図 4 車の非保有世帯に対する非保有の主な理由(2019年、複数回答、単位:%)

第125回:アメリカの中古車輸出台数の算出における課題

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

日本をはじめ、アメリカ、ヨーロッパから様々な国に中古車が輸出される。脱炭素の流れから先進国を中心に電動化を促進する政策が進むことで、ガソリンエンジン車などの中古車がさらに輸出されることも想定される。問題はそれがどこにどれだけ行くかである。

アメリカの中古車輸出台数については、阿部(2016)や阿部(2017)において示されている。そこでは、アメリカの中古車輸出台数は品目の範囲が日本よりも狭いこと、アメリカの品目の範囲で日本の数量と比較すると日本よりもアメリカの方が若干多いことが示されている。

また、阿部(2020a)において、アフリカ向けの中古乗用車の輸出について、日本、EU(イギリスを除く27か国)、アメリカからの台数が比較されている。そこでは、2009年から2018年までの10年間のアフリカ向けについて、ベルギー、日本、アメリカ、ドイツ、オランダの順で多いことが示されている。

また、アメリカは品目の範囲が狭く、それを考慮しても順位は変わらないことが言及されている。その後、阿部(2021c)では韓国、阿部(2021d)ではイギリスのアフリカ向けの数量が示されており、ドイツとオランダの間に韓国、イギリスが入ることが示されている。

さらに、阿部(2021b)では、中東向けの中古車輸出を日本と欧州を比較している。そこでは、日本と比べるとEU(28か国)からの輸出は大幅に少ないことが示されている。加えて阿部(2021c)において、韓国の中東向けの輸出台数が算出され、日本とEUの中間に位置することを示しているが、この中にアメリカは位置づけられていない。

一方、阿部(2020d)では、日本、韓国、アメリカ、EU(25か国)のハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の中古車の輸出台数を見ている。そこでは、日本からはハイブリッド車、アメリカからはプラグインハイブリッド車の輸出が圧倒的に多いこと、アメリカのプラグインハイブリッド車の仕向地は日本とは異なる新興国・途上国であることが示されている。

以上のようにアメリカの中古車輸出台数は様々なところで示されているが、対象品目が狭いという課題があり、他国との比較においてはその議論は避けられない。このような背景の下、本稿では、アメリカの新車・中古車の区分のない数量に焦点を置く。

そして、中古車の数量を推計し、日本と比べてアメリカの中古車輸出台数はどの程度なのかを示すこととする。なお、対象年は主として2019年とする。

 

2.品目の範囲

先に示した通り、アメリカは、日本やEUと比べると、品目の範囲が狭い。具体的には、表1の通りである。HSコードとは、統計で用いられる品目に設定されたコードであり、その6桁を世界共通のものとする。各国は統計細分または細分番号と呼ばれるコードを追加し、品目を細分化する。

表 1 乗用車における新車・中古車の区分の有無

HSコード

品目

新車・中古車の区分

アメリカ日本EU
8703.10雪上車、ゴルフカー×××
8703.21ガソリンエンジン、1,000cc以下×
8703.22ガソリンエンジン、1,000cc超1,500cc以下×
8703.23ガソリンエンジン、1,500cc超3,000ccc以下
8703.24ガソリンエンジン、3,000cc超
8703.31ディーゼルエンジン、1,500cc以下×
8703.32ディーゼルエンジン、1,500cc超2,500cc以下
8703.33ディーゼルエンジン、2,500cc超
8703.40ハイブリッド(ガソリンエンジン)
8703.50ハイブリッド(ディーゼルエンジン)×
8703.60プラグインハイブリッド(ガソリンエンジン)
8703.70プラグインハイブリッド(ディーゼルエンジン)×
8703.80電気自動車×
8703.90その他××

出典:World Tariffより阿部新作成(2021年8月現在)

注:表中で「〇」は新車・中古車の区分があること、「×」はないことを示す。ただし、「〇」は全ての数量で新車・中古車の区分があるとは限らず、一部に区分のない数量も含まれる。

 

新車、中古車といった品目の区分は、世界共通の6桁のHSコードでは設定されておらず、各国の統計細分に委ねられている。よって、国によって中古の品目がないところもある。日本、EUと比べたアメリカのように、中古の品目が設定される範囲が狭ければ、それに基づいて集計された中古車輸出台数は過少になる。

