廃業

企業存亡 整備工場が消えていく・・・

先が見えない時代、後継者の不足…
一時代を築いた整備工場が少しずつ街から姿を消していく

東京都足立区の住宅街に構える創業30余年の鈑金工場が昨年末に閉店した。
最近では後継者がいない、売上が出ない、若者の車離れ、高齢者の判断ミスによる事故で資格の返上、不景気…様々な要因が重なり、この業界を圧迫している。先の見えないこの時代に廃業を決断したオーナーに話を伺ってきた。

廃業でよかった!?

今回取材した工場もその一つだ。社屋の半分は社長の手作りで、ディーラーの仕事を一手に受けていたこともあったが、現在は社長一人で残務整理をしている。廃業は今から4年前に社長がガンになって手術をし、「体力的にも気力的にもあと4年ぐらい」と店を閉めようと思っていた。
もともと社員7名がフル回転していたが、現在は同業者に頼んで雇ってもらう形となった。「後継者もいなくて辞められる時に辞められてよかった。事業を辞めるのが嬉しい訳ではないが、倒産するよりはまだよかったと思う」と、少し名残惜しそうに社長は語る。「業界が今だんだんおかしくなっている。低燃費の車が増えて地方ではガソリンスタンドがつぶれる。家電量販店で車を売っている時代だし、5年先も見えない時代だからこそ、このタイミングで事業を継がせるのは厳しい」と辛い胸の内を話してくれた。

ポイントは人との繋がりだった

鈑金工場は今、若手が本当に苦労をする時代でもあり、準備万端で二代目、三代目に事業を継がせられる企業がそれほど多くはない。借金がある、売上が悪い、会社が傾きかけているなど、経済がマイナス成長の時代なので、取り巻くマイナス要因は言い出したらきりがない。「それでも借金もなく、従業員を路頭に迷わせることもなく、抱えているお客さんも仲間内に引き継ぎ、保険の仕事を自宅で少しやっていけるように準備をしてきたから不安は無く辞めることが出来る。『借金があるから辞められない』と言う仲間がいる中で羨ましがられている。4年かけて整理もしたし、残りの人生を楽しく自由に生きてもバチは当たらないだろう」と社長。去り際がここまで美しいと同業者からも羨ましがられるのも頷ける。「人との繋がりが何事も大切だ。会社を始めて5年ぐらいは軌道に乗らなかったし、ある人との出会いで会社が大きく加速をした。

それから従業員は増え、設備投資をし、敷地を広げるなど、色々やった。ある時、ひいきにしてもらっていたディーラーから『大きな設備投資をしないと仕事が回せなくなる』と脅しをかけられて、『保証が取れないことはしたくない』、と言ったところ、担当者が『俺がいるうちは大丈夫』と言われたが、結局設備投資はしなかった。その人が2年で会社を辞めてしまい本当に投資をしなくてよかったと今は思うし、その話があってから3か月で仕事がぱったり止まった。結局は人との繋がりが仕事の枠も会社の大きさも変えていける。仮に設備投資をしていたら今辞められなかった」と人との繋がりを強調していた。
今回初めて廃業する工場を取材したが去り際にも色々あり、廃業する明確な理由が、将来の不安、継承問題、年齢の問題、これらが挙げられた。少子高齢化社会、現在の日本の修理工場は約9万社あるが、代替わりの時期に差し掛かっている。
生き残る会社、去る会社、どちらの選択も楽な道のりでは決してない。
(石川竜平)

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