自動車リサイクルの潮流 第108回:なぜ2輪車の解体業者が存在するか:日本と台湾の比較考察

4.日本の使用済み2輪車の処理ルート

 上記から、日本の使用済み2輪車の処理ルートを考察する。データ的には、やや古いが2000年の日本自動車工業会の調査の結果が参考になる。数量的に減少する中で、この構造が変わっているのか、変わっているならばどのように変わったかである。

 2000年の時点でも2輪車の解体業者は少ないとされた。少ないということ自体は変わらないだろう。ただし、今回見た限りでは、2輪車の解体(部品取り)はビジネスとして成り立っている印象があった。

 4輪車の解体業者もそうだが、2輪車の解体業者(または解体も行う関連業者)が扱う国内向け部品は付加価値の高いものになるのだろう。目利きがあるからこそ専門業者として成り立っているのである。

 そうなると、2輪車の解体業者は高年式の事故車などを集めて、解体しているものと思われる。また、2輪車の特徴として、人気のある車種は長く使用されるということがある。古い2輪車であっても、人気のある車種であれば、その部品の需要があり、解体業者はそのような部品を取っているのだろう。つまり、少量生産型の解体である。

 個人が部品取りをしてヤフーオークションなどに出品することは十分に考えられる。ただし、中古部品の場合はマッチングが重要であり、何が売れるかという目利きが必要である。個人はそれに注力する余裕はあるだろうか。

 仮にその余裕があるのであれば、中古部品(解体)の専門業者になっているはずである。この結果、個人に対して2輪車専門の解体業者の存在の余地はありそうである。

 上記のような解体業者が比較的年式の高い車種を扱うとすれば、中古2輪車の国内販売業者、修理業者と市場で競合すると考えられる。修理をして2輪車として販売した方がよいか、部品取り、解体をした方がよいかは、車両の状態によって変わる。

 よってそれらを兼業する者が存在すると言える。また、年式が高い車種がどの程度輸出されているかは分からないが、輸出業者とも競合することはあるだろう。

 一方、部品としての価値の低い車種については、輸出業者とスクラップ回収業者が回収している印象を持つ。廃棄される2輪車の数量(抹消登録台数)が減少しているが、輸出は大きく減少していない(阿部・木村,2017)。

 この結果、あくまでも予想でしかないが、2000年と比べると、スクラップ回収業者に引き取られる量が大きく減少しているのではないだろうか。スクラップ回収業者は、2輪車専門ではなく、様々な使用済み製品を取り扱う者である。この点で専門の解体業者が受け皿となっている4輪車とは異なると言える。

 以上を整理すると、2輪車の解体業者はリユース目的の部品取りにより付加価値を得る少量処理型として存在する。4輪車では少量処理型のみならず、資源回収目的の大量処理型の解体業者も存在するが、2輪車の場合は大量処理型の専門解体業者は存在しない。付加価値の低いものは輸出業者かスクラップ回収業者に引き渡される。このような流通・産業構造が現在の日本なのではないだろうか。

 輸出向けに解体し、部品取りをするという選択肢もあるが、これはどうだろうか。4輪車であれば、輸送費用を考慮すると、輸出前に日本で解体、部品取りをした方がよいこともある。しかし、2輪車の場合、部品取りの手間(コスト)に対する輸送費用は低いように思える。

 輸出業者は自社のヤードで部品取りもしていると思われるが、今回見た限りでは主要の業務として強調されない。そのため、輸出用の部品は国内では解体せず、丸車のまま輸出するということになるのではないか。一方で関税などの障壁も考慮すべきであり、さらなる議論が必要である。

5.台湾の2輪車の廃棄の行方

 これらを受けて台湾の市場を議論したい。まず、全体の流通構造だが、環境保護署でのヒアリングによると、2019年に台湾で廃棄された自動車(2輪車、4輪車)96.7万台のうち、2輪車は58.8万台だという。

 前年の2018年は、廃棄された自動車(2輪車、4輪車)は113万台であり、そのうち2輪車が72万台である。つまり、この2年だけの数値を見ると、台湾では2輪車の方が多く、廃棄された自動車の6割程度となっている。

 これらの廃棄された自動車には輸出が含まれている。ヒアリングによると2019年は中古2輪車の輸出は14.5万台とのことだった。つまり、廃棄された2輪車の24.7%が輸出である。外川(2001)では、1999年頃の状況が示されているが、そこでは廃棄された2輪車の27%が輸出である。これを見ると、偶然かもしれないが、あまり状況は変わっていない。

 一方、現場ではどうだろうか。今回、筆者が訪問した2輪車の解体業者A社では、輸出が30%程度であり、解体(国内処理)が70%程度とのことだった。別の2輪車解体業者B社でも、A社と同じであり、輸出が30%程度、解体(国内処理)が70%である。

 これ以外に前回訪問した解体業者では輸出が半数であり、その割合は変わっていないとの言及はあった(阿部,2020b)。事業者によって差はあるが、全体的に台湾では大量に廃棄される2輪車の受け皿は輸出というよりも、解体(国内処理)である。

 先述の通り、日本で廃棄される2輪車の行方について、圧倒的に多いのは中古2輪車の輸出である。使用済み2輪車を回収し、手解体により資源等を回収する、いわゆる2輪車解体業者は日本では一般的ではない。販売、修理とともに中古部品を販売する事業者が存在することは確認しているが、少量生産と考えられ、大量に排出される2輪車の受け皿とは考えにくい。

