自研センターが指数の信頼性・透明性向上策を公表|工賃算定の根拠

自動車の事故車修理で工賃を算定する際の物差しとして広く使われている「指数(しすう)」。これを作成・提供する株式会社自研センター(JKC)が2026年6月11日、「指数の信頼性・透明性向上に向けた取組み」を自社サイトで公表した。損害保険会社との修理単価交渉が業界の大きな関心事となるなか、工賃計算の土台となる“作業時間”そのものにも、より丁寧な説明が求められていた。発表の背景と中身を、整備工場の視点で整理する。

そもそも「指数」と自研センターとは

自研センターは、1976年に日本で初めて損傷自動車修理の「標準作業時間表」を公表した、指数づくりの専門機関だ。主要な国産車・輸入車の構造調査や修理作業の実態調査を行い、脱着・取替、板金、塗装といった各作業について、一定の前提条件のもとで作業した場合の標準的な修理作業時間の目安を「指数」として作成している。1974年に始めた実際の修理作業の計測・分析がそのルーツで、長年にわたり事故車修理の共通の参考指標として使われてきた。

整備の現場で押さえておきたいのは、損保の保険金で支払われる工賃が、おおまかに次の式で決まるという点だ。

修理工賃 = 指数(作業時間の目安)× 指数対応単価(時間単価)

つまり指数は“時間”、指数対応単価は“1時間あたりの値段”にあたる。前者を作っているのが自研センターであり、後者は各工場と損保会社のあいだで交渉される金額、という関係になる。

なぜ今「透明性」が問われているのか

近年、板金塗装の現場では指数対応単価(時間単価)の引き上げ交渉が活発になっている。背景には、設備・技術・品質に応じて支払いを差別化しようとする損保側の動きや、ビッグモーター問題を契機に高まった保険金請求の適正性・情報の非対称性への厳しい視線がある。

こうしたなかで注目されてきたのが、単価(円)だけでなく、掛け合わせる側の“時間”=指数そのものの根拠だ。工賃の半分を左右する数字であるにもかかわらず、「どのように作られ、どんな前提条件に立っているのか」が見えにくいという指摘も一部にあった。自研センター自身も今回の発表で、指数の作成方法や前提条件に関する説明の充実を求める声がユーザーから寄せられており、透明性の向上が重要な課題になっていると認識を示している。今回の公表は、その声に正面から応える姿勢を打ち出したものといえる。

公表された取組みの中身

発表は大きく「信頼性・透明性向上の取組」と「直近の具体的な取組」の2部構成。要点は以下のとおりだ。

1.信頼性・透明性向上の取組(6項目)

  • 独立性・客観性の確保……鈑金・塗装の実務経験者がメーカー修理書をもとに調査・算定。指数作成業務に関わる情報は他業務から独立して管理し、技術以外の要因の影響を受けないようにしている。
  • お客様相談室の声の活用……寄せられた意見・要望を毎月一件ずつ確認し、利用方法に関するものはホームページのQ&Aで、技術的な事項は作業観測・検証を経て指数の見直しに反映。
  • 一般工場調査……2000年以降、年間約10工場を訪問し、実際の作業方法・作業時間・設備環境を確認。指数と市場実態に乖離がないかを検証している。
  • 指数懇談会……外部有識者から意見を聴く場を毎年定期開催し、客観性の向上に努める。
  • 「指数作成のあり方見直しプロジェクト」……2024年4月に社内横断で立ち上げ。指数作成基盤の見直し、修理作業者らも参加する「指数項目設定会」の新設による作成プロセスの強化、そして情報発信の充実に取り組む。情報発信では2025年2月からHPで「指数の考え方」「指数の変更情報」の掲載を開始し、2025年4月には自研センターニュースを無償公開、2026年2月号からは「マンガでわかる指数入門」の連載も始めた。
  • さらなる検討体制……2026年3月から社外メンバーを加えた体制で検討を開始。情報開示の充実や意見収集に加え、取締役会の構成などガバナンス面の強化も議論している。

2.指数に関わる直近の取組(2項目)

  • 指数の見直し第一弾……上記プロジェクトの成果として、脱着・取替指数の作業内容を見直し、2026年5月以降に市場へ提供する新型車の指数から順次反映している(HP「指数一部改訂のご案内」に掲載)。
  • 損保会社への声の橋渡し……2026年1月より、お客様相談室に寄せられた損保会社の指数利用に関わる声を、日本損害保険協会を経由して各損保会社へ情報提供する取り組みを開始した。

整備工場にとっての意味

指数は、工賃を構成する“時間”という片側の数字だ。その作成プロセスや改定の考え方が見えやすくなることは、損保との単価交渉や、ユーザーへの見積り説明の場面でも材料になり得る。とりわけ、HPで公開された「指数Q&A」「指数の考え方」「指数の変更情報」や、無償化された自研センターニュースは、現場が一次情報として確認できる手がかりとなる。

また、2026年5月以降に反映が進む脱着・取替指数の見直しは、実際の見積り工数に影響する可能性がある。新型車を扱う際は、最新の指数情報を確認しておきたい。工賃の妥当性が以前にも増して問われる時代だからこそ、その根拠となる指数の動きを押さえておくことが、これからの工場経営の備えになるだろう。

自研センターは「今後も取組状況やお客様の意見を踏まえ、指数に関する情報をホームページで継続的に発信し、信頼性・透明性のさらなる向上に努める」としている。

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