自動運転はいつ普及する? 国交大臣も視察、国が固めた7つの方策と2030年への工程

国土交通省は2026年6月8日(月)、「第3回 国土交通省自動運転社会実現本部」(本部長:金子恭之国土交通大臣)を中央合同庁舎3号館で開催した。本部は自動運転社会の早期実現と、普及に伴う社会変容への対応を検討するため2026年1月22日に設置されたもので、今回が当面の取組方針を整理する節目の会合となる。会合では「目指すべき姿」5項目と「当面の7つの方策」が示されたほか、本部長である金子大臣から4点の指示が出された。整備業界にとっては、方策の柱のひとつに掲げられた「事故原因究明体制の構築」が見逃せない論点となる。

第3回会合の位置づけ──1月の発足から半年、当面の方策を整理

自動運転社会実現本部は、自動運転技術の急速な進化が社会構造や暮らしを大きく変えるとの認識のもと、国土交通行政としての対応を検討する省内横断の組織だ。2026年1月22日の第1回でバス・トラックの実車視察とともに発足し、4月の第2回を経て、今回の第3回で当面の取組方針が出そろった。会合に先立ち、省内駐車場では自動運転のタクシー・バス・除雪車・空港用トーイングトラクターなどの車両視察も実施された。

背景にあるのは政府が掲げる具体的な数値目標だ。2026年1月16日に閣議決定された第3次交通政策基本計画では、2030年度における自動運転サービスの車両数を1万台とするKPIが示されている。また「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、2027年度までに無人自動運転移動サービスを100か所以上で実現する目標が掲げられている。全国で約2,500か所とされる「交通空白」の解消に向けて、自動運転は切り札と位置づけられている。

 

自動運転社会で「目指すべき姿」5つと、当面の7つの方策

会合では物流・自動車局の石原大局長から、自動運転社会で目指すべき姿として次の5項目が示された。

  1. 快適で移動しやすい地域の実現(移動の足の確保、地域経済の活性化)
  2. 都市部における移動の利便性向上(人中心の街づくり、路上駐車の減少)
  3. 自動車交通産業の構造転換(職業運転手の役割変化、事業形態の変化)
  4. 物流効率化の実現(長距離幹線輸送の24時間運行、自動物流道路)
  5. 道路交通の安全性・円滑性の向上(路車協調システムの実装)

そのうえで、これらの実現に向けて当面取り組む「7つの方策」が整理された。

  1. 将来のレベル4につながる「レベル2++(L2++)車」の開発・普及促進に係る施策パッケージの策定
  2. 自動運転車両の安全・円滑な交通流の基盤となる道路の実現
  3. 自動運転社会を見据えた人中心のまちづくり
  4. 交通事業のデジタル化・標準化の推進と、自動運転車両の活用による移動の足の確保
  5. 実証事業等を通じた自動運転の社会受容性の向上と、事故原因究明体制の構築
  6. 物流の効率化に貢献する自動運転トラックの社会実装の推進
  7. 道路や空港等における自動運転作業車の導入促進

整備業界の最重要論点──「事故原因究明体制」とデータ記録

7つの方策のうち、整備事業者が最も注視すべきは5番目に組み込まれた「事故原因究明体制の構築」だ。自動運転車が普及すれば、事故やトラブルの原因が「人」ではなく「システム」にある場面が増える。国土交通省はこれまでの自動運転ワーキンググループの議論で、職権行使の独立性が保障された運輸安全委員会のような組織を念頭に、自動運転車の事故調査体制を検討する方針を示してきた。さらに、調査対象とならない軽微な事故やニアミス情報についても、国が関係者と連携して収集・分析する仕組みが想定されている。

ここで鍵を握るのが車両側のデータ記録だ。自動運転に関する作動状態記録装置(DSSAD)に記録すべきデータ種別は、国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)で国際的な議論が続いている。事故原因の究明には、衝突前後の制御状況やセンサーの作動記録が不可欠であり、こうしたデータを正しく保持・読み出せる状態に車両を保つことは、点検整備の現場が担う領域に直結する。「壊れていないか」だけでなく「記録が正しく残るか」が問われる時代に入りつつあるということだ。

