第149回 ベトナムの乗用車解体市場の構造を捉える

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

昨今、新興国・途上国では自動車の廃棄が顕在化するようになり、使用済自動車の発生が観察されるようになった。当然ではあるが、それは経済成長、モータリゼーションの進展により、自動車があふれ出したことが背景にある。それに加えて、現地調査の結果が蓄積され、どのような場所で使用済自動車が発生しているかが見えてきたこともある。さらにはSNSを含めてインターネットにより、顕在化しにくい身近な情報がより得られやすくなったこともあるだろう。

筆者もかつて新興国・途上国において使用済自動車をなかなか見つけることができず、タクシーのドライバーを含めて関係者に聞いて回るなど、悪戦苦闘した経験がある。そのような中、日本の過去と照らし合わせ、貿易構造を加味しながら日本と発展構造が異なることなどを示した。そして、使用済自動車が発生していないのではなく、顕在化していないだけであるという見解を示した。

ベトナムは例外的に使用済自動車の発生が確認でき、それを引き取る者も容易に見つけることができた。部品販売業者などの関係者も自動車解体業者の存在を知っており、インターネット上の記事でも示されるなど社会的に認知されていることは感じられた。ベトナムのタイやマレーシアとの違いは中古部品を輸入していないことである。これが自動車解体業者の認知度に関わっているのではないかと筆者は考えた。

一方で、ベトナムにおいては気がかりなことがあった。使用済自動車はハノイ市の北部に隣接するヴィンフック省イェンラック県テーロー(Tề Lỗ)地域で観察される。かつてはハノイ市のハドン区のあたりで使用済自動車を解体し、部品を販売する者が集積していたが、それが縮小し、その役割がテーロー地域に移ったとされる。

ただし、テーロー地域はハノイから車で1時間半程度の距離である。使用済自動車は人口の多い都市部で発生しやすいと考えると、よりハノイ中心部に近いところに自動車解体業者が立地すると考えるのが自然である。その点でテーロー地域は少々遠い印象があった。ハノイ中心部寄りに立地しないのはなぜか、そのからくりがわからなかった。

2023年8月、筆者は上記の疑問を持ちつつ、ベトナムを訪れた。そして、現地で聞き取り調査を行い、いくつかのことを知ることができた。本稿はこのベトナムに訪れた際の訪問記録をしておく。なお、ベトナムの行政の末端単位は「社」(xã)と呼ぶようであり(坂田,2017)、行政単位でテーロー地域を示すと正確には「テーロー社」と呼ぶのが正しい。「社」という呼び名は社名と混乱しがちである。また、この地域の自動車解体業者の集積地域は「テーロー社」に収まらず、隣の「ドンヴァン社」まで広がっている。そのため、本稿ではこの地域をまとめて「テーロー地域」と呼ぶこととする。

 

図 1 変わらず二輪車が多い(ハノイ中心部)

 

2.テーロー地域の乗用車解体

まず、テーロー地域の訪問記録をしておく。ハノイ中心部を旧市街のあたりとするとテーロー地域はその北西にあり、直線距離で40kmほどである。ベトナム統計総局によると、2022年のハノイ市の人口は843.6万人であるのに対し、ヴィンフック省は119.8万人である。ハノイの中心部は開発が進んでおり、高層ビル、マンションなども多く林立しているが、少し中心部を離れれば、広大な農地や自然が車窓に映る。現地でテーロー地域に向かう際も、同地域まで行かなくても使用済自動車を引き取って解体する者が、生まれてもおかしくないという思いは変わらなかった。

テーロー地域はこれまで幾度か訪れていたが、トラック、建設機械を中心とした使用済自動車のほか、エンジンなどの部品が置かれている店舗が集積している。ハノイ中心部ではなく、この地域に集積している理由を探るため、今回は乗用車に重点を置いた。乗用車であれば、使用済自動車は大都市およびその近郊で多く発生すると思ったからである。かねてよりこの地域の使用済みの乗用車は少ないという印象があったが、意識的に探すことはなかった。今回、探した限りでは乗用車が置かれていたのは3~4か所であり、思っていた以上に少なく感じた。

