エコアール 自動車リサイクル最前線|ELV適正処理・中古部品販売・中古車販売

エコアール

あらゆる車両の価値を最大限に生かしてリサイクル

1959年から翌年まで、読売新聞に阿川弘之の「ぽんこつ」という小説が連載された。東京の下町でぽんこつ屋に勤める若者の恋愛と結婚を描いた作品である。栃木県足利市で農業を営んでいた、石井義幸氏が、この小説に興味を持ち、そしてモータリゼーションの夜明けを予期、自分の息子達に「お前達もぽんこつ屋を始めたらどうか?」と薦めた。

こうして1964年11月に、足利市山下町に自動車解体工場が開設された。初代社長は石井正勇(いしいまさたけ)氏である。その後、自動車の急速な普及により、社業は順調に成長した。新車、中古車を経て、使用済みになる車両が、次々と発生したからである。

同社は周囲から使用済み自動車を精力的に集めると共に、環境に配慮した解体作業を貫いた。これは、社長が農業出身であることと深く関係している。常に自然との調和を考える農業の思考が同社の基盤にあるからだ。

同社は、1989年に全天候型ELV解体処理工場を完成させる。2003年にはISO9001とISO14001をダブルで取得する。品質基準と環境基準の同時取得は業界初である。

2005年の自動車リサイクル法の施行に合わせて、同社は精緻な解体を行う全部再資源化認定工場となった。同年、これに対応できる新工場を西久保田工場団地内に開設し、社名をイシイカー工業有限会社から株式会社エコアールに変更、二代目の石井浩道社長が就任した。

石井浩道社長に最近の動向についてインタビューした。

エコアールの特徴は?

石井 日本国内で発生する使用済み車両は、その品質、年式、状態などにより、中古車販売業者、中古部品販売業者、解体事業者など様々な業種が購入し、それぞれの用途に活用されています。

エコアールの特徴は、この全分野に自社で対応できる「ワンストップ・サービス」を目指しました。これにより、あらゆる車両の買付けが可能になると共に、あらゆる車両に適切な価値を見出し、価格に反映することが出来るのです。すなわち、車両を仕入れる力が強くなるのです。

この商売、必要な量の車両を適正な価格で集めることが出来れば、何とかなります。逆に集まらないと苦しいですね。

現在の引取台数は、どれぐらいか?

石井 足利市は栃木県の南西部にあり、群馬、埼玉、茨城とも近いのです。

そこで栃木、群馬、埼玉、茨城の使用済み車両を、現状では1日約170 台程度引き取っています。月間では4,000 台程度になります。

当社は、おそらく日本で最初にレッカー車で廃車の引取りを始めた会社です。それまでの解体業者は、先方が届けてくれるのを待って解体していたのです。これでは計画的な仕入れが出来ないし、解体作業も計画的に進みません。

引き取りは社員が行っているのか?

石井 輸送課15 人で1日110 台を引取ります。
これに外注が60 台です。

仕入先は?

石井 半径40~50km圏内、約1,700 社より、万遍なく車両を集めています。
「4,000 台を集める場合、100 台ずつ40 社から集めるより、1 台ずつ4,000 社から集めるようにすべきだ」との会長の教えに従っています。

効率は悪いのですが、1社への依存度が高いと、その取引先を失った時の影響は甚大です。浅く広く集めたほうが商売は安定します。

仕入先の業態は?

石井 整備工場・鈑金工場が40%、中古車販売店が20%、新車ディーラーが20%、その他(買取店、リース、損保、個人客)が20%です。

10人の営業マンが客先を巡回して商談を進めています。
一方、個人客からの買取は弱いです。自動車ユーザーから直接購入して、既存のお客様がどのように感じるかが気になります。

従業員数は?

石井 正社員112名(2010年12月現在)常勤役員 3名非常勤役員 1名パート・アルバイト他 5名です。

敷地面積はかなり広いようだが?

石井 本社の敷地は約6,500坪です。この他に3500坪の車両の保管場所、900坪の従業員駐車場があります。
今後は、新たに工場の拡張を計画しています。国内の競争はますます厳しくなっていますが、引取り車両月間4,000台は死守、将来は5,000台に拡大したい。

広げることにより経費が掛かるのですが、解体手法を改善し、中古車や中古部品の売り先を拡大することで対応したいと思います。

解体工場の特徴は?

石井 全天候型の全部再資源化認定工場で、最終解体工程ではニブラ4台がフル稼働し、1日200台の処理能力があります。

廃液回収、フロンガス回収、エアバッグ作動処理など自動車リサイクル法に則った適正処理は当然ですが、当社では特に工場内の美化に注力しています。

工場内の床が汚れる原因は、床に零れた廃油や廃液がフォークリフトのタイヤに付着し、フォークリフトが動くことで汚れを広げるからです。
そこで作業エリアと通路を明確に分けることで、この問題を解決しました。 各作業場に鉄製のトレー(皿)を用意し、解体作業は全て、トレーの上で行います。 トレーの上に廃油が漏れたら、直ぐに拭き取ります。
これにより廃油・廃液が通路に零れることがないので、通路は常にクリーンです。

なお、トレーはフォークリフトで運ぶことができますので、自由に作業場のレイアウトを変えることもできます。
この方式は、当社に見学に来た方が自社の工場で採用しており、全国に広がっているようです。

最近の販売動向は?

