第181回 自リ法4回目の5年ごとの見直し(案)公表(令和3年報告書から5年。国際経済の変動に対応できるシステムへ進化できるのか?)

熊本大学人文社会科学研究部(法学系)・環境安全センター長

外川 健一

1.はじめに

2026年6月9日、経産省・環境省は合同会議をYouTubeでも同時配信しながら開催し、自動車リサイクル法の4回目の見直しに関する報告書を公にした(以下令和8年報告書(案))とする)。

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/resource_circulation/jidosha_wg/pdf/066_03_00.pdf

参照。

この報告書(案)が、これまでの3回の見直しの場合と同様に取り扱われるとしたら、今後パブリックコメントに付され、最終的な報告書となり、今後5年間の自動車リサイクル政策のターゲットが正式に決定することとなる。

これまで経産省・環境省合同会議では、今回の見直しにあたって以下の10の論点に従って議論が行われた。

①使用済自動車にかかる動向把握 (オートオークション等における解体業者の取引動向含む)/ ②不適正な解体業者等の実態把握と対応の検討/ ③ リサイクル料金の適切な運用と検証 /④ 不法投棄・不適正保管車両及び被災車両の適正処理 /⑤ 情報システムの効率的な活用/ ⑥ 自動車リサイクルの高度化/ ⑦ 再生プラスチックの流通量拡大/ ⑧ リユース可能な部品の流通促進/ ⑨ 使用済自動車由来の車載用蓄電池の再資源化の推進 /⑩ CN・3Rの高度化

 

令和8年報告書(案)は以下の目次で構成されている。カッコ内の数字は前述したこれまでの論点のどの部分にあたるか筆者が整理したものである。

 

【はじめに】

第1章 自動車リサイクル制度の現状

1. 自動車リサイクルを取り巻く環境 (①、④)

2. 自動車リサイクル制度の状況

(1) 登録・許可・行政処分の状況  (①、②)

(2) 使用済自動車のリサイクルの状況 (①、②、⑥)

(3) 再資源化預託金等の預託状況 (③)

(4) 再資源化等の収支の状況と特預金の発生状況  (③)

3. 令和3年報告書を踏まえた主な取組の状況

(1) 自動車リサイクル制度の安定化・効率化 (①、②、③、④、⑤)

(2) 3Rの推進・質の向上 (⑥、⑦、⑧、⑨)

(3) 変化への対応と発展的要素 (⑨、⑩)

第2章 自動車リサイクル制度に対する評価と検討に係る基本的方向性

1. 自動車リサイクル制度の評価 (①、②、③、④、⑤、⑥、⑨)

2. 関連する施策の動向 (⑦、⑩)

3. 基本的方向性

(1) 自動車リサイクル制度の安定化・効率化 (①、②、③、④、⑤、⑦、⑨、⑩)

(2) 国内資源循環の推進(再生材等の流通促進) (⑦、⑧)

(3) その他、発展的・横断的要素への対応 (⑤、⑥、⑩)

第3章 自動車リサイクル制度の課題と具体的な方策

1. 自動車リサイクル制度の安定化・効率化

(1) 中古車・廃車ガラ輸出の増加等における使用済自動車減少への対応 (①、②、③、④、⑤)

(2) 不適正な解体業者等への対応(②、④、⑤)

(3) 不法投棄・不適正保管車両及び被災車両の適正処理 (①、④、⑤)

(4) 電動車の使用済車載用蓄電池の適正な回収・再資源化の推進 (⑨、⑩)

2. 国内資源循環の推進(再生材等の流通促進)

(1) リユース可能な部品の流通促進 (⑧)

(2) 再生材(プラスチック等)の流通量拡大  (⑥、⑦、⑨、⑩)

(3) ASRリサイクルの高度化 (⑥、⑦、⑨、⑩)

3. その他、発展的・横断的要素への対応

(1) 情報システムの効率的な活用 (⑤、⑦、⑨)

(2) CN・3Rの高度化 (⑥、⑨、⑩)

【おわりに】

 

