第169回 タイの中古車輸入量の算出とその課題

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

周知のとおり、中古車貿易量は、貿易統計上の品目コード(統計品目番号)のうち、中古車として設定されたものに紐づいた数量を拾い出すことで算出する。先進国では中古車の統計品目番号が設定されていることが多いが、新興国・途上国は十分に整備されているとは言い難い。また、新興国・途上国に限らないが、貿易統計はしばしば数値が正確とは言い難い場合があり、そのままの数量を信じてよいのかという問題がある。

このような中、本稿ではタイの中古車貿易に焦点を当てる。筆者が2020年、2022年にタイの中古車貿易を調査した際には、既にタイの貿易統計に中古車の統計品目番号が設定され、中古車の数量を拾うことができた。ただし、タイの品目は非常に多くかつ複雑であり、その集計は非常に困難であった。改めて貿易統計を丁寧に眺め、整理する必要性を感じている。また、前回の集計から3年が経ち、データが蓄積されており、その後どうなったかにも関心がある。

このような中、2024年の日本の中古車輸出台数において、アジアがアフリカに抜いて最大の仕向地域となっている。そのアジアをけん引したのはモンゴルであり、それに続くのがタイである。タイは中古車の輸入が「事実上不可能」とされる一方(日本貿易振興機構,2023)、日本の中古車がタイを経由してミャンマーに再輸出される実態がある。そのタイにおいて日本からの中古車輸出がタイ側の統計でどのように示されているかである。本稿ではこれらの背景の下、タイの貿易統計を丁寧に整理し、同国の中古車貿易の現状を捉えることとする。

 

2.タイの貿易統計上の品目区分

まず、タイの貿易統計の品目区分を確認する。周知のとおり、各国の関税を示すワールドタリフにおいて品目の一覧が示されており、それに統計品目番号が示されている。その番号は貿易統計において貿易量や金額と紐づいている。

タイでは乗用車、貨物車において中古の品目が設定されている(バスは設定されていない)。その品目数は日本やEU(欧州連合)などと比べると非常に多いというのがタイの特徴としてある。新車を含む乗用車の品目数は2025年4月現在で日本が39品目、EUが33品目であるのに対して、タイは946品目もある。貨物車も同様で日本が50品目、EUが42目であるのに対して、タイは474品目である。中古車は「Used」と示された品目であり、タイでは乗用車で470品目、貨物車で238品目となっている。

これらの品目の多さは、当然ながら品目が細分化されているからにほかならない。大まかな品目は世界で統一されており、各品目は6桁のHSコードが設定されている。自動車の場合は排気量やエンジン種類によって分けられており、それを前提として各国が品目を細分化する。

タイでは6桁のHSコードで示される自動車の各品目は、まず大きく「ノックダウン(CKD)」と「その他(Other)」に分けられており、その後、車の形状に応じてさらに細かく品目が設定されている。例えば、1500cc超3000cc以下のガソリンエンジン車(HSコード:870323)では、ノックダウンとその他に区分されたものが、救急車、霊柩車、刑務所用バン、モーターホーム、セダン、バン以外の四輪駆動車、バン以外の非四輪駆動車、その他の8項目に細分化されている。セダンや四輪駆動車、非四輪駆動車についてはさらに1500cc超1800cc以下、1800cc超2000cc以下、2000cc超2500cc以下、2500cc超(3000cc以下)と排気量で4分割されている。そして、そのそれぞれで中古か否かで品目の区分がされている。それらの結果、例えば1500cc超3000cc以下のガソリンエンジン車だけでも72品目に細分化されている。なお、ノックダウンの中古車という品目の設定は他国であまり見られない。もちろん日本にもない。

これらの品目から貿易統計を用いて中古車の数量を算出してみると、いくつかのことがわかってくる。まず、ワールドタリフでは中古車を表す品目の名前が「Used」の1種類であるが、貿易統計に表示される中古車の品目名は「Used(C62)」「Used(KGM)」の2種類があることがわかった。これらは数量の単位が異なり、各品目に設定されている単位を見ると、往々にして「Used(C62)」の数量単位が「C62」、「Used(KGM)」の数量単位が「KGM」となっている。また、品目名が「Used(KGM)」、数量単位が「KGM」になっている品目は往々にしてノックダウン(CKD)であることもわかった。一方で、これらに例外があり、「Used (C62)」と表示されている品目において単位が「KGM」となっていることもある。また、その逆もあり、「Used (KGM)」の数量単位が「C62」のものも一部ある。

