進化する通信システム

CAN

自動車整備故障診断整備のススメ

せいび界2013年06月号

進化する通信システム

前回は、汎用スキャンツールの標準仕様について紹介したが、今回は、スキャンツールを接続した際の通信システムについて紹介していく。以前の連載でも紹介したが、同じ車種であっても中身のコンピュータが同じだとは限らない。生産時期などマイナーチェンジにより、コンピュータのアップグレードがなされている場合がある。このように、エンジンコンピュータは、日々進化しており、そこに使われるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)の通信システムも進化している。中でも、ここ数年生産されている車両には、CAN システム(CAN=Controller Area Network)が搭載されている。

CAN システムとシステム上のメリット

CAN システムとは、車両ネットワークの総称で、その開発までの経緯を紹介する。
まず、元々CAN システムが搭載される以前の車両には、多くのECUがそれぞれ独立して存在し、ソケットから一本一本の線がそれぞれのECU に接続されており、各ECU が孤立した配線になっていた。
さらに、ECU からその先のセンサーにも、また一本一本配線がなされているという状態になっていた。
これでは「この配線の数が無駄である」ということで、ボッシュによってCAN システムが開発されたのである。

CAN システムでは、ECU が1 つの輪のように、全てがリンクしているので、メリットとしては、無駄な配線を減らすことができる。
クルマの配線の重量は、車種によって異なるが平均で50 ~ 60 ㎏あるので、配線の無駄を失くすことで、軽量化も図れる。
また、軽量化以外のメリットとして、数多くある配線の接続箇所を減すこともできる。

接続箇所が少なくなるということは、それだけ接続不良も減る。今の電子システムの故障事例の中には接続不良によるものも多く、センサーなどもコネクターの接続が甘いと故障コードが出てしまう。しかし、CAN システムが開発されたことで、軽量化と接続不良の減少によって合理化が図られ、無駄な故障が無くなった。

さらに、CAN システムはECU が数珠つなぎで接続されたことで、通信速度も大幅に向上した。
この通信速度を上げなければならない理由として、一番身近なところでエアバッグがある。緊急時にすぐに展開をしなければならず、特に最近ではエアバッグの設置箇所も増えているため、コンマ数秒の違いが命に関わることもある。そこで通信速度の向上が求められているのだ。

■ 故障診断におけるCANシステムのメリット・デメリット

次にCAN システムの故障診断におけるメリットとして、「クルマの一括診断」が出来る点が挙げられる。
CAN システムが搭載される以前は、エンジンの調子が悪ければエンジンを見て、ABS の調子が悪ければABS を見るといった具合に一つ一つの故障診断をしなければならなかった。しかし、CAN システムではコンピュータが全てつながっているため、一回の診断で全てのコンピュータを見ることが出来るのである。

つまり、スキャンツールを接続して診断をすれば、すぐに故障の有無が確認でき、エンジンに1 つ、ABS に2 つ、トランスミッションにはナシといったように、全てのECU に問い合せができ、故障コードを呼び出せる。
これは、CAN システムでなければ出来ないことである。
この一括診断を活用すれば、お客さまから特に苦情が無かった箇所も、一斉に診断することが出来るため、故障の有無がすぐに分かる。
こういったシステムの進化により、以前は、一つ一つやり取りしていたものが、CAN システムが搭載されてから大きく変わった。
一方で、このCAN システムのデメリットとして、故障の影響が伝染することがある。

伝染するとは、例えば、「エンジンのコンピュータのセンサーが壊れました」と故障が出た際に、ABS や他のコンピュータにも関連した故障コードが出てしまうのである。
この場合、スキャンツールを接続し、故障コードを呼び出すと、「センサーの故障が○個」と出てくる。それは、同じエラーが各々のコンピュータに含まれているためである。 さらに現在は、CAN システムを進化させた「フレックスレイ」というシステムもあり、既にBMW に搭載されている。フレックスレイは、CANよりも、通信速度がさらに向上したシステムである。

しかし、世の中には、当然、CANシステムが搭載されていないクルマも数多く存在している。そういったクルマが入庫してきた際に、スキャンツールを使用して如何に故障診断整備をしていくか。次は、その事例を故障診断の流れと共に紹介していく。

■ 故障診断事例 故障コード「P0102」が出たら?

まず、チェックランプが点灯している、していないに関わらず、クルマが入庫してきたらスキャンツールを接続する。
今までやってきた通り、バッテリーの充電状態をチェックして、エンジンを始動して(イグニッションをオンにして)ECU に接続する。

接続後、まず行うのは車両の特定である。メーカーや社名、年式、排気量から、もしくは現在ならばDBAなどから始まる車両型式によってクルマのコンピュータを特定する。そうすることで初めて、このクルマのコンピュータを特定することができ、スキ
ャンツールとコンピュータがリンクし、通信を始めることができる。
コンピュータが特定出来れば、次に考えることは、「クルマの何処を診断していくか」ということである。基本的に入庫した時点で整備士は問診をしているので、調子の悪い部分は分かっているはずである。エンジンの調子が悪いのに、ABS を調べる人はまずいないだろう。

では、何処を見ていくかというと、今回はエンジンの調子が悪いということで、エンジンの診断を開始し、故障コードの呼び出しを行う。スキャンツールからクルマのコンピュータにアクセスして、コンピュータが記録している故障を呼び出し、表示させる。 ここで、表示される故障コードは「P0102」。エアマスメーターの故障コードである。故障コードが出れば、当然この後は修理をしなくてはならない。

通常であれば、ここで即交換することはないだろう。なぜら、交換をしても直らなかったなどの経験があるはずだからだ。
エアマスメーターは車種にもよるが、基本的に万単位の高額な部品のため、交換して直らなかった場合、お客さまに工賃を請求することも出来ず、また取り付けをしたために購入先に返品も出来ないなど、自身で負担するにはかなり金額の大きい部品である。

■ 貴方ならどうする?

そのため、スキャンツールをつなげて、故障コードが出たからといって、即交換という具合には行かない。
中には、ホットワイヤー式のモノであれば、専用クリーナーによる洗浄を行うこともあるかもしれないし、あるいは、カプラーを抜き差しするかもしれない。

そうしたことで、故障が直る可能性も無くはないが、それでは本当に故障原因を解明した訳ではない。
「それ以外の方法は何があるのか?」を次号で解説をするので、その前に「貴方ならどうするか」を考えていただきたい。

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