一つ残念なことは、既に2026年も6月に入り、自動車リサイクル促進センターによる情報公開も2026年4月までのデータが出ているにもかかわらず、報告書での現状報告は、2025年度分の考察はなく、2024年度時点までの考察に留まっている点である。そこで本稿で取り扱う部分に絞って紹介すれば、2025年度には、引取り台数:2,477,487台、認定全部利用:128,257台(5.18%)、非認定全部利用(輸出)台数:218,434台(9.47%)と、認定全部利用は対前年比より低く、非認定全部利用(輸出)は対前年比が高くなった。結果としてこの処理ルートについては、使用済自動車の10台に1台弱はこの工程に回るくらいの存在に拡大したこと。これは令和8年報告書(案)で提示した「国内資源循環」とは逆のベクトルであり、法施行時の想定外ルートの急伸を再認識させる。

令和8年度報告書(案)では、今後5年間で経産省・環境省が何らかの行動を起こそうとしている部分を中心に書かれている。とくに本報告書(案)で初めて記載された国内資源循環は、2020年代に入って急速に問題視された経済安全保障問題にも対応している。しかし。このベクトルで、日本の自動車リサイクルが成熟・発展するのだろうか。

それでは以下、解体業者での外国人事業者の増加という現状とそれに対する対応、想定外の非認定全部利用(輸出)、資源回収インセンティブ制度のテイクオフを中心に考察する。

 

2.解体業界の不適正処理への対応:国際化に対する対応になっているか?

外国人解体業者の増加に関する状況への対応は、長きにわたって日本自動車リサイクル機構が熱く要望していた論点である。しかし、前回の見直しの令和3年報告書では触れられなかった。そこで、同機構はJARSのシステムの使用の許諾を得て、自主調査を行い具体的な外国人業者数を解明した。そこで、経産省もさらに深い調査を行った。その検討は前回の第179回でも触れたとおりである。

日本語でコミュニケ―ションができないが、市場活動はでき、もっぱら仕入以外のほぼ海外マーケットに依存している多くの外国人業者は、円安と自分が活躍できる大きなマーケットを武器に、日本のELV市場を席巻している。彼らのうち少なくないプレーヤーは、ビジネスのタネの自動車のほとんどをオートオークションで仕入れ、場合によっては何のリサイクルもしないで、リサイクル料金を受け取って、海外マーケットへ(中古車として)輸出する。このようなビジネスが目立ってきているので、改めて中古車と使用済自動車を選別する基準の見直しが求められてきた。つまり既存のガイドラインが機能していないことが問題視されたのである。現状は、自動車リサイクルシステムの電子マニフェストをスタートさせた自動車が使用済車で、それ以外は中古車となっているのだ。

令和8年報告書(案)では、この問題に初めて触れている。具体的な記載は以下のとおりである。

 

まず、解体業者における使用済自動車の調達実態に着目すると、調達台数総数は減少している一方、オートオークション経由での調達割合は増加傾向がみられる。

経済産業省による解体業者向けのオートオークションからの調達に関するアンケート調査(令和7年度実施) では、直近10年で、解体業者の85%以上が使用済自動車の調達台数は減少し、50%以上がオートオークション経由での調達割合が増加したと回答した。また、解体業者にとってオートオークションは重要な調達手段の一つとなっているが、使用済自動車の調達目的での平均落札率は約2割と低く、調達手段として不安定であることがうかがえる。このような実態を踏まえ、オートオークション会場においては、不適正事案の是正・改善や使用済自動車相当と考えられる車両の取扱いの適正化といった入口策(出品管理)と、オートオークション会場で複数回流札した車両について解体業者に斡旋する仕組みといった出口策(流札対応等)の両面から、使用済自動車を国内に維持するための方策を検討する必要がある。その際、オートオークションは中古車を取り扱う市場であることを踏まえつつも、使用済自動車相当と考えられる車両が流通する場合には、自動車リサイクル法の考え方に沿った適正な対応が求められることから、関係者間での認識共有や、オートオークション事業者による自主的な取組を通じて、運営方法の適正化が図られることが望ましい。

