経済産業省 自動車リサイクル業界の課題とは

自動車リサイクル業界インタビュー

経済産業省製造産業局自動車課自動車リサイクル室

波留 静哉 氏

昨年7月から5回に渡り審議された「使用済自動車判別ガイドラインワーキンググループ合同会議」で、自動車リサイクル業界から注目されている経済産業省。その渦中の人物である波留氏に23年度の抱負を伺った。

月刊自動車リサイクル編集部(以下=編集部)

まず、室長の立場から現在の自動車リサイクル業界をどのように捉えていますか?

波留静哉自動車リサイクル室長(以下=波留)

毎年、350万台以上のクルマが使用済み自動車として流れている中、自動車リサイクル法ができて丸6年が経ちました。その間に、資源価格が上下したり、予想もしなかったリーマンショックが起きたり、それに対応する形でスクラップインセンティブや補助金の制度を打ったりと、状況が一変してきました。

それが昨年に終了し、ここ数ヶ月は解体業にとってクルマが入ってこない状況です。オートオークションでも奪い合いになって価格も高騰しています。その時の市況経済によって状況が変わるのがこの業界ですが、自動車リサイクル法の観点から見ればおおむね順調に機能してきています。

それは昨年の審議会でもご理解をいただき、かつ個々の問題点を解決するためのワーキンググループ「使用済自動車判別ガイドライン」に結び付いています。その都度、指摘された問題点をひとつひとつ解決していくというのが、われわれの役割だと思っていますし、反対に言えばそこの部分でいろいろな業界の方からお話をいただいて、実態に沿った形で改善していくのがわれわれの狙いです。

編集部 「使用済自動車判別ガイドライン」については結論が出たところですが、既に今後の具体的な活動は計画されているのでしょうか?

波留 次のステップというところで一番大きいポイントとしては、やはりリサイクルの高度化ですね。直近の数字を見てみてもハッキリしていることですが、消費が落ちているわけでして、当然、新車の販売台数も落ちている。新車の販売台数が落ちていれば使用済み自動車の台数も落ちていく。その流れで、これまで例年370万台という数字で推移してきた使用済み自動車の台数が、平成23年度はやはり落ち込むことが予想されます。

つまり、少なくなった自動車をいかに効率よく、かつ高付加価値のものとして取り出していくかが重要になってきます。そこで回収率を高めるという意味の高度化というよりは、質を高めるということが重視されます。「1台からいかに付加価値の高いものを取り出すか?」という部分にもつながると思うのですが、例えばレアアースやレアメタルですとか、そういうものを確保するのにリサイクルの段階でどのように貢献できるのか? そこに力を入れていきたいなと思っております。

レアメタルのリサイクルについては、矛盾点を抱えているわけです。例えばマフラーからプラチナを取るとしましょう。しかし、そこからは微々たる量しか取れないわけです。それをお金に直したら、加工料と取り出した素材の値段が対価として見合わない、ペイできないのではないかと。

だったらそのマフラーを単体で海外に売った方がいいじゃないかと。そういう経済とリサイクルをどう折り合いを付けるのか? また、どうすればより効率的になるのか? その問題に既に取り組んでいる研究機関はどのようなところがあるのか? などということは整理しておかなければなりません。

よく言われる「リサイクル貧乏」になるのもおかしい話です。しかし「バージンマテリアルを使った方が1円でも安いからこっちを使います。コレが入らなくなったらその時に考えます」ではダメでしょう? やはり静脈産業の重要な社会的役割というのがありまして、どの段階までがそれに当たるのか? その辺りも見極めておくのが今後のひとつのテーマだと思っています。

編集部 その付加価値を高めるための、具体的な検討計画はあるのですか?

波留 4月以降、平成23年度の話になりますが、経済産業省としてはリサイクル課で自動車や家電のみならず、法律で指導されていないような他の製品も含めたレアアース、レアメタルなどに関する審議会のようなものを設置して、議論を広めていこうと考えています。

統合的な議論になるでしょうが、既に自動車リサイクル法や家電リサイクル法があるので、それらとどう整合性を図らせていくかが議題になってくるかと思います。今以上に取れる素材があるのであれば、どこでどのようにやるのか? さらには法律に落とし込むのか? そういう議論になるでしょう。

ただし、既に自動車はしっかりとしたスキームがありますので、他のものと一緒に議論するには当たらないかもしれません。自動車については解体業や破砕業などでうまく調整されてきた長い歴史もありますので、そういう面では他の製品にも当てはまるのか疑問です。しかし、リサイクル全般の中で、自動車の立場から話せるのであれば、色々な形で協力をしなければいけないとは思っております。

(文中敬称略)

月刊自動車リサイクル2011年3月号