整備現場への含意:自動運転車の保守整備は、すでに「自動運行装置」が道路運送車両法の保安基準対象となっており、その整備は特定整備(電子制御装置整備)の枠組みに入る。L2++車やレベル4車両の普及が進めば、エーミング(ADASのキャリブレーション)やスキャンツールによる故障診断・データ確認の需要はさらに拡大する。認証取得や設備・人材の準備は、補助制度の動向とあわせて早めに検討しておきたい。

各分野の取組──物流ロボット、港湾、道路維持管理

会合では各局からも具体的な取組が報告された。ラストマイル物流の分野では、市街地での商品配送や大規模マンション内の宅配ボックスからの個別配送など、自動配送ロボットの社会実装が民間先行で進んでいる。高齢者など買い物困難者の支援や、配送負担の軽減につながる取組として、来年以降の本格的な実装が見込まれている。

港湾分野では、名古屋港のコンテナターミナルで導入されている自動搬送台車(AGV)と遠隔操作RTG(ゲートクレーン)による荷役効率化が紹介された。人手不足対応と安全性向上を両立する取組として、ほかの港でもトラック・トレーラーの自動運転実証が進められている。

道路分野では、道路局の沓掛敏夫局長から、路車協調システムによる安全・円滑な移動の実現に加え、道路の維持管理そのものへの自動運転の活用が示された。道路巡回パトロールや除雪車の自動化により、人手の作業量を減らす狙いだ。落下物・工事情報を自動運転車に事前提供し、急ブレーキ・急ハンドルを避けて円滑に走らせる仕組みや、多数の自動運転車を最適ルートへ誘導するプラットフォームの議論も進められている。

金子本部長から4点の指示

会合の締めくくりに、本部長の金子恭之国土交通大臣から次の4点が指示された。

  1. 制度環境の整備──自動運転の普及に伴う社会変容に的確に対応するため、中長期的な視点で国土交通行政の在り方を不断に見直し、必要な制度環境整備の検討を進める。
  2. L2++自家用車の普及促進──ドライバーの介入をほとんど必要としない高度な自動運転システム(L2++)を搭載した自家用車について、前回会合で示した認定制度の具体化に加え、普及を強力に促す施策を検討する。
  3. 行政分野への率先導入──国土交通省自らが行政分野に自動運転を積極導入する。直轄国道のパトロールへの活用を具体化し、航空・港湾などの分野でも積極的な活用を検討する。
  4. 予算など夏の要求への準備──社会実装を一層加速するため、予算をはじめとするこの夏の各種要求に向けて万全の準備を行う。

次回は12月頃、整備業界は「制度の具体化」を注視

本部は今後、各局の取組のフォローアップと業界の最新動向を議題に、定期的に開催される。次回は2026年12月頃の開催が予定されている。

整備業界の視点で見れば、今回の会合は「自動運転が来る/来ない」の段階を越え、「来たときに整備の現場が何を担うか」が具体的に語られ始めた点に意味がある。事故原因究明のためのデータ記録、自動運行装置の特定整備、ADASキャリブレーションの拡大──いずれも、今後数年で各工場の業務に直接関わってくるテーマだ。L2++車の認定制度や事故調査体制の制度設計は、まさにこれから具体化される。せいび界WEBでは引き続き、整備事業者の実務に関わる論点を追っていく。

整備事業者が押さえるべき3つのポイント

① 特定整備(電子制御装置整備)の体制整備──自動運行装置・先進運転支援システムの普及で、エーミングや診断業務の需要は確実に増える。認証取得・設備投資の判断を先送りにしない。

② 「記録が残る整備」への意識転換──事故原因究明体制の構築により、車両のデータ記録(DSSAD)が重要性を増す。点検時にデータ系統が正常に機能しているかの確認も整備の一部になっていく。

③ 補助制度・制度設計の動向把握──L2++車の認定制度や事故調査体制は今後具体化される。スキャンツール補助など関連施策とあわせ、最新情報を継続的にチェックしたい。

【出典】国土交通省「第3回 国土交通省自動運転社会実現本部」資料(2026年6月8日)/第3次交通政策基本計画(2026年1月16日閣議決定)/自動運転ワーキンググループ中間とりまとめ ほか

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