また、更なる課題として、中古車と使用済自動車の取扱いの明確化に係る対応も求められる。中古車と使用済自動車の一般的な判断基準として「使用済自動車 判別ガイドラインに関する報告書」(平成 23 年2月)(「使用済自動車判別ガイドライン報告書」という。)が作成されており、オートオークション会場による出品管理や、地方自治体による不法投棄・不適正保管への対応等において参照されている。また、輸出時における中古車と使用済自動車の判断については、「中古自動車の輸出時における一時的な部品の取り外し範囲についてのお知らせ」(平成26年1月)において具体的な基準が示されている。しかし、現行の使用済自動車判別ガイドライン等の内容では判断が難しい場合があり、地方自治体や地方環境事務所等へのヒアリングでは、使用済自動車と疑われる自動車のオートオークションへの出品や、無許可の解体業者による解体と疑われる部品取りについて、明確に違反を認定することが困難である旨の意見があった。加えて、中古車輸出現場において、破損等が大きいが中古車として輸出申告された車両の判断については上述した使用済自動車判別ガイドライン等だけでは判断が難しく、各現場の判断に委ねられている状況も示された。他方、国際的には、例えば、欧州において議論されているELV規則案では、技術的・経済的に修理不可能な車両を廃車とみなす基準の整備や具体的な判断基準の提示が行われている。さらに、こうした基準を踏まえ、解体証明書により当該車両が使用済自動車として適正に処理されたことを記録・証明する仕組みを整備する規定等も検討されており、輸出や流通の各段階における不適正な取扱いの防止に資するよう、トレーサビリティ及び行政執行の強化が図られている。

こうした背景も踏まえ、使用済自動車の適正な流通の確保の観点から、不適正な解体や輸出が行われることを防止するために、使用済自動車判別ガイドライン等の点検・見直しと運用徹底が求められる。

令和8年報告書(案)、pp. 46-47.

 

興味深いのは、今回の見直しではこれまでの解体現場での矛盾と、これまでの政策の一部は現状に合わないことを経産省・環境省が認め、これにメスを入れようとしている点である。具体的には、実際には現場では使えない2011年「使用済自動車ガイドライン」の見直しである。しかし、まだ海のものとも山のものともわからないEUでの議論や動向に期待しているのも面白い。

自動車リサイクルイニシアティブ(1997年)以来、95%リサイクルや拡大生産者制度等EUの動向に、日本の政策は左右されている。しかし、どれ1つとて、EUのシステムとは異なっているのだ。95%リサイクルは、日本では早稲田大学の永田教授(法施行当時)等が提案した独自の計算式によってお墨付きを受けた再資源化施設で、ASRの再資源化が70%以上行われていることで95&リサイクルしたものとする(ほかの部材は100%リサイクルされたものとする)。拡大生産者責任制度はEUではほぼ実施されず、メーカーが談合して法令違反をしていたが、日本では、フロン類、エアバッグ類、ASRに関して粛々とメーカーはその再資源化を実施している(ただし、そのコストはユーザー負担であるが。)このように、根本的なところで、日本では意外にEUとは異なった方法で自動車リサイクルシステムは動いている。そういった背景もあるのに、なぜ中古車と使用済自動車の違いの再定義に、いまさらEUの動向を意識しながら議論するのか?かつて経産省は、日本のシステムを世界に誇る「ジャパンシステム」であると豪語していた。しかしジャパンシステムは、もう国際化に対応できないというのか?それはさておき、筆者が指摘したいのは、日本で自動車リサイクルビジネスを展開しているのは、経産省等が調査したように、パキスタン人を筆頭とするムスリムや中華系の業者である。EUとは全く別の商慣行で生きているプレーヤーである。それなのにEUの動向を意識するのは、現時点での解体現場でのグローバル化の進捗状況を踏まえ、彼らの商慣行への考察をしない、現段階の対応に違和感を覚えてしまう。

EUの動向はさておき、令和8年報告書では今後の政策のベクトルを以下のようにまとめている。

 

➢オートオークションの入口策(出品管理)については、使用済自動車判別ガイドライン等の基準と照らし合わせ、出品の基準となるような例示作りができないか検討を行うこととし、また出口策(流札対応等)については、既存の取引慣例を尊重しつつ、解体業者への斡旋が必要なケース等においては、再資源化預託金等の負担方法を含め、取引を円滑化するための方策について引き続き関係者と議論しながら検討を行うべきである。

➢ 使用済自動車判別ガイドライン、中古車輸出にかかる通知等については、流通実態に加え、諸外国における制度動向も踏まえた点検・見直しの検討を関係者で令和8年度から開始し、運用徹底を進めるべきである。

令和8年報告書(案)、p. 47.

