税務

効果的な節税とは?

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2011年4月号掲載

Q1:効果的な節税とは?

法人で事業を営んでおりますが、今期は業績が好調で、かなりの利益が出る見込みです。ただ税金を払うより、社員に還元するなどした方がいいのではないかと考えています。何か効果的な節税方法はありますか?

A.税金に関する基本的な考え方

法人の場合、決算書の利益に対して、税務上の益金と損金を調整した金額に税率をかけて計算することとなっており、実質的な税率は40%程度になります。つまり、1,000万円利益が出た場合、400万円程度の税金が課税されることになります。言い換えれば、1,000円万円利益が出ると、600万円の現金が残るわけです。

では、1,000万円利益が出ているときに、節税のために100万円使った場合はどうなるでしょうか。利益は900万円になり、税金は360万円に減ります。一見お得に見えますが、残る現金は540万円に減ってしまいます。つまり、単純に残る現金の大小という観点からは、何も節税せず納税するのがベストということになります。ただ、別の観点からは有効な節税方法がいくつかあります。

2.来期払う費用の前払(短期前払費用)

例えば、1年分の家賃を一括して支払った場合、本来はその事業年度までの期間に対応する家賃のみが当期の経費であり、翌事業年度以降の期間に係る金額は「前払費用」となり、支払った年度では経費処理ができません。

しかし税務上の「短期前払費用」の取り扱いは、このような前払費用で、支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるもので、下記の要件を満たすものについては、支払った年度ですべて経費処理することを認めるものです。

(1) 一定の契約に従って継続的にサービスの提供を受けるものであること
(等質・等量のサービスであることが必要です。)
(2)役務(サービス)の提供の対価であること
(3)翌期以降において、時の経過に応じて費用化されるものであること
(4)当期中に支払いが済んでいること

具体的には、家賃、地代、借入金の利息、保険料などが対象となります。つまり、3月決算法人であれば、3月中に向こう1年分の家賃を一括して支払えば、支払った年度の経費にすることができるわけです。(大家さんと年払い契約を結ぶ必要があります)

3.将来の業績に貢献する費用

将来の業績に貢献する費用とは、例えば「決算賞与」が該当します。つまり、今期業績が良かったのは社員の皆さんの働きがあったればこそであり、それをねぎらい、感謝の気持ちとして決算賞与を支給すれば、社員のモチベーションもアップするかもしれません。

従業員への賞与は、原則として支給日の属する事業年度にて経費処理することになりますが、下記の要件を満たすものについては、決算日までに未払いのものであっても、未払計上することができます。

(1)決算日までに決算賞与の支給額を各人別にすべての受給者に通知していること
(2)決算日後1月以内に受給者全員に支払っていること
(3)決算で未払計上をしていること
つまり、3月決算法人であれば、3月中に各人別に支給額を決定・通知し、4月中に支給することが要件になるわけです。この「各人別」というのがポイントで、単に賞与の総額を決定しただけでは不十分なのです。
将来の業績に貢献する費用には、他には広告宣伝費を使うなどが考えられます。

4.生命保険と退職金の活用

生命保険にもいろいろな種類がありますが、ここでは「がん保険」のような全額損金になる保険を前提に記載します。
上記の短期前払費用のところで記載したように、保険も年払契約にして、向こう一年分の保険料を経費にすることができるので、かなり大きな経費を作ることができます。保険は本来は保障目的で加入するものなので、加入することで例えば被保険者が死亡したら1億円保険が出るといった保障を得ることができるのはもちろんですが、実はもう一つ解約返戻金(「へんれいきん」と読みます)を受け取れるというメリットもあります。(契約内容によりますが)節税のために加入する生命保険は、解約返戻金目的で加入するといってよいでしょう。

