法人で保険を利用した節税方法とは

税務

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2011年6月号掲載

Q1:以前「税務質問箱」で、法人で保険を利用した節税方法が紹介されていましたが、もう少し詳しく説明してください。

A1.保険を利用した節税
前の記事では、例えば、毎年保険料100万円を5年間払ってから解約すると、解約返戻金400万円受け取れる、といった保険の場合、100万円の保険料を払うことによって約40万円の節税効果を得られるわけで、5年で200万円の節税をすることができるという説明をしました。つまり、100万円損して200万円得するので、総合的には100万円の得になるということですね。

ただし、解約返戻金は雑収入になってしまうので、400万円入金になれば、そのまま利益が増え税金も高く(160万円ほど)なってしまうので、これだけでは全く節税効果がありません。そこで、解約する年度に解約返戻金に相当する額の経費を作って雑収入分を相殺する必要があるのですが、その経費として最適なのが退職金を支給することなのです。

1.退職金に関する税金(個人)

退職金には税金(所得税と住民税)がかかるのですが、かなり優遇された制度になっています。
退職金にかかる税金の計算の基礎になる退職所得は、退職金全額ではなく、次の式によって計算した金額になります。

退職所得=(退職金-退職所得控除額)×2分の1

退職所得控除額は、次の式で計算することができます。

勤続年数20年以下 … 40万円×勤続年数
勤続年数20年超  … 800万円×(勤続年数-20)×70万円

つまり、20年までは1年ごとに40万円、20年を超えた期間は1年ごとに70万円の控除があるわけです。その金額を控除した上に、さらに2分の1した金額に対して税金がかかるのですから、相当に優遇されていることが分かります。
具体的な金額で考えてみましょう。例えば、30年勤した人に3,000万円の退職金を支給したとします。

退職所得控除額=800万円+(30-20)×70万円
=1,500万円
退職所得=(3,000万円-1,500万円)×2分の1
=750万円
750万円の退職所得に対する税額は、
所得税額=750万円×23%-63.6万円
=108.9万円
住民税額=750万円×10%
=75万円
合計=183.9万円
となり、手取りは3,000万円-183.9万円=2,816.1万円となります。

もし同じ3,000万円を賞与として受け取って通常の給与所得として課税された場合は、所得税・住民税合わせて約1,000万円になりますので、退職金がいかに優遇されているかが分かると思います。

2.退職金に関する税金(法人)

このスキームを利用することで、実際にどれくらい節税になるか具体的に考えてみます。法人で、毎年保険料400万円の全損の生命保険に加入し、10年後に解約した場合3,000万円の解約返戻金があるものとします。10年後に解約し、そのタイミングで社長が退職し、解約返戻金と同額の退職金を支給した場合、どれくらいの節税効果が見込まれるでしょうか。(毎年400万円の利益が出て、保険料を支払うことで利益が0円になり、社長の勤続年数は30年と仮定)

(加入しなかった場合)法人税:400万円×40%=160万円(毎年)
所得税・住民税:0円
増える現金:(400万円-160万円)×10年=2,400万円
(加入した場合)法人税:0円
所得税・住民税:183.9万円(上記2を参照)
増える現金:0円×10年+3,000万円-183.9万円=2,816.1万円

この場合416.1万円の節税効果があることになるわけです。
このように、生命保険を利用した節税スキームにはかなりの効果があるわけですが、退職金はいくら出してもいいというわけではありません。不相当に高額な金額については、損金にすることができません。役員に対する退職金で損金にできる額は、次の式で計算することができます。

退職時の月額報酬×在任年数×功績倍率

功績倍率は、特に法律で決められている訳ではありませんが、社長の場合で3倍程度が一般的なようです。

Q2:今度から贈与税が変更になると聞いたのですが、具体的にはどうなるのですか。

A2.平成23年度税制改正大綱
平成23年度税制改正大綱のうち相続税については、以前にご紹介しました。この時期、通常ですと法案として成立しているはずですが、震災の影響により現時点では成立していません。6月に国会に再提出される見込みであるとの情報もありますので、確定情報ではありませんが、今回は贈与税の変更点についてご紹介します。

贈与税の変更点

相続税の改正が基本的に増税であるのに対して、贈与税の改正は増税と減税の2つの側面があります。現在の贈与税の制度には、暦年贈与と相続時精算課税の2つの制度があり、それぞれに改正がありますが、どちらも若年世代に早めに財産を移し、消費に結びつける思惑のようです。

なお、法案が成立した場合、相続税の改正は平成23年4月1日にさかのぼっての適用になりますが、贈与税は平成23年1月1日にさかのぼっての適用になりますので注意が必要です。

① 暦年贈与

暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に110万円を超えて贈与した場合にかかる税金です。逆に言えば110万円までは無税で贈与できるため、この制度を利用して毎年少しずつ贈与することで、相続税の節税をするのは基本中の基本の節税方法です。現在は、110万円を超える金額に対して以下のような贈与税がかかっています。

 

110万円控除後の額 改正前
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15%-10万円
300万円超~400万円以下 20%-25万円
400万円超~600万円以下 30%-65万円
600万円超~1,000万円以下 40%-125万円
1,000万円超 50%-225万円

平成23年度税制改正大綱によれば、20歳以上の子、孫、ひ孫が受贈した場合には減税になり、それ以外の者が受贈した場合には増税になるように以下のような範囲・税率になります。(青字が減税、赤字が増税、黒字は従来通り)

20歳以上の子、孫、ひ孫が受贈した場合

110万円控除後の額 改正後
200万円以下 10%
200万円超~400万円以下 15%-10万円
400万円超~600万円以下 20%-30万円
600万円超~1,000万円以下 30%-90万円
1,000万円超~1,500万円以下 40%-190万円
1,500万円超~3,000万円以下 45%-265万円
3,000万円超~4,500万円以下 50%-415万円
4,500万円超 55%-640万円

 

それ以外の者が受贈した場合

110万円控除後の額 改正後
200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15%-10万円
300万円超~400万円以下 20%-25万円
400万円超~600万円以下 30%-65万円
600万円超~1,000万円以下 40%-125万円
1,000万円超~1,500万円以下 45%-175万円
1,500万円超~3,000万円以下 50%-250万円
3,000万円超 55%-400万円

②相続時精算課税

従来の相続時精算課税制度とは、65歳以上の親から20歳以上の子に贈与する場合に、暦年贈与代えて相続時精算課税制度を選択したときは、2,500万円の非課税枠までは税金がかからず、2,500万円を超える部分の金額に一律20%の税金がかかるという制度です。その名前の通り、相続発生時には改めて相続税額を計算し、既に納めた税金が多過ぎれば還付し、不足であれば納税になる、つまり相続発生時に精算するというものです。一度この制度を選択してしまうと、暦年贈与を適用することはできなくなりますので、これを選択する際にはどちらが有利か十分に検討する必要があります。

平成23年度税制改正大綱によれば、受贈者の適用対象に20歳以上の孫も付け加わり、贈与者の年齢要件も60歳以上に引き下げられました。

つまり、相続時精算課税件は、60以上の親又は祖父母から20歳以上の子又はに贈与する場合に適用可能となったわけです。

NBC税理士法人

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