整備機器事故件数

整備機器・工具メンテナンスのススメ

整備業界に求められるものは
環境保全と安全性

21 世紀が始まって既に15 年が経過した。「環境の世紀」と呼ばれるだけに、自動車整備業界もクルマを地球環境に優しい状態に保つ、いわゆる環境整備が近年では強く求められている。

しかし一方ではクルマが発明されて以来付いて回っている、安全性もまた求められているのも事実である。ここ2~3年では、自動ブレーキといった安全装備が充実したいわゆる「ぶつからない車」が出回り始めたが、こうした先進自動車は全体の保有台数からすればまだまだ一握りで、それ以外の従来車の安全を保つためには、自動車整備業界による所が大きいことは読者諸氏も感じるところだろう。

その裏付けとして、警察庁発表の自動車事故にまつわるデータを見てみよう。
2005 年には933,828 件だった事故件数が2015 年には536,899 件とほぼ半減に近いところまで減少している。これに比例する形で、負傷者数も1,156,633人→666,023 人、死者数も6,871 人→4,117 人と大幅に減少している。もちろん、このすべてが整備不良がなくなったことによるものではないだろうが、多少なりとも減少に貢献はしていると言えるだろう。

安全性を求めるのはクルマだけでいいのか?
整備環境の安全性確保は?

お客さまの安全・安心をお守りするのが自動車整備業界の役目であり、これは大前提である。しかるに、そこにばかり目が行ってしまって、作業者の安全を忘れてはいないだろうか?

下のグラフは、主に機械工具商社で組織する一般社団法人日本自動車機械工具協会(以下、機工協)による調査結果で、整備機器に起因する事故の件数を集計したもの(2005 年~ 2015 年)である。一見してお分かりのように、圧倒的にリフトによる事故が多い。機器の性質を考えれば、この数字も納得かと思う。

整備機器事故件数

そこでリフトの事故について詳しく見ていくことにする。下のグラフが、ここ10 年のリフトによる事故件数で、一番左の青い棒が事故件数、そのうちの負傷者数が緑の棒、同じく死者数が赤い棒となっている。これを見ると減少や増加という傾向は見られないが、平均すると年間で約20 件、3 ヶ月に5 件は発生している計算になる。しかも、毎年ほぼ1人は死者が出ていることが分かる。

リフトの事故件数及び人身事故の推移

さらに事故原因をまとめたのが、下のグラフである。圧倒的に多いのが取扱不良だが、次いで多いのが点検不履行である。年によっては、点検不履行がトップの年もあるほどだ。

リフトの事故原因の推移

こうした事態を受けて、機工協では特にリフトの正しい使い方の啓発、リフトの日常点検及び点検資格者による定期点検と整備の必要性を呼びかけており、パンフレット「リフト事故撲滅を目指して」を作って配布したり、DVD を作って昨年開催されたオートサービスショーの同協会ブースで上映したり、整備振興会などに配布したり、同協会ホームページにて公開するなど、広報活動に努めている。

合わせて、平成27 年度は5,585 事業所において18,626 台のリフトの点検を実施した。全国の整備工場数から考えると、ごく一部での実施に留まっていることが分かる。それもあってか、平成28年度において機工協では、リフトのみならずタイヤ、洗車、塗装等に関連する各種機器についても、事故の撲滅を目指してポスター、動画等を作成し、その適切な使用や点検の重要性を啓発していく構えである。

一方、主に機械工具メーカーで組織する一般社団法人自動車機械器具工業会(以下、自機工)でも、トルク機器分科会においてトルク機器の定期的な校正・点検の必要性を呼びかける啓蒙活動を展開しており、機工協同様に昨年のオートサービスショーの自機工ブースにてチラシを配布するなど、対象となる機器・工具こそ違えどメーカー・商社が一体となって整備業界に対して作業環境の安全性・正確性を呼びかけている。

改めて言うが、クルマに対しては車検や点検を通じて安全性を厳しく管理しているのに、それを支える機器・工具の安全性・正確性を無視していいわけがない。本特集を機に今一度、自社の作業環境を見直していただきたい。

リフトの点検

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