シリーズ車検を考える⑦車検のコバックの過去・現在・未来

予防整備とは

今回は車検チェーンの大手㈱コバックの未来へのビジョン、社会貢献、車検を通じてお客様へ何を訴えていくか、様々なことを小林憲司社長に独占取材してきた。コバックは現在日本全国でFC、直営合わせて430 店舗を運営する巨大車検フランチャイズチェーンだ。古くから「車検」という整備工場における要とも言える商材に目をつけ専門店化した過去を持つ。5 年前より小林社長が提唱している「予防整備は地球を救う」をテーマに、今回はコバックの秘めた魅力から今後の整備業界のあるべき姿を見つめてみる。

車検のコバックの過去・現在・未来

愛知県豊田市に本社を構える㈱コバック(小林憲司社長)は今年で創業55周年を迎える。創業は昭和34年で当時は小林モータースという名前で小林正一現会長が創業した。小林会長は子供時代に兄が仕事で使っていたオート3輪に好奇心を持ち、16歳で免許を取得、そこから時々見るようになった4輪乗用車に憧れを持つようになった。その後、新聞に書かれた「自動車修理工求む、住み込み」という3行ほどの記事を握りしめ単身名古屋へ。修業時代を経て24歳の時に創業した。創業一ヶ月後に伊勢湾台風が愛知県を直撃し思わぬ特需と冠水車の修理依頼が殺到したという。その後、順調な成長に伴って、現在の豊田陣中店へ移転し店舗を構えるようになった。33年前の1981年には西三河では初となるロータリー式車検システムを導入するなど、この当時より車検拡大に向けた動きを取っていた。その後1984年に待望の長男である小林社長が20歳で入社した。

1987年には車検センター新豊田へとCIを変更するなど、車検に特化する現在のスタイルへ業態を開発し転換した。そして1990年に社名を㈱コバックへと変更した。小林社長は小学生の時には跡を継ぐことを決心していたという。その決心は固く、自動車専門学校へ入校、卒業後に隣町の整備工場へ住み込みで働いて修業をするなど、会長と同じ道を歩み、小林モータースへ入社後も常に自問自答の毎日であったという。コバックへ社名を変えた後、業界の反発やコバックの新しい発想の説明に苦しみながらも一店舗一店舗の信用を得て加盟店を増やし現在に至る。そして今から10年前に「20年50万キロ」の考えでお客様のお役に立とうとの方針を決めた。その5年後に「予防整備は地球を救う」という大きなテーマを小林社長は掲げた。「顧客第一」というテーマはサービス業では良く聞くが、地球環境を考えるという壮大なテーマを自動車整備業に取り込むコバックのビジョンを小林社長に語って貰った。

小林社長(以降も社長のコメント) まず人類の人口増加についてお話をしていこうと思います。西暦1000年で3億人、1800年で10億人、1900年で20億人から爆発的に世界の人口が増え、現在は約72億人となっています。日本でも戦後から高度経済成長を経て約1億2,700万人へ増えました。2050年には世界人口は100億人に達するという予測も出ております。そんな中で現在、世界中に走っている自動車は10億台を数えます。人口の増加に伴って自動車の保有台数も増えて行った計算になります。自動車がもたらす地球環境への影響は二酸化炭素の排出、生産工程における資源の消費を考えれば、計り知れません。100年前から見た現在の地球環境と車社会を比較して、100年後のそれを想像し、自動車整備を生涯の職務とした我々には今、何が必要かを真剣に考えました。

予防整備がもたらすモノ

私は10年前より「20年50万キロ」という考え方で自動車に接してきました。実際に私はトヨタのエスティマに23年間乗り続けて、現在の走行距離は17万キロです。きちんとメンテナンスをしていれば、23年前の車であろうと調子良く走ってくれるのです。メーカーが優秀な車を開発していることに感謝しています。この「きちんとメンテナンスする」ところに重きを置き、「予防整備」というキーワードに辿り着きました。

例えばお客様にも永く乗ってもらうことを考えれば、日常のメンテナンスを怠ることはできません。そのための提案をお客様の立場で考え、車検時以外にもお客様に提供していく、これが予防に繋がるのです。今、壊れていなくても1年後には故障する恐れがあるような部品に対しては、先に手を打てるような方針をコバックでは掲げております。何よりも「永く乗る」ことが限りある資源を無駄にしないことへ繋がるのです。日本の保有台数はこのほど8,000万台の大台に乗りました。その中で自動車の構造を理解し「そろそろエンジンオイルを交換しないと」という考えで自動車に乗っているユーザーはどれだけいるでしょうか? 実の所でいうとそれほど多くはないはずです。

予防整備とは

ディーラーで販売サポートしている車でも、既にエンジンが焼きつく手前ということもあります。これでは予防整備が出来ていないことになります。きちんと向き合っていけば、自動車は永く乗れるものなのです。当然永く乗ることにおけるユーザーのメリットは金銭的にもあります。例えば20年間同じ車に乗るのと3年ごとに車両を乗り換えるのとでは、場合によっては3,000万円もの差が出ることもあります。整備工場のメリットも考えてみますと、予防整備を行うことによってお客様との接点も増え、当然そこには整備売上も見込めます。考え方としてお金儲けの方に走っていただきたくないのですが、自動車を整備することでお客様に与える満足感が、我々でいうところの商品になります。そして自動車を永く安全に、かつ安心して乗れる状態にすることが我々の使命です。「過度な整備なのでは?」と考えるお客様もいらっしゃいますが、それは短期的に見た視点であり、長期的に見れば必要なことであるとご理解いただきたいのです。「予防整備は地球を守る」ことに繋がるのです。今ある、今乗っている自動車をいかに永く乗るか、そのお手伝いを我々コバックはしていこうと考えています。

豊かな車社会の作り方

コバックの特徴は1日車検です。1日車検は予防整備を行うためにお預かりするのです。短時間車検との違いは予防整備を促進しているかどうか、にあるのです。予防整備の概念が出来ていれば6 ヶ月後の故障を修理するよりも「今」予防整備をしておけば大きな出費にならなくて済むし、車も永く乗れる。例えば6カ月後に実際に壊れる部品があったとして、それよりも早く壊れてしまったとしたら、その部品プラス違う部品も交換しなくてはならない場合も多々あります。

それでは出費もかさんでしまいます。予防整備をしておけば、そのようなことはありません。お客様とのコミュニケーションが出来ていれば車検の際に予防整備の提案をしても、「安い車検と聞いていたけど、何か押し売りをされた」ということにならないのです。お客様に必要な情報を知らせていないということは、お店としても予防整備を提供できていないわけですし、はっきり言ってしまえば「準備をし整える」という整備の概念からも外れていまいます。予防整備が行き届いていない自動車が走ることは本来「豊かな車社会」とは言えないのです。

車検を通じてお客様に伝え、豊かになってもらう。危険を孕んだ状態で乗ることなく、車検を通じて車検後も2年間きっちり乗れるように予防整備をすることによって、安心して乗ってもらうことが「豊かな車社会」と言えるのではないでしょうか? 我々は車検の基本価格を9,500円でやらせていただいておりますが、それを高い、安いと判断されるのはお客様次第ですが、もはやどのお店でも金額的には底値だと思います。そうは言っても車検にはお金はかかります。必要な金額でありながらも、それがまだお客様に告知できていない、情報共有が出来ていないのです。国は消費者に対して予防整備の内容までは説明してくれません。だから我々整備工場がお客様に接する際には「予防整備」をすることの大切さを説明し、それが今後の整備業界、車社会を豊かにしていくと考えています。