次に、データベースで「Used (C62)」「Used(KGM)」と表示される品目に紐づく統計品目番号には、ワールドタリフで設定されていないものもあることがわかった。これは他国でも起こることであり、時代とともに貿易統計上の統計品目番号が新設されたり、削除されたりすることが要因として考えられる。また、データベースで「Used (C62)」と表示されている品目の番号が、ワールドタリフでは中古ではないもの(新車)として扱われているものもある。

これらの扱いをどうするかである。まず、数量の単位である「KGM」「C62」については、前者が重量(キログラム)、後者が台数であるとする。ワールドタリフでも各品目の数量単位が示されており、それと照らし合わせるとほぼ全ての品目で「KGM」は「kg (kilogram)」、「C62」は「no.(Number)」と一致することがわかる(一部例外がある)。また、タイ税関のウェブサイトでは見つけられなかったが、いくつかのウェブサイトで「C62」が台数であることが示されている。例えば、タイ投資委員会(Thailand Board of Investment)は「原材料の単位」と記した一覧表を示しているが、そこでは「KGM」を「Kilo-gram」、「C62」を「Piece or Unit」とあり、「C62」が台数を示していることがわかる。

表1は、タイ税関の貿易統計から集計したタイの中古車の輸入量である。上記で示したように、品目「Used (C62)」は単位として台数を示す「C62」の数量のほかに重量を示す「KGM」の数量が集計されている。また、品目「Used (KGM)」においても同様で、数量単位として重量を示す「KGM」のほか、台数を示す「C62」もある。ノックダウンを示す「CKD」については全て「Used (KGM)」であり、重量(KGM)としてカウントされていることがわかる。ノックダウンの中古車というものが一体何なのかという疑問は残るが、これらから「Used (C62)」は完成車(非CKD)、「Used (KGM)」はノックダウン車であることがわかる。

問題は「Used (C62)」において重量(KGM)で集計されている数量、「Used (KGM)」において台数(C62)で集計されている数量である。また、表1を見ると上記の問題は2020年までであることがわかる。

 

表 1 タイの中古車輸入量

貿易統計単位C62KGM
品目Used (C62)Used (KGM)Used (C62)Used (KGM)
ワールドタリフ中古非中古車中古車設定なし中古車中古車設定なし
CKD非CKDCKD非CKDCKD
2016年4177 5,83410,135 
2017年3119042705,882655,435 
2018年121467212,396,782556,80035,904
2019年1247,51489547,711,916408,29478,245
2020年6216,4975732358,562,2436,362,584 
2021年8626,25128  1,240,8031,040
2022年5935,486  444,972 
2023年9157,670  409,862 
2024年9838,704  2,062,322 

出典:タイ税関貿易統計より作成

注:乗用車、貨物車のみであり、バスを除く。

 

 

3.台数表示の輸入量の推移

本節では、台数(C62)で示される数量を細かく見てみる。貿易統計で「Used (C62)」と示され、ワールドタリフの品目一覧でも「Used」として設定されているものはそのまま集計することでよいが、(1)ワールドタリフで非中古車(事実上新車)として設定されているもの、(2)ワールドタリフで統計品目番号の設定がないもの、(3)貿易統計で「Used (KGM)」と示されているもの、をどう扱うかが課題である。

まず、(1)について見てみると統計品目番号は「87032459800」のみである。繰り返し丁寧にワールドタリフを確認したが、この品目は「Other」と表記されており、中古ではないことが確認できる(あくまでも2025年4月時点であり、今後修正される可能性がある)。これに対してこの品目の対になっている「87032459000」も同じ「Other」となっていてワールドタリフ上で区分がされておらず、不自然なことになっている。その周辺の品目について見てみると、下3桁の番号が「000」と「800」の対となって続いており、「800」は全て「Used」となっているパターンが続いている。しばしばワールドタリフでは品目の表記に誤りがあることがあり、「Used」と書くべきものを「Other」と表記した可能性はなくもない。上記の品目について、毎年同程度の規模の数量がカウントされており、統計品目番号の入力ミスとも思えない。これらを考慮し、数量的には僅少だが、本稿ではワールドタリフで非中古車として設定されている「87032459800」を中古車と考える。

