自動車電機の基本

車輌コンピューター

自動車整備工場における故障診断整備のススメ

せいび界2015年5月号

自動車電気の基本① 苦手分野の克服をして入庫にも繋げる

電気と聞いて嫌だな、と思った方は少なくないと思います。本連載でも再三取り上げているコンピューターや電気に対する知識ですが、今回も電気について深掘りしていこうと思います。

毎度のことですが、自動車に搭載されているコンピューターは平均20個以上と言われています。CANといったシステムで運用するなど、簡略化はされているものの、日増しに電子制御は多くなり、コンピューターも増えています。

ところで、そのコンピューターは何によって動いているのでしょうか。センサーやアクチュエーター、もっと言ってしまえば、電装品など電子部品と呼べるものは、すべからく電気で動いているのです。電気が通っているからこそ、電気で作動するものが車には装着されています。電気を作るものはバッテリーであれ、オルタネーターであれ、エンジンであれ、全ての部品がリンクして電気を作り上げているのです。電気が正常でなくてはパワーも出ない、正常に動かすためのもの、いわば血液!

ガソリンを人間が採る食事に例えるならば、電気は血液のようなものです。血液に十分な酸素が供給されなければ酸欠状態になります。人間は脳が酸欠を起こすと正常ではいられなくなります。

自動車も同様に、十分な電気が電子部品に供給されなければ動かないのです。ヘッドライトが暗くなる、ホーンの鳴りが悪いなどの経験をしたことは無いでしょうか。電気の流れが悪いと起こる症状です。冒頭の電気と聞いて嫌だなと、思った方々、朗報です。今回はそんな電気の基本について考えていこうと思います。

目に見えないなら見えるようにすればいい

私もそうですが、メカニックの多くは電気が嫌いです。何故かと聞くと、大体のメカニックは「見えないから」、「分からないから」と回答します。ならば、見えるようにしてしまえば、苦手意識はなくなるのではないでしょうか? ご存知の通り、スキャンツールやサーキットテスターがそれに当たります。最早、現代の自動車整備とは、このようなテスト機器を使った測定作業と言っても過言ではありません。電子化が進んだ弊害として、こういった機器に頼らなくてはなりませんが、逆にこれさえあれば何でも出来ると考えれば、とても強い味方になります。

テスト機器を使用し、測定結果の数値より判断することが、トラブルシューティングと言えます。目や感覚でトラブルシューティングするよりも完璧に近いのです。数値は嘘をつきません。電気の必要性、大切さなどがお分かりいただけると思います。

電圧・電流・抵抗、を理解する

車の電気は直流(DC12V)です。一般家庭用のコンセントは交流(AC100V)です。自動車は基本的に全て直流ですが、唯一、交流を使っている部品がオルタネーターです。オルタネーターは交流発電になり、出力は直流に変換されます。直流を基本に考えて以下を読んでください。

まず、電流(Aアンペア)は簡単に言うと電気の量を表しています。電流には次の3つの作用があります。

• 発熱→導体には抵抗があり、その抵抗で熱が発生する(ライトバルブなど)
• 化学→電解液に電流を流すと化学作用を起こす(バッテリー)
• 磁気→導線やコイルに電流を流すと磁界が発生する(モーター、オルタネーター)これらが電流の作用になります。

次に電圧(Vボルト)です。電流が発生する時、電子を動かす力が電圧です。バッテリーの電圧は12Vです。エンジン始動中は14V程度になります。自動車の中で、一番高い電圧は、プラグによるスパークで15,000V ~ 30,000Vです。

抵抗(Ωオーム)電流の流れを妨げるもので、1オームとは、1Vの電圧をかけた時に1Aしか流さない値になります。これらを踏まえた上で、オームの法則について解説したいと思います。

オームの法則

導体に流れる電流は電圧に比例し、抵抗に反比例する。必要とされる電流、電圧、抵抗を計算するために必要な法則となります。

電流(A)=電圧(V)÷抵抗(R)
電圧(V)=電流(A)×抵抗(R)
抵抗(R)=電圧(V)÷電流(A)

法則は普段の業務の中で何気なく使っています。しかしこれらを理解することがより深い故障診断へと繋がるのです。電気を理解することで、「何故」を導き出す公式になります。ライトの光が弱いというのには、理由があります。バルブなのか、ハーネスなのか、それらも電気の流れを見ればどこに不具合があるのかが分かります。これを理解しないで、バルブやバッテリーだけの交換をするなど素人の仕事と一緒です。故障には原因が必ずあります。電気を克服して、故障診断が出来るメカニックになれば、信頼の置ける自動車整備工場となれます。生き残る上でもメカニックの意識向上と知識向上は重要な課題となります。

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監 修:ボッシュ株式会社 長土居大介