まず、1軒目の会社(以下「A社」)に入った。そこでは数台の使用済自動車のほか、多くのエンジンなどの部品が雑多に置かれていた。中に入って話を聞くと、乗用車を集めて解体しているという。解体作業場を複数持っており、監視カメラとモニターを用いて別の作業場の様子を確認するなどしていた。別の作業場は見られなかったが、使用済自動車の保管置き場は見せてもらった。そこでは10数台ほどの乗用車が置かれていた。

筆者の関心はなぜこの地域で乗用車の解体をしているかである。ハノイなど人口の多い大都市から使用済自動車を引き取っているのであれば、ハノイに近い同業者のほうが有利なのではないか。また使用済自動車の情報を得るために、ハノイなど大都市中心部近くに拠点を持ちたいのではないか等を聞いてみたかった。加えて、使用済自動車の集荷に競争がなく、近くに立地する必要がない場合もあるため、仮に独占的に使用済自動車を入手できるのであれば、そのからくりも知りたかった。

これについて聞いてみたところ、A社は使用済自動車をハノイだけではなく、ホーチミンを含む全国から仕入れているという。これは想定外の回答だった。そしてその情報は基本的には知人のネットワークによるものだが、自らが使用済自動車を探しに行くこともあるという。排出元は、一般企業、個人のほか、軍や警察もある。数量的には年間100台以上であり、日本車が多いとのことだった。

この会社に他の会社の事情を聞くと、この地域の同業者はせいぜい2~3社であり、A社の2分の1、3分の1ぐらいの規模であるという。集荷範囲は、この会社のように全国を対象とせず、運送費の関係から北部のみを管轄としているところもあるようである。いずれにしろ、使用済自動車の集荷範囲はハノイを中心とした経済圏ではなく、それよりも広いことが窺える。なお、全国にも同業者は多く存在するが、量的にはここが一番多いようである。ホーチミンは中古車として売却する事業者が多いとの話もあった。修理・整備事業を主体とする企業が使用済自動車を取り扱っているように想像した。

A社によると、仕入れる使用済自動車は1990年代から2005年までになるという。これよりも古い車はあるが、あまりにも古いものは部品が売れないため、買わないようである。基本的に売れるものを買うが、売れ残りはある。それらはこの地域にあるスクラップ事業者が鉄、アルミ、銅などとしてすぐに買い取りに来てくれるとのことだった。部品については、ハノイのチョチョイ市場が全国の部品販売の拠点であるとするが、販売価格は高いとする。この地域ではそれよりも劣る部品を置いており、チョチョイ市場と差別化をしている。なお、A社の代表者はかつてチョチョイ市場で働いていたこともある。そこでの経験からどのような部品が売れるかということを勉強するとともに、人脈、顧客を作り、信用を得たと話していた。

テーロー地域については、1980年代から伝統的に鉄や銅などのスクラップのリサイクル村として発展してきたと言及された。A社の代表者もこの地域の出身であり、土地が狭いハノイやその近郊に立地する意味を感じていなかった。ハノイについては、70号道路沿いに解体業者が存在しており、1985年から90年代は栄えていたが、国が土地を買収し、縮小していったこと、その結果この国の解体事業の中心がテーロー地域に移ったことなども話していた。

これらの話を聞いて、現状は量的に少ないことから全国で集めるという実態があり、それによりハノイの近くに立地する必要がないということが見えてきた。テーロー地域は、スクラップのリサイクル村として発展してきた経緯があり、同じ事業をやってきた家族や親戚、友人からノウハウを教えてもらう機会があり、比較的参入しやすい。そのようなことにより自動車解体業が成り立つ構造があると感じられた。

