社員が突然出社しなくなったら・・・

社員の退職

社員が突然出社しなくなったら・・・

Q.ある社員が突然いなくなり、無断欠勤を続けたまま10日が経ち、携帯電話にも出ないし、自宅のアパートや実家に連絡しても全く所在が分からない。

会社としては、やむを得ず退職扱いにしようと考えているのだが、問題ないだろうか?

A.通常、社員が「会社を退職したい」という場合、退職願や退職届を提出し、「会社を辞める」という意思表示をして辞めるのです。ご相談のケースは「突然いなくなった」という状況で、本人の意思表示も上司への挨拶もなく、「本人の意思」を確認することができません。もし、「書き置き」や「退職願」などがあれば、法的にも退職の意思が確認できるかもしれませんが、これでは本人の「法的な」意思表示があったとはいえません。このような場合に備えるために、一定の事柄を「懲戒解雇理由」として、定めておくことが重要となります。具体的には就業規則の懲戒規定に以下の記載をすることをお奨めします。

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従業員が次の各号のいずれかに該当するときは、諭旨解雇又は懲戒解雇に処する。

ただし、情状により減給又は出勤停止とする場合がある。

(1)正当な理由なく、欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じない又は連絡が取れないとき

<以下省略>

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ご相談のケースでは「無断欠勤を続けたまま10日」なので、あと4日を経過しないと上記の規定には該当しませんが、14日以上経過したら、本人の退職の意思表示が無くても「懲戒解雇」が成立するのです。ですから、就業規則に上記のような規定があるかが重要なのです。社員が「突然出社しない」ということは「いきなり」発生することなので、今すぐに加筆するべきです。しかし、就業規則に書いてある条件が成立しただけでは完全ではなく、解雇などの手続きがあることも覚えておかなければなりません。民法97条では「意思表示はその相手方に到達したときに効力が生じる」としていますので、懲戒解雇の通知も本人に到達しない限り、法的な効力は生じないのです。つまり、成立「は」しても、効力「は」生じていない状況なのです。これに関する裁判を紹介します。

<兵庫県社土木事務所事件>

大阪高裁 平成8年11月26日/最高裁 平成11年7月15日

県職員が多額の借金を抱え、失踪。県は約2ヶ月後に無断欠勤を理由に懲戒免職として、職員の妻に処分通知書を渡し、また県公報への掲載をし失踪前の住所に郵送した。選任された職員の不在者財産管理人は「本人に通知が届いていないので、懲戒免職は無効、退職金は支払われるべき」として控訴しました。

裁判所の判断

県が公示送達による手続きを取らなかったことから、免職の効力は無効。定年での退職金に相当する額、約2,300万円の支払いを命じました。しかし、最高裁では以下の判断となったのです。

〇県は、行方不明となった職員に対する懲戒免職の手続きについて、以前のケースでも「家族への通知」「県公報への掲載」という方法で行っていた

〇この職員もこの方法で免職処分がされることを知っていた

〇二審判決を破棄とする

〇高裁に差し戻された結果、県側が勝訴

このケースの場合、県職員の懲戒免職で以前にも同様の前例があり、また、以前から県公報への掲載の方法が取られていたので、最高裁は高裁に差し戻したのでしょう。

しかし、民間企業で「家族への通知」、「社内報に掲載」だけでは効力が認められないと考えます。ですから、同じようなケースで、「退職金等の請求」で争いが予想される場合、簡易裁判所に対し、公示送達(民法98条の2)の手続きをするべきです。

公示送達手続については、裁判所の掲示場に公示送達のあることを掲示してもらい、かつ、掲示のあったことを官報及び新聞に1回以上掲載するという方法となります。

また、簡易裁判所の裁判官は官報、新聞へ掲載させる代わりに、市町村役場、または、これに準ずる場所にその旨を掲示することを命ずることもできます。

いずれの場合も、掲示した日から2週間を経過した日に、意思表示が相手方に到達したことになるのです。 ここまで行えば、問題はありません。

ただし、残された家族等と相談し、「会社には迷惑をかけない」等の念書を書いてもらい、退職、または、解雇をしたものとする場合が多いと思います。

そんなに多くない事例かもしれませんが、間々あることも事実です。このようなケースに出くわしたら、今回の内容を読み返して頂き、漏れの無いように対応して下さい。

内海正人
日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書 : “結果を出している”上司が密かにやっていること(KK ベストセラーズ2012) /管理職になる人がしっておくべきこと( 講談社+α文庫2012)
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