 

どちらかというと、不適正な解体の抑制に主眼が置かれ、ルールを守らないプレーヤーを市場から駆逐すること、廃棄物予備軍である中古車の輸出を抑制し、正規の法令順守する解体業者に主眼が置かれているようにも見える。しかし、外国人業者の日本への進出は、

日本発の中古車や中古部品の需要が確実にあり、そのルートを日本人業者はよくわかっていないということに繋がる。もう少し突っ込んだ分析を加えつつ、今後は海外市場の開拓に繋げるような制度設計の展開を期待したいのである。

 

3.非認定全部利用(輸出)=廃車ガラ輸出について

筆者がこだわってきた非認定全部利用(輸出)は、IRユニバースのネットメディア miru.com や本連載の第135回、第154回、第177回でも指摘した論点であるが、ここでようやく合同会議報告書でも本格的に取り上げられた。ここでは詳細は省くが、興味のある方は本連載の第177回をご一読いただきたい。

ところで、非認定全部利用(輸出)に関して令和8年報告書(案)で問題視されていたのは、それが資源の国外輸出やその動きが何に起因しているのかという考察に基づくよりも、フロン類・エアバッグ類の不適正処理の懸念と、使用済自動車への不適正な装備の変更といった問題が懸念事項だから、非認定全部利用(輸出)は問題だ、という論調が気になっている。さらには、非認定全部利用(輸出)=廃車ガラの輸出としている点も気になる。この形態はトラックキャブの輸出など、必ずしも鉄源等の輸出ではなく、現地で自動車として再加工もしくは自動車部品として輸出されていることもあるはずだからだ。その点はJARSで把握できているのだろうが、その点は分析がない。ひょっとしたらこの報告書が書いてあるようにほぼすべてが廃車ガラなのかもしれない。すると輸出されているトラックのキャブはどのように把握されているのか、非常に関心が出てくる。以下は、令和8年報告書(案)からの抜粋である。

 

近年、廃車ガラ輸出(非認定全部利用)が急増しており、令和6年度は初めて20万台を超えた。一部の実態として、輸出向けの廃車ガラの中には、フロン類やエアバッグ類、事前回収物品(廃油、廃液及び室内照明用の蛍光灯等)が未回収であるなど法令違反が疑われるものが確認されており、例えば、JARSに登録されたデータからは、非認定全部利用された廃車ガラの装備変更率が通常の約2倍以上と高い傾向が見られた。これは、エアバッグ類等の部品取りや中古車としての転用を目的として、エアバッグ類等を回収せずに虚偽の報告が行われている可能性を示唆している。一方で、フロン類及びエアバッグ類の装備変更率が高い上位30者を調査したところ、違反事例はほとんど確認されなかった。これは事業者が短期間のうちに当該自動車を輸出業者等に引き渡す検査時に既に当該自動車が保管されていなかったという可能性も考えられる。

このような実態をより正確に把握するための対応の一つとして、まず、令和8年1月に大改造されたJARSの新機能の活用を推進する必要がある。具体的には、不適正な処理が疑われる装備変更率の高い事業者や遅延報告の多い事業者など、特に注意・指導が必要と思われる事業者の上位10者を画面表示できるようになったため、地方自治体等においては、これらを活用した効率的な立入検査の実施が期待される。

また、装備変更率の高い事業者を所管する地方自治体へのアンケート結果では、エアバッグ類等の回収の状況を確認していないという回答が多く見られたため、特に装備変更率が高い事業者に対しては、立入検査時にエアバッグ類等の回収状況について重点的に確認するよう、地方自治体に対し周知徹底する必要があると考えられる。現状、地方自治体による立入検査の際における、これら状況の確認については、JARSへの報告内容に依拠しており、証憑の保存や提示は必ずしも行われていない。したがって、装備変更やフロン類・エアバッグ類の回収を行った事実を、地方自治体等から非認定全部利用を行う事業者等へ確認する手段によらず、非認定全部利用者に対し、装備変更や事前回収物品の回収に関する証憑の提示を必要に応じ義務的に求めるなど追加的な対策を検討する必要がある。同様に、廃車ガラ輸出時の証明書類の提出も任意であるが、輸出申告における現場写真や、廃車ガラ輸出時の証明書類として「電子マニフェストの画面印刷物」等の提出を求めていくことの検討も必要である。