ただし、ここで筆者が気になったのは使用済自動車の集荷において「知人のネットワーク」を利用して情報を入手することだった。その「知人のネットワーク」がないと、使用済自動車を入手することができないのかどうかである。それにより、参入障壁が作られている可能性はあり、それが他の地域での解体事業を阻む要因になりうると思った。

図 2 使用済みの乗用車は少ない(テーロー地域)

 

3.他社の乗用車解体

筆者はテーロー地域を車で回り、乗用車を回収している他の業者を探した。B社の代表者と思われる者は若く、同じくこの地域出身である。ここに店舗を構えたのは出身地ということもあるが、ここがリサイクル村という理由もあるようだ。

B社ではあまり歓迎されていなかったこともあり、端的に先と同じようなことを聞いた。使用済自動車の集荷はやはりハノイをターゲットとしておらず、その範囲はそれよりも広いということが確認された。ただし、運送費がかかるため、全国ではなく、ベトナム北部地域が中心であるとのことだった。使用済自動車の仕入れは整備業者(ガレージ)のネットワークがあり、そこから情報を得ていると聞いた。そのようなネットワークがどのようなものかはわからなかった。

ハノイについて聞いてみると、そこで部品取りをするには年式が高いものでなければならないと話していた。ハノイ近辺でも解体を行う者はいるようであり、主として年式の高い車を解体しているという。これに対して、B社は低年式の車を解体していることから競合していないようである。

B社によると、テーロー地域の同業者(乗用車を扱っている事業者)は4社程度であるという。B社が立地した理由はやはりノウハウ、人脈が関係しているのだろう。同業者間では競争があるが、インターネットで販売するなど販売方法を工夫しているとのことだった。

A社、B社で聞いた内容は、他の会社でも同様だった。C社でも解体作業中だったこともあり、端的に話を聞いた。若い夫婦で10年ほどこの事業をやっているという。同じように使用済自動車の集荷において仲介人から情報をもらい、全国から使用済自動車を集めていること、地域の同業者のやり方をまねて使用済自動車を解体していること、同業者間の競争はあるが、販売方法を工夫していることなどを聞いた。ハノイに立地することはないのかという質問に対しては、ハノイは地価が高く、解体事業は割に合わないとも言っていた。そのようなことは絶対にあり得ないと言っているような表情が印象的だった。

筆者は、A社、B社、C社の後に、同じ地域内のドンヴァン社(村)に立地している金属スクラップ会社に立ち寄った。残念ながらヒアリングできなかったが、鉄のほか、非鉄金属を集めている様子は確認できた。A社、B社、C社のほうでも近隣の金属スクラップ会社に持っていってもらうということもあり、地域内の循環は確認できた。この金属スクラップ会社に立ち寄った後にテーロー地域経由でもう1か所、乗用車の使用済自動車が置かれているところはあったが、それ以外には見つけられなかった。

図 3 テーロー地域の自動車解体業者の敷地

 

4.トントゥエン地域の自動車解体

テーロー地域で聞き取り調査をしている中で、他にも自動車解体を行っている地域があることがわかった。それはトントゥエン(Thôn Thuyền)という地域である。それはハノイの北東にあり、バクザン省のディントリ社(村)にある。ハノイ中心部からバクニン省を経由して車で1時間半程度のところにあり、北西のテーロー地域と同程度の距離である。調べてみると、日本の愛媛大学により2013年の段階で調査がされており、日本でも知られていることがわかった(酒井編,2015)。筆者はスケジュールを変更し、このトントゥエンというところに行ってみた。

グーグルマップでバクザン省のあたりで「Thon Thuyen」で検索すると、すぐに特定の集落に行き着く。しかし、実際はそこではなく、別の場所にトントゥエンという通りがあり、その通り沿いに自動車解体業者が集積している。以下ではこの地域を「トントゥエン地域」と呼ぶこととする。

筆者の印象では、トントゥエン地域の自動車解体業者の集積の規模はテーロー地域より小さいように思えた。また、テーロー地域と同じようにこの地域もトラックなど大型車が多く、乗用車は少なかった。集積地から少し離れたところに古い乗用車が多数置かれているところはあったが、使用済みのものとして置かれているかどうかはわからなかった。