また、表1で「〇」と書かれているHSコード内の品目であっても、全てが新車、中古車に明確に区分されているとか限らず、一部で新車か中古車かが分からない数量もある。本稿ではそれも検討する。

上記に基づいて、アメリカの乗用車輸出台数を算出すると、2019年の数量は270万台である。このうち、新車が119万台(44%)、中古車が99万台(37%)、新車・中古車の区分のない数量は52万台(19%)になる。また、新車・中古車の区分のない数量を除き、新車、中古車のみで合計すると、その数量は218万台になり、そのうちの中古車の割合は45%になる。

新車・中古車の区分のない52万台には、そのHSコード内に中古の品目の設定がないもの(HSコード:8703.10、8703.21、8703.22、8703.31、8703.80、8703.90)と、それ以外(HSコード:8703.23、8703.24、8703.32、8703.33、8703.40、8703.50、8703.60、8703.70)に分かれる。

前者は表1で「×」が付いているものであり、数量は49万台である。後者は表1で「〇」がついているが、中古の品目の範囲が部分的であるため、一部の数量で新車・中古車の区分がない。後者は3万台を下回り、多くはない。

図1は、アメリカの2019年の乗用車輸出台数を車種(HSコード)別に示したものである。それぞれの車種では新車、中古車および新車・中古車の区分のない数量に分けている。

図 1 アメリカの乗用車輸出台数(車種(HSコード)別、2019年)

図 1 アメリカの乗用車輸出台数(車種(HSコード)別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

 

新車・中古車の区分のない車種のうち、目立つのはやはりHSコード内で新車・中古車の品目の設定がないもの(表1で「×」が付いているもの)である。1,000cc以下のガソリンエンジン車(HSコード:8703.21)、1,000cc超1,500cc以下のガソリンエンジン車(HSコード:8703.22)の数量はそれぞれ9.3万台、8.7万台、電気自動車(HSコード:8703.80)は19.9万台になる。これらの車種は、日本、EUともに新車・中古車の区分があるため、中古車輸出市場の規模などを比較する際に注意を要する。

また、雪上車、ゴルフカー(HSコード:8703.10)も9.2万台と数量的に多い。ただし、この車種は日本やEUでも新車・中古車の区分がない。そのため、中古車輸出台数の比較の際に対象から外すことはできる。つまり、敢えて中古車の台数を推計する必要はない。

一方、上述の通り、表1のアメリカの列で「〇」と示した車種にも、新車・中古車の区分がされないものがある。例えば、1,500cc超3,000ccc以下のガソリンエンジン車(HSコード:8703.23)にはモーターホームが含まれるが(統計品目番号:8703.23.0110)、これに新車・中古車の区分はない。

モーターホームは他のHSコード(8703.24、8703.33、8703.40、8703.50、8703.60、8703.70)でも品目が設定されており、同じく新車・中古車の区分はされていない。他にも救急車も同じように新車・中古車の区分がない。

また、ハイブリッド車(HSコード:8703.40、8703.50)、プラグインハイブリッド車(HSコード:8703.60、8703.70)においては、モーターホーム、救急車のほか、1,500cc以下のもので新車・中古車の区分がない。それらの合計は2.1万台にもなる。これらのうち、どの程度が中古車になるのかを検討する必要がある。

 

3.仕向地別の算出

前節で見た新車・中古車の区分のない数量のうち、どのように中古車の数量を算出するかである。その際に、他の品目の中古車の割合を用いるという方向もある。先に示した通り、2019年の新車、中古車の輸出の合計(新車・中古車区分なしを除く)は218万台であり、そのうちの中古車の割合は45%になる。この45%を新車・中古車の区分のない数量(51.9万台)に掛け合わせてみると、23.6万台が中古車の追加分として推計できる。

図2は、2019年のアメリカの乗用車輸出台数を主要仕向地別に見たものである。各仕向地では新車・中古車別に区分している。これを見ると、国・地域によって新車・中古車の割合が異なることが分かる。中古車の割合が高いのは中東、東欧、アフリカといった新興国・途上国が多い。

図 2 アメリカの乗用車輸出台数(主要仕向地別、2019年)

図 2 アメリカの乗用車輸出台数(主要仕向地別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

 

