第110回:リユース市場は拡大しているか:環境省の報告書を読む

山口大学国際総合科学部 准教授 阿部新

1.はじめに

 環境省の「使用済製品等のリユースの促進について」というウェブページに『リユース市場規模調査報告書』が掲載されている。これは自動車に限るものではなく、様々な物品のリユース市場を数量的に示したものである。

 直近のものは平成30年度版だが、調査はそれ以前も3回ほど実施されている(平成21年度、24年度、27年度)。平成21年度版は『電気電子機器等の流通・処理実態調査及びリユース促進事業報告書』の一部、平成24年度版、27年度版は『使用済製品等のリユース促進事業研究会報告書』の一部に示されている。

 『平成30年度 リユース市場規模調査報告書』(以下単に「環境省の報告書」と呼ぶ)は164ページに渡るものである。まず、リユースのみならず、シェアリング、リペア、レンタル(リース)の各市場について、既存の統計を網羅的にまとめている。その上で、消費者へのアンケートにより、独自のデータを作っている。

 日本経済新聞の2019年3月17日付記事では、「リユースの市場規模は1兆7,700億円と拡大中」と書かれている。そのうち従来の店舗販売は9,300億円であるが、市場をけん引しているのが、「フリマアプリによる個人間取引」(5,100億円)であるとしている。

 リユース市場は今に始まったものではないが、なぜ今拡大しているかである。確かに情報通信の発達やグローバル化の進展により、仕入れや販売先が広域化したことが挙げられる。また、個人もフリーマーケット(蚤の市)で中古品の取引に参加できたが、インターネットやスマートフォンを用いることで、より参加の障壁が低くなったことも挙げられる。

 本稿では、環境省の報告書をサーベイし、市場の拡大の様子を確認しつつ、リユース市場に関する研究の課題を示しておきたい。

 

2.経済産業省の統計のサーベイ

 環境省の報告書においては、まず、リユース市場に関する既存の統計をサーベイしている。既存の統計とは、(1)経済産業省の統計(『経済センサス活動調査 産業別集計(卸売業、小売業)』)、(2)日本リユース業協会の統計(『日本リユース業協会統計』)、(3)リサイクル通信の統計(『中古市場データブック 2018』)の3つである。

 それらは、リユース市場の供給側の企業の売上高などから集めたデータである。よって、どの企業を含めるか、市場の範囲によって金額が変わってくる。本来は一次データを確認すべきであるが、ここでは環境省の報告書を用いて、市場の拡大の様子を捉えていく。

 まず、(1)経済産業省の統計では、中古自動車小売業、中古電気製品小売業、古本小売業、骨とう品小売業、中古品小売業(骨とう品を除く)の5業種を対象とする。そして、その年間商品販売額の合計を4兆1,275億円と算出している(p.8)。

 このうち、中古自動車小売業が82.7%の3兆2,142億円と圧倒的に多い。残りは、中古品小売業(骨とう品を除く)が10.9%(4,490億円)、古本小売業が3.1%(1,274億円)、中古電気製品小売業が1.8%(756億円)、骨とう品小売業が1.5%(613億円)である。

 これには自動車部品が含まれていないが、仮に含まれるとすると、自動車はリユース市場の大多数を含んでいることがわかる。また、住宅も含まれていないが、これが含まれるとリユース市場の構成比は変わってくると考えられる。

 環境省の報告書では、上記に自動車中古部品卸売業を含めた6業種について、販売金額と事業所数の時系列的な変化を示している(pp.12-17)。これを見ると、骨とう品小売業、中古品小売業(骨とう品を除く)は1972年からのデータがあることが分かる。

 他については、中古自動車小売業が1994年、自動車中古部品卸売業が2002年、古本小売業が2012年からのデータが示されている。

 骨とう品小売業の販売金額は1972年の217億円から増加し、1991年の1,095億円が最大となっている(p.15)。1988年が748億円であり、それからの急激な増加はバブル経済の時代性を感じる。1991年のピーク後は、2007年までは900億円前後で比較的安定している。リーマンショック以降にさらに一段階減少し、直近の2016年は613億円である。

 中古品小売業(骨とう品を除く)の販売金額については、1972年が123億円であり、骨とう品小売業と比べると市場が小さかったことが分かる(p.16)。骨とう品小売業のようにバブル経済期に急激に拡大することもなく、1970年代から緩やかに市場を拡大してきた。

 長い間、中古品小売業の販売金額は、骨とう品小売業のそれを下回っており、それが逆転したのは1997年である。

 2000年代になると、中古品小売業の市場の変動は激しくなっている。中古品小売業のデータは2007年以降は新設された中古電気製品小売業の金額も含まれている。その金額は1997年は908億円だったものが、2002年は2,111億円、2007年は3,452億円と急増している。

 その後、2012年、2014年は2,435億円、2,428億円と一時的に市場が縮小したが、2016年に4,490億円と大きく増加している。この段階で骨とう品小売業の7倍を超えている。これらを見ると、中古品小売業の市場は2000年代に急拡大していることが分かる。

 中古自動車小売業の販売金額は、1994年からのデータであるが、2兆円から3.5兆円の間で推移している(p.13)。1997年の3兆4,640億円が最も多く、2012年まで減少傾向にある。2012年は2兆3,445億円であり、その前の2007年の3兆1,862億円から大幅に減少している。リーマンショックや東日本大震災の影響が表れているのだろうか。

 その後、2012年を底として増加しており、直近の2016年は3兆4,142億円と1997年と同水準になっている。全体的には増加傾向というよりは短期的な変動のように見える。

 自動車中古部品卸売業は、2002年からのデータになるが、その販売金額が2002年の3,071億円が最も多く、2007年、2012年は減少傾向である(p.12)。2012年は1,729億円であり、2002年の56%である。

 これを底とし、2014年、2016年は増加傾向になっているが、2016年の販売金額は2,420億円であり、2002年よりは少ない。規模は異なるが、増減の傾向を見ると、先の中古自動車小売業の傾向に似ている。

 最後に古本小売業の販売金額については、2012年、2014年、2016年の3年分だが、それを見ると増加傾向であり、2012年の581億円から2016年は1,274 億円と2倍以上になっている(p.14)。古本小売業については、歴史がありそうに思うが、それ以前はどのように推移してきたか興味深いところである。別の文献等を探す必要はある。

 いずれにしろ経済産業省の統計から、2012年以降の直近のリユース市場は拡大傾向にあると言える。ただし、それ以前を含めると、市場の拡大は業種によるところがある。

 環境省の報告書の限りでは、自動車の市場は成熟しているように見えるし、骨とう品は縮小傾向にある。拡大傾向にあるのは骨とう品を除いた中古品だが、これも製品によって違うのではないかと思われる。

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