日本自動車車体整備協同組合連合会(日車協連)は2026年6月26日、小倉龍一会長名で、国土交通省(以下、国交省)が同月24日に公表した「事故車修理の標準作業時間 調査結果」と、同日に株式会社自研センターが示した見解に対する連合会としての公式見解を公表した。国交省が第三者的立場で調査に踏み切ったことを「画期的」と高く評価する一方、自研センターの説明姿勢については「事後的な内訳公開」だとして強い違和感を表明。実態に即した標準作業時間の確立とメカニックの処遇改善を、業界の持続性を左右する課題として正面から打ち出した。
見解のポイント
- 国交省が海外工数(CAB工数)との比較調査を主導したことを「画期的な取り組み」と評価
- 自研センターの「条件を揃えれば差異はなくなる」との説明は、指数のブラックボックス化を背景にした事後的な開示だと批判
- 独自の補修塗装工数の実測調査と比較しても、現場実態と指数設定には大きな乖離があると指摘
- 適正な標準作業時間を原資としたメカニックの処遇改善が、人材確保と「整備難民」抑制の鍵とする
国交省の調査を「画期的」と評価
日車協連はまず、今回の国交省調査を高く評価した。車体整備事業者から「自研指数の時間では終えられない作業がある」との声が寄せられたことを踏まえ、国交省が第三者的立場から海外の標準作業時間(CAB工数)との比較調査を実施したことについて、適正な修理費の確保を目指す車体整備業界にとって画期的な取り組みだとした。
CAB工数は、世界各国の自動車メーカーから標準作業時間の策定業務を請け負うドイツの会社「CAB」が策定した標準作業時間で、CAB社との調整はテュフ ラインランド ジャパン株式会社が担った。日車協連は、国交省が関係者による建設的な議論の場を設ける方針を示したことや、指数の時間内で作業が終わらない場合に損害保険会社との個別交渉を周知する方針を打ち出したことについても、一定の成果が出たものとして高く評価に値すると述べている。
自研センターの見解には「強い違和感」
一方で日車協連は、自研センターの見解に対しては明確に異論を示した。自研センターは見解の中で、CAB工数との差異について、「車両のリフトアップ」等の付帯作業がリヤフェンダ&バックパネル取替など別の関連作業の指数に含まれており、条件を揃えれば作業時間に差異はなくなると説明していた。
これに対し日車協連は、指数の詳細な内訳や根拠が長らく車体整備業界に対してブラックボックス化されてきたと指摘。国交省の調査によって指摘されて初めて「リフトアップ等の時間が別の指数に含まれている」という内訳が公開されたにもかかわらず、従前より当然に含まれていたかのような説明がなされたことに、強い違和感を覚えるとした。
その上で、自研センターが見解で「指数の改善や透明性向上に活かす」「指数の透明性・信頼性のさらなる向上に取り組む」と述べた点についても、今回のような事後的な内訳の公開という説明の姿勢を見る限り、今後の透明性や信頼性の向上に対して一抹の不安と疑問を抱かざるを得ないのが業界としての率直な思いだと述べている。
独自の実測調査でも「大きな乖離」
日車協連は、認識の隔たりを示す根拠として、連合会が令和7年度事業で独自に実施した「補修塗装作業工数の草案作成」における実測調査を挙げた。この結果と照らしても、現場の実態と自研センターの認識(指数設定)には依然として大きな乖離があると言わざるを得ないとしている。
実作業で必要となる細かな工程や、品質確保のための時間が指数に十分反映されていない現状が、事業者の収益を圧迫する要因になっていると主張。こうした認識の乖離を縮めるための積極的な情報開示と、車体整備業界との協議を通じた適正な作業時間の是正への寄与こそが、国内で広く利用されている「指数」のあるべき姿だと訴えた。
人材確保と「整備難民」抑制 ― 処遇改善の原資に
日車協連は、標準作業時間の問題を業界の人材確保と直結する課題として位置付けた。自動車車体整備業界は全業種平均を大きく上回る有効求人倍率にあり、メカニックの年間給与は全業種平均を100万円以上下回る約400万円で推移するなど、深刻な人材確保・育成の課題に直面しているとした。
このままでは業界を支える人材が枯渇し、国民の安全・安心なカーライフを守れなくなる「整備難民」を発生させかねないと警鐘を鳴らした上で、これを抑制し持続可能な業界を構築するには、時代や実態に即した適正な標準作業時間を確立し、それを原資としたメカニックの処遇改善(賃上げや労働環境の整備)へと進むことが確実に必要だと強調している。
業界の第一団体として実態調査を継続
今後の方向性として日車協連は、業界の第一団体として引き続き自ら実態に基づく作業時間の調査・検証を進め、国交省の支援の下、自研センターや損害保険会社との建設的な対話・協議を実現し、事故車修理における適切な作業時間の是正に尽力するとした。
全国の車体整備事業者が適正な対価を得て、若年技術者が夢と誇りを持って働ける「国内の交通インフラを支える魅力ある業界」へと変革を遂げるため、全力で取り組む覚悟だとし、車体整備業界の未来は必ず明るくなると確信していると結んでいる。
※国交省の調査結果に対する自研センターの見解の詳細は、別記事「自研センター、国交省「標準作業時間 調査結果」に見解」を参照。