図2には、新車・中古車の区分のない数量も含まれる。それはカナダ、ドイツ、中国、ベルギー、メキシコなどが主要仕向地になる。仮に、それらの国で新車が多く輸入されているとすると、上述した全体の中古車の割合45%という数値およびそれを掛け合わせた23.6万台という中古車の追加分は過多となっている可能性がある。そのため、仕向地ごとに中古車の割合を算出し、それに新車・中古車の区分のない数量を掛け合わせた方がよいと考えられる。

上記の背景から、各仕向地で新車、中古車の合計を分母、中古車を分子として中古車の割合を算出し、それを新車・中古車の区分のない数量に掛け合わせてみる。それに基づいて2019年の中古車の追加分(推計値)を算出すると12.8万台になる。

上記で示したように、全体の中古車の割合(45%)を用いて算出した中古車の追加分は23.6万台であるから、それとは10万台超の差が生じている。

図3は、新車・中古車の区分のない数量のうちの、中古車の推計値の推移である。これは新車・中古車の区分のない数量に中古車の割合を掛け合わせたものである。図3では、全体の中古車の割合を単純に掛け合わせたものと、仕向地別に中古車の割合を算出し、掛け合わせたものとを比較している。

図 3 新車・中古車の区分のない数量のうちの中古車の推計値

図 3 新車・中古車の区分のない数量のうちの中古車の推計値

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:「仕向地別の割合を用いたもの」は仕向地別に中古車の割合を算出し、新車・中古車の区分のない数量に掛け合わせたもの、「全体の割合を用いたもの」はその年の全体の中古車の割合を算出し、新車・中古車の区分のない数量の全体に掛け合わせたものである。

 

これを見ると、2019年の10万台超の差は例外的であり、他の年は1万台から2万台の差となっていることが分かる。100万台の規模になる中古車輸出台数からすると、この追加分の1万台から2万台の差は大きなものではない。しかしやはり、2019年のように10万台超の差が生じるのであれば、仕向地別に算出した方がよい。

また、全般的に仕向地別の中古車の割合を用いたものの方が少ないが、2010年のように仕向地別の割合を用いた数量の方が多くなるケースもある。そのため、全体の割合を用いたものは常に過多であるというわけでもない。いずれにしろ、仕向地別に中古車の割合を算出した方が良いと考えられる。

 

4.車種別の算出の検討

上記のように新車・中古車の区分のない数量については、仕向地別に中古車の割合を算出して合計することが望ましいと考えられる。ただし、仕向地別の中古車の割合は、車種に関係なく算出されるものである。エンジン・電気の違いや排気量の違いがある中で、同じ仕向地だからといって車種の違いを考慮しなくてはならないかという課題はある。

第2節で述べたように、新車・中古車の区分のない数量には、中古の品目の設定がないHSコード(表1で「×」が付いているもの)のほか、中古の品目の設定のあるHSコード(表1で「〇」が付いているもの)の一部が含まれる。

後者については、モーターホーム、救急車が該当するが、これらについては、同じ排気量で中古車の割合が算出可能なため、それを利用することができる。具体的に該当する各HSコードで仕向地ごとに中古車の割合を算出し、それを掛け合わせることで中古車の数量を推計する。

一方、中古の品目の設定のない排気量については、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車、電気自動車、その他に分けて考える。

まずガソリンエンジン車だが、HSコードでは8703.21(1,000cc以下)、8703.22(1,000超1,500cc以下)において中古の品目の設定がない。そのため、同じガソリンエンジン車でも排気量の大きいもの、具体的には8703.23(1,500cc超3,000cc以下)、8703.24(3,000cc超)における中古車の割合を用いることが1つの方法として考えられる。

図1を見ると、8703.23(1,500cc超3,000cc以下)、8703.24(3,000cc超)とでは中古車の割合は異なることが分かる。よって、1,500cc以下のものについては、できる限り排気量の近いものを用いた方がよいかもしれない。そこで本稿では、1つ上のカテゴリーの8703.23(1,500cc超3,000cc以下)の中古車の割合を用いることとする。

なお、図1は仕向地全体の数量を車種別に見たため、8703.23と8703.24の中古車の割合の違いが出ているが、仕向地別に見ると同じような値になり、排気量の違いによる差があまりないことが多々ある。例えば、カナダの中古車の割合は8703.23が1.4%、8703.24が1.6%であり、ナイジェリアも8703.23が99.5%、8703.24が99.7%である。

