自動車リサイクルの潮流 第100回:中古車の国内移動の範囲に関する考察

阿部新

山口大学国際総合科学部准教授

1.はじめに

 しばしば「大都市の中古車は最終的に地方、農村部に行き、使用済みとなる」というような言い方がされることがある。1980年代から1990年代に産業廃棄物の広域移動が進み、「ゴミは田舎へ」などとも言われたが、同じような構造を想定しているのだろうか。果たして「中古車は田舎へ」と言ってよいだろうか。

 これまでも示したように、日本自動車販売協会連合会の『自動車統計データブック』に中古車の国内移動に関するデータが存在する。阿部(2019b)では、1983年段階では、東京都からの中古車国内流出台数のうち、73%が首都圏内の流出であることが示された。

 直近の2017年は首都圏外への流出の割合が増えているが、それでも56%が首都圏内の流出である。モータリゼーションの初期段階であれば、地域間の格差による地方への流出は想定されるが、近年の広域化の動きはITの発達、物流の効率化など別の要因が想定される。

 一方、このデータを以って、東京都の自動車のうち、半数以上は首都圏内で使用済みとなると言ってよいかである。それを見るには、抹消登録台数(廃車台数)を分母にし、そのうちの域内の滞留の割合を示す必要がある。本稿ではこれを検討することとする。

 また、自動車リサイクル促進センターにおいて都道府県別の使用済自動車引取件数が公表されている。これを用いれば、抹消登録台数の算出よりも容易に地域別の実態を把握することができるかもしれない。以下ではこれについても検討することとする。

 

2.国内抹消登録台数

 まず、首都圏8都県の抹消登録台数の算出から行う。阿部(2018)や阿部(2019a)で示されたように、地域別の抹消登録台数は、前期末自動車保有台数+当期新車販売台数+中古車国内流入台数-当期末自動車保有台数によって算出される。

 首都圏各都県の抹消登録台数は阿部(2018)や阿部(2019a)で示された通りであり、そのうちの中古車国内流出台数の割合も同じく示されている。これによると、東京都の抹消登録台数中の中古車国内流出台数の割合は、1980年代が30%台後半だったのに対して、直近では50%前後で推移していることなどが分かる。

 また、阿部(2018)や阿部(2019a)において算出された抹消登録台数は中古車輸出台数を含むものである。国内での中古車移動の範囲を議論する際には、中古車輸出台数を差し引いた方がよい。阿部(2018)では輸出抹消登録台数を提示しているが、ここでもこれを用いることとしたい。

 図1は各都県について抹消登録台数から輸出抹消登録台数を差し引いたもの(以下「国内抹消登録台数」)を示す。そして、それを「域外流出」と「域内滞留」に分けている。「域外流出」は各都県の中古車国内流出台数を示し、「域内滞留」は国内抹消登録台数から中古車国内流出台数を差し引いたものである。

 域内滞留には使用済み自動車の発生台数のほか、抹消状態車両の増加数、違法輸出台数も含まれる。抹消状態車両の増加および違法輸出がごくわずかであるとすれば、域内滞留台数は使用済み自動車の発生台数に近い。また、図1では国内抹消登録台数における域内滞留の割合も示している。

 これを見ると、国内抹消登録台数における域内滞留の割合は、山梨県が78%と最も大きく、茨城県、栃木県、群馬県も70%程度と高い割合を示している(それぞれ72%、70%、72%)。続いて埼玉県、千葉県、神奈川県が50%前後である(それぞれ54%、46%、49%)。これに対して東京都は21%と極めて低い数値を示している。

図1 首都圏各都県における国内抹消登録台数(2017年)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』2018年版より阿部新算出

注:「国内抹消登録台数」は「前期末自動車保有台数+当期新車販売台数+中古車国内流入台数-当期末自動車保有台数-輸出抹消登録台数」により算出。「域外流出」は中古車国内流出台数、「域内滞留」は国内抹消登録台数から中古車国内流出台数を差し引いたもの。「域内滞留の割合」は域内滞留/国内抹消登録台数。

 

3.東京都の中古車の行方

 図1では、東京都の国内抹消登録台数のうち21%が域内滞留である。都内で発生する使用済み自動車台数の割合がこの程度であると考えると、ある意味で衝撃的であるが、ではどこに行くかである。

