がある。

 輸出先について台湾の税関のホームページで貿易統計を探したが、各品目の数量を検索するような適切なページを見つけられなかった。そもそも貿易統計において2輪車の中古のコードはなさそうである。この点は引き続きの課題としたい。

 

参考文献

  • 阿部新(2020)「モータリゼーションの発展形の違いをどのように捉えるか」『速報自動車リサイクル』
  • 阿部新・木村眞実(2017)「二輪車リサイクル関連統計の整理と課題」『月刊自動車リサイクル』(81),32-42
  • 行政院環境保護署資源回収管理基金管理会「廢車清e清回收服務網」, (https://recycle2.epa.gov.tw/Car_Recycle/Default.aspx),アクセス日:2020年2月1日
  • 中華民国(台湾)外交部『2019-2020 TAIWAN 台湾のしおり』,(http://multilingual.mofa.gov.tw/web/web_UTF-8/MOFA/glance2019-2020/Japanese.pdf),アクセス日:2020年2月1日
  • 外川健一(2001)『自動車とリサイクル 自動車産業の静脈部に関する経済地理学的研究』日刊自動車新聞社
  • 日本経済新聞「走るスマホ、二輪の夜明け 台湾ゴゴロの見た夢」2019年7月23日
  • Environmental Protection Administration, Recycling Fund Management Board, “Scrap Motor Vehicles”, (https://recycle.epa.gov.tw/en/recycling_materials_02.html), アクセス日:2020年2月1日

 

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