税務調査について

税務

自動車整備士・整備工場経営の税務質問箱

せいび界2011年8月号掲載

Q:先日、当社(建設業)に税務署の調査がありました。当社では、下請業者(個人)への支払を「外注費」として処理していますが、税務署から給料ではないかとの指摘を受け、それに対応する所得税と消費税を払うように言われました。
その業者とは雇用契約を結んでいるわけではありませんし、お互い社員であるとの認識はありません。
どう考えても社員ではないのに、なぜ税務署は下請業者への支払を給料だと言ってくるのでしょうか。その所得税や消費税は払わなければなりませんか。

A.働く人の考え方の変化や雇用形態の多様化、さらには人件費負担を軽減したいという企業の考えもあって、製造業、建設業、運送業や小売・サービス業など様々な業種で、個人に外注として仕事を請け負ってもらうケースがあります。

人件費の軽減という観点では、給料であれば固定費となってそう簡単に削減できませんが、外注であれば流動費となりますので売上の増減に伴って、比較的容易に増減させることができます。

また、社員であれば原則的に厚生年金や健康保険、雇用保険といった社会保険をかけなければならず、そのための会社負担も相当なものですが、社員から外注にすることで社会保険料などを含む広い意味での人件費を削減することができます。
さらに外注化することには、企業にとって税務上のメリットもあります。

一つは、所得税の問題です。給料は、社会保険料や所得税、住民税等が天引きされて支給されますが、逆に言いますと、会社は社員の給料からそれらを引いて、税務署などに納めなければなりません(源泉徴収義務といいます)。社員の場合と違い外注であれば、一定の職種を除き、会社には源泉徴収義務はなく、天引きする必要もなければ税務署などに納める必要もありません。

二つ目は、消費税の問題です。前回ご説明しましたように、消費税は売り上げる際に預った消費税から仕入れたり経費を払ったりしたときに払った消費税を引いた残額を税務署に納めることになっています。給料には消費税は含まれませんが、外注費には含まれます。したがって、同じ金額であれば外注費として払った方が消費税は安くなるのです。

この給料なのか外注なのかという問題は、税務調査の際に問題になりやすいポイントの一つです。これにはいくつかの理由があります。

①給料か外注かの区別は、意外に曖昧なものだから
②税務署の立場からは給料にした方が都合がよいから

① については、次の項目で記載します。②については、上記のように外注化は企業にとって税務上のメリットがあり、それは同時に税務署にとってのデメリットなのですから、税務調査の際に注意して見られるのは当然と言えます。

税務署の言う給料と外注の違い

給料か外注かは、基本的には雇用契約に基づくものか、請負契約に基づくものかで決まるはずのものです。
ただし、それは実態に即したものでなければなりません。言い換えると、請負契約を結んでいても、企業が税金を節約することなどを目的に文字通り形式的に結んでいるだけで、実態は社員と同じように仕事をしているのであれば、外注とはみなされないということです。

具体的には、次のようのポイントを総合勘案して判断することになります。「総合勘案」というのがミソで、一つ当てはまっていれば外注であるとか、全部当てはまっていないと外注にならないとかではありません。

・外注先が、発注元以外の他社の仕事を請け負っている(あるいは、外注先が発注元以外の仕事を請け負う場合に、発注元の承諾を必要としない)
・外注先が自己の判断と責任で業務を行っている(発注元、外注先に対して仕事の内容や進め方への具体的な指示や指揮命令を行っていない)
・仕事に必要な材料や道具は外注先が自分で用意する(発注元が支給していない)
・外注先から請求書が発行されている
・報酬は外注先が自ら計算している(時給、日給、月給等の時間を単位として計算されているような場合は、給与と判断されるおそれがある)
・発注元の従業員同様の昇給や賞与がない(外注先では昇給・賞与はあり得ない)                                       など

ただし、建設業などでは、現場監督の指揮命令のもとで業務を行ったり、材料支給で請け負うことがよくありますし、業種や業務内容によっては、時給・日給のような決め方でなければ外注費を算定しにくいようなケースもあります。

したがって、外注費の要件の一つに該当した、しないという単純な判断ではなく、あくまで事情を踏まえて総合的に判断することになります。そのうえで、実態が雇用関係にあると判断されれば、給与と判定されます。

税務調査での実例

①建設業A社で、外注先(個人事業主)への支払が給料であるとの指摘を受けた件
これは、当時弊社のクライアントではなかった先の事例ですが、上記の指摘を受けたにも関わらず、当時の顧問税理士が適切な対応を怠ったため、弊社へ対応の依頼が来たものです。

外注先の中にはA社の仕事だけを請け負っている人もいましたが、他での仕事も請け負っている人もいたこと、道具は外注先が自分で用意していたことなどから、最終的には給料とはみなされず、是認を勝ち取ることができました。

この際に驚いたのは、税務署が外注先が確定申告をしているか否かで、外注か給料かを判断してきたことでした。
税務署との交渉の途中で、当初指摘のあった外注先のうち確定申告をしている先については給料とはみなさないと譲歩してきたのです。譲歩は譲歩なのですが、確定申告の有無が外注か給料かの判断材料になるとは全く思えず、結局確定申告をしている先についてさらに税金を取るわけにはいかないので、そのような譲歩をしてきたとしか思えなかったものです。(というより、確定申告をしていない外注先に税務調査に行かないのはなぜ??)

この事例から、外注を使っている場合には、企業防衛のため外注先にきちんと確定申告をするよう指導するように必ず伝えています。

②歯科医院Bから歯科技工士Cへの支払いが、給料であるとの指摘を受けた件

これは、特に弊社クライアントの事例ではありませんが、B歯科医院では、C歯科技工士に義歯・歯冠の製作を依頼し、その代金を外注費として処理していたところ、税務調査において、A歯科医院からBに、義歯等の材料の提供があったことから、その支払いが給与にあたるのではないかとの指摘を受けたという事例があります。

しかし、B歯科医院とCとの間で、業務内容について請負契約書を作成していたこと、Cが他の歯科医院からも業務を請け負っていたこと、材料は、Cが仕入れるよりもB歯科医院が調達したほうが安価であるという合理的な理由があり、CもB歯科医院に対して材料費を支払っていたことから、最終的には給料とはみなされませんでした。

建設業だけでなく、外注か給料かという問題は起きるという事例ですが、請負契約書を作成するなど形式を整えることも大事だと分かります。

もし、外注を給料とみなされた場合、長い期間にわたってさかのぼって追徴されることがあり、場合によっては数百万円、数千万円の追徴になることがあります。この問題は、基準があいまいなので100%確実な方法はないかもしれませんが、税理士とよく相談して、書類の整備などをしておきましょう。

 

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