 図2は、東京都の国内抹消登録台数を仕向地別に分け、多い順に並べたものである。東京都の数値は図1の域内滞留台数であり、抹消登録台数から中古車国内流出台数を差し引いたものである。他の道府県はそれぞれ向けに流出した中古車国内流出台数である。また、線グラフは各都道府県向けの数量のシェアの累計を示している。

 阿部(2019b)でも見たが、東京都の中古車の国内流出先は、神奈川県、埼玉県、千葉県の近隣県が突出して多く、それ以外では愛知県、北海道、大阪府、福岡県などの大都市を抱えている道府県が目に付く。まず、東京都に神奈川県、埼玉県、千葉県の3県を含めたとき、国内抹消登録台数中の累計シェアが21%から56%にまで大きく上がっていることが分かる。

 つまり、この1都3県で東京都の自動車の半数以上が使用済みとなっている可能性がある。また、これら3県は国内抹消登録台数のうちの35%を受け入れており、東京都単体の21%よりも受け皿が大きいことも分かる。

 上記の56%という数値が60%、70%、80%を上回るのは、それぞれ図2で茨城県、栃木県、宮城県を加えた段階である。つまり、宮城県までを含めた15道府県の範囲で東京都の自動車の80%が使用済みとなっている可能性がある。さらに90%を上回るのは熊本県の段階になる。

 一方、首都圏を範囲として見てみると、国内抹消登録台数における累計シェアは65%である。つまり、東京都の自動車の65%が首都圏で使用済みとなっているという見方ができる。

 残りの内訳は北海道3%、東北6%、北陸信越4%、中部8%、近畿5%、中国2%、四国1%、九州4%、沖縄1%であるから、首都圏が圧倒的に多いと言ってよいのではないだろうか。なお、首都圏にその隣接4県(福島県、新潟県、長野県、静岡県)を加えた範囲で見てみると、上記の累計シェアは72%になる。

 もっとも、これは可能性であって実態は異なることも否定できない。例えば、東京都から神奈川県に移動したものがさらに他の道府県に移動して使用済みとなることもあるだろうが、それはここでは掴めない。とりわけ愛知県や大阪府など大都市を抱えているところでは、隣県にさらに流出している可能性があるだろう。

 首都圏の他県について、上記の東京都で行った作業と同様に、国内抹消登録台数を算出し、同様に首都圏内で滞留する割合を見てみると、山梨県が90%と最も大きく、茨城県、栃木県、群馬県も90%に近いことが分かる(それぞれ89%、87%、88%)。

 埼玉県、千葉県、神奈川県でも80%前後であり(それぞれ82%、73%、76%)、東京都の65%と比べると高い。首都圏の他県の自動車は、東京都よりも首都圏内で循環していることが窺える。

図2 東京都の国内抹消登録台数の内訳と累計シェア(主要仕向地別,2017年)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』2018年版より阿部新算出

注:東京都の数量は図1の「域内滞留」と同じ。他の道府県は東京都からそれぞれ向けの中古車国内流出台数。

 

4.首都圏の抹消登録台数

 前節では東京都の国内抹消登録台数のうち、65%が首都圏内で滞留する可能性を示した。とりわけ近隣の3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)向けの数量が多い。一方、東京都からこれらの県に一方通行で移動しているわけではない。

 東京都から埼玉県、千葉県、神奈川県向けの流出台数はそれぞれ33,090台、24,924台、36,975台であり、それら3県から東京都への流入台数は25,601台、15,887台、28,526台である。東京都は流出超過であるが、流入も相当数あり、経済圏内で相互に循環している様子が窺える。

 以下では、これら都県の境を越えた範囲をいくつか設定し、それを一つの経済域として域内の国内抹消登録台数とそのうちの域内滞留分を算出してみる。具体的には、東京都・埼玉県、東京都・千葉県、東京都・神奈川県の各2都県の範囲、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の1都3県の範囲および首都圏8都県の範囲とする。

 これらは、同じ計算式を用い、各範囲での自動車保有台数と新車販売台数、中古車国内流入台数、輸出抹消登録台数により算出されるが、中古車国内流入台数はその範囲内での相互移動分を差し引く必要がある。また、図1の国内抹消登録台数を合計し、それからその範囲内の中古車の移動分を差し引いても同じ結果となる。