また、不適正スクラップヤード対策等を目的とした廃棄物処理法の改正に関する審議が進められている。有価物であっても、生活環境の保全上、廃棄物の場合と同等の適正な取り扱いを要すると認められる使用済みの金属・プラスチック物品を対象として、その保管や再生の事業を行おうとする者は都道府県知事5 の許可を受けることなどを義務付ける方針である。これに伴い、自動車リサイクル法の許可業者である解体業者及び破砕業者においても、使用済自動車由来の使用済みの金属・プラスチック物品の保管・再生事業を行う場合は、その許可に関するみなし規定の措置等を講じる方針である。

『令和8年報告書(案)』pp. 48-49.

 

そこで、以下の方策が重要だとしている。

➢ 廃車ガラの不適正輸出抑制に向け、システム大改造の機能を活用し立入検査の実施等に資する情報を整理・周知し実効性向上を図るとともに、不適正スクラップヤードや廃車基準等に関する国内外の議論を注視した上で、装備変更をした事実や事前回収物品を回収した事実を確認できる証憑の保存や、廃車ガラ輸出時の証明書類の提示の徹底を求める等の追加的な対策について、令和8年度から検討を開始するべきである。

『令和8年報告書(案)』p. 49.

 

不適正ヤードについては、2026年6月12日に成立し、6 月 19 日に公布された廃棄物処理法がある。同法では、有価で取引される雑品リサイクル業者も許可制度の対象とした。法改正の具体的な内容は以下のウェブサイトで記載されている。今後は、有価の雑品スクラップの取引業者の場合でも、火災等の対策を講ずるために、廃棄物処理法と同様の規制対象となる。

https://www.env.go.jp/content/000392043.pdf

 

以上で興味深かったのは、自動車リサイクルシステムで非認定全部利用・輸出を行っている上位10社が画面上に明確に分かるシステムができたという点である。しかし、両省が認めたとおりに、上位10社による非合法な輸出は行われていないようだ。どうも中小規模の業者もしくは破砕処理の許可も受けた業者がこの形態の輸出を行っているとも考えられる。つまり非認定全部利用(輸出)の少なくない部分は非合法処理ではなく、高コストの国内処理を嫌い、需要が確実にある外国での処理・再資源化を合理的に選択した結果という文脈でも捉えられるケースもあるだろう。そのようなより深い調査・分析が重要である。

自動車リサイクルシステムは当該車両がハイブリッド車由来か、電気自動車由来かなどのデータを保持している。そこで、非認定全部利用(輸出)に回っている車種が、どのような車種なのかも改めて検討してみるのも大切であると考える。資源回収インセンティブの実施で、再生樹脂だけ(将来的にはガラスも)が国内循環すればいいというわけではないだろう。鉄や非鉄金属、レアメタルを含有するこのような非認定全部利用車両(この場合は輸出ではなく、国内での再資源化となる。)を市場システムだけで輸出するのではなく、さらなる再資源化を国内でも行っていくことが合同会議の新しい提案ならば、解体自動車からの徹底した部品・資源の再活用と、ダストの極小化という非認定全部利用(国内)というルートの開拓が重要になってくる。自動車リサイクルシステムはシュレッダー処理を前提とし、それ以外の処理方法にはASRリサイクル料金はメーカー等を通じて支払われないこととなった。このような状態ではシュレッダー処理以外のインセンティブはなかなか作用しない。例えば精緻な解体ができて資源リサイクルを徹底でき、シュレッダーダストを全く出さないロボットが開発されても、そのような工程ではリサイクル料金は支払われない。つまりイノベーションがシュレッダー処理、ASR処理(および全部利用のための電炉の受け入れ整備くらい)しか、このシステムでの金銭的なインセンティブが機能しない、そしてリサイクルの高度化とは、プラスチックリサイクルやCN、電動化への対応以外はほぼASRの低コスト処理に集約されているのが実情である。