例えば、毎年保険料100万円を5年間払ってから解約すると、解約返戻金400万円受け取れる、といったものです。500万円払って400万円受け取るなら、100万円の損なのでは?と思うところですが、それによる節税効果を考えると逆にお得になってしまうのです。100万円の保険料を払うことによって40万円の節税効果を得られるわけで、5年で200万円の節税をすることができます。つまり、100万円損して200万円得するので、総合的には100万円の得になるということですね。

ただし、これには注意が必要です。解約返戻金は雑収入になってしまうので、400万円入金になれば、そのまま利益が増え税金も高く(160万円ほど)なってしまうので、全く得ではなくなってしまうのです。

ではこの方法は節税にならないのかというと、そうではありません。解約する年度に合わせて退職金を支給することで、相当の節税をすることができるのです。これについては、次回詳しい説明をする予定です。

Q2:相続税の改正について

今度から相続税が高くなると聞いたのですが、具体的にはどうなるのですか。

A.平成23年度税制改正大綱

平成23年度税制改正大綱が閣議決定されました。まだ正式に法案として成立したわけではありませんが(3月4日現在)、通常国会で成立すれば相続税については平成23年4月1日から適用になります。相続税は大幅増税といっても過言ではなく、また、控除枠が減って従来は関係のなかった人まで関係があるようになったので、これまで関係ないと思っていらっしゃった方も是非とも知っておいた方がよいでしょう。

2.相続税の基礎控除額の縮小

これまでの相続税の基礎控除額は、(5,000万円+1,000万円×法定相続人数)でした。例えば、法定相続人が妻と子供2人の合計3人の場合の基礎控除額は、5,000万円+1,000万円×3=8,000万円で、その金額までは相続税がかかりませんでした。
ところが、平成23年4月1日以後に開始する相続については、(3,000万円+600万円×法定相続人数)になってしまいました。上記の場合の基礎控除額は4,800万円になります。従来の6割ということですね。これによって、従来基礎控除額の範囲内であるため納税の必要がなかった人でも、納税する必要が出てくる可能性があるわけです。
また、控除額が減るということは課税対象になる金額が増えるということですので、もともと納税するはずだった人にとっても増税になってしまうのです。

3.税率の改正

相続税の税率は、金額が高い部分には税率も高くなるという超過累進税率を採用しています。現在の税率は下記の通りです。改正では、2億円超3億円以下部分が40%から45%に、6億円超部分が50%から55%に、それぞれ税率が引上げられました。

基礎控除後の法定相続分相当額改正前改正後適用
相続税の税率1,000万円以下10%10%平成23年4月1日以後に開始する相続
1,000万円超~3,000万円以下15%15%
3,000万円超~5,000万円以下20%20%
5,000万円超~1億円以下30%30%
1億円超~2億円以下40%40%
2億円超~3億円以下40%45%
3億円超~6億円以下50%50%
6億円超~50%55%

4.死亡保険金の非課税控除の縮小

従来の死亡保険金の非課税枠(限度額)は、法定相続人1人当り500万円です。これが、今回の改正では、法定相続人の中で一定の人(未成年者・障害者・同居人)の数になりました。これにより、非課税枠が縮小します。

5.実際どれくらい増税になるのか

法定相続人が配偶者と子2人の合計3人で遺産が7,000万円の場合に、法定相続分通りに(配偶者が50%、子がそれぞれ25%取得)相続したときの相続税はどうなるのでしょうか?
従来ですと、基礎控除額が8,000万円ですので、相続税はかかりませんでした。
改正後は次のような計算で相続税がかかることになります。
① 基礎控除額4,800万円
② 課税対象7,000万円-4,800万円=2,200万円
③ 法定相続分で分ける
配偶者:1,100万円、子:550万円
④ 税額を求める
配偶者:115万円(実際には配偶者軽減により0円)、子:55万円
⑤ 納税額55万円×2人=110万円
となり、従来0円だったものが110万円の納付となってしまうのです。
次回は、平成23年度税制改正大綱のうち贈与税に係る部分の紹介をする予定です。

NBC税理士法人

☎03-5225-0024

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