OBD車検 2021年販売の新車から開始予定!

はじめに

国土交通省自動車局は、自動車技術の急速な電子化・高度化、交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会報告書(平成28年6月24日)において「先進安全技術や自動走行技術等の新技術について、新車時から使用過程時まで安全性を確保するため型式指定審査、検査、点検・整備、リコール等の諸制度について、手法の検討と妥当性の検証を行う必要がある」と報告されるなど、新技術に対応した検査手法の検討が求められていることを受け、有識者、自動車検査実施機関及び関係団体の代表者からなる「車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を設置した。

本検討会における全5回の審議を踏まえ、車載式故障診断装置を活用した検査手法のあり方について中間のとりまとめが発表された。

車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方について

近年、自動ブレーキや自動車線維持機能等の自動運転技術の普及拡大に伴い、自動車技術の電子化・高度化が急速に進展している。また、この流れは今後自動運転技術の進化・普及等に伴い加速度的に拡大する見通しである。
自動運転技術は、高度かつ複雑なセンシング装置と電子制御装置で構成されており、これらの装置が故障した場合等には、期待された機能が発揮されないばかりか、誤作動等につながる恐れもあることから、使用過程時の機能維持を図ることが安全上重要となる。
一方、これらの技術をコントロールするための電子装置は、オイルやブレーキのように経年や走行距離に応じて劣化・摩耗する性質のものではないものの、他の装置と同様に使用中の不具合に起因する事故やトラブルが少なからず報告されている。

今後、自動運転技術の一層の進化と普及が予想される中、電子装置についても不具合を確実に捕捉し、ユーザーに必要な整備を促すことは、自動車検査(車検)の重要な役割である。更に将来の無線による機能追加・変更(OTA)への対応等まで見据えれば、自動車検査手法の拡張性にも留意が必要である。

これらの課題に対応するためには、自動車検査(車検)において、現在の外観
確認やブレーキテスタ等の測定機を中心とした検査に加えて、電子制御装置まで
踏み込んだ機能確認の手法を確立することが必要である。

具体的には、最近の自動車にはセンサや構成部品の断線や機能異常の有無を自己診断し、記録する装置(車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics))が搭載されているところ、これを自動車の電子制御装置の検査に活用できる可能性がある。以上を踏まえ、OBDを活用した自動車検査手法について議論を重ねた。

車載式故障診断装置とは(OBD:On-Board Diagnostics)

エンジンやトランスミッション等を制御する電子制御装置(ECU:ElectronicControl Unit)内部に搭載された故障診断機能である。ECUは、自動車が安全・環境性能を発揮するため、センサからの信号等に基づき最適な制御を行っているが、断線やセンサの機能異常等の不具合が生じた場合には、その情報をOBDに自動記録する。

OBDによる故障診断の結果、不具合が生じていると判定した場合にECUに保存される英数字からなるコードを「故障コード」(DTC:Diagnostic TroubleCode)と称する。DTCについては、対象のシステム(装置)や故障内容等に応じてコードが定義されており、また、国際標準規格(ISO15031-6)、米国自動車技術会(SAEJ2012)等において規格化されている。

諸外国におけるOBDを活用した検査の導入・準備状況
○ 欧州連合… 欧州連合(以下、EU)では、自動車の型式認証については、いわゆるEU-WVTAにより域内調和されているのに対し、Periodic Technica lInspection(PTI)(車検)については、その権限が引き続き加盟国に留保されているため、車検の制度や手法は、現状、加盟国間で異なる。

一方、車両がEU域内を自由移動することを踏まえ、EUとして車検について一定の水準を確保する必要が生じていること等から、DIRECTIVE 2014/45/EUが採択されている(同指令は、各国の車検制度を完全に調和するものではなく、加盟国の裁量を残しつつ、最低要件を定めるものである)。EU加盟国は、2017年5月20日までに同指令の内容を各国内法に反映させるとともに2018年5月20日までに適用することとされている。

○ 米国… 米国では、1990年の大気清浄改正法(the Clean Air Actamended in 1990)に基づき米国環境保護( E PA : E n v i r o n m e n t a lProtection Agency)が策定したIM(Inspection and Maintenance)プログラムの要件を満たすため、2002年からOBDIIを用いた排ガス検査が33 の州・地区において実施・運用されている。

「OBD検査」の導入に向けて

検討会では、OBDを活用した検査(以下「OBD検査」という)の導入に向けて、事務局(国土交通省自動車局整備課)より、以下の基本的な方針案が示された。
○「 OBD検査」は、車検時に、OBDを活用して、保安基準に定める性能 要件を満たさなくなる不具合を検知することを目的とする。
○ ただし、OBDは技術的に全ての不具合を検知できるものではなく、また、検知範囲は搭載技術や自動車メーカーの設計等により異なるため、これらを基準により一律に規定した場合、自動車の設計を制約し、結果、技術の進展を阻害しかねないことに留意が必要。
○ OBD検査導入に当たっては、DTCの立て方については、これまで通り、自動車メーカーが自由に設定できることとした上で、このうち、OBD検査の対象装置が保安基準に定める性能要件を満たさなくなる故障に係るDTCのうち、OBDが『故障』の存在を推断できるものとして、自動車メーカーが定めるもの(以下「特定DTC」
という)を予め届け出てもらい、車検時に特定DTCが検出された場合に、検査不合格とする。
○ OBD検査の基準(保安基準)は、自動車メーカーにおける開発期間、ツールメーカーにおける検査機器の開発期間、検査実施機関や整備工場における準備期間等を考慮し、公布後一定のリードタイムを置いた後、新型車から適用することとする。