また預託金の支払いを受けての全部利用に関しても、初めて報告書に記載された。この点は日刊市況通信社の元大阪支社編集長冨高幸雄氏と筆者が、法施行当初から関心をもって分析してきた点であるが、本報告書で初めて記載されるようになった。しかし、今回の合同会議報告書で記載されるようになったのはCNの流れが背景にあってのことで、2005年法施行当初はほとんど念頭に置かれていなかった分析視角である。鉄鋼業界がCNに対応するため、電炉の建設に踏み込み、安定的な鉄スクラップ素材の供給が課題としてあることが、31条認定全部利用にもスポットライトを当てるようになった理由と考える。

令和8年報告書(案)はこの2つ以外も、とくに資源回収インセンティブやLIBの取り扱い、新システムの活用などをはじめ興味深い点が多い。とくに、資源回収インセンティブ制度を活用した、国内資源循環を標榜した点は特徴的である。20年ほど前に経産省や環境省は国際資源循環を提唱したことを思い起こせば、日本の相対的な国際的位置の推移と、資源循環に関する地理的な哲学の問題意識の必要性を痛感する。しかも、素材価格として分析されているのは鉄スクラップが主で、自動車を構成する非鉄スクラップや廃触媒、レアメタルの流通は収集、国内資源循環への具体的な取り組みへの示唆は、本報告書案では読みとれなかった。

 

4.北自協30周年記念総会に招かれる

2026年5月22日、札幌市豊平区のプレミアホテル-TSUBAKI-札幌にて、第30期北海道自動車処理組合(理事長 石上剛 石上車両社長、以下 北自協)の2026年度 第30期定期総会が開催され、筆者も来賓として列席させていただいた。筆者にとって興味深かったのは、日本自動車リサイクル機構専務理事の阿部知和氏による講演「JAERAの活動及び自動車リサイクル法合同審議会での取り組み」であった。

今回JAERAの新たな共同出荷スキームとして提案されたのが、ワイヤハーネスの共同出荷である。量の確保をJAERAで確保し、豊通マテリアルの回収網を活用した全国回収網を広げ、JX金属の銅製錬プロセスで被覆電線の後処理に関しる無害化、低コスト化を目指し、高品位の銅くずを水平リサイクルする(Car to Car のリサイクルを実現できる国内銅製錬会社と連携した)国内資源循環への取り組みが紹介された。

また、自動車部品メーカーの10年間自動車補修部品協供給という課題に対応することを自動車業界全体で取り組むために、JAERAが代表実施者となって、日本リサイクル部品協議会(リ協)と日本自動車部品工業会(部工会:自動車部品メーカーの業界団体)が共同実施主体として、「リサイクル部品活用に向けた動静脈連携の取組み(企画案)が紹介された。令和8年報告書(案)の基本的な考え方⑧リユース可能な部品の流通促進に対応した取り組みでもあり、経産省もこの動きを支援するという。つまり、国内での自動車の平均寿命が15年を超える昨今、自動車補修部品の10年から15年以上にわたる安定的かつ低コストでの供給のため、これまで以上に自動車リサイクル部品の供給拡大を進める取り組みを行う。なお、この取組みにはオブザーバーとして、自工会、日本自動車西武振興会連合会(日整連)、日本損害保険協会(損保協会)、全日本自動車部品卸商協同組合(全部協)の4団体が参加する。ここで注目したいのは、損保業界の動きである。2025年から2026年にかけて、大手自動車保険会社の保険料はそろって約6%~約8.5%の値上げが実施された。物価高、人件費の増加などが主因であるが、業界もアジャスターなど事故現場で損害保険料を見積もるような制度を廃止し、カメラの情報などで自動的に損害賠償を査定してしまう制度を導入しつつある。このような自動車保険料の値上げは、一般ユーザーが自賠責以上の保険に加入することを躊躇させ、安全・安心なクルマ社会からの後退の兆候になっている。そこで、自動車リサイクル部品を使用した自動車保険の低廉化が、現在求められている。