ここでも関係者に聞き取りすることはできた。この地域には100世帯が自動車解体関連のビジネスに携わっているという。ほとんどがトラック、バス、軍用その他の車両を扱っており、乗用車を扱う会社は3社ほどである。テーロー地域のことは当然に知っており、そことは競合しないとのことだった。トントゥエン地域はテーロー地域よりはリサイクル村としての歴史は浅いが、同様にスクラップの回収から自動車解体ビジネスに広がったようである。この地域の事情は記事でも確認できる(Báo Bắc Giang, 2014; Báo Giao Thông, 2018)。

部品の販売については、この地域まで部品を探しに顧客が買いに来るようである。その際に部品を交換するサービスも行っている。また、ハノイ方面の部品販売店やチョチョイ市場にも卸売りをしている。他には部品の輸出入はしないこと、解体時にフロンは放出していること、ウレタンや油は売却していることなどを聞いた。鉄や銅などのスクラップは近くの回収業者が取りに来るなどもテーロー地域と同じだった。

使用済自動車の集荷範囲もテーロー地域と同じ事情であり、ハノイやその近隣に限定されるのではなく、全国であった。整備業者のネットワークがあり、そこを経由して仕入れることも同様である。また、いろいろ聞いていると使用済自動車の集荷においてフェイスブック上のグループもあることがわかった。整備業者のネットワークとフェイスブックグループが一致するかどうかだが、それは正確には確認できなかった。

なお、トントゥエン地域に集積している解体業者は、今後、近くの土地に工業団地が建設され、そちらに移転する予定とのことだった。

図 4 トントゥエン地域でも乗用車を解体する様子は観察された

5.整備業者からの転身

さらに調査を進めると、トントゥエン地域のほか、ハノイ市でも使用済自動車を回収し、解体しているところがあることを知った。それは古くからあるハノイ市ハドン区のあたりではない。そこはハノイ市のバクニン省寄りのところで、ハノイ中心部からは北東に車で30分程度の距離である。筆者はトントゥエン地域を訪問した後、そこに立ち寄ることにした。

冒頭で言及したように、ハノイ市ハドン区のあたりからテーロー地域に自動車解体事業の役割が移転したとしても、やや遠いという印象があった。市場競争があるのであれば、よりハノイに近いところに立地したほうが使用済自動車の集荷において有利なのではないかという想像があった。これに対して、使用済自動車の集荷が全国であるということからその構造に納得しつつ、ハノイ市で使用済自動車を解体する者の存在を聞き、やはり存在していたかという感想を持った。

この自動車解体業者は、街道沿いにあるわけではなく、目につかない場所にあった。さすがにこれを見つけることは難しい。そこを訪ねると担当者が出てきて、中古エンジンが置かれている場所や解体をする作業所を見せてくれた。その後、別の場所に連れていかれた。そこはより広い場所であり、整備工場のように見えた。その奥の駐車場に多くの使用済自動車が置かれ、説明を受けた。

この担当者はそれまで整備業者をやっており、3年ほど前から自動車解体事業を始めたという。新型コロナウィルス感染症が蔓延しはじめて、部品がなくなり、それで自ら部品取りをしようと思ったようである。使用済自動車はテーロー地域などと同じく全国から集めており、年間200台程度である。そこには走行可能な車も含まれる。年式は、テーロー地域よりは新しく、2000年以降とのことだった。そのため、部品もテーロー地域よりは新しいものを扱っており、また価格も高い。部品の販売ルートはフェイスブック経由のほか、チョチョイ市場への卸売りもしているとのことだった。

使用済自動車の集荷は、これまでと同じで整備業者のネットワークから情報を得るようである。これはフェイスブックのグループとは異なるとのことだった。全国の使用済自動車の情報が写真付きで見られ、それを見て買うかどうかを判断するようである。写真は車を売りたい人がそのネットワークに送るようである。このネットワークは人脈によるもので誰でもその情報を得られるわけではないとのことだった。一方でフェイスブックでも使用済自動車の情報は流れているという。