 これに対して、台湾では廃棄される2輪車を多く受け入れている解体業者が存在する。日本のように少量の解体で部品取りに重点を置くというよりは、資源回収目的で大量に排出される2輪車を次から次へと分別しているように見える。

 今回、阿部(2020b)の時とは異なる解体業者に訪問したが、そこも大量の廃棄2輪車を仕入、主に手解体で資源回収目的で2輪車を分別する解体業者だった。これを見ると、日本と台湾ではやはり流通・産業構造が異なると言える。

6.廃棄される2輪車に関わるインセンティブ制度

 次に、台湾の廃棄される2輪車に関わるインセンティブ制度について整理しておきたい。阿部(2020b)では何らかの制度があることに言及したが、今回、3種類のインセンティブ制度があることが確認できた。以下では、この3つを(1)資源回収管理基金、(2)廃車回収奨励金、(3)新車買い換え奨励金と呼ぶこととする。

 まず、(1)資源回収管理基金は、生産者が負担し、リサイクル業者が補助金をもらうものである。具体的に、2輪車の新車を生産、販売する際に生産者が800元(約2,928円,三菱UFJ銀行2020年2月17日)を環境保護署管轄の資源回収管理基金管理会に支払う。

 そして、そのような2輪車が使用済み後に認証されたリサイクル業者(以下「認証リサイクル業者」)に引き渡された際、同会はそのリサイクル業者に185元(約677円)を支払う。資源回収管理基金管理会のホームページを見ると、この制度は自動車(2輪車、4輪車)のみならず、容器類、電気・電子機器、タイヤ、電池、照明器具などが対象である。なお、2輪車について、環境に配慮した2輪車を生産、販売する場合、生産者の負担は650元(約2,379円)に減額される。

 次に、(2)廃車回収奨励金は、ユーザーが補助金をもらうものである。これについては前回の訪問でも確認されているが(阿部,2020b)、7年以上の古い2輪車の廃棄に対して、ユーザーは300元(約1,098円)の奨励金を得る。

 資源回収管理基金管理会、廃機動車輛回収系統などのホームページを見ると、認証リサイクル業者に引き渡すことでその奨励金を受け取ることができるようである。なお、4輪車については10年以上であり、奨励金は1,000元(約3,660円)である。

 一方、(3)新車買い換え奨励金は、2輪車を廃棄し、新しいものに買い換えた際にその購入者の物品税が減免されるものである。2輪車を認証リサイクル業者が処理した際に証明書が発行されるようで、ユーザーがそれを持って新しい2輪車を買うと4000元(約14,640円)の税控除がされる。

 この金額は地域差があり、財政が豊かな自治体では金額が高いようである。ヒアリングでは、この制度は(日本の財務省にあたる)財政部による景気政策であり、2016年から開始されたとのことだった。期間限定で、かつ年によって金額が変わることも聞いたが、これらの確認は次回の課題である。

 上記のような制度は、2輪車静脈市場を健全化させる効果がある。まず、車両そのものの放置・不法投棄が起きれば、その分の2輪車が静脈市場で流通しないが、制度により流通させることができる。

 具体的に、(1)資源回収管理基金の制度は、使用済み2輪車の取引価格を上げることができる。それがゼロまたは正になれば、放置・不法投棄を予防しうる。また、(2)廃車回収奨励金の制度では、使用済み2輪車の取引価格に300元が追加され、排出者にとっての適正引き渡しの便益を大きくする。

 さらに新車を購入するならば、(3)新車買い換え奨励金の制度により、その購入のための費用が減少(4,000元の減税)し、排出者にとってより放置・不法投棄が不合理になる。

 現実的にある程度のインセンティブの効果があったとしても、2輪車の放置を完全になくすことは難しい。2019年の台湾の放置2輪車は3.9万台だったという。そのような車両は、レッカー移動され、一定期間保管された後、競売によりリサイクル業者に引き渡されるようである。放置が一定数は存在するものの、その回収スキームと受け皿の産業の整備により、使用済み2輪車は流通していると言える。

 前回訪問したリサイクル業者(解体業者)のヒアリングではユーザーから2輪車を買い取るところもあれば、全て無償で引き取っているところもあった(阿部,2020b)。これを見ると、(1)資源回収管理基金の制度がなければ逆有償になっているのかもしれない。日本で言う廃棄物処理法のような制度により、逆有償でも使用済み2輪車は流通するが、放置・不法投棄のリスクを考えれば、(1)資源回収管理基金のような制度があった方が流通を効率化させると言える。

 また、認証リサイクル業者は、環境保護署が管轄する組織によりモニタリングされる。そこではエンジン番号などが確認され、合法的に処理されているかどうかを見るようである。筆者が訪問した2輪車解体業者では、1か月に1回程度、モニタリングがあるそうだ。

 エンジンについては前回の調査でも聞いたが、認証リサイクル業者はエンジンを分解しなければならないことになっている。エンジンの分解は認証を受けるために必要であり、リサイクル業者の倉庫には分解されたエンジンが並べられている。

 それはエンジンの部分品として売却できるだろうが、エンジン単体で販売する機会は失われる。分解のための費用もかかるため、売却益の差によってはエンジンを分解しない非認証の方が合理的という構造もありうる。

 もっとも、ヒアリングによると、法により認証を受けないと解体することはできないことになっており、それに違反をすると罰則があるという。環境保護署によると、非認証リサイクル業者はいないことはないが、環境保護署や自治体が適宜指導することで、減ってきているようだ。

図 1 警告の貼られた2輪車が一時保管されていた(2輪車の解体業者のヤードにて)

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