思い起こせば本連載も月刊『整備界』時代の自動車リサイクル法施行を前に、せいび広報社の元社長、入村健二郎氏と、自研センター・竹内啓介元社長(東京海上出身)がリサイクル部品普及のために、一橋大学で環境経済学を講じていた寺西俊一教授(当時)のゼミ生が国内大手自動車解体工場を見学し、その実態を報じたことに端を発する。竹内氏は、四半世紀以上前からリサイクル部品業界の新たな市場開拓のため、損保業界との連携を進めようとしていた。本稿執筆時の2026年6月現在、NGPグループがあいおいニッセイ同和損保との連携を行っているものの、さらなる自動車損保業界との連携が望まれる。

現在での自動車リサイクルシステムでは、手間をかけずにそのまま輸出し、リサイクル料金を得ることができうる中古車輸出が有利な状態にある。国内資源循環を勧めつつ、国内での自動車解体がペイするようにするためには、資源回収インセンティブ制度を上手に活用したプラスチック等素材の再資源化、そして国内でのリサイクル部品の販売強化が必要だという問題意識が、この取組みの背景にある。

具体的な内容は①リサイクル部品の流通動向の把握、②関係団体からの意見聴取による要望と課題の抽出、③部品メーカーとの連携に関して、リサイクル部品のあり方を検討、④リサイクル部品のターゲットを明確にし、動静脈連携の体制の検討の4つである。①、②はリ協を中心にこれまでの調査の蓄積もある。しかし、③、④はこれまでにない新しい動きである。日本の部販・共販による純正部品供給システムに、果たして一石を投じるシステムになるのか、自動車ユーザー目線での自動車補修部品供給(選択の幅の拡大)が、現在の日本のクルマ社会には求められている。

 

5.資源回収インセンティブの離陸

令和8年報告書(案)の基本的な考え方⑦ 再生プラスチックの流通量拡大・⑩ CN・3Rの高度化への具体的な対応例として、資源回収インセンティブ制度がある。実はこの制度は2026年4月からスタートしているが、その離陸時の実情に関しては報告書(案)では記載がない。

JAERA資料によると、資源循環インセンティブに参加する回収部品引取候補者は全国では以下の通りであった。

北海道 株式会社マテック

東北 株式会社相田商会株式会社青南商事

関東 株式会社ツルオカ石塚化学産業株式会社リバー株式会社協和産業株式会社

中部 株式会社エコネコル株式会社プラニック株式会社篠原産業株式会社いその  /永興物産株式会社

中国 株式会社ヒラキン

九州 株式会社新生株式会社いその

沖縄 拓南商事株式会社

(筆者注。太字は原材料メーカー、イタリックは破砕業者)

さらに原材料メーカーとしては上記のゴチックで示した回収部品引取業者候補企業のほかに

中部 株式会社富士美化成

が挙がっている。

近畿、四国地方にこの拠点はなく、中部地方にプレーヤーが多い。

興味深かったのは、この資源回収インセンティブでは、マテックとそこに再生樹脂を供給している北自協で作ったコンソーシアムからの再生樹脂の受け入れが67トンで、全体の23%という高水準にあることだった。北海道は人口や一般的な経済力から見た指標は、全国の5%未満であることから、この23%という数字は突出している。この手法は、すでにマテックが北自協と連携して、2018年から3年間自動車リサイクル促進センターからの支援を受けて「自動車リサイクルの高度化等に資する 調査・研究・実証等に係る助成事業 【ASR20%削減を目指した樹脂,ガラスの広域回収・高度処理】」を行ってきたこともあり、見事な離陸を見せた。このような資源回収インセンティブ制度のコンソーシアムは、地域内での収集体制の整備が肝要であり、低コストで収集・集約し、本州の再生樹脂メーカー等(北海道には、著名な再生樹脂メーカーはゼロに等しいという認識)へ適切に輸送することが重要だからである。

