休職を命じた社員の復職の基準

病気で休職

自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室

せいび界2015年4月号Web記事

Q、休職を命じた社員の復職の基準

社員が持病の悪化で休職を命じたのですが、休職期間満了を向かえようとしていた時、「復職可能」の診断書を一方的に送りつけてきた。この場合、復職を認めなければならないのだろうか?

A、

まず、休職の定義を確認しますが、これは、「社員に業務をすることができない理由が発生したことにより、会社は雇用関係を維持しつつも、仕事を免除すること」をいいます。そして、病気やケガが治って就業可能という状態になれば、復職させることになります。

しかし、病気等が治らない場合は、休職期間満了で「退職または解雇」となるのです。そこで、よくトラブルとなるのが「治る」という基準についてです。これに関する裁判を紹介します。

<平仙レース事件浦和地裁 昭和40年12月16 日>

足踏ミシンによる業務に従事する社員が椎間板ヘルニアとなり、その休職した社員が再三復職を要求したにも関わらず、会社がこれを拒否。休職期間満了に伴い、会社は解雇としました。社員は休職事由が消滅したとして、裁判を起こしました。

裁判所の判断

「復職の条件は以前の業務に従事できる程度に回復していることだが、病状が回復したとは言い難く、以前の業務に従事できる程度までは回復していない」とし、会社側が勝訴しました。

この判決後、多くの裁判で同じような判断がされてきましたが、復職する条件は「以前の業務ができるようになっているかどうか」ということなのです。

また、復職の可能性の立証責任は、復職を求める社員側にありますが、これに関する裁判を紹介します。

<在日米軍従業員解雇事件東京地裁 平成23年2月9 日>

交通事故の後遺症で休職していた職員が「治った」と主張し、復職を求めていましたが、診断書では復職可能かどうか判断できず、国は休職期間満了時に「復職は不可」と判断し、解雇しました。しかし、職員は納得がいかず、裁判を起こしました。

裁判所の判断

「復職可能かどうかの立証責任は従業員側にあり、提出された診断書では悪化していないことしか判断できず、復職可能な立証とはなっていなかった。したがって、解雇は有効」とし、国が勝訴しました。

結果、復職可能であることの立証責任は社員側にあり、これを証明しなければ、復職はできないということなのです。

そして、この立証は冒頭のご質問のように、「復職可能」という診断書があるだけでは足りず、復職となる条件を満たしたことにはならないのです。

特に、社員の主治医は会社の仕事をよくわかっていないのが現実ですから、この見解を鵜呑みにすることは避けるべきです。

しかし、社員としてはこのような診断書をもらう以外に立証する手立てもなかなか無く、会社としてもどう判断すべきか困ってしまいます。

そこで、会社はどうすべきかというと、まずは復職を希望する社員に対し、就業規則に記載した復職判断の下記プロセスを伝えます。

具体的には、

○休職者からの職場復帰の意思確認

○産業医、主治医等からの一般論としての意見収集

○会社が休職者の状態のチェック(ヒアリング等)

○現在の職場環境のチェック

などを確認するのです。そして、会社が指定する医師(指定医、産業医)などの面談や診断を受けるように要請します。

ここで「いきなり復帰は難しいが、回復はしている」ということであれば、リハビリ出勤とし、経過観察をすることも1つの方法です。

そして、医師から状況報告書を定期的に提出してもらい、会社が復職を判断するのです。もちろん、これらのことも就業規則に記載しておくことが重要です。

この一連の流れを就業規則に書いておき、どんなケースでも一定の流れの中で判断していくことが大切なのです。

そうしないと、ケースバイケースで流れがバラバラになり、その判断基準そのものが疑われます。復職については、多くの会社でトラブルになっていることも現実です。だからこそ、「就業規則への明確な記載」と「統一的な運用」が絶対的な条件として必要なのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)