休職中の社員が復帰・・・&社員が裁判員に選ばれたら?

裁判員制度

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せいび界2013年3月号Web記事

Q、うつ病で休職中の社員が復帰、復職させなければならないのか・・・

うつ病で休職、復職を繰り返している社員が「復職可能」の診断書を持ってきた。今までの経緯を考えると、また休職するのでは? という疑いが強く、判断を迷っている。この場合、復職させなければならないか?

A、

うつ病は心の病です。心の病は外見からできないので、医師の診断書がポイントとなります。しかし、診断書がすべてではありません。なぜならば、医師の診断書は復職を判断する「1つの材料」にしか過ぎないからです。

もちろん、医師の診断書は「尊重は」されます。しかし、医師は担当業務など、具体的な仕事は分かりません。これが分かるのは会社だけです。ですから、診断書で「復職可能」となっていても、業務によっては、会社が「復職は無理」と判断することも可能なのです。

もちろん、医師が「復職可能」とした判断を否定する以上は、それなりの理由が必要となります。これに関して、次のような判例があります。

<マルヤタクシー事件 仙台地裁 昭和61年10月>

○ 社員が「復職可能」の診断書を提出
○ 会社は別の医師を指定し、その医師の診断書の提出を求めた
○ 社員はこれに応じなかったため、会社は復職を拒否
○ 社員は復職拒否を不当として、裁判を起こした

そして、裁判所の判断では、従業員が勝ちました。具体的には、以下としたのです。

 ○ 会社は「復職可能」の診断書を拒否した理由を明示すべき
○ 理由を明示せず、復職を一方的に拒否していることは認められない
○ 従業員は復職を申し出た時点で復職したものとする

つまり、診断書の判断を否定するには、明確な理由が必要なのです。例えば、別の医師の診断書などがこれに該当します。
ただし、今回の判例では、社員は別の医師の診断を拒否した上で勝っています。では、具体的にどうしたらいいのでしょうか。

まずは、以下を就業規則に記載します。
 ○ 本人の主治医に対して、会社が意見聴取できる旨
 ○ 会社が指定した医師に検診させることができる旨
そうすると、「本人の主治医は『復職可能』と診断」「会社指定の医師は『復職不可』と診断」した際に、「会社指定の医師の診断を尊重し、会社は「復職不可」と判断」ということが可能になるのです。
しかし、就業規則にこれらの記載がなければ、「主治医への意見聴取」や「会社が指定する医師への検診命令」はできないのです。ということは、本人の主治医の診断書を否定する根拠を会社独自で用意しなければならなくなるのです。正直、これは厳しいので、事前
に就業規則を明示しておくべきなのです。では、具体的な条文を見てみましょう。

1. 従業員は休職理由が消滅したとして復職を申し出る場合、医師の証明書(休職前と同様の労務提供可である旨)を提出しなければならない。
2. 第1項による証明書の提出に際し、会社が証明書を発行した医師に意見聴取を求めた場合、従業員は協力しなければならない。
3. 第1項の証明書が提出された場合でも、会社が指定した医療機関で受診させ、その結果によって、会社は復職の判断をすることができる。

このように就業規則で明示することにより、次のことができるのです。
 ○ 主治医への意見聴取
 ○ 会社が指定する医師への検診命令
 ○ 会社が指定した医師の判断を尊重
この記載がなければ、「本人の主治医の判断がすべてになってしまう」可能性が高くなります。
そして、これがすべてになると、業務の効率が落ちる場合もあるのです。実際、心の病は「休職、復職を繰り返す」ことが多いのです。「復職した→仕事が原因で再発した→休職した」ということを繰り返しては、会社も社員も不幸です。
しかし、復職基準が明確であれば、お互いに不幸になる可能性が低くなるのです。心の病は週刊誌でも取りざたされているように、非常に多い病気です。心の病で休職した人が発生してからでは遅いのです。

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