セクハラ

問題社員を辞めさせるには?&不倫?セクハラ?

自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室

せいび界2013年11月号Web記事

Q、問題社員を辞めさせるには?

新人ならば、ミスが多かったり、仕事が遅くても仕方ない部分はあるが、2年目も半ばを超えようというのに、相変わらずな上に注意しても文句ばかりの社員がいる。そろそろ限界なので、解雇するために準備することを教えてもらいたい。

A、

問題社員や能力不足の社員に対する悩みは、多くの会社が抱えていますが、彼らの存在によって他の社員に悪影響が出てしまっては、放置できません。なぜなら、モチベーションが下がり、会社全体の生産性の低下につながる恐れがあるからです。

もちろん、社員を大切にすることは経営の鉄則ですが、問題社員や能力不足の社員を甘やかすことが「社員を大切にする」ことではありません。真面目な社員と問題社員とを区別して、毅然と対応することが、責任ある経営者の務めでもあります。

しかし、問題社員を排除するには法律の高いハードルが立ちふさがり、社会常識的には「解雇は問題ない」と思われても、裁判等では「解雇無効」の判断が下されることも多々あるのです。解雇を無効にしないためにも、「問題点」をあぶり出し、改善するプロセスを踏めば、解雇が有効となるのです。これに関する判例があります。

<トムの庭事件 東京地裁 平成21年4月16日>

○美容室を経営する会社に入社した社員が、4 年後に店長を任された
○社員は店長になる前はカットの時間が長く、接客態度にも問題があったが、店長になることで改善を期待した
○店長就任後はスキルアップを怠るようになり、また、出勤時刻を偽り、遅刻等もごまかしていた
○常連客とトラブルになり、固定客の相当数が離れた
○会社は社員を店長からテクニカルリーダー、さらにアシスタントへと降格させたが、改善されなかった
○解雇前に3カ月の期間で最後のチャンスを与えたが、チャンスを自ら放棄したような勤務態度、勤務状況であった
○会社は社員を解雇した
○この決定に納得いかない社員は解雇無効を訴えて裁判を起こした

そして、裁判所の判断は以下のようになりました。

○スキルが自己流で、会社が要求する技術や方法を無視しているし、カット等の処理が標準時間内にできていない
○遅刻等で虚偽申請している
○常連客とのトラブルで実際に損害を発生させている
○降格させて様子を見たが、改善されない
○会社が再三の注意、指導を行っても改善の意欲も成果も見られない

結果として、「解雇は有効である」と会社が勝訴したのです。この裁判でのポイントは、解雇までのプロセスを押さえていることです。

○技術力が問題となっていたことについて
→カットの標準時間を抑えるように指示した
→会社が要求する技術と方法を具体的に提示した
→レベル、程度問題は他の社員と比較できるので、明確になる
○店長職から段階的に降格させ、勤務状況の様子を見た
→降格により、再教育の場を提供している
→注意、指導も徹底されている
○解雇決定前に一定の期間を定めて「最後のチャンス」を与えている
→一定期間という時間的な執行猶予を与えている

このように、(手順1)問題点の洗い出し、(手順2)降格等で再教育の場を与える、(手順3)最後のチャンスを与え、問題改善ができるか様子を見る、というプロセスを踏むことがとても重要なのです。

しかし、多くの会社では「問題がある→即解雇」としてしまうので、裁判等で「解雇無効」の判断がされてしまうのです。他の判例<全国給食共同組合連合会事件 東京地裁 平成元年2月20日>でも、以下のプロセスを踏んでいたため、会社が勝訴したのです。

○他の社員と比較して問題点を明らかにした
○習熟を要する業務では再教育を実施した
○配置転換や異動も検討した
○最後のチャンスを与えた

以上のことから、問題社員の解雇について重要なことは、「解雇まで会社が何をしてきたか」が大きなポイントとなるのです。このプロセスを踏めば、解雇が難しいものではない場合も多いのです。

問題社員が発生し、以上のプロセスを踏んでも、残念ながら改善されない場合は「解雇」が現実的となるのです。問題社員がいれば、役員だけでなく周りの社員も振り回される結果になります。

ですから、会社が前向きに進むためにも、「問題社員はなるべく早めにお引き取り願った方がいい」のです。しかし、そのプロセスは非常に重要なので、今回の内容をしっかりと覚えておいてください。

 

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