ミス

ミスを隠す社員には?&突然社員が失踪したら?

Q2、突然社員が失踪したら?

先日、突然、自動車整備士が出社しなくなった。どうやら借金を抱えていたようで、連絡がつかない。この場合、退職の扱いにすることはできるのだろうか?

A2、

退職についてみてみましよう。退職が成立するケースは
(1) 会社と社員が退職につき、合意した場合
(2) 社員が一方的に辞職を通知し、14日が経過した場合
(3) 事前に退職の理由が決めてあり、その理由が発生した場合

の3種類に分かれます。

この(1)と(2)の場合は「社員本人の意思表示」が必要です。そして、これは口頭、退職届のいずれでもかまいません。一般的には、退職届が主流ですが。

しかし、連絡も無く、突然いなくなるケースもあるのです。当然、これは、「本人の意思表示」があったとは言えません。だから、これだけでは「法的に」退職とは出来ないのです。

例えば、次の判例があります。

<兵庫鼎社土木事務所事件 最高裁 平成11年7月>

○社員が多額の借金を抱え、失踪

○2ケ月後に無断欠勤を理由に懲戒免職

○妻に懲戒免職の処分通知書を渡し、県広報にも掲載

しかし、家庭裁判所で不在者財産管理人が選任され、

○懲戒免職は本人に通知されていないので無効

○「県広報にも掲載=通知」とする法的根拠はない

○退職金は定年まで在職したものとして支払われるベきと主張し、争うことになったのです。

結果、最高裁は「懲戒免職は妥当」としたのです。

つまり、兵庫県側が勝ったのです。 この裁判では 「家族への通知」や「県広報への記載」がポイントとなりました。

ちなみに、最高裁の前の高等裁判所では「社員側の勝訴」でした。 その内容は、

○ 「県広報に掲載=通知」とする法的根拠はない

○定年退職に相当する約2,000万円の支払い命令

だったのです。

しかし、兵庫県側が「最高裁で逆転勝訴」を勝ち取ったのです。

このケースでのポイントは『「失踪に関する退職条件」を事前に決めていなかった』ということです。決めていれば、争うこともなく決着しているのです。双方に最高裁まで争い、時間、労力、お金をかなり消費したことでしよう。

こうならないためには、事前に「上記(3)事前に退職の理由が決めてあり、その理由が発生した場合」を決めておけば良かったのです。具体的には、就業規則の退職理由に、 例えば「従業員が失踪して、1ケ月以上連絡が取れなかった時」と記載します。事前に退職理由を決めておけば、本人の意思表示が無くても、一定期間経過後に退職が成立するのです。

ちなみに、この「一定期間」は「14日以上」であれば、法的にOKです。もちろん 就業規則が周知されていることも必要です。「こんなこと、ウチには関係ない」と思われるかもしれません。

しかし、私にご相談される方全員が「まさか」と思ったのも事実です。だから、明日は我が身なのです。どんな事件も無いに越したことはありません。しかし、それでも起こってしまうのが事件なのです。

だから、「想定される『ありとあらゆること』」を事前に就業規則に記載することが「本当に」大切なのです。必ず、「可能性があること」は「事前に」防いで下さいね。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

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