次に、(2)のワールドタリフに設定されていない統計品目番号の扱いだが、これを細かく見ると、全部で7品目(87032190800, 87032299800, 87032329800, 87032391800, 87032393800, 87032491800, 87033190800)となっていることがわかる。これら全て乗用車であり、統計品目番号の下3桁が「800」となっている。また、前後の番号を見ると、ノックダウンではなく、完成車の範囲にある番号である。これらから本稿では(2)も完成車の中古車と考える。

(3)については、表1に示した通り、ノックダウンの中古車の多くが重量で示されている中で、一部の品目が台数で示されている。台数で示されるのは3品目であり(87032129800, 87032429800, 87039019800)、いずれも乗用車である。ワールドタリフ上のノックダウンの中古車は乗用車、貨物車の合計で230品目もあるため、上記3品目のみが台数というのはイレギュラーであり、貿易統計上の表示の誤りを疑う。数量単位が重量(キログラム)の誤りであれば、例えば、87032129800(1000cc以下のガソリンエンジン車の中古車)の2020年の輸入実績は9キログラムである。この実績は車両重量としては軽すぎるのではないかという問題が生まれる。他にも1桁の数量の実績が観察されることから、ここでの数量単位は貿易統計の表示の通り、重量ではなく、台数であると考えるほうが自然である。

図1は、(1)~(3)の数量を含めて、台数表示の中古車輸入量の推移を示したものである。ここでは輸入元を日本とその他で区分している。これを見ても明らかなように、日本からの輸入が圧倒的に多い。ただし、全体における日本の割合が2020年から2024年の過去5年で概ね98%~99%となっている中で、2023年は91%とやや低い。この年について細かく見てみると、日本以外からの輸入台数(5,156台)のうち、タイからの輸入が3,418台となっており、しかもそのうちの3,402台が特定の品目(87033273800、2000cc超2500cc以下ディーゼル車)である。この品目の日本からの輸入が31台で少量であることや、自国からの「輸入」であることを考慮すると、この数量は外れ値か、あるいはイレギュラーなものと見ることはできる。自国(タイ)からの輸入をないものとして考えると、2023年の日本からの輸入は97%となり、前後の年の水準に近いものとなる。なお、2023年の数量で日本、タイを除くと、1,738台になるが、このうちの1,167台はドイツからになる。

 

図 1 タイの中古車輸入台数の推移(輸入元別)

出典:タイ税関貿易統計より作成

注:台数(C62)表示の乗用車、貨物車の中古車台数を集計。左軸の単位は台。「日本の割合」は全輸入元における日本からの輸入台数の割合。

 

 

4.重量表示の輸入量の推移

次に、重量(KGM)表示の中古車輸入量を見ていく。表1に見たように重量表示のものはノックダウンが多いが、2020年までは一部の完成車でも重量で示されている。これに該当するのは8品目である(87032353800, 87032354800, 87032371800, 87032372800, 87032373800, 87032374800, 87032449800, 87033272800)。ワールドタリフで示される完成車の中古車は478品目あり、上記8品目を除いた470品目が台数表示であることから、この8品目はイレギュラーと言える。よって重量表示と捉えてよいかどうかを念のため確認する。

表1で示される通り、この8品目の輸入量の合計は、2019年が771万キログラム、2020年が856万キログラムとなっている。日本からの輸入に限定しても同じ年で706万キログラム、848万キログラムである。仮にこれらの輸入実績の数量単位を台数とするとその規模は現実的ではない。日本の貿易統計ではこの年の日本からタイの乗用車・貨物車の輸出台数は新車を含めても2万台から3万台であり、700万台、800万台の規模にはならない。よって、タイ側の表示通り重量と考えるのが自然である。

また、表1において、ワールドタリフで設定されていない品目の数量が2018年、2019年、2021年に集計されている。これは1品目(87032130800)であり、下3桁が「800」であることや前後の品目からノックダウンの中古車であることは想定できる。

以上を踏まえて表1に示される重量表示の品目全てを足し合わせ、図2にその推移を示す。既に表1で示されているのである程度わかるが、2020年の数量が非常に多く、その後は大きく減少している。また、重量においても日本の輸入の割合が高いが、台数のようにほぼ全量が日本からのものというわけでもない。

