診断結果

車検時のスキャンツール活用

自動車整備故障診断整備のススメ

せいび界2014年5 月号

車検時におけるスキャンツールの活用方法

今回は、車検時におけるスキャンツールの活用方法について紹介する。
近年、格安車検や短時間車検のような大手車検チェーンが加盟店を増やし、存在感を増している。
ユーザーが直接クルマを持ち込み、短時間で車検が完了し、その日のうちにクルマを持って帰ることが出来る。
このように、一般ユーザーにも認知されているところだが、車検チェーンに未加入の整備工場も同様のイメージを持っていると思う。

そのため、近隣にある車検チェーン店に対抗するかのように、未加入の整備工場でも車検の価格を下げ、競合他社への顧客流出を防ごうとしているところも多い。
また、過去にも紹介したように最近のクルマは壊れにくい上に、故障してもすぐにコンピュータがカバーし、壊れていないように見せることがある。
そうした事情も相まって、SS などでは、何も手を加えず手数料だけ取って、車検に通すようなところもある。同様の手法で通すことだけを目的として、格安車検を謳っている整備工場も残念ながら存在する。

これは、いびつな価格競争であり、多くの整備工場からは、車検で儲けることが出来なくなってきたという声が聞こえてくる。
しかも、格安車検を謳っている手前、追加整備で単価が上がってしまうと、安価ではないと思われてしまって、顧客が離れていくのではないかと危惧している節がある。そのため、追加整備ではなく、さらに車検台数を増やすことで売上を伸ばそうと考
え、結果、忙しいのになかなか儲からないという悪循環に陥る。薄利多売のせいで、100 台で儲からないならば300 台をやるといった具合だ。
これでは報われない。

しっかりメンテナンスして欲しいと一般ユーザーは望んでいる

そこで考えてもらいたいのは、世の中のユーザーは、メンテナンスをどのように考えているのか、また、どのようなメンテナンスを求めているのかということである。
ボッシュが数年前に19 歳から59歳までの一般ユーザーを対象にWebで意識調査を行った。

我々、整備工場のお客さまの大半となる国産中古車のユーザーたちは、「車検や点検だけでなくクルマのメンテナンスは必要だと思う」という質問に60%の人が「はい」と答えている。
さらに、「クルマの状態を把握しておくことは大切だと思う」という質問には90%の人が「はい」と答えている。
これは、我々が思っている以上に、クルマをしっかりとメンテナンスして欲しいと考えている一般ユーザーが多いということを意味している。

その背景にあるものとして、平均使用年数が伸びていることが考えられる。現在、約16 年(乗用車は約12 年)にまで平均使用年数が伸びており、そうした古いクルマが増えていることが余計にクルマの状態が気になっている要因の一つだろう。
また、少子高齢化の影響もあると考えられる。若い時は、クルマの状態はあまり気にならないものだが、ある程度の年齢になってくると、そうも言っていられない。なぜなら高齢化によって反射神経が鈍るなどして、危機感を覚えた高齢者は、当然、クルマ
に安全性を求めるからだ。このような高齢者が増えれば、クルマをしっかりと整備して欲しいと考えるのも頷ける。特に、地方ではクルマは足代わりになるほど、依存度が高いため、クルマに対する安全性がより求められるようになるのである。

ユーザーニーズに対応するポイントはスキャンツール

こうした世の中のニーズがあるならば、整備工場もしっかりと対応していくべきである。にも関わらず、車検の価格を下げ、整備の質を落としてしまうのは、上記の一般ユーザーの考えに沿った行動とは言えない。
格安車検を求めるユーザーも確かに存在することは否定できないが、一般ユーザーは、しっかりメンテナンスして欲しいと考えている以上、そこはユーザーニーズに応えるためにも、まずは顧客の要望を聞くことが重要である。しかし、一般ユーザーはクルマのプロではないので、どこをどうしたらいいのか分からないものだ。また、メカニックのことをプロとして信頼しているので、全て任せれば全く問題ないと思っている。

また、ユーザー自身が要望を明らかにしてくれれば良いが、なかなか言ってくれないことが大半である。逆に、こちらが整備の内容について尋ねても、答えてくれるユーザーも少ない。であれば、こちらからしっかりとクルマの状態を説明して分かりやすい
提案をしていくことが望ましい。

ここでポイントになるのが、スキャンツールだ。スキャンツールがあれば、入庫したクルマの診断結果などをデータとしてプリントアウト出来るのである。メカニックの作業が、工場の中、それもなかなか目の届かない場所で行われていることもあるため、この機能を上手く活用すれば、診断結果をユーザーにも提出することが出来る。

スキャンツールをつないで、表示された故障コードを記録し、修理前後両方の診断記録を見せることで、自分たちが何をしたのかを説明出来る。そうすれば、ユーザーは間違いなく、「しっかり直してくれた」、「ここまでやってくれた」と思ってくれるだろう。

たかが診断結果のプリント1 枚と思うなかれ。どれだけ安心感に違いが出ることか! こうした積み重ねによって、信頼を勝ち得ていくことが、今後、整備工場が生き残っていく上で重要になるのは間違いない。

信頼を高めるためにスキャンツールを活用しよう

だからといって、意思の疎通をしやすい常連客にまでしっかりした案内をすることを求めはしないが、新規客の場合は、どこまで満足してもらえが重要になる。車検に出した後、戻ってきたクルマの調子が良くなっていれば、ユーザーはしっかり直してたのだと思って満足する。バッテリを充電しただけでも、セルモータを回した時のエンジンのかかり具合がかわり、その変化を感じることが出る。これも一つの整備であり、さりげないサービスである。

プロである以上は、高い意識をもってやっていただきたいし、ユーザも、我々に対して当然プロだからクオリティの高い仕事をしてくれると期待している。
今後は、入庫の際に最初からスャンツールで故障診断することに決めて、エンジン、ABS、エアバッグを見ていき、その中で細かいところが気なるようであれば、さらに見ていくようにする。このように、安全に関わ部分をしっかり診断して、なおかつデータの形で「何も問題はなかった」と言って示せば、ユーザーは納得でる。スキャンツールを持っているならば、どんどん活用して欲しい。また、持っていないのならば、持てば他と違う車検が出来ると差別化が出るのだから、ぜひ導入をして欲しい。

メンテナンスに対する意識・態度 (Web調査結果)

 中古輸入車
ユーザー
 新車輸入車
ユーザー
 中古国産車
ユーザー
 新車国産車
ユーザー
 最近の車は故障しないので、メンテナン
スは車検や法定点検で十分だと思う
 47.6% 54.4% 46.6% 55.3%
 車検や法定点検だけではなく、
車のメンテナンスは必要だと思う
 66.0% 62.1% 66.0% 61.2%
 車の状態を把握しておくことは
大切なことだと思う
 94.2% 88.3% 94.2% 94.2%
 車のメンテナンスは、面倒だと思う 42.7% 47.6% 52.4% 46.6%
 車のメンテナンスに関わることは、
楽しいことだと思う
 42.7% 28.2% 33.0% 31.1%
 メンテナンスに詳しくなく、
お店にまかせることが多い
 47.6% 62.1% 55.3% 59.2%

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