このほか、2021年8月より、自動車メーカーのホンダは、三菱ケミカル㈱、北海道自動車処理協同組合と共同で、テールライト等に用いられるアクリル樹脂の水平リサイクルの実証実験を開始、テールライトレンズの水平リサイクル技術を確立している。その詳細は、ホンダのウェブサイトにはアクリル樹脂の水平リサイクル実証実験を2021年8月に開始~リソースサーキュレーションの実現に向けて~」というものがある。以下はそのウェブサイトからの抜粋である。

https://global.honda/jp/news/2021/c210524.html

 

Hondaは、三菱ケミカル株式会社(本社:東京都千代田区、社長:和賀 昌之、以下、三菱ケミカル)、北海道自動車処理協同組合(北海道札幌市、理事長:石上 剛、以下、北自協)と共同で、使用済み自動車(End-of-Life Vehicle、以下、ELV)から回収したPMMA(ポリメチルメタクリレート、以下、アクリル樹脂)水平リサイクルの実証実験を2021年8月に開始します。
これまでアクリル樹脂の処理にあたっては、分別回収やリサイクルの技術的難度の高さから、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用するにとどまっていました。今回取り組む水平リサイクルは、使用済みの製品から回収した材料を高度なリサイクル技術でバージン材と同等の性能・品質のリサイクル材に転換し、同一種類の製品を製造するものです。この水平リサイクルのシステムが確立すれば、一例としてはELVから回収したテールライトから再度テールライトを製造することが可能になります。加えて、アクリル樹脂製造・廃棄時のCO2排出量削減にも寄与します。

本実証実験では、北自協の各加盟事業者がELVから材料の回収・粉砕、三菱ケミカルが粉砕品を樹脂の原料となる分子状態に戻すモノマー化、並びにそのモノマーを繰り返し結合(重合)することによって生成する高分子化合物(樹脂)を製造するポリマー重合の検証を行います。なお、Hondaは、回収要件の設定、回収輸送、粉砕品の品質確認および全体管理を担います。
この実証を通じ、異物が混入しない回収手法、バージン材同等の品質達成技術、ELVから回収される樹脂粉砕品の高効率輸送スキームなどを確立させた上で事業性検証を行い、水平リサイクルスキームの構築を目指します。

Hondaは「環境負荷ゼロ」の循環型社会の実現のため、2050年にHondaの関わる全ての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指し、その実現のための柱の一つとして「リソースサーキュレーション」に取り組みます。今回の実証実験はその循環型社会実現にむけた第一歩と考えており、今後もリサイクルに関する研究を進め、サステナブルマテリアル100%での製品開発にチャレンジしていきます。

 

このように北自協は、自動車メーカーや地元破砕業者と連携して、国内資源循環へ向けた取組みを着実に推進している。

 

本稿で使用した拙稿は以下のとおりである。

外川健一(2005)「「自動車リサイクル法」31条をめぐる論点:新しいシステムは自動車メーカーに「リサイクルしやすい設計」を促すか?」『三田学会誌』98-2, pp.101-119.

外川健一(2019)「自働車リサイクル法 非認定全部利用(解体→輸出)に関して」miru.com

https://www.iru-miru.com/article/30875

外川健一(2022)「第135回 自動車リサイクル促進センターの「国内外における自動車リサイクル・資源循環に関連する基礎調査 報告書」を読む」『速報自動車リサイクル』

https://www.seibikai.co.jp/archives/recycle/10844

外川健一(2024)「第154回 2024年1月の産構審・中環審合同会議の報告書を読む」『速報自動車リサイクル』

https://www.seibikai.co.jp/archives/recycle/11322

外川健一(2026)「第177回 自動車リサイクル法 法施行後25年目の5回目の見直し 非認定全部利用(輸出)への初めての言及と10の論点について」『速報自動車リサイクル』

第177回 自動車リサイクル法 法施行後25年目の5回目の見直し 非認定全部利用(輸出)への初めての言及と10の論点について

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有償運送許可研修を毎月開催中

せいび広報社では毎月、事故車故障車等の排除業務に係る有償運送許可の研修会を実施しています。会員限定ではなく、全国どの地域からも、法人・個人事業主でもどなたでもご参加いただけます。研修の受講者は、会社の代表者・経営者に限らず、従業員の方でしたらどなたでも、会社を代表して受講していただくことが可能です。

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