 以上により、算出された国内抹消登録台数とそのうちの域内滞留の割合を示したものが図3である。これを見ると、当然ではあるが、範囲を拡大することで域内滞留の割合大きくなっていることが分かる。

 先の図1において東京都の割合は21%だったが、周辺県に範囲を広げることでその割合が40%から50%近くになっている(東京都・埼玉県の範囲で48%、東京都・千葉県の範囲で41%、東京都・神奈川県の範囲で47%)。

 また、1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に範囲を拡大すると66%に大きく上昇し、首都圏を範囲とするとさらに78%にまでなる。これらにより、首都圏内の国内抹消登録台数のうち、8割近くが首都圏内で使用済みとなっている見方ができる。

図3:広域圏における国内抹消登録台数(2017年)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』2018年版より阿部新算出

注:「国内抹消登録台数」「域内滞留」「域内滞留の割合」の算出式は図1の注を参照。「1都3県」は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を指す。

 

 図4は、1980年代からの首都圏の抹消登録台数を時系列的に示している。これは輸出抹消登録台数を差し引いたものではないため、図3よりも台数は多くなっている。そのため、中古車国内流出台数を差し引いたその他の数値には、首都圏内で発生する使用済み自動車台数のほか、中古車輸出台数が含まれる。図ではそれを「域内滞留・輸出」を呼んでいる。それらの事情から抹消登録台数中の「域内滞留・輸出」の割合は、輸出を除いた「域内滞留」の割合よりも大きくなっているはずである。

 ただし、図3の「域内滞留」の割合は78%だったが、図4の2017年の「域内滞留・輸出」の割合は80%であり、輸出を含めたとしても大きな差ではない。しかも中古車輸出市場が近年になって拡大している状況を考慮すると、それ以前は無視できる量とも考えられる。

 いずれにしろ、1980年代は90%前後であり、ほとんどが首都圏内で循環していたことが分かる。近年では80%程度にまでなってきており、近年になればなるほど潜在的な使用済み自動車が広域に移動していることを示唆するが、それでも大多数は首都圏内で循環していることが窺える。

図4 首都圏の抹消登録台数の推移

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』各年版より阿部新算出

注:「域外流出」は中古車国内流出台数、「域内滞留・輸出」は抹消登録台数から中古車国内流出台数を差し引いたもの、「域内滞留・輸出の割合」は域内滞留・輸出/抹消登録台数。

 

5.使用済自動車の引取件数からのアプローチ

 周知の通り、使用済み自動車の引取報告件数は、自動車リサイクル促進センターにより公表されている。本節では、これと中古車国内流出台数を合計することで、域内滞留の割合を容易に示すことができないかを検討する。

 まず、対象の期間を揃える必要がある。これまで見てきた中古車国内流出台数は、日本自動車販売協会連合会の『自動車統計データブック』の各年版に掲載されているものを用いる。これは暦年でしか提示されておらず、年度別や月別は把握できない。

 これに対して、都道府県別の使用済自動車の引取件数は、自動車リサイクル促進センターの『自動車リサイクルデータBook 2017』のほか、同センターのホームページ上にも掲載されている。

 前者は、2008年度から2017年度の10年間分のデータを得ることができるが、年度別のデータである。後者は2016年度(2016年4月)以降の引取件数を月別で示している。よって、暦年のデータを求める場合は後者を用いることになる。そして、中古車国内流出台数との比較ができるのは、現時点では2017年のみとなる。

 図5は使用済み自動車引取件数と域外流出(中古車国内流出台数)の合計値およびそのうちの使用済自動車引取件数の割合を示したものである。また、比較として図1の国内抹消登録台数を並べている。

 これを見ると、茨城県、栃木県の合計値は国内抹消登録台数とほぼ同じである。国内抹消登録台数よりも少ないのは群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県である。反対に千葉県は国内抹消登録台数よりも多いという奇妙な結果になっている。

 しかも無視できないほどの数量である。使用済自動車引取件数の割合は図1の域内滞留の割合と比べて小さくなっている都県が多いが、千葉県は大きくなっている(46%→68%)。

