余剰人員のリストラ&ライバル社への人員流出その時

情報流出

自動車整備士・整備工場の労務相談室

せいび界2011年12月号Web記事

Q、余剰人員のリストラ、その際の注意点は?

多くの整備工場がそうであるように、ウチも入庫台数の減少に悩んでいる。それは単純に台数の問題だけでなく、ピーク時に合わせて整備士を増員したことがここへきて過剰人員の問題を引き起こしている。リストラも考えなければと思うので、その時の注意点を参考までに教えていただきたい。

A.

未だに景気は悪く、「派遣切り」、「整理解雇」などの言葉が新聞に乗らない日はありません。リストラをする会社が本当に増えています。

ただし、リストラをする場合、

○社員が労働基準監督署に飛び込む
○社員が訴訟を起こす
○残る社員の士気が下がる

というリスクがあります。では、これを回避するためには、どうしたらいいのでしょうか?リストラはあくまでも「最終手段」です。まずはリストラを回避することを考えないといけません。

そのためには、

○給料を下げない代わりに上げない
○残業をさせない
○新規採用をしない
○別会社への出向を検討

などのステップを踏む必要があります。

それでもダメなら、

1.希望退職 → 2.退職勧奨 → 3.指名解雇

となるのです。

この3つの内容は、

1.希望退職…自主退職する社員の募集をする

2.退職勧奨…特定の社員に対し、退職を奨める

3.指名解雇…特定の社員を強制的に解雇する

ということです。

もちろん、それぞれにメリット、デメリットがあります。

1.希望退職

○ メリット…自主退職なので、法的にもめるリスクが低い

○デメリット…優秀な社員が退職してしまう可能性がある

2.退職勧奨

○ メリット…残ってもらいたい社員の流出を防げる

○デメリット…退職には社員の同意が必要

3.指名解雇

○ メリット…特定の社員を強制的に解雇できる

○デメリット…解雇の要件が厳しい

となっています。

しかし、会社はすぐに「3.指名解雇」をしたがります。なぜなら、「財務状況を早く改善したいので、短期的に解決したい」と思っているからです。

ただし、指名解雇には次の4つの要件があります。

○リストラの必要性
○解雇を回避する努力をした
○対象者を選択した合理性(例:年齢、部署、地域)
○従業員への説明義務を果たしたか

さらに、指名解雇を実行する場合、

○リストラが必要な理由の説明

○法的手続きを段階的に踏む(例:解雇予告手当を支払う)

○退職者へのフォロー

が必要です。

具体的な方向は、

○社員への説明会を実施する

○再就職支援を実施する

○在職者に相談窓口を設置する

などです。

ただし、どんな方法でも退職する人、しない人の両方に影響を与えます。また、退職者への扱いを手厚くしないと、在職者の士気が下がります。「いずれ、自分たちも同じような道をたどるのか……。」と思わせてはいけません。

退職者へのケアは、在職者へのケアでもあるのです。これらを「感情的にも」、「法的にも」きちんと実行しないと、トラブルになるのです。単純に「法律の要件をクリアしているからOK」とはいきません。

最終的には人と人の「気持ちの問題」です。ここを間違えると、訴訟やトラブルが増えてしまいます。実際、私に持ち込まれるご相談の大半が「法律外」のところが「トラブルのスタート」になっているのです。

単純に「来月から来なくていいよ」ではなく、

○会社の状況

○リストラの必要性

○あなたがリストラされる理由

などを「冷静に」、かつ「きちんと」説明すべきなのです。

会社と社員とのトラブルは、起きてしまったら大きな傷口となります。どんな会社もトラブルになるパターンは決まっています。逆に言えば、そのパターンを回避すれば、大半がOKなのです。

Q.社員がライバル社へ・・・ノウハウを流出させないためには?

家業を継ぐと言って辞めた幹部社員がいた。しかし、実際にはあろうことかライバル会社に転職していたことが判明した。このままでは、重要なノウハウが流出してしまうので、何か方法はないのだろうか?

A.

たしかに、当事者にとっては大変な問題です。しかし、残念ながら「原則的には」元社員に対抗する方法はありません。なぜなら、社員には

○退職の自由

○職業選択の自由

があるからです。では、どのように対応したらいいのでしょうか? 「一般的には」、在職中に

○就業規則でライバル会社への転職禁止を規定

○ライバル会社への転職をしない念書を取る

などの書類で制限をかけます。しかし、これでは不完全なのです。

次の判例を見てください。

<東京貨物社事件、H12年12月 東京地裁>

この会社と社員は、

退職確認書で

3年間はライバル会社に転職しない

と合意しました。「この合意は有効か?」が争点となったのです。

結果は「職業選択の自由 → ライバル会社へ転職OK」となったのです。つまり、確認書や念書では制限できないのです。だから、ライバル会社への転職を制限するのは難しいのです。

たしかに、転職を制限することは難しい状況です。しかし、それに対抗する方法あるのです。それは、「重要機密、ノウハウ、特殊技能」を知っている社員に対してです。この場合は、確認書や念書が有効になるのです。

具体的には、

○損害賠償を請求する(本人、転職先の会社に対して)
→ 技術、ノウハウによっては「億単位」になる可能性あり

○本人の退職金の全部または一部を返してもらう

などの方法が考えられるのです。

だから、転職そのものを防ぐことはできなくても、ノウハウなどの流失は制限できるのです。転職する社員に牽制をかけることができるのです。正直、これが大きいですね。このように規定の整備だけでトラブルが防げることも多いのです。

様々な会社を見ていると、そもそも形式の整備が遅れていることがよくあります。実態は「人対人」のことなので、改善するのに時間がかかります。ただ、形式は別です。社長が決断すれば、整えることができるのです。

しかし、その形式さえも整えていないことが多いのです。だから、

○社員とトラブルになる……

○労基署に飛び込まれる……

○会社にとって、都合の悪い書類ばかり出てくる……

ということになるのです。

繰り返しになりますが、形式はすぐに整えられます。何を整備すべきなのかを理解することが重要なのです。