自己破産で解雇は?&2重雇用は解雇できる?

ホステス解雇

自動車整備士・整備工場の労務相談室

せいび界2011年7月号Web記事

Q、自己破産をした社員を解雇できる?

うちの社員が自己破産した。理由は消費者金融からの借入である。ちなみに、当社の就業規則には「破産=解雇」と記載されている。この社員を懲戒解雇にしてもOKなのか?

A.

誰でも消費者金融から気軽にお金を借りることができます。そのため、自己破産する人が多いのも事実です。ちなみに、破産件数は平成18年度で17万5,000件となっています。

しかし、自己破産するような社員を欲しいと思う会社はありません。ですから、「自己破産=解雇」と就業規則に書いてある例が多いのです。では、自己破産した社員を解雇してもOKなのでしょうか?

繰り返しになりますが、多くの会社では、就業規則に「破産宣告=懲戒処分」と書いてあります。就業規則に書いてあるから、懲戒処分は有効だと考えられがちです。しかし、これは違うのです。

具体的な判例をご紹介しましょう。

<ダイハツ工業事件 昭和58年9月 最高裁>

○「自己破産=解雇」と就業規則に書いてあるが、解雇は無効
○無効の理由は「合理的な理由」が欠けている

ということです。

つまり、就業規則に書いてあっても、合理的な理由が必要なのです。合理的な理由とは、「社員の倒産が会社の運営を妨げているか」ということです。要するに、破産だけでは、解雇は認められないのです。なぜならば、社員1人が破産しても、会社の運営に影響はないからです。

では、会社はどうすればいいのでしょうか? まず、社員の給与の一定額が債権者から差し押さえられます。会社はこれに対応する手間が発生します。煩雑になりますよね。

次に、その社員と会社運営の問題です。自己破産すると、

○クレジットカード等の使用が不可

○借入等ができない

となります。

だから、個人的な資金繰りに困ることもあります。その結果、会社のお金を横領するリスクも出てきます。会社としては困りますよね。また、このような社員は自己管理もできていません。そのような社員に仕事を任せるのも不安です。お客さまからクレームを受けるかもしれません。

やはり、就業規則で「破産=懲戒処分」と明示することは必要だと私は考えます。これは、「破産=会社に迷惑がかかる」と認識させるためです。ただ、その手前で社員が破産しないように教育することが重要です。破産した社員を解雇するのではなく、破産者を出さないことが一番です。これを認知させるために就業規則を作るのです。

ただ、就業規則での対応が難しいなら、別の方法を考えましょう。例えば、

○社員生活Q&A
○従業員ハンドブック
○社会人になるに当たって

などの小冊子を配布するのです。特に新卒を採用する会社は必ず実行しましょう。しかし、中小企業は若い社員の教育制度が充実していない場合もあります。だからこそ、小冊子を作成するのです。これをもって、社員教育をするのです。

若い社員に社会のモラルを教えるのも会社の義務です。就業規則、ハンドブックなどで対応するようにしましょう。

Q.許可なく他社で働いている社員を解雇できるか?

うちの女性社員がクラブでホステスとして働いている。ただ、就業規則に「許可なく、他社に雇用されてはならない」と記載している。この規定で懲戒解雇とすることはできるのか?

A.

実際、昼はOL、夜はホステスという女性は「非常にたくさん」います。ただ、会社が知らないだけで、問題は「常に」水面下で起こっているのです。それが何かのきっかけで発覚し、大きな問題になるのです。

通常、就業規則では、

○許可なく、他の会社に勤めてはいけない
○この規則を破ったら懲戒解雇

などと規定されているかと思います。

この趣旨は「会社の業務に支障が出ることを防ぐ」ためです。しかし、「就業規則に記載=すぐに懲戒解雇」とはできないのです。

一般の会社の社員は公務員と違って、法律上、複数の会社に勤務してもOKなのです。つまり、「法律的に認められた権利」なので、「会社の就業時間以外=どこで働いても自由」なのです。よって、「すぐに懲戒解雇」とはできないのです。

ただし、懲戒解雇が認められる場合もあります。それは、

○懲戒解雇する正当な理由がある(就業規則に規定してあることが前提)
○常識的に誰が考えても解雇は妥当
○会社の勤務に支障が出る(居眠りなど)

などの場合です。

ここで実際の判例を見てみましょう。

<小川建設事件 東京地裁 昭和57年11月>

勤務時間外にキャバレーで働いていた社員が解雇された

就業規則では、他社での勤務は許可が必要

という状況です。

そして、裁判では、

○解雇は有効
○就業規則での許可制は妥当
○キャバレーでの勤務はアルバイトの域を超えるもの

となりました。

この判決では、「深夜の仕事=業務に支障が出る」との判断でした。だから、「解雇は有効」となったのです。逆に言えば、支障が出なければ、「法律上の権利は守られる」のです。今回のご質問のケースは、

夜のアルバイト「だけ」を理由に解雇はできない

業務への支障が明確なら、懲戒解雇できる

という結論です。

就業規則で「他社への勤務を許可制」としても、それだけでは懲戒解雇にできないのです。ただ、会社としては困りますよね。このような場合には、個別対応が現実的です。そのポイントは、

遅刻、早退、欠勤はどの程度か?

仕事の内容が会社の信用に影響するか?

などです。

そして、いきなり懲戒解雇ではなく、

他社で働くことを辞めさせ、始末書を書かせる

それでもダメなら自主退職を促す

などの手順が現実的です。

勤務時間外であっても、社員が他社で働くことは好ましくありません。特に夜のアルバイトは翌日の勤務に影響が出ます。直接的には影響がなくても、効率は間違いなく落ちているでしょう。細かいミスも増える可能性大です。もちろん、会社の信用問題に発展する可能性もあります。

最近の経済情勢は「100年に一度」の不況と言われています。給料が上がらず、アルバイトを考える社員もいるでしょう。だからこそ、この対応も事前に決めておくことが必要なのです。

特に、一般企業では「他社に勤務することのルール」を決められるのです。ただし、「強い表現での記載=法律上の権利を侵害」となりますので、微妙なさじ加減が必要なのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)