契約社員へ降格

1年契約の契約社員は途中解雇できない?

Q.人手不足を解消するため、人材派遣会社から整備士を雇用したが、先日、女性社員を執拗にデートに誘うというセクハラ行為に及んだ。解雇も辞さないつもりだったが、法律に詳しい同業者に「契約社員は途中解雇はできないはずだ」と言われた。果たして本当だろうか?

 

A.1年などの雇用期間が決められた社員を、一般的に「契約社員」と呼びます。業種によっては、契約社員や雇用期間が決められているパート社員が多くいる会社もあるでしょう。自動車メーカーにおける季節労働者などは、この典型です。労働契約法に明記されているため、契約期間が決まっている社員等を解雇することは原則として、できません。

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労働契約法 第17条(契約期間中の解雇等)

使用者は、期間の定めのある労働契約について、【やむを得ない事由】がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

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つまり、契約期間が決まっている社員等でも解雇できないのです。一般的に、契約期間が決まっている社員に「お引き取り願う場合」は、残りの期間の賃金の合計額を支払うことになります。なお、【やむを得ない事由】がある場合は解雇できます。

もちろん、期待レベルに達しない契約社員が入社することもあり、業務上、解雇したいこともあるでしょう。このような場合でも、本当に解雇できないのでしょうか?これに関する裁判を紹介します。

<リーディング証券事件>

東京地裁 平成25年1月31日

日本で博士号取得、投信会社で経済アナリストとして勤務していた経歴がある韓国人の女性証券アナリストを雇用期間1年間、試用期間は6カ月の契約で採用しました。しかし、入社後に日本語での文章作成能力が十分でないことが明らかになりました。また、上司の指示に従わない、越権行為を繰り返すなどもあり、約2か月半の時点で解雇としました。この女性は「この解雇は労働契約法第17条に違反する」とし、残存契約期間の未払賃金等と損害賠償金の支払いを求めて裁判を起こしました。

 

裁判所の判断

裁判で、採用時の日本語のレポートは日本人である夫に文章を見てもらったことが発覚。これは信頼関係を根本から喪失させるもので、労働契約法第17条の【やむを得ない事由】に該当すること。また、試用期間に関しても適性判断は3カ月もあれば充分であり、引き続き雇用しておくことが適当とは言えず、期間の満了前の雇用契約の終了も仕方ないとの判断から、会社側の勝訴となりました。

契約期間が決まっている契約社員などを、契約期間途中で解雇することは原則はできません。しかし、事例の裁判のように「やむを得ない事由」があれば、解雇も可能なのです。

もっとも、この裁判のように「語学スキル」等の能力不足が明確な場合はその解雇理由が客観的で、かつ、明確なものとなっています。

これに対して、協調性が無い、仕事ができないなどと言った主観的な理由の場合は「やむを得ない事由」として、裁判等は判断しないのではないかと考えます。

もっと言えば、契約社員の解雇は、一般社員の解雇よりもハードルが高いと考えてください。もし、契約社員等を採用し、「一緒に働き続けることが厳しい」と判断しても、即解雇は難しいので、以下をお奨めします。

〇初回の契約は3ヶ月間

〇次に半年や1年の契約を締結

○契約更新の条件を詳細に記載する

このような契約にすれば、雇用の終了するタイミングを計算できますし、会社が更新したくなければ、契約を終了させることができるのです。

契約社員を雇うことはどの会社でもありますが、最初から1年等の期間で雇用することはリスクがあることになります。

上記裁判でも、相手がその条件で承諾したかどうかは別問題として、当初の雇用期間を3か月等にすれば、会社側も解雇という決定をせず、試用期間の経過を待ち、更新しないということにしたでしょう。ここも1つの設定ミスな訳です。

もっと言えば、外国人なので、日本語が書けないことは十分に想定されたはずです。これを「採用時の日本語のレポート」が書けているからということで、 充分に日本語が書けると会社側が「勝手に」判断したのかもしれません。この部分は推察ですが・・・。

ただし、このチェックを採用面接時に「確実に」していれば、双方にこのような事態には至らなかったことでしょう。

結果、会社側にも「チェックもれ」というミスが起きていたと思われます。このように、「あっ、聞き忘れた、確認し忘れた」ということはどの会社でも起きている事実です。

入社後に「こんなこともできないのか・・・」というご相談もよく頂きますが、そのヒアリングを面接時に「適正に」していないことも非常によくあります。

このようなこと防ぐために【面接時に必要な知識、知恵】を解説したのが、 「採用・面接の極意と戦略的解雇の方法」です。是非、ご覧下さい。

http://www.success-idea.com/120101/

内海 正人 日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役

主な著書 : “結果を出している”上司が密かにやっていること(KK ベストセラーズ2012) /管理職になる人がしっておくべきこと( 講談社+α文庫2012)上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)/今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方! ( クロスメディア・パブリッシング2010)

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