整備業者のネットワークについて、筆者は当初から業界の親睦団体のようなものであり、そこに解体業者が参加しているというイメージを持っていた。そのため、使用済自動車の仕入れにおいて人脈があれば、他の同業者よりも有効な情報を得たり、優先的に引き取ることができたりすると考えていた。その意味で排出者である整備業者のネットワークの加入は一つの参入障壁である。ネットワークに加入すること自体、人脈が必要であり、経験の浅い者は入ることが難しいのではないか、テーロー地域の会社はそこに立地することで先駆者から紹介してもらいやすかったのではないか、などの想像を膨らませた。

そのような中、フェイスブックのグループもあることがわかった。尤も、フェイスブック上のグループも承認しないことにより参加を制限することができるが、仮に参加できるのであれば経験が浅くても有効な情報を得やすくなる。また、フェイスブック上では、使用済自動車を探し、情報を提供するブローカーもいるようである。ここで使用済自動車の写真などの情報が流れているようだが、全国からの情報を集めることができる。いずれにしろ、現代的で利便性の高い情報ネットワークの有効性を感じた。

なお、ハノイでこの会社と同じように解体を行っている者は他にいないという。ホーチミンも整備業者が部品取りを行っていることはあるが、少ないようである。自動車解体はある程度の台数がないとやれないため、小規模の会社は難しいだろうという見解だった。

 

図 5 ハノイ市内の自動車解体業者の置場

6.ハノイ市70号道路沿いの様子

筆者が最後に行ったのは、ハノイ市70号道路沿いの中古部品の販売店である。これは以前2度ほど訪問したところである。ここで聞いた話がこれまでのベトナムの自動車解体市場の構造を理解するうえで重要だった。1990年代にこの地域で自動車解体、中古部品の店が集積しており、都市化の進展とともにテーロー地域にその役割が移転したという話である。

場所は冒頭でも述べたようにハノイ市ハドン区のあたりである。ただし、70号線は行政区域の境界線になっており、それを境にハドン区とハノイ市タインチ県タンチエウ社に分かれている。筆者が訪問した店はより正確にはハドン区ではなく、ハノイ市タインチ県タンチエウ社にある。

筆者がかつて訪問したのは2014年のことであるから、それから9年ほど経っている。グーグルストリートビューで場所は確認していたが、果たしてその店があるかどうかは気がかりであった。様子を見るために訪問してみると、店は閉まっていたが、店そのものはあった。そしたらまもなく代表者がやってきて、近くの解体作業場に案内してもらった。そこには使用済自動車が数台あり、作業員がゆっくりと解体作業を行っていた。

そこでは、このビジネスを30年ほどやっていること、昔は軍用の車が多かったこと、近所の同業者が減ったこと、今は1990年代の車をメインに回収していること、中古のエンジンを用いて三輪車や各種機械が作られること、などを聞いた。また、他社と同じように整備業者や運転手の人脈があり、そこから使用済自動車の情報を仕入れること、インターネットにも使用済自動車の情報が流れていることなども聞いた。さらに、仕入れの範囲は半径50km圏内であるとのことだった。これまでの自動車解体業者は、ベトナム全土または北部から仕入れていたが、それとは異なっていた。部品販売においてはチョチョイ市場と繋がりがあること、長年の付き合いから運転手に紹介されており、その名前は知られていることを話していた。全国の各省に解体業者がいるという話もあった。

代表者も変わらず元気で顧客からの問い合わせの対応で忙しそうだった。ハノイで事業をしており、小回りの利く対応をしている様子から事業が継続されているのだろうと思った。

図 6 70号道路近辺の様子

7.まとめ

阿部(2014a)(2014b)では、上記の70号線沿いやテーロー地域の自動車解体の様子を記している。幾度か言及している通り、ハノイ中心部にはかつて70号道路沿いに解体業者は市場を形成していたが、その役割がテーロー地域に移転した。筆者は移転すること自体は疑問に思わないが、もう少し近くでもよいのではないかという考えを持っていた。

