関西ペイント株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:毛利訓士)は2026年6月30日、一般社団法人 日本塗装技術協会(JCOT)より「2025年度編集委員長賞」を受賞したと発表した。同社は自動車補修用塗料の大手メーカーとして整備業界にも広く知られているが、今回の受賞対象は自動車塗装そのものではなく、塗料で培った顔料分散技術をリチウムイオン電池材料へ応用した研究である。
編集委員長賞とは
編集委員長賞は、JCOTが発行する会誌「塗装工学」に掲載された記事の中から、塗装・塗料および関連技術の向上発展に大きく寄与すると認められたものに授与される賞である。今回受賞した技術資料のタイトルは「リチウムイオン電池用導電助剤ペーストへの分散技術の応用」。受賞者は以下の4名(いずれも関西ペイント所属)。
- グローバルR&D・調達本部 G-R&D・調達部 長野 千尋(筆頭著者)
- グローバルR&D・調達本部 G-R&D・調達部 塚本 敦史(共著者)
- 開発調達本部 分析部 岡本 好広(共著者)
- 開発調達本部 分析部 桑原 和弘(共著者)
塗料の分散技術を電池材料へ
リチウムイオン電池の電極には、電気を流すための微粒子「導電性カーボン」が加えられており、これを液体(ペースト)の中に均一に分散させることが電池の生産性と性能を大きく左右する。関西ペイントは、塗料製造で長年培ってきた顔料分散技術をこのペースト分散に応用し、顔料(粒子)表面・分散剤・溶剤の相互作用を制御することで最適な分散状態を実現したという。
解析には密度汎関数理論(DFT)による分子間相互作用の解析や、散逸粒子動力学法(DPD)による分散状態・粒子表面への吸着挙動のシミュレーションを用い、NMR(核磁気共鳴分光法)による実験検証を組み合わせることで、分散剤の設計や製造条件の指針を確立した。
電池性能向上への寄与
導電性カーボンが電極内に均一に分散することで導電ネットワーク(電気の通り道)が整い、内部抵抗の低減が期待される。これにより充放電のしやすさ・容量・寿命の向上に加え、製造ばらつきの低減による品質安定化にもつながるという。同社は、高性能かつ長寿命な電池の実現に資する技術として、EV車や再生可能エネルギー分野の蓄電用途など、電動化・脱炭素を支える基盤技術への貢献を見込んでいる。
整備・部品業界にとっての意味
今回の受賞内容自体は自動車整備の現場に直接関わるものではない。しかし、塗料メーカーが持つ微粒子分散の知見が電池材料分野にまで展開されている点は、自動車補修用塗料を扱う関西ペイントという企業の技術基盤の厚みを示すものといえる。同社は、現象を分子レベルで理解し材料を狙って設計する手法を確立したとしており、今後はこうした計算科学による開発手法が、補修用塗料を含む同社の他事業領域にも波及していく可能性がある。EVの普及が進む中、自動車関連産業の周辺で電池材料技術への取り組みが進んでいる動きとして、業界関係者は留意しておきたい。
※本件に関する問い合わせ先:関西ペイント株式会社 経営企画本部 戦略部 広報グループ(koho@als.kansai.co.jp)