 

図 2 タイの中古車輸入重量の推移(輸入元別)

出典:タイ税関貿易統計より作成

注:重量(KGM)表示の乗用車、貨物車の中古車輸入量を集計。左軸の単位はキログラム。「日本の割合」は全輸入元における日本からの輸入量の割合。

 

次の図3は、図2と同じ重量表示の中古車輸入量について、主な品目別に示し直したものである。これを見ると1500cc超3000cc以下のものが圧倒的に多く、その次に3000cc超が続く。図にあるように、3000cc超のものは一部2500cc超のものを含むとある。3000cc超のものはガソリンエンジン車で2500cc超のものはディーゼルエンジン車であるが、数量的にはガソリンエンジン車が圧倒的に多い。例えば、2020年「3000cc(一部2500cc)超」の輸入量は293万キログラムだが、そのうち3000cc超(ガソリンエンジン車)が282万キログラムであり、96パーセントを占める。つまり、2500cc超3000cc以下のものが含まれていたとしても数量的にはわずかであり、全体をミスリードするものではない。

 

図 3 タイの中古車輸入重量の推移(車種別)

出典:タイ税関貿易統計より作成

注:重量(KGM)表示の乗用車、貨物車の中古車輸入量を集計。左軸の単位はキログラム。「日本の割合」は全輸入元における日本からの輸入量の割合。

 

これらの重量は台数ではどの程度になるだろうか。しばしば貿易統計において、EUのように同じ品目で重量と台数を併記して示すことがあるが、タイや日本の貿易統計にはいずれかの単位で示されるのであって併記されることはない。そのような中で、国連統計(UN Comtrade)においては重量と台数が併記されているが、オリジナルのタイや日本の貿易統計で示されていないものがなぜ国連統計で示されているのか、そこに正確性があるのかという疑問はある。

そこで1台の重量で割ってみるという方向を考えてみる。貿易統計において、貨物車については車両総重量(G.v.w., Gross Vehicle Weight)による品目の区分はあるが、それは車両重量に乗車定員と最大積載量を加えたものであって、車両重量を示すものではない。また、乗用車については車両総重量の区分もなく、排気量の区分になる。このような中、国土交通省が公表する自動車燃費一覧に車両重量が示されていることがわかった。ここで示される表には、メーカー・モデルごとに排気量と車両重量を紐づけている。貨物車については車両総重量も示されている。ここでの数値を使用して算出を試みる。

まず、乗用車においては、2025年3月の自動車燃費一覧のガソリン乗用車(普通/小型自動車,WLTCモード)のうち、トヨタ車の表から、1500cc以下の車両重量の平均を算出すると1158キログラムとなる。また、1500cc超3000cc以下については幅広いが、同じくトヨタ車の車両重量の平均を算出すると1737キログラムとなる。3000cc超は2370キログラムとなる。貨物車については同様に自動車燃費一覧のトラック等・トラクタ(JH25モード)のうち、いすゞ車のものを見ると、車両総重量5トン以下の車両重量の平均は2496キログラム、同じく5トン超の車両重量の平均は7249キログラムと算出される。

これらの幅が広いため慎重な議論が必要だが、本稿ではこれらを踏まえて各排気量の重量合計を単純に上記の平均重量で割ってみる(「乗用車,その他」は1500cc以下として計算した)。それが図3になる。これによると、最も重量の多かった2020年の台数は7,942台となる。また、その次に多い2019年は4,380台である。

図4は、図1の台数にこれらの推計台数を追加したものである。これを見ると、2019年から2021年にかけて右肩上がりの傾向だったものが、2020年が大きく追加されたことでその増加の傾向がやや変わってきている。また、2021年以降は推計台数の影響はなさそうである。

 

図 4 タイの中古車輸入台数(集計台数+推計台数)の推移

出典:タイ税関貿易統計より作成

注:「集計台数」は台数(C62)表示の中古車輸入台数、「推計台数」は重量(KGM)表示の中古車輸入量から推計した台数。

 

5.日本側とタイ側の統計の比較

図5は以上を踏まえて日本・タイ間の中古車貿易台数を比較したものである。図中の「タイ側」と示されているものがタイの貿易統計から算出した中古車輸入台数であり、図1に示された日本からの集計台数に重量表示の数量から推計した台数を加えている。これに日本の貿易統計から集計したタイへの中古車輸出台数(「日本側」と表示)を照らし合わせている。