OBD検査の対象と開始時期
(1)OBD検査の対象の考え方
OBD検査の対象は、以下の考え方に基づいて決定することとした。
○ OBD検査の対象は保安基準に性能要件が規定されている装置とする(ただし、現在、保安基準に規定がない装置であっても、将来、保安基準に規定された場合には、OBD 検査の対象となり得る)。ここで、「保安基準に性能要件が規定されている装置」とは、保安基準において設置が義務付けられている装置のほか、設置は義
務付けられていないものの満たすべき性能要件が規定されている装置(いわゆるif fitted基準が適用される装置)も含むが、この点について、ユーザーの理解が得られるよう丁寧な周知と説明を行うとともに、次の点に留意が必要である。if fitted基準が適用される装置が故障した際、当該装置を修理するのか、当該機能を放棄するのか(※ソフト又はハードにおいて当該機能を使用できなくする)ユーザー自身が選択できるようにすること。ユーザーが当該機能を放棄した場合、運転席の表示等により、使用者や運転者がその旨を理解できるようにすること。

○ OBD検査導入に当たっては、第一に、故障時の誤作動等による事故が懸念され、現行の車検手法では故障等の検知が難しい運転支援技術・自動運転技術等を対象とする。

○ その他の装置については、OBD検査の負担と効果を見極めつつ、装置ごとにその要否を検討することとする。
ただし、排出ガス関係については、現行の保安基準にJ-OBDII基準が導入されていることから、排出ガス関係については、引き続き、OBD検査の対象とする。

(2)OBD 検査の対象とする自動車

以下の全てに該当する自動車をOBD検査の対象とする。ただし、③の適用日については、自動車側の対応や検査実施機関・自動車整備工場における準備に要する期間等を考慮して、変更があり得る。
① 型式指定自動車又は多仕様動車
② 乗用車、バス、トラック(M1,M2,M3,N1,N2,N3)
③[ 2021]年以降の新型車

(3)OBD検査の対象とする装置

(2)の対象自動車に搭載される以下の装置をOBD検査の対象とする。 ただし、以下の装置であっても保安基準に性能要件が規定されていないものは、当該要件が規定されるまでの間はOBD検査の対象としない。

① 排出ガス等発散防止装置
・ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(以下「細目告示」という)第41条及び第119条並びに別添48に規定された装置
② 運転支援技術
・ アンチロックブレーキシステム(ABS)
・ 横滑り防止装置(ESC/EVSC)
・ 自動ブレーキ(AEB/AEBS)8
・ ブレーキアシストシステム(BAS)
・ 車両接近通報装置
③ 自動運転技術
・ UN/ACSFで審議されUN規則が成立した自動運転技術(CategoryA,B1,C及び緊急操舵技(ESF)このほか、上記装置へのOBD検査の導入状況及び現行の車検手法の効果を見極めた上で、将来、以下に掲げる装置についてもOBD検査の対象とする可能性がある。
・ 車線逸脱警報装置(LDWS)
・ オートライトシステム
・ 先進ライト(自動切替型、自動防眩型、配光可変型等の前照灯)
・ ふらつき注意喚起装置
・ 視界情報提供装置(バック/サイドカメラ、アラウンドビュー等)
・ 車両周辺障害物注意喚起装置(周辺ソナー)
・ 運転者異常時対応システム

(4)対象の見直し
重大な事故の発生、技術の発展その他の事情の変化により、(1)から(3)までに変更が必要な場合には、十分な時間的余裕をもって予め関係者の意見を聴取し、検討するものとする。

(5)OBD 検査の開始時期
(2)で述べた通り[2021]年以降の自動車からOBD検査の対象とするが、実際にOBD検査を開始する時期、即ち、車検時に「特定DTC」が読み取られた場合に不合格とする取扱を開始する時期については、検査実施機関における準備や実証のための期間を考慮し、[2024]年以降とする。今後、OBD検査の実現のためには、自動車メーカーによる特定DTC情報の提供、ツールメーカーによる法定スキャンツールの開発、検査実施機関や自動車整備工場における機器の準備が必要であり、これらに関する技術面や実施面の論点や課題について更に議論を深めていく必要がある。

終わりに
車載式故障診断装置(OBD)を活用した自動車検査手法の導入のためには、行政のみならず、自動車メーカー、機器メーカー、検査実施機関、自動車整備工場、自動車ユーザーなど、幅広い関係者の理解と協力が不可欠である。このため、引き続き、本検討会等を通じて議論を深め、その早期実現を目指していくこととした。

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