実例に見る事業譲渡のポイント

弊誌に限らず、「今後ますます整備工場の廃業や合併が進むだろう」と業界各誌がこぞって書き立ててはいるものの、どこか別世界の話のようであまり現実感がないことは否めなかった。しかし、ここへ来てごくごく身近なところでの事業譲渡の話が舞い込んできたことを受けて、今回、事業譲渡を受けた整備工場を直撃し、実際の事例を教材として今後、事業譲渡をお願いしたい・受けたい会社双方にとっての注意点を紹介する。

営業エリアが広範囲に及ぶ吉田自工


今回、有限会社古田自動車整備工場(古田虎二社長)から事業譲渡を受けた有限会社吉田自工(吉田 剛社長)は、昭和45年に発足した吉田自動車工業を前身として平成5年に法人化して現在の吉田自工となった。
カバーする営業エリアは、地元の千葉県市川市~浦安市はもちろん、周辺の江戸川区、江東区、墨田区をはじめ、船橋市、千葉市、習志野市、柏市と広範囲に及ぶ。

きっかけは同社のキャパオーバーと先方の社長の健康問題&後継者問題
吉田自工は指定工場で、カバーエリアも広いものの、工場の敷地はJR 線の高架下という限られた土地であり、慢性的に車両が集中するという問題を抱えていた。それ故に、もう1拠点欲しいと思っていたところへ今回の話が舞い込んできたというわけである。
一方の古田自動車は社長がご高齢かつ病気を患っていて体調面で不安があり、なおかつ親族には後継者がいなかったため、譲渡先を探していたところだったのである。

交渉がスムーズに進んだのは両社に出入りしていた業者の存在
今回の事業譲渡がスムーズに進んだポイントについて、「ウチのお客さまに建設会社の方がいらっしゃいまして、たまたまその方が先方にも出入りをしていて、何かと間を取り持ってくださったのが大きかったですね。銀行の方に聞いた話では、こういった譲渡の話は8割方揉めると言っていましたし。実際、先方とは整備業としての意識や文化のズレもありましたが、この建設会社さんがこちらの要求をうまく通してくれました」と吉田社長は語る。
以前にも事業譲渡の話を持ちかけられたことがあり、整備業に全く明るくない息子さんが出てきて、あまりにも金額の話を前面に出し過ぎてご破算になったというから無理もない。

譲りたい業者に対するアドバイスは「お客さまと従業員のケア」を考える
逆に、事業譲渡先を探している業者に対してアドバイスがあるとすればと吉田社長に伺うと、「やはり、今あるお客さまをどうしたいのかを最優先に考えるべきだと思います。『この会社はウチのお客さまを大事にしてくれそうか』という視点で譲渡先を選ぶとよいと思います。実際、当社も『工場の経営者が変わってもお客さまに迷惑をかけてはいけない』という気持ちで事業をお受けしましたから。それと、従業員の方にいかに納得してもらうかということも忘れないでいただきたいです。譲渡先に人的余裕がない場合、新工場は誰が担当するのか? という問題も発生してしまいますので。一番よいのは、譲渡元の従業員も受け入れてそのまま担当してもらうことです。お客さまも違和感なくご来店できますし」とのことだった。
たしかに、譲渡先が業務拡大ばかりを先行させてしまうと、人材確保の問題を見落としてしまいかねない。譲渡に関係なく人材の問題は常に忘れてはならないのだと改めて気づかされた。

 

取材から見えた
事業譲渡のポイント

タイミングは早く
譲渡を決断したら、なるべく早く動くのが望ましい。話の性格上、ある程度のパワーが必要であり、考えたくはないが廃業や社長の逝去というマイナス要因が加わってからではより一層パワーが必要になる。できれば仲介者を立てる 多かれ少なかれ意識のズレや文化の違いが生じる。これを当事者同士で解消しようとすると、それはそれでパワーが必要になる。できれば双方の事情に明るい仲介者を立てるのが望ましい。

お客さまをどうするか?
仮に廃業する場合、お客さまに「廃業します。今後は○○(仲間の整備工場)に行ってください」と案内を出すのは簡単だが、地域密着で営業している以上、廃業後の自分がどういう目で見られるか?大事なお客さまをどうケアするか?を忘れないでいただきたい。

従業員をどうするか?
譲渡に伴って従業員が失職しないよう、できれば譲渡先に雇用してもらえるよう働きかけたい。譲渡先も人的余裕があるとは限らないし、経営者は変わっても同じ工場に勤務できれば、お客さまも安心である。ただし、「なぜ自分たちに任せてくれないのか?」というしこりが残らないよう、納得の行くまで話し合う必要もある。

通信環境の整理などは時間がかかる
譲渡を受けた拠点とのやり取りをスムーズにするため、電話などの通信環境を整える場合、申し込んでから実際に使えるまでには、名義変更→現地調査→工事とある程度の時間がかかることを頭に入れておきたい。

 

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