スキャンツール

スキャンツールの現状と付き合い方

ODBとスキャンツールの関係とは

既に知られているように、OBD(オン・ボード・ダイアグノー ス: 本来は、自動車に”診断装置”が付いているという意味)の機能が付き始めている。これは元々、排気ガス規制が厳しいアメリカのカルフォルニアからスタートしたものだが、当初自動車メーカー各社が自由な規格で行っていた。エンジンの周辺に排気ガス規制と燃費向上のための様々なディバイス(装置)が付加されたため、複雑化し、どこが不具合になったのかを呼び出せる機能も兼ねた訳である。

当初メーカーごとにまちまちだった故障コードも、ISOで故障コードの意味するところが統一されたことで自動車修理にはなくてはならないスタンダードツールとして躍り出た。

通常、車両の運転席の足下上部に付いているコネクター(OBD コネクター)も16ピンタイプに統一され、メーカーの枠を超え1つのスキャンツールで診断ができるようになりつつある。正確に言えば2008年10月から発売する国産の新型車および2010年9月以降に発売されるすべてのニューモデル(輸入車を含め)にはOBDーⅡ(OBDのバージョン2という意味)を備えなければならない・・・・となった。

早い話、イマドキのクルマには、《故障したコトを知らせる表示ランプをクルマに備えていること》と《故障したコトをECUに記憶保存すること》が全モデルに義務付けされたということ。つまり、スキャンツールなしには、どんなクルマも故障診断作業ができないぞ、という意味である。

もっとひらたく言えば、スキャンツールを持っていない整備業者は、スキャンツールを手に入れ、それをフルに活用しないと商売ができ ないですぞ、という意味。

ここで、少し寄り道をして、スキャンツールを使う以前の事情を振り返ってみよう。リポーターの記憶では、自動車に《ダイアグノーシス(自己診断 装置)》と呼ばれるものが付いたのは、昭和57年前後である。インパネのインジケーターランプが点滅する回数で、エンジンのどこが不具合なのかを知らせるというもの。

高級車こそABSが付いていて、故障コード数が20個ほどあったが、それ以外の排気量2リッター 以下の普通のクルマではせいぜい 10個のコードしか読み取れなかった。現在のクルマの故障コード数の100個とか200個ということからすれば、いかに当時のクルマがプリミティブな仕掛け、で構成されていたかが分かる。しかも当時のクルマのコードの内容も実にシンプルだった。

例えばO2 センサーの不具合を知らせるのは、そのものズバリ「O2センサーの異常」でしかなかったが、現在は同じO2センサーの異常でも「断線」、 「ショート」、「性能劣化」、「ヒーター不良」というおおむね4つの故障コードがスタンバイしている(教えてくれる)。しかも、O2センサーが1台のクルマに2つとか、4つとか (V6エンジンの場合)付いているケースも珍しくないので、同じO2センサーひとつの故障コードも多岐に渡ることになる。

昔のダイアグノーシスの《幼稚さ》について、もう少し話を広げよう。それを知ることで今のOBDーⅡの偉大さが理解できるからだ。

なぜO2センサーにまつわるトラブルが多いのか?

例えば昔の車で、水温センサーが断線またはショートしたとする。この場合は、「水温センサーが異常」というコードで、把握できる。ところが、断線なのだが時々つながる、というケースが時としてある。「レアショート」と呼ばれるトラブルだ。この場合、昔のダイアグノーシスでは、この微妙なトラブルを把握できなかったが、イマドキのOBD-Ⅱでは「ECUに故障記録を保存」している。

つまり「故障履歴」を記憶しているので、これを呼び出すことができる。レアショートした時点でのエンジン回転数、冷却水の温度、ス ロットル開度、車速、燃圧、吸気 温度、吸気管の圧力などが呼び出せる。しかもディーラーのメカニックが使うスキャンツール(50万円 前後のスキャンツールでもできる) はこうしたデータを呼び出せ、再現テストができるのである。ここから先の作業は昔も今も変わらな いが、とにかくこの機能(フリーズフレームデータ)を駆使すればトラブル解決への道がかなり進む訳だ。

ちなみに、O2センサーは、一昔前のO2センサーではなく、A/Fセンサーを含んでいる。これはごく簡単にいえばリニアなO2センサーともいえる。(空燃比のフィードバックがすばやい)。そのA/Fセンサーの異常が近頃の車にやけに多い理由は、A/Fセンサー自体がクルマに導入されてからさほど経っていないからだと推測できる。

同じセンサーの水温センサーやバキュームセンサーはかれこれ40数年の歴史があり、品質が安定しているのだが、A/Fセンサーは、あと数年はこうしたトラブルの1番手にノミネートされ続けるだろうと思われる。Aさんに言わせると、エンジンのアイコンが点灯した場合、調べてみると、 約半数がO2センサーの不具合だという。その原因は、オーバーヒート、 排気からの水分で不具合を起こしたケースなどが考えられる。

市販スキャンツールの限界はどこにある

ところが、さっき話したとおり、市販のスキャンツールには限界があるという話題。これについては、ふたたびAさんに登場して整理してもらおう。

「イモビライザーの書き換えが汎用タイプのスキャンツールではできない。これは、さきほど数は多くないですが、ディーラーが持っているスキャンツールだけができる技術なのです。それとECUのソフトの書き換えができない。例えば、走行5万キロを超えたAT仕様のクルマで下り坂でのシフトショックが大きいとして入庫したとします。ということはATF(ATフルード)もそれなりに汚れているはず。

このケースはお客様からのさほどレアではないコンプレイン(不満)なんです。しかもこれは新車の各部品やシステムの開発者が想定していない不具合とも言えます。

そこで、ソフトの書き換えでシフトショックをずらしてやることができる。これに限らず、新車時では想定し得ない不具合がたまに起き るものなんです。この場合、ディーラーではECUのソフトを一部書き換えることで、対応することがあるのです。

市販のスキャンツールではこうした芸当ができません」 同じようなトラブルで、コンピューターの誤判断で、インパネに警告ランプが点灯するケースもあるという。「誤ダイアグ」と呼んでいるもので、この場合もECUのソフトを書き換えることで、修復できることもあるという。

「もうひとつ、市販のスキャンツールではできなくて、ディーラーのスキャンツールではできる作業として、先の説明と重なりますが、例えば”空燃比リーン異常”の故障コードが出たとします。故障コードのみを表示するスキャンツールでは、どこから手を着けていいかカイモク分からない。

そこで疑わしきインジェクターをはじめ、周辺部品のエアフロメーター、スパークプラグなどの点火系を次々に交換する羽目になり、大変な作業になる。部品代も莫大になる恐れがある。これがディーラーのメカニックなら、このシステムにさらにフォーカスして追求できるし、システム全体の仕組みを理解しており、しかも以前に同じようなトラブルを体験しているので、比較的スムーズに解決できるのです」

アクティブテストができるかどうか?・・・

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