 先に言及した通り、国内抹消登録台数は、抹消登録台数から輸出抹消登録台数(合法分)を差し引いたものであることから、使用済み自動車の発生台数、抹消状態車両の増加数のほかに違法輸出も含まれる。使用済み自動車引取件数は、合法的に使用済自動車として引き取られたものであり、違法解体の数量は含まれない。

 図5の棒グラフの右側の国内抹消登録台数には抹消状態数の増加、違法解体、違法輸出が含まれるが、左側の使用済み自動車引取件数と域外流出台数の合計にはこれらは含まれない。国内抹消登録台数の方が多くなるのは十分に納得できる。

 一方、使用済み自動車の引取件数は、引取業者により報告されるものであって、その事業所の立地に左右されると考えられる。よって、例えば、千葉県で使用済み自動車として引き取られたものに、他都県で抹消登録された車両が含まれる可能性がある。

 この点は改めてヒアリング等で調査をし、十分に議論する必要があるが、仮にそうであれば千葉県の使用済み自動車引取件数が無視できないほどに多くなっている状況が説明できる。それ以外としては、国内抹消登録台数を算出する際に輸出抹消登録台数を用いるが、その輸出抹消登録台数の集計におけるタイムラグ問題の影響も想定される。いずれにしろ、2017年のデータしかないため、今後のデータを観察していく必要がある。

図5 首都圏8都県別の使用済み自動車引取件数・域外流出台数(2017年)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』2018年版、自動車リサイクル促進センターホームページより阿部新算出

注:「使用済み自動車」の単位は件、「域外流出」「国内抹消登録台数」の単位は台。「使用済み自動車引取件数の割合」は使用済み自動車引取件数/(使用済み自動車引取件数+域外流出台数)により算出。

 

 さて、図3で行ったように、複数の都県を一つの範囲と考えて、その範囲での使用済み自動車引取件数と域外流出の合計を見てみたい。これをすることで、仮に東京都で使用済みとなったものが千葉県でカウントされても、それで発生するずれをカバーすることができる。図6がその結果になる。

 これを見ると、東京都・埼玉県、東京都・神奈川県の範囲における使用済み自動車の割合は、図3の域内滞留の割合より低い値になっている。これは図3の国内抹消登録台数が先に述べたような理由により、使用済み自動車の引取件数以外の数量を含むからとも考えられる。あるいは、これらの範囲で抹消登録されたものが、他県で引き取られている可能性もある。

 東京都・千葉県の範囲では、図3の域内滞留の割合よりも高くなっている。これについては東京都・千葉県以外の道府県で抹消登録されたものを引き取っている可能性などが考えられる。この点はヒアリング等により確認すべき事項であろう。

 1都3県に範囲を拡大した場合、使用済み自動車の割合が増えているとともに、使用済み自動車・域外流出の合計が図3の国内抹消登録台数を下回る結果になっている。それは首都圏に範囲を拡大した場合でも同様である。埼玉県や神奈川県で抹消登録されたものが千葉県で使用済み自動車として引き取られているのであれば、このような数値も納得する。

 また、この限りでは、首都圏の自動車の72%がその域内で使用済みになっていると言え、図3と同様、多くが首都圏内で循環している様子が窺える。さらに、その範囲を福島県、新潟県、長野県、静岡県に拡大した場合、使用済自動車の割合は78%になる[1]。なお、全都道府県に中古車は移動しているため、これが100%になる範囲は47都道府県を網羅した場合になる。

[1] 首都圏+周辺4県の使用済自動車引取件数、首都圏+周辺4県からの中古車国内流出台数を合計して算出した。

図6 広域圏における使用済み自動車引取件数・域外流出台数(2017年)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』2018年版、自動車リサイクル促進センターホームページより阿部新算出

注:「使用済み自動車」の単位は件、「域外流出」の単位は台。「使用済み自動車引取件数の割合」は使用済み自動車引取件数/(使用済み自動車引取件数+域外流出台数)により算出。

 

6.「中古車は田舎へ」か?