ただし、アラブ首長国連邦のように、8703.23と8703.24とでは、中古車の割合が異なることもある(8703.23:93%、8703.24:11%)。よって、ケースは少ないが、このような仕向地の数量が多ければ注意をしておく必要がある。

いずれにしろ課題はあるものの、できる限り排気量の近い車種で中古車の割合を提示することが望ましいとし、本稿ではガソリンエンジン車の8703.21(1,000cc以下)、8703.22(1,000超1,500cc以下)については、1つ上のカテゴリーの8703.23(1,500cc超3,000cc以下)の中古車の割合を用いることとする。

ディーゼルエンジン車については、表1の通り、8703.31(1,500cc以下)に新車・中古車の区分がない。この排気量の中古車の数量を推計する際は、ガソリンエンジン車と同様に、その1つ上のカテゴリーの8703.32(1,500cc超2,500cc以下)の中古車の割合を仕向地別に算出し、掛け合わせることとする。

ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車については、1,500cc以下に新車・中古車の区分がない。よって、ガソリンエンジン車などと同じように、その1つ上のカテゴリーの1,500cc超3,000cc以下(ガソリンエンジン搭載)または1,500cc超2,500cc以下(ディーゼルエンジン搭載)の中古車の割合を用いる。

また、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の1,500cc超のものは新車・中古車の区分はあるが、モーターホーム、救急車は同じ排気量でも新車・中古車の区分がない。よって、これらについてはハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の同じ排気量の範囲の中古車の割合を仕向地別に算出し、掛け合わせることとする。

課題は電気自動車(8703.80)である。プラグインハイブリッド車における中古車の割合が近いようにも思えるが、輸出台数を算出してみると主要仕向地が異なることが分かる(後に図6と図7で示される)。そのため、仕向地によっては電気自動車の数量が多くても、プラグインハイブリッド車の数量が少ない場合がある。

数量の少ない仕向地は、単発的な輸出もあるため、その数量およびそれで算出された中古車の割合に歪みが生じうる。本稿では、その他(8703.90)とともに、電気自動車に対しては乗用車全体の中古車の割合を用いることとする。

以上をまとめたものが表2になる。これらの作業において中古車の割合を仕向地別に算出して、各仕向地の数量に掛け合わせるが、範囲が狭いため、該当する仕向地が見つからず、中古車の割合が算出できない場合がある。その場合はその仕向地における乗用車全体の中古車の割合を掛け合わせる。それでもない場合は中古車の割合を0%として進めることとする。

表 2 新車・中古車の区分のない車種と中古車台数の推計方法

車種、HSコード推計方法
モーターホーム、救急車:8703.23、8703.24、8703.33、8703.40、8703.50、8703.60、8703.70)同じ排気量(HSコード内)の範囲における中古車の割合を仕向地別に算出し、それを各仕向地の数量に掛け合わせる
ガソリンエンジン車(1,000cc以下、1,000cc超1,500cc以下:8703.21、8703.22)8703.23(1,500cc超3,000cc以下)の中古車の割合を用いる
ディーゼルエンジン車(1,500cc以下:8703.31)8703.32(1,500cc超2,500cc以下)の中古車の割合を用いる
ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(ガソリンエンジン車搭載、1,000cc以下、1,000cc超1,500cc以下):8703.40、8703.60同じHSコードの1,500cc超3,000cc以下の中古車の割合を用いる
ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(ディーゼルエンジン搭載、1,500cc以下):8703.50、8703.70同じHSコードの1,500cc超2,500cc以下の中古車の割合を用いる
電気自動車、その他:8703.80、8703.90乗用車全体の中古車の割合を用いる

出典:筆者作成

 

5.仕向地別・車種別の中古車の割合の算出

まず、同じ排気量で中古車の割合を算出することができるモーターホーム、救急車から見ていく。これらの2019年の数量は全体で7,356台である。前節の方法に従って仕向地別に中古車の割合を掛け合わせ、各品目の数量を合計すると、中古車の推計台数は1,985台となる。

これにより、モーターホーム、救急車の中古車の割合は27%になる。この品目はカナダ向けの輸出が多いが、カナダ向けは全般的に中古車の割合が低い。それがモーターホーム、救急車における中古車の割合を低くしたものと思われる。

