自動車リサイクルの潮流 第98回:地域別の抹消登録台数に関する統計整理

5.中古車国内流出入台数

 先に示したように、地域別の抹消登録台数は、前期末自動車保有台数+当期新車販売台数+当期中古車国内流入台数-当期末自動車保有台数によって算出する。中古車国内流入台数は、阿部(2018)でも示したように、『自動車統計データブック』に掲載されているが、他には見当たらない。

 よって、各年版のデータを入手する必要がある。先の通り、入手できたのは1984年版、1986年版~2018年版であり、データは1983年、1985年~2017年である。図5はこれを示したものである。

図5

図 5 都県別の中古車国内流入台数の推移(単位:台)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版より阿部新作成

 

 ここで目に留まるのは2000年の数値である。入力ミスを疑い、改めて確認したが、その点での誤りはなかった。全国合計でも2000年は145万台程度であり、1999年の185万台程度、2001年の197万台程度と比べると大きく減少している。

 急激な不景気により減少したということもできなくないが、翌年の回復を見ると、2000年のみ対象車種の範囲などで何らかのミスが生じたのではないかとも思える。いずれにしろこれを用いらざるを得ない。

 阿部(2018)でも言及したように、意外にも流入台数で最も多いのが東京都であり、埼玉県がこれに続く。東京都は、1990年代から2000年代前半は埼玉県を圧倒していたが、近年は大きく減少し、その差は小さくなっている。

 流入台数のピークは2000年代前半である。茨城県、栃木県、群馬県は東京都や埼玉県のほか、神奈川県や千葉県よりも少ない。当然ではあるが、人口などが影響していると思われる。

 同様に、中古車国内流出台数を示したものが、次の図6である。ここでも2000年の数値に違和感がある。全般的に東京都からの流出が圧倒的に多く、神奈川県、埼玉県、千葉県が続いている。

 東京都は、1980年代は増加傾向であり、1990年代前半から半ばにピークを迎え、その後緩やかに減少傾向となっている。神奈川県、埼玉県のピークは2004年である。千葉県は2003年がピークで減少傾向だったが、直近は増加傾向にあり、2003年の水準に近づいている。

図6

図 6 都県別の中古車国内流出台数の推移(単位:台)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版より阿部新作成

 

 図7は、図5と図6のデータを用いて、流入超過台数(=流入台数-流出台数)を示したものである。東京都と神奈川県は1983年の段階で既に流出超過であり、1992年に埼玉県が、2014年に千葉県が流入超過から流出超過に転じている。

 このように流出超過県の範囲が広がっている。東京都の流出超過は1991年が最も多く、1990年代後半以降は10万台前後と安定的である。流入超過県では、茨城県が最も多く、長らく3万台前後で安定的に推移している。

図7

図 7 都県別の中古車国内流入超過台数の推移(単位:台)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版より阿部新作成

注:中古車国内流入台数-中古車国内流出台数により算出した。

 

6.抹消登録台数と中古車国内流出台数の割合

 以上のデータを用い、都県別の抹消登録台数(=前期末自動車保有台数+当期新車販売台数+当期中古車国内流入台数-当期末自動車保有台数)の推移を示したのが図8である。阿部(2018)では、1983年と2017年の2時点間の比較から、東京都のみが減少し、他は増加していることを示した。

 今回の算出により、東京都の抹消登録台数は、1980年代は増加傾向であり、1991年にピークを迎え、減少傾向になったことが分かった。1983年の水準を下回るようになったのは2009年である。また、東京都の抹消登録台数は、2003年に二度目のピークがあったことも分かった。

 他県に関しても1980年代は増加傾向である。1983年と1990年を比べると、北関東3県(茨城県、栃木県、群馬県)よりも東京都周辺3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)の方が増加量、増加率ともに大きい。

 また、阿部(2018)では、1983年と2017年の2時点間で増加傾向としたが、それぞれピークがあり、それから減少していることが分かった。神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県は2003年、群馬県は2006年、山梨県は2007年が最も多い。2000年代以降、東京都の減少分を他県が吸収しているわけではなく、全体的に減少している様子が窺える。

 1983年と2017年の比較では、8都県合計における東京都のシェアは減少している(1983年:33%→2017年:22%)。その分、増加しているのは神奈川県、埼玉県、千葉県3県のシェア(1983年:44%→2017年:52%)である。北関東3県(茨城県、栃木県、群馬県)のシェアはさほど増加していない(1983年: 20%→2017年:24%)。

図8

図 8 都県別の抹消登録台数の推移(単位:台)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版、日本自全国軽自動車協会連合会ホームページ「軽四輪車 県別新車販売台数」、日本自動車工業会『自動車統計月報』各年3月版、自動車検査登録情報協会『自動車保有車両数』より阿部新作成

注:抹消登録台数は前期末自動車保有台数+当期新車販売台数+当期中古車国内流入台数-当期末自動車保有台数により算出したもの。1984年は中古車国内流入台数の数値がないため、1983年と1985年の平均値を用いて抹消登録台数を算出した。

 

 抹消登録台数のうちの中古車国内流出の割合は図9の通りである。図1で示した通り、この数値は全ての都県で増加している。東京都は、1980年代は30%台後半だったが、直近では50%前後で推移している。

 それに続くのが千葉県であり、1980年代は20%台前半だったものが、直近では39%程度となっている。埼玉県、神奈川県も同程度で30%台後半である。北関東3県は2005年頃が最も多く30%近くだったが、直近では25%弱になっている。

図9

図 9 抹消登録台数中の中古車国内流出台数の割合(都県別、単位:%)

出典:日本自動車販売協会連合会『自動車統計データブック』1984年版、1986年版~2018年版より阿部新作成

注:1984年は中古車国内流入台数の数値がないため、1983年と1985年の平均値を用いて抹消登録台数を算出した。

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