 本稿で検討したように、東京都では輸出を除いた国内抹消登録台数のうち、都内に滞留するのはわずか2割であり、残りの8割は都外に流出する。それは使用済み自動車引取件数で見ても同様である。この8割程度の中古車の行方はどこかというと、東京都近郊の割合が高い。

 1都3県または首都圏を一つの地域としてその範囲の国内抹消登録台数を見ると、東京都単体とは異なり、大多数が域内で滞留していることが確認できる。それらから地方、農村部への流出というよりは、近郊への流出あるいは地域内での循環と言った方がよい。

 かつて日本では、大量の廃棄物が近畿圏から瀬戸内海の離島、首都圏から青森県、岩手県に運ばれた事件が社会問題になった。今回の限りでは、中古車はそこまで遠方に移動するのではない。また、一方通行でもなく、相互に流出入し、構造は異なると言える。その違いをどのように説明するかである。

 廃棄物の埋め立て等の処分であれば、土地代のほか、近隣住民の同意などの手続き費用により、大都市よりも地方や農村部が好まれることはある。よって、廃棄物は、輸送費を含めて関連費用が低く、人口の少ない地方に流れるのは想定される。

 また、人口に関係なく、受け入れることができるため、人口の多い大都市から、人口の少ない地方への移動が成立する。それらから考えると、「ゴミは田舎へ」という構造に関しては納得する。

 これに対して、中古車の移動は土地代よりも個人の所得格差が影響するものと思われる。確かに雇用機会等を起因として地域間で所得格差はあるだろうが、現代の日本は新車が買えないほど地域間で生活水準が異なるとは思えない。

 むしろ、地域内部での個人間の所得格差の方が観察される。職業や個人事情のほか、年齢の違いによるものもあるだろう。そのため、中古車の場合は、大都市、地方に関係なく、所得水準が相対的に低い者に引き渡されると考えられる。

 しかも、地方は人口が少なく、新車を購入する層も一定数いる中で、大都市で排出される中古車を受け入れるほどのキャパシティはない。東京都が最大の中古車の流出地と同時に最大の流入地であることなどを見ても、「ゴミは田舎へ」と構造は異なるものと思われる。

 一方、中古車の国内移動は、先進国から新興国・途上国への中古車輸出と同じ構造のようにも見える。これについても、日本と新興国・途上国の国家間の経済格差と、日本国内の大都市・地方の経済格差が同じかどうかを検討する必要がある。

 また、新興国・途上国では日本の中古車を受け入れるだけの人口、需要があると思われ、日本の地方とはやはり異なるように思える。それらを見ると、中古車の輸出と国内移動は同一に考えるべきではない。

 戦後間もない時期は、自動車の総数も少なく、日本の地方にも大都市の中古車を受け入れるだけの人口、需要はあっただろう。また、地域間の経済格差も現在よりも大きく、「中古車は田舎へ」と言うこともできたかもしれない。一方で、この時期であっても都市内部で個人間の所得格差があったものと考えられ、「中古車は田舎へ」の構造だったと断定できるかというと慎重にならざるを得ない。

 確かに地方で放置車両を見かけることはある。それを風光明媚な中山間地域で見かけるとなおさら大都市の中古車の墓場のように見えてしまうかもしれない。しかし、繰り返すように地方には大都市の中古車を受け入れるだけの人口はいないし、新車を買う層も大都市とは変わらず一定割合存在する。

 一部の現場の視察やヒアリングにより全てを語ることは全体を見誤る結果となりうる。もっとも、全体の構造を理解した上で、地方の少数の事例に問題意識を持つのであれば、決して問題ではない。

 中古車の流通構造は、時代および国・地域の経済構造、制度によって変わりうる。よって、日本の構造を前提として議論することはできない。他の国・地域では、日本よりも地域間の所得格差が予想され、それにより中古車の広域移動が生まれているかもしれない。

 それには新車販売の戦略にもよる。関税などで新車が高い国・地域では、中古車が流通することが考えられる。一方で、都市内部での個人間の所得格差により、広域移動が進まないケースも想定される。また、人口の多いところに需要があることも考慮しなければならない。それらを認識しつつ、それぞれの国・地域の経済構造、制度を前提として、この問題を議論すべきである。

 

参考文献

  • 阿部新(2018)「地域別の抹消登録台数の比較考察:首都圏を事例に」『月刊自動車リサイクル』(93) , 34-44
  • 阿部新(2019a)「地域別の抹消登録台数に関する統計整理」『速報!自動車リサイクル』(2019年5月27日),https://www.seibikai.co.jp/archives/recycle/8557
  • 阿部新(2019b)「中古車の国内移動の推移:首都圏を事例に」『速報!自動車リサイクル』