次に、同じ排気量で中古車の割合を算出することができないものを見ていく。1,000cc以下のガソリンエンジン車は、2019年に9.3万台輸出されている。同じく前節の方法に従って仕向地別に算出していくと、中古車の推計台数は3.6万台となる。その結果、中古車の割合は38%になる。

図4は、この1,000cc以下のガソリンエンジン車の2019年の輸出台数について、主要仕向地別に並べたものである。そして、各仕向地において算出された中古車の推計値を示している。

図 4 アメリカの1,000cc以下のガソリンエンジン車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

図 4 アメリカの1,000cc以下のガソリンエンジン車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:中古車(推計値)は表2に基づいて算出したもの

 

それを見ると、カナダ向けが3.8万台で全体の41%のシェアを占めるが、その大多数は新車であることが分かる。これにより全体における中古車の割合が低くなっていると言える。

また、1,000cc超1,500cc以下のガソリンエンジン車について、同様にして仕向地別に算出していく。2019年の輸出台数は8.7万台であり、そのうち中古車の推計台数は2.1万台となる(中古車の割合は24%)。図5に示すように、ここでもカナダが多いため、中古車の割合は低くなる。なお、1,500cc以下のディーゼルエンジン車においては、538台の輸出台数に対して中古車の推計台数は424台になる。

図 5 アメリカの1,000cc超1,500cc以下のガソリンエンジン車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

図 5 アメリカの1,000cc超1,500cc以下のガソリンエンジン車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:中古車(推計値)は表2に基づいて算出したもの

 

一方、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車については、前節で示した通り、モーターホーム、救急車のほか、1,500cc以下のものに中古車の区分がない。数量的には、日本でも同様であり、ディーゼルエンジン搭載(HSコード:8703.50、8703.70)よりもガソリンエンジン搭載(HSコード:8703.40、8703.60)が圧倒的に多い。

ハイブリッド車(ガソリンエンジン搭載)のうち、中古の品目の設定のない1,500cc以下の2019年の数量は8,663台である。このうち1,000cc以下が7,931台、1,000cc超1,500cc以下が732台になっている。この品目について、前節で示した手順で仕向地別に中古車の割合を掛け合わせると、1,500cc以下の中古車の推計台数は8,202台になる。そして、中古車の割合は95%になる。

プラグインハイブリッド車(ガソリンエンジン搭載)については、1,500cc以下は2019年の数量は12,118台である。中でも、やはり1,000cc以下が多いことが分かる(1,000cc以下:10,908台、1,000cc超1,500cc以下:1,210台)。上記の手順に従って、中古車の数量を推計すると10,791台になる。これも89%と中古車の割合が高い。

上記以外では、ディーゼルエンジン搭載のハイブリッド車、プラグインハイブリッド車があるが、そもそも数量的に少ない。ハイブリッド車(ディーゼルエンジン搭載)は全体で28台であり、それに対して中古車(推計値)は21台、プラグインハイブリッド車(ディーゼルエンジン搭載)は118台に対して、88台と出ている。

図6は2019年のプラグインハイブリッド車(ガソリンエンジン搭載)の輸出台数を主要仕向地別に見たものである。各仕向地では貿易統計上の新車、中古車の数量のほか、新車・中古車の区分のない数量を新車、中古車の推計値に代えて示している。

図 6 アメリカのプラグインハイブリッド車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

図 6 アメリカのプラグインハイブリッド車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:中古車(推計値)は表2に基づいて算出したもの

 

推計値を含めた中古車の割合は、主要仕向地の多くでほぼ100%となっており、新興国・途上国が多い。例外は図中では中国、ベトナム、ドイツであり、それぞれの中古車の割合は58%、0.2%、31%である。

これら以外ではカナダ(3.3%)、メキシコ(1.5%)なども低い。全体では2019年の輸出台数は9.9万台であり、推計台数を含めた中古車の割合は91%にもなる。

 

6.電気自動車

ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車とは異なり、電気自動車はその全数に中古の品目の設定はない。電気自動車の輸出は、2017年が4.5万台、2018年が6.2万台であり、2019年は19.9万台と急増している。このうち、どの程度が中古になるかである。