これを見ると、日本側の統計とタイ側の統計は概ね同じ傾向で変動していること、推計台数の追加が顕著なのは2019年と2020年であること、推計台数を追加することで両統計の乖離が縮小していることなどがわかる。2019年のタイ側の輸入台数は、集計台数のみであれば日本側の輸出台数の39%であるが、推計台数を加えることで58%となっている。これに対して2020年のタイ側の輸入台数は集計台数で日本側の73%だったが、推計台数を追加することで日本側の輸出台数を上回っている。2020年のみタイ側が日本側を上回り、イレギュラーな傾向になっているが、タイムラグによりこういうことは十分に起こりうる。もちろん、推計台数やそもそもの貿易統計の入力数値が誤っている可能性もある。

一方で、2021年から2023年においてタイ側の台数は日本側の95%を超えている。直近の2024年は79%とやや乖離しているが、それでも2016年から2018年と比べると乖離の幅は小さい。この動きをどう捉えるかである。1つは統計が徐々に整備されてきたことで乖離が縮小したという見方である。また、かつては再輸出向けのものはタイ側の統計でカウントされていなかったが、昨今になってカウントされるように変わったという見方もできる。さらには、再輸出向けがカウントされない中で、実はその台数は少なく、日本からの輸出はタイ国内に入っているという可能性もある。いずれにしろ、タイの中古車輸入が事実上不可能とされる中で、タイ側の統計でカウントされる輸入台数の扱いはさらなる課題である。

 

図 5 日本とタイの中古車貿易台数(集計台数+推計台数)の推移

出典:日本財務省貿易統計、タイ税関貿易統計より作成

注:「集計台数」は台数(C62)表示の中古車輸入台数、「推計台数」は重量(KGM)表示の中古車輸入量から推計した台数。

 

6.まとめと考察

本稿では、タイの貿易統計を用いて同国の中古車輸入量を示した。同国の貿易統計は品目が非常に多いことが特徴としてあるが、本稿によりある程度は整理することができた。同国への中古車輸入が事実上不可能とされる中、昨今、日本で示される中古車輸出台数の多くがタイ側の統計でも示されている。これをミャンマーへの再輸出の数量と見るか否かは別途課題になる。また、輸入される中古車の大半が日本からであることも示された。

集計作業の過程で浮かび上がった問題の1つは、数量の単位が重量(KGM)となっている品目の扱いである。本稿では1つの試みとして自動車燃費一覧を用いて排気量と車両重量を紐づけ、該当する品目の台数を推計した。それにより、2019年や2020年などでは台数を大きく上積みすることができた。また、日本側の台数との比較を見ると、同じような傾向で推移していることもわかった。

尤も、ここでの推計は粗いものであり、その精度を高めていく必要はある。例えば、タイの貿易統計では、1800cc超2000cc以下のように排気量が細分化されていることがあり、精度を高めようとすれば可能である。また、今回用いた自動車燃費一覧もトヨタ車といすゞ車のデータであり、他のメーカーのものも含めることはできる。

精度を高めるために、品目別に日本側とタイ側の統計を比較するという方法もある。しかし、今回の作業の過程でしばしばタイの貿易統計に示される数量が、本当にその品目を表しているかと疑問に思うことがあった。具体的には、日本側の統計で2024年に日本からタイに1万台弱のハイブリッドの中古車が輸出されているが、タイ側の統計ではわずか2台である。代わりにプラグインハイブリッド車で2517台が計上されているが(日本側で4台)、それでも少ない。前年の2023年も日本側では7千台弱のハイブリッド車の輸出がされているが、タイ側では2台であり、プラグインハイブリッド車も88台(日本側5台)となっている。この点は扱いづらいところである。

一方、このような重量で示される数量を考慮しないという選択肢もなくはない。図4や図5で見たように2021年以降は推計台数を追加したとしてもわずかである。表1で示されるように2021年以降、基本的には完成車が台数、ノックダウンが重量で示されている。ノックダウンの中古車が一体何なのかは判明しないが、2021年以降の傾向が今後の続くのであれば、ノックダウンから無理に台数を推計しなくても問題はなさそうである。

 

参考文献

 

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