就業規則はいつから有効となるのか?

就業規則

自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室

せいび界2015年8月号Web記事

Q、就業規則違反を起こした社員がおり、同規則に則って処分を下そうとしたところ、「労働基準監督署に提出していないから、この処分は無効だ」と主張してきた。規則は完成していても、未提出ならば無効なのだろうか?

A、

就業規則は労働基準法第89条で、労働基準監督署に届け出無ければならないと定められています。

また、届出をする会社は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」となっています。

そして、その事務所の所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

もし、この届出を怠れば、労働基準法の罰則が適用となってしまうのです(30万円以下の罰金:労働基準法第120条)。

しかし、就業規則を作成して、労働基準監督署に提出をしていなくても、就業規則そのものが無効となったり、効力が及ばないということではないのです。

これに関する裁判があります。

<コクヨ事件 大阪高裁 昭和41年1月20日>

○会社は就業規則を作成したが、労働基準監督署に届け出ていなかった
○社員が就業規則の解雇の条文に抵触したため、解雇とした
○社員は就業規則の届出がなされていないことは効力がないとし、また、解雇を不服とし裁判を起こした

そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。

○就業規則は会社が労働基準監督署に届け出なければならない
○就業規則を届け出ていなくても、効力がないということではない
○就業規則の内容を周知している場合は、効力は有効である
〇会社側の主張が通った

また、類似の裁判が以下にあります。

<関西弘済整備事件 神戸地裁 昭和51年9月6日>

届出を欠く就業規則は、そこで決められている労働時間制度の効力に何の影響もなく有効である。

このような結論を出しているのです。つまり、届出の無い就業規則も有効であることを裁判が認めているのです。

労働基準監督署に届け出をしないことは法的には違法ですが、就業規則の効力そのものの有効性とは別に考えないといけないのです。

また、就業規則を作成したら、社員に内容を知らせないといけません。労働基準法第106条では以下の通りとなっています。

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就業規則を常時作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他※厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

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※社内のイントラネット等で、就業規則を閲覧可能な状態にしておく

では、届け出はしたが、この「周知」を欠いた就業規則という場合、これは有効なのでしょうか?これに関する裁判があります。

<フジ興産事件 最高裁 平成15年10月10日>

〇社員が得意先の要望に応じず、トラブルを発生させたり、上司の指示に対して反抗的態度をとり、暴言を吐くなどして職場の秩序を乱した
○社員の行動は就業規則の規定に反すると判断し、懲戒解雇処分を実施
○社員は懲戒解雇以前に、取締役に就業規則について質問したところ、就業規則が備え付けられていなかった
○社員は備え付けられていない就業規則による懲戒解雇の処分に納得せず、裁判を起こした

そして、最高裁は以下の判断を下しました。

○会社が社員代表の同意を得て就業規則を制定し、それを労働基準監督署に届け出ていた
○就業規則の内容を社員等に周知させる手続きがとられていないまま、運用となった
○就業規則の効力が有効となる場合は、社員にその内容を周知する必要があるので、本件懲戒解雇は無効である(会社敗訴)

同じ結論を出している裁判が他にもあります。

<関西定温運輸事件 大阪高裁 平成10年9月7日>

会社が就業規則を内部的に作成し、従業員に対し全く周知していない場合、労働契約関係を規律する前提条件を全く欠くことになるので、この就業規則は効力を有しない。

このように社員等に周知がなされていない就業規則は「無効」となる可能性が高いのです。ですから、就業規則を作成したら、社員に周知することが重要なのです。

しかし、今だに、就業規則を作成しても社員に公開せずに、会社の金庫にしまっている会社も時々あります。

それから、場所的にいくつも拠点のある会社は、就業規則をそれぞれの拠点ごとに設置しないと「周知した」こととはならないのです。

本社では説明会を行い、就業規則が閲覧できる状態になっていても、支店などに閲覧できる状態となっていない場合などは、閲覧できない支店については、その効力が及ばないということになってしまうのです。

これでは、せっかく作成した就業規則でも「無効の就業規則」となり、何かあってもその効力を発揮することができないのです。

このような事態を招かないためにも就業規則を作成したり、変更したら社員に周知することが重要なのです。

このことは労働基準監督署に届け出るよりも優先順位が高いということを理解しておきましょう。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)