他の品目と同じように仕向地別に中古車の割合を算出し、それを掛け合わせて中古車の推計台数を示す。本稿では乗用車全体における仕向地別の中古車の割合を用いる。この作業の結果、2019年の電気自動車の輸出台数19.9万台のうち、中古車は9%の1.8万台と推計される。

中古車(推計値)のうち、ベルギー向けがシェア32%と最も多く、オランダ(22%)、台湾(10%)、中国(9%)、イギリス(6%)、ドイツ(6%)が続く。プラグインハイブリッド車とは事情が異なることが分かる。

図7は、2019年の電気自動車の輸出台数を主要仕向地別に見たものである。また、各仕向地では上記で算出した中古車の推計台数を示している。これを見ると、全体ではベルギー向けが半数近くを占めている。また、プラグインハイブリッド車とは異なり、主要仕向地のほとんどで新車の割合が高い。

図 7 アメリカの電気自動車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

図 7 アメリカの電気自動車の輸出台数(主要仕向地別、2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:中古車(推計値)は表2に基づいて算出したもの

 

気になるのはベルギーの数値であり、元のデータの信頼性の問題である。2017年、2018年のベルギー向けの実績はそれぞれ1台、5台であり、ほとんど実績がない状態だったが、図7の通り2019年に9.4万台となっている。これは急激な増加であり、不自然である。

一方、2020年は新型コロナウィルス感染症の影響もあり、その数量の扱いは慎重にしなければならないが、2020年のアメリカの電気自動車の輸出台数を見ると、やはりベルギー向けが最も多く、6.3万台となっている。

これは2020年の全仕向地の合計の41%である。2021年も6月までの実績であるが、ベルギー向けが4.2万台と最も多く、全仕向地の合計の51%を占める。

このような中、ベルギー側の輸入データを見ると、アメリカからベルギーへは2017年、2018年に887台、994台の電気自動車が輸入されていたが、2019年に7.2万台と急増している。2020年のベルギー側の数量も6.6万台である。つまり、アメリカ側の輸出台数と似たような動きである。これらからアメリカ側の統計は不自然であるとは必ずしも言えない。

また、表1にあるように、EUでは、電気自動車において新車・中古車の品目を設定している。それにより、EUの輸入データから新車・中古車の割合を算出することはできる。ベルギーで言えば、2019年の71,576台のうち、中古車はわずか17台で、中古車の割合は0.02%である。図7のベルギー向けの中古車の割合は、乗用車全体における割合6%で計算している。実際はそれよりも低いのかもしれない。

なお、EUの輸入データを見ると、ベルギーのように2019年に数量的に多い国で新車が圧倒的に多い国は他にはオランダのみである(新車:18,393台、中古車:576台)。あとは、全体的に少なく、また中古車の方が多い。

ドイツは46台の新車に対して、中古車は681台であり、中古車の割合は94%である。リトアニアは新車を輸入しておらず、中古車は266台である(中古車の割合は100%)。よって、先進国でも中古車の割合が高い。

現状は電気自動車の中古車が全体的に少なく、突発的な輸出も想定される。今後、供給量が増え、データが蓄積されていった時にどのような動きをするかである。特にプラグインハイブリッド車と同じように新興国・途上国向けに広がるかどうかである。

 

7.中古車輸出台数の合計

本稿では、表1のうち、雪上車・ゴルフカー(HSコード:8703.10)を除いた乗用車について、新車・中古車の区分のない数量から中古車の割合を推計した。上記で言及していないのは、「その他」(HSコード:8703.90)だが、この推計値は1.4万台(中古車の割合:71.3%)である。

これを含めた全体の中古車輸出台数の追加分(推計値)は11万台になる。中古車として設定された品目の合計は99万台であるから、推計した追加分を加えると、2019年のアメリカの乗用車の中古車輸出台数は110万台ということになる。

図8は、この中古車輸出台数を主要仕向地別に示したものである。これを見るとアラブ首長国連邦は日本と同様であるが、ナイジェリアやウクライナ、リビア、メキシコなど日本の主要仕向地ではないところが多い。推計値として追加された数量は主要仕向地で適度に分散されている。

図 8 アメリカの中古車輸出台数(2019年)

図 8 アメリカの中古車輸出台数(2019年)

出典:United States Census Bureauより筆者集計

注:実績値は貿易統計上の数値、推計値は表2に基づいて算出したもの

 

