管理職

管理職の条件とは?&節税を前提の保険加入?

自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室

せいび界2013年9月号Web記事

Q、管理職の条件とは?

私は、「工場長は管理職である」という認識で今まで経営してきた。近々、工場長が定年退職するため、代わって工場長に任命する社員に対して説明をしていた際、「採用の決定に関与できないなら、管理職ではないと思います。だから残業代をください」と指摘された。果たしてそうなのか?

A、

残業問題に対するトラブルは常に多いですが、特に労働基準監督署の調査などでトラブルになりがちな部分が管理職の残業代についてです。なぜなら、管理職は「監督もしくは管理の地位にある者」で、労働時間、休憩、休日に関する規定の対象外とされています。まず、「監督もしくは管理の地位にある者」とはどんな者かというと、会社の経営方針、労働条件、採用の決定に関与しており、経営者と一体的な立場にいる者を言います。具体的には、重要な会議や採用面接に出席しているかどうかで判断します。そして、そのポジションの社員について、残業しても残業代を支払わなくてもOK、休日に働いても休日出勤手当てを支払わなくてもOK、休憩時間を与えなくてもOK、となっているのです。このことを利用して、残業代等の支払いを抑えるために、ポジションを与えている会社があります。しかし、法的には判断基準もあり、裁判などでは認められるケースがあります。

そこで、この件に関する裁判で直近のものを見てみましょう。

<セントラルスポーツ事件 京都地裁 平成24 年4月17日>

○エリアマネージャーだった社員が退職
○エリアマネージャーの期間は平成15 年~平成21 年
○その間の残業代等(1,898 万円)を請求するために裁判を起こした

そして、裁判の争点は訴えを起こした元社員が、「残業代等を免除される管理監督者に該当するか否か」で、結果は以下のようになりました。

○管理職手当が支給されていて、残業代が支給されなくても十分な給料
○自分の出勤、退勤について自ら決めることができる
○部下に対し、人事考課の決定権を有している
○職務内容が部門全体の統括的な立場である
○元社員の請求を退け、会社が勝訴した

この裁判でポイントとなった部分が、エリアマネージャーが「経営者と一体的な立場かどうか」という点です。この裁判では、次のようなことで管理監督者と判断しているのです。

○部門全体の統括的立場である
○自分の意思で勤怠を決めることができ、誰からも管理を受けていない

この裁判から言えることは「経営者と一体的な立場」とは、「部下の管理をある程度行っていればOK」「会社経営の決定権限までは必要ない」ということです。

逆に従業員が勝った裁判で有名なのは、日本マクドナルド事件(東京地裁 平成20年1月28日=東京高裁で和解)です。この裁判では店舗の店長が「管理監督者に該当するか?」が争われ、東京地裁では「管理監督者に該当しない」との判断が下ったのです。

つまり、会社は残業代の支払い義務あり、ということです。これは上記のセントラルスポーツ事件と比較しても「管理する部下の人数が異なっていた」「マクドナルド事件の場合、店長の出勤がシフトで決められていた」など、異なる点がかなりありました。

さらに、厚生労働省より「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗管理者の範囲の適正化について」という通達(平成20 年9月9日)がマクドナルド事件をきっかけに出ました。この内容は、以下のようになっています。

○店舗に属するアルバイト、パートの採用、解雇の権限があるかないか
→権限があれば管理監督者
○部下に対する人事考課を行っているかどうか
→人事考課を行っていれば管理監督者
○遅刻や早退等による減給、人事考課でのマイナス評価を受けるか
→減給、マイナス評価を受けないならば管理監督者
○長時間労働を強いられているかどうか
→労働時間を強いられていない立場ならば管理監督者
○給料等の待遇
→一般の社員と比較し、十分な給料等であれば管理監督者

しかし、多くの裁判例や行政の通達があるにも関わらず、常に問題が発生するのは、具体的な判断が難しいからです。そのための対策として、以下の規定等の導入をお勧めします。それは、「権限分掌に関する規定」や「決済権限規定」などです。

これらをルール化することにより、以下のようなメリットがあります。

○マネージャー等の管理職がどの業務まで権限を持っていて、決定できるかが明確になる
○会社のルールの下、権限が委譲されて実行されるので、管理監督者としての立場が明確化される
○裁判や労働基準監督署の調査で問われた場合、規定で明確にすることにより、運用の正当性が主張できる

さらに、裁判や調査等で調べられる項目は、次のようなものがあります。

○雇用契約書
○タイムカード、出勤簿など
○賃金台帳
○業務日誌
○就業規則
○賃金規定

こういう書類の整備が悪い会社はたくさんありますが、イコール問題が多い会社である傾向は間違いなくあります。書類を整理すると共に、規定の整備、運用をしっかりとやっていきましょう。そうしないと、多額の未払い残業代が降りかかってくることになるのです。

 

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