今回の訪問では、70号線沿いやテーロー地域以外に自動車解体業者が立地していることがわかった。そこには公的なライセンスや入札の参加などの制約はなく、市場競争の中、自動車解体業に参入できる土壌がある。テーロー地域やトントゥエン地域のようにリサイクル村から自動車解体業者が形成されるケースもあれば、整備業者が部品取りをする形で自動車解体業に参入するケースもある。それらが全国的に生まれている状態であると感じた。

日本では戦前から東京都墨田区などの中心部で自動車解体業者が形成され、経済成長とともに江戸川区や千葉県など中心部から離れた郊外に移転していった。筆者はどうしても日本の首都圏と対比をしてしまい、徐々に郊外に広がっていく構造が一般的であると考えてしまっていた。そのような構造が一般的と考えるのは、人口の多いところに使用済自動車が多く発生すると考えられるからである。そして、自動車解体業者が郊外に広がっていくのは、都市化により地価が上昇すること、近隣住民とのトラブルを避けること、使用済自動車の発生量の増大により手狭になること、郊外でも使用済自動車が発生することなどが理由としてあげられる。それにより、大都市に近い郊外のほどよい地域に自動車解体業者が定着する印象が強い。

しかし、今回の聞き取りにより現在のベトナムは日本の首都圏とは違う構造ではないかという考えを持つようになった。1つはテーロー地域やトントゥエン地域が以前からリサイクル村として形成されていたことである。つまり、もともと立地していたところで自動車解体、中古部品販売をするようになったというものであり、日本の墨田区から江戸川区、千葉県という移転経路のように都市化に伴って新たに開拓されたということではない。

また、使用済自動車の集荷の対象が全国であり、近くの大都市をターゲットとしているわけでもないことも日本とは異なる。日本の墨田区堅川地域に立地していた自動車解体業者が全国から使用済自動車を集めていた可能性はないとは言い切れないが、一般的には同業者よりも有利に集荷できるように使用済自動車の発生地域の近くに立地すると言える。ベトナムでは大都市ではそこまで使用済自動車が発生していないか、または発生していたとしても欲しい使用済自動車がないかである。年式が古すぎて直接スクラップ回収業者に引き取られるものもあるだろう。尤も、それはテーロー地域、トントゥエン地域の事情である。ハノイで発生する使用済自動車の価格が高く、テーロー地域、トントゥエン地域とは市場が異なる可能性もなくはない。

また、言われてみれば当たり前だが、現在のベトナムにおいて戦後間もない日本との違いは情報通信技術の発達である。現在のベトナムは全国から情報を瞬時に集めることができ、距離があっても欲しい使用済自動車の情報を得ることはできる。また、フェイスブックなどのように誰でも写真付きで手軽に閲覧できる情報源により、仕入れにおける他者との優劣もなくなってきている。日本においても依然として人間としての付き合いは重要だが、オートオークションが定着している今、集荷において人脈による参入障壁はかつてよりは薄れているように思える。

そのような中、使用済自動車が増加するにつれてベトナムの自動車解体業者の集荷の範囲がどのように変わるかである。情報においては距離の優位性は薄れたとしても、運送費の関係から距離の近いところの使用済自動車を選んでいくことが一般的なのではないだろうか。その意味では今回のハノイの自動車解体業者のような者が各省の都市部またはその近郊に現れていくことを想像する。そこでは年式の高い使用済自動車を取り合うのだろうか。一方で、比較的年式の低い使用済自動車を扱うテーロー地域、トントゥエン地域はどうなるかである。トントゥエン地域では工業団地が作られ、そこに移転するとのことだった。テーロー地域でも同じようなことになるかどうかである。あるいは年式の低い使用済自動車を扱う解体業者がよりハノイ近くに現れるかである。

 

参考文献

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