価格転嫁率54.2%に微増、自動車・部品は58%超も労務費に壁|中小企業庁 2026年3月調査

中小企業庁は6月26日、2026年3月の「価格交渉促進月間」フォローアップ調査の結果を公表した。全国30万社を対象とした大規模調査で、自動車・自動車部品の転嫁率は全業種平均を上回ったものの、労務費転嫁の停滞や「業界団体が示す比率の一方的な採用」といった、整備・車体補修の現場にも通じる課題が改めて浮かび上がった。8月上中旬には発注者ごとの評価を載せた「発注者リスト」の公表も控える。

調査結果のポイント

  • 全体の価格転嫁率は54.2%(前回比約1ポイント増)
  • コスト要素別は原材料費55.7%、労務費50.0%、エネルギーコスト48.9%
  • 「価格交渉が行われた」割合は90.7%に微増
  • 自動車・自動車部品は受注側で58.2%(ほぼ横ばい)、発注側で61.2%(改善)
  • 官公需の転嫁率は48.4%と約4ポイント低下

30万社調査の概要

価格交渉促進月間は、価格改定が集中する4月・10月の前月にあたる3月・9月を促進期間と位置づけ、価格交渉・価格転嫁を後押しする取り組みである。2021年9月に始まり、2026年3月で10回目を数えた。

今回の調査は30万社に調査票を配布し、6万9625社が回答した(回答から抽出される発注側企業は延べ9万1233社)。回収率は23.2%。あわせて取引Gメンによるヒアリングも実施しており、必要に応じて業所管大臣名での行政指導につなげる枠組みとなっている。

全体の転嫁率は54.2%、労務費に壁

コスト全体の価格転嫁率は54.2%で、前回(2025年9月)の53.5%から約1ポイント上昇した。改善傾向にはあるものの、半分強にとどまり「道半ば」という評価は変わらない。

コスト要素別では、原材料費が55.7%と最も高く、労務費は50.0%、エネルギーコストは48.9%と続いた。原材料費は上昇したが、労務費とエネルギー費は前回からほぼ横ばい。とりわけ労務費は原材料費より約5ポイント低い水準にとどまり、人件費の上昇分を価格に反映しきれていない構図が続く。人手不足下で賃上げ原資の確保が課題となる整備・車体業界にとって、この「労務費転嫁の壁」は他人事ではない。

コスト要素別の価格転嫁率(全体)

コスト要素転嫁率前回
原材料費55.7%55.0%
労務費50.0%50.0%
エネルギーコスト48.9%48.9%

自動車・自動車部品の位置づけ

業種別ランキングでは、受注側(自社のコスト上昇を取引先に転嫁できた度合い)として集計した自動車・自動車部品の転嫁率は58.2%で、32業種中7位。全体平均の54.2%を上回るものの、前回の58.1%からほぼ横ばいで、上昇の足踏みがみられる。要素別では原材料費66.5%、エネルギー費57.3%、労務費57.1%となった。

一方、発注側(取引先からの転嫁要請にどれだけ応じたか)として集計すると、自動車・自動車部品は61.2%で6位。前回の58.9%から改善し、買い手としては比較的協力的な業種という結果になった。価格交渉の点数化ランキングでは7.42点で12位と中位に位置する。

編集部注:本調査の業種区分「自動車・自動車部品」は部品製造・流通が中心とみられ、自動車整備業は独立した集計区分として設けられていない。整備工場は「その他・サービス」、部品商は「卸売」などに分散して計上される可能性が高い。上記の数値はあくまで「自動車・自動車部品」区分のものであり、整備業そのものの転嫁状況を示すものではない点に留意されたい。

「業界団体の比率を一方的に採用」── 指数・工数論議に通じる声

調査では、価格交渉が行われたものの全額転嫁に至らなかった企業から、具体的な声が多数寄せられた。その中に、OEMや業界団体が示す価格上昇率・労務費率などの比率を一方的に採用され、実際の上昇分の一部しか転嫁できなかった、個別交渉を求めても応じてもらえなかった、という趣旨の指摘があった。

これは、事故車修理における標準作業時間(自研指数とCAB工数)や、損害保険料率算出機構の参考純率といった「業界共通の基準値」をめぐる、整備・車体補修分野の積年の論点と構図が重なる。共通指標は取引の効率化に資する一方で、それが一方的な単価の天井として機能すれば、現場のコスト上昇を吸収しきれないという問題意識である。今回の調査結果は、こうした課題が自動車関連にとどまらず、製造業全般に共通することを示している。

なお、価格交渉が行われたが全額転嫁に至らなかった企業のうち、「発注側から納得できる説明があった」と回答したのは約6割。裏を返せば、約4割は説明が不十分か、説明そのものがなかったと受け止めている。

取引適正化は前進、支払条件は改善傾向

取引代金の支払条件は改善が進んだ。支払手段を「現金のみ」とする回答は87.5%まで増加(前回82.2%)し、手形利用は3%まで減少した。支払手数料を「受注側が負担している」とする割合も2割弱(18.9%)まで下がった(前回29.9%)。

背景には、2026年1月から適用が始まった中小受託取引適正化法(取適法)の影響がある。協議に応じない一方的な価格決定の禁止などが盛り込まれており、回答企業からは、支払期日の短縮や振込手数料の発注側負担化が進んだとする声も寄せられた。ただし、支払期日が60日を超過する企業が全体の6.6%残存しており、課題は残る。

官公需は悪化、公用車・官需取引に影響も

官公需(国・地方公共団体等による物品購入・役務・工事の発注)における転嫁率は48.4%で、前回の52.1%から約4ポイント低下した。組織区分別では国(府省庁)が57.8%と最も高く、都道府県50.6%、市区町村45.7%と、規模の小さな機関ほど低い傾向が顕著だった。公用車の整備や官公庁向けの役務契約を抱える事業者にとっては、注視すべき動向といえる。

8月に「発注者リスト」公表予定

中小企業庁は今後のスケジュールとして、2026年8月上中旬に、発注者ごとの価格交渉・価格転嫁・支払条件の評価を記載した「発注者リスト」を公表する予定としている。取引適正化の取り組みは、個社レベルの評価を可視化する段階へと進みつつある。整備・部品流通の現場でも、原材料・労務・エネルギーの上昇分を取引価格に適正に反映する交渉力が、引き続き問われることになる。

(出典:経済産業省・中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果」2026年6月26日公表)

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