石井 この商売は素材の相場に左右されます。鉄、銅、アルミの価格が高騰した2007年頃は売上も年商50億円まで届きそうでしたが、これは我々の実力ではなかったようです。現在の売上は年商32億円です。
今年度、上期はエコカー補助金の影響で超多忙でした。
下期は補助金が終了してディーラーは車両をオークションに出すようになりました。タマが無いので車両の仕入価格は上昇基調です。一方で鉄スクラップ価格は下がっていますので、素材の粗利は減少しています。

部門別の売上構成比は?

石井 素材30%、貿易30%、国内30%、用品&修理10%のバランスを目指していますが、現状は素材35%、貿易35%、国内と用品&修理で30%です。

従って、今後、伸ばして行きたいのは国内と用品&修理です。
手間は掛かりますし、知恵も必要ですが国内部品販売や中古車販売を伸ばしていくことで新たなマーケットを創造したいです。

中古部品の販売は?

石井 コンピューター制御の自動倉庫に常時、2万点以上の中古部品を在庫しています。ビックウェーブ等に加盟しており、同グループ等のオンラインネットワーク在庫から、顧客ニーズにぴったり合ったリサイクル部品を検索することも可能です。
この他、ヤフーオークションにも出品しています。

本社にタイヤショップも併設されているが?

石井 一般ユーザーのニーズを掴むためのアンテナ・ショップとして「エコアールタイヤショップ」を開設しています。
中古タイヤ&ホイール、中古カー用品を在庫し、取付けも併設のピットで行います。
ここで販売している中古タイヤは、専門スタッフによる品質検査に合格したものであり、タイヤ洗浄機にかけてリフレッシュしています。

中古タイヤは、一般ユーザーにとっては割安感があり、当社にとっては粗利率の高い商品です。現在、月商約1,000万円ですが、これを1,500万円、2,000万円へと拡大させたいと考えています。

中古車の販売は?

石井 敷地内に鈑金工場があり、修復可能なダメージカーの再生を行っています。鈑金工場には最新式のフレーム修正機や塗装ブースが整っており、リサイクル部品を活用して車両の再生を行います。

再生したダメージカーは、敷地内の中古車展示場で販売するか、中古車オークションの再生車両コーナーに出品して、国内・海外の中古車市場に送り出されます。

貿易については?

石井 貿易部門は過去10年で売上を20倍に伸ばしました。現在、世界50ヶ国と直接貿易しており、このうち13ヶ国のバイヤーが弊社のブース内に常駐しています。

海外バイヤーは以前、観光ビザで入国していましたが、これだと最大で3ヶ月しか滞在できません。担当者が短期間で交代することになり、我々にとっても商売がやりにくい。そこで、就労ビザ取得のお手伝いを当社でやることにしました。就労ビザでは最初は1年間滞在でき、次は2年、その次は3年となります。実務は行政書士に外注しています。

現状では、総売上の35%が貿易であり、貿易部門は少人数で運営しており、粗利率はトップです。

今後の展望は?

石井 短期的には知恵と工夫で国内販売に力を入れたいと思っています。しかし、長期的に見ると国内市場に不安要素もあります。

例えば中国から安い新品部品が入ってくると、中古部品の市場は影響を受けないか?という不安。既にフロントガラスは中国製の新品が破格の値段で入ってきて、市場を席巻しています。パネル部品や機能部品にも、同様なことが起こるかも知れません。

一方で自動車部品の変化です。新型レクサスには樹脂ガラスが採用されました。将来は「鉄より軽くて強い」といわれる炭素繊維強化プラスティックがパネル部品に採用されると、中古部品市場にどのような影響があるのか。これも未知数ですが不安要素です。電気自動車の到来もあります。
そのように考えますと、貿易、その延長としての海外進出が重要な明日への戦略の一つとなります。

具体的な進出計画は?

石井 中国への進出を計画しています。中国の自動車市場は急速に拡大しており、成都でも1日の自動車登録台数が約1,500台です。この活気溢れる市場で、何かやりたいなと考えて来ました。

中国における自動車リサイクル市場は、これからが本格的な発展期になります。現状は40年前の解体手法でやっているので土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等の問題があります。そこに日本の先進的な解体技術を入れて、これを標準化して横展開し、環境問題に対応したいと思います。(編集部注:取材は2010年11月19日に行われたもので、中国(成都)進出は取りやめになり、他地域での進出を検討中とのこと)

さらに、今後の夢ですが、発展途上国にエコアールのグリーンネットワークを広げて行きたいと考えています。
わが国は自動車を輸出することで発展して来ましたが、同時に環境問題も輸出したのだと思います。輸出した車両は、いつかは廃車になるからです。その廃車の適正な処理に、我々の解体のノウハウを現地に展開したい。

中国、ベトナム、インド、タイ、インドネシアやマレーシアなど、今後、大量に廃車が出てくる国をターゲットに進出し、これをネットワークで繋げたいと考えているのです。

株式会社エコアール

代表者 石井 浩道

住所 〒326-0324 栃木県足利市久保田町838-1 西久保田工業団地内

経営理念 人と地球の未来をみつめ、もったいない精神を尊重し、明るく楽しい社会の実現のため、環境産業全体の発展に寄与するとともに、それら全ての礎(いしずえ)となる全社員の幸福を追求します。

月刊自動車リサイクル2011年3月号

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