表1に示した通り、アメリカよりも日本の方が中古車の品目の範囲が広い。上記で示されたアメリカの110万台は、日本の品目の範囲に合わせた結果である。この範囲で算出した2019年の日本の中古車輸出台数は109万台である。これを見ると日本と同等の規模であることが分かる。

逆にアメリカの品目の範囲に合わせ、日本の数量から上記の品目を除くと、2019年の日本の輸出台数は59.5万台と大きく減少する。この範囲でアメリカが99万台であるため、それを見ると、アメリカの市場規模は日本の1.5倍超と見誤ってしまう。この点は注意を要する。

容易に予想できるように、日本とアメリカは構造が異なり、日本はよりコンパクトな車両の輸出が比較的多い。日本では、1,000cc以下、1,000cc超1,500cc以下のガソリンエンジン車の中古車輸出台数は8.2万台、40.1万台である。一方、アメリカにおいて、本稿で推計したこれらの数量は、それぞれ3.6万台、2.1万台である。特に1,000cc超1,500cc以下の数量が大きく異なっている。

もっとも、これは2019年の結果であり、他の年でも比較検討する必要がある。その際に本稿で行った作業をより精緻化すべきかどうかである。一方で簡素化するという方向もある。

本稿では第4節以降で車種(HSコード)別かつ仕向地別に中古車の割合を算出し、集計したが、車種で分けずに仕向地のみで中古車の割合を算出するという方法であれば、作業は大幅に簡素化される。

この簡素化した方法で推計した中古車輸出台数は図3の「仕向地別の割合を用いたもの」の数量である。このうち、2019年の中古車輸出台数の追加分(推計値)は12.8万台であり、中古車輸出台数の合計は111.8万台となる。第4節以降に検討した車種別、仕向地別で算出した数値(110万台)と大きく変わらない。

図9は、貿易統計上の中古車輸出台数に推計値を追加したものである。推計値は、車種(HSコード)別を考慮せず、単純に仕向地別に中古車の割合を算出して推計したものであり、図3の「仕向地別の割合を用いたもの」の数量である。

図 9 アメリカの中古車輸出台数の推移

図 9 アメリカの中古車輸出台数の推移

出典:United States Census Bureau、日本財務省貿易統計より筆者集計

注:実績値は貿易統計上の数値である。推計値は車種(HSコード)を考慮せず、仕向地のみで算出されている

 

日本と比較をするとそれぞれ変動があり、なんとも評価できないが、10年間の合計では日本の方が若干多いという結果となる(日本:945万台、アメリカ:863万台)。

日本は、リーマンショック後の世界恐慌およびロシア等の輸入制限により、2008年からしばらくは中古車(乗用車)輸出台数は少なかったが、近年は100万台前後で推移している。アメリカは2013年から2016年に減少し、その後回復しているが、この時期に何らかの事象が起きたのだろう。これらの事情は確認しておく必要がある。

なお、これら以外の課題としては統計に載らない数量の問題がある。日本で少額貨物(1品目が20万円以下の貨物)が貿易統計に計上されないように、アメリカでも同じことがある可能性はある。仮にそうであれば市場規模は変わってくる。EUでも統計に載らない数値はあるため(阿部,2021a)、制度的な問題も確認しておく必要がある。

 

参考文献

阿部新(2016)「北米の中古車貿易に関する統計整理」『月刊自動車リサイクル』(67),40-49

阿部新(2017)『諸外国における中古車貿易統計』,http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~a_abe/report04.pdf

阿部新(2020a)「アフリカ向け中古乗用車輸出市場の比較考察」『速報自動車リサイクル』(98),64-74

阿部新(2020b)「中古ハイブリッド車等の貿易量の国際比較」『速報自動車リサイクル』(98),76-85

阿部新(2021a)「統計に表れない数量をどのように示すか:ドイツの中古車輸出台数等の算出方法」『速報自動車リサイクル』(100),60-71

阿部新(2021b)「中東向け中古車・中古エンジン貿易量に関する日欧比較」『速報自動車リサイクル』(101),12-23

阿部新(2021c)「韓国の中古車輸出市場の位置づけ」『速報自動車リサイクル』(101),48-57

阿部新(2021d)「イギリスの中古車輸出市場を捉える」『速報自動車リサイクル』(101),58-67

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