オルタネータの構造と診断方法

故障診断整備のススメ

メカニックの中で苦手意識の高いのが電気知識ですが、この故障診断整備のススメでも数回に亘って解説を行っています。『覚えれば難しくない』という言葉を聞くことも多く、電気知識を理解した上での整備はメカニックの枠を広げます。

ということで、今回は電装品の要であるオルタネーターについて説明します。ところで、皆様はオルタネーターをダイナモや発電機と表現することはないでしょうか。確かに部品単体として意味は通じるかもしれませんが、ダイナモは直流電気、オルタネーターは交流電気で発電するようになっています。直流と交流の解説については割愛しますが、名称が違うということは、違うモノなのです。

言うまでもなく、オルタネーターはバッテリーの充電と電装機器への電力供給を行う発電装置です。エンジンが低回転でも効率よく発電するように作られています。

■3相交流発電方式とオシロスコープ

通常、オルタネーターは1回転、3ヶ所で発電していて、低回転から高回転まで幅広く、そして効率よく作動するようになっています。車の電気システムは直流方式ですので、交流→直流に変換しなければなりません。その役割を担っているのがダイオードです。120度ずつずれて発電された交流を全波整流で直流に変換しています。

また、オルタネーターは回転速度が上がる程、より大きな電力が得られますが、出力が上がりっ放しになるのを防止するためにIC式のボルテージレギュレーターが14V程度になるよう制御しています。この3相交流の波をリップルと呼びます。

このリップルをオシロスコープで確認するのが点検、診断に於いて重要な役割を持ってきます。このことからスキャンツールに加えてオシロスコープも持っているべきアイテムの一つと言えます。

■オルタネーターの点検診断方法

バッテリー上がりや電圧不足など、オルタネーターの交換作業は当たり前のように行っていると思います。エアフロメーターなども事例としてよく挙がりますが、オルタネーターやバッテリーを交換したのに直ぐにバッテリーが上がってしまった経験はありませんか。

もちろん不具合品をつかまされた可能性もありますが、根本的な原因は違うところにある可能性が高いです。こんなことにならないように日常的に、または車検時などにオルタネーターの点検整備をすることをオススメします。

まず、充電電圧を点検します。車両のエンジンを始動させ、最大電気負荷をかけて2500回転時のオルタネーターの出力電圧を測定します。オルタネーターのB端子とバッテリーのプラスターミナルの電圧降下を測定します。次に充電電流を測定します。

そして電流クランプを使ってB端子からの充電電流(量)を測定します。この時オルタネーターの最大出力はオルタネーター本体に記載されています。最後にオルタネーター本体の良否判断をするために、オシロスコープを使って波形分析をすると確実です。

■間違ったオルタネーターの点検方法

タイミングベルトの緩みなどは別として、不具合が起きた際に、それぞれの部品に対して診断することが、漏れのない点検整備と言えます。上記の点検方法に基づいて点検するのが通常ですが、よく整備現場ではサーキットテスターを使って点検している姿を見かけます。

しかし、単純に出力電圧だけのチェックでは成否判定は出来ません。もちろん、様々な負荷をかけた状態での確認も必要になってきます。だからこそ、オシロスコープでリップルを確認することが重要なのです。良好な波形と不良の波形は下図を参照して頂ければと思います。

励磁ダイオードの断線

■故障診断整備をする

ユーザーから故障があって交換するのではなく、快適なカーライフを実現させることがメカニックの本来の姿です。今回のオルタネーターの点検にしても、不具合が起きる前兆自体が少なくなってきている昨今の車を鑑みて、適度な割合で実施して頂きたいと思います。

特に冬場は電装品が壊れることが多く、夏場に至ってもシビアコンディションになる以上、点検は必要なのです。仮にオルタネーターが良好であっても、電気を貯めておくバッテリーの能力が低下していたら、十分に電気を貯めることが出来ません。この状態では、常にオルタネーターがフルに働かなければならず、寿命に影響することを覚えておいて頂きたいと思います。

充電系統は個々の部品の状態とバランスが大切なため、バッテリー、オルタネーター、電圧降下を、テスターを使ってしっかりと測定する必要があるのです。

監修:ボッシュ株式会社 長土居 大介