第141回 次世代自動車の保有と廃棄に関するデータ整理

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

次世代自動車市場の動向が注目されている。それは電力・エネルギー市場も関連し、ロシアのウクライナ侵攻の影響もある。様々なビジネスチャンスから市場競争が活発化していることが窺えるが、その方向性はまだわからない。当然ながらその保有構造は廃棄にも影響する。

環境省、経済産業省、国土交通省は、2020年に『次世代モビリティガイドブック2019-2020』を公表している。それによると、次世代自動車は「窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)等の大気汚染物質の排出が少ない、または全く排出しない、燃費性能が優れているなどの環境にやさしい自動車」であるとする。そして、(1)燃料電池自動車、(2)電気自動車、(3)天然ガス自動車、(4)ハイブリッド自動車、(5)プラグインハイブリッド自動車、(6)クリーンディーゼル自動車をあげてそれぞれを解説している。

筆者はかつてハイブリッド自動車の抹消登録台数を算出したことがある(阿部,2014; 2019a;2019b)。その際、それらの保有台数や新車販売台数、中古車輸出台数の傾向を確認した。ただし、それは新型コロナウイルス感染症が流行する前のものであり、現在はどうなっているかはわからない。また、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの保有台数も増えていると思われるが、それらがどの程度なのかは確認できていない。本稿では、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車を次世代自動車としてその保有や販売、廃棄の状況を確認する。

 

2.次世代自動車の保有台数

まず、次世代自動車の自動車保有台数から見ていく。これについてはかねてより自動車検査登録情報協会の『自検協統計 自動車保有車両数』において「低公害燃料車の車種別保有台数」として公表されていたが、昨今では同協会のホームページにも掲載されている(「わが国の自動車保有動向」)。ここでの「低公害燃料車」は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、CNG(天然ガス)自動車、メタノール自動車の6種類である。そして、同協会ではその保有台数を都道府県別に示している。

2022年3月末時点のこれら低公害燃料車(3輪車以上)の保有台数は1,103万台である。このうち、ハイブリッド自動車が1,070万台と大多数を占める。それに続くのがプラグインハイブリッド自動車の17万台、電気自動車の14万台であり、ハイブリッド自動車と比べると非常に少ない。燃料電池自動車は7千台、CNG自動車は5千台とさらに少ない。エタノール自動車はわずか4台でしかない。

これらの自動車検査登録情報協会の数量は登録自動車のみである。つまり、軽自動車は含まれない。これに対して軽自動車の保有台数が掲載されている軽自動車検査協会のホームページを見ると、「管轄別、燃料別保有車両数」というものが示されている。そこでは、ガソリン自動車のほか、電気自動車などの軽自動車の保有台数が示されている。それによると、2022年3月末の軽自動車の電気自動車の保有台数として2.1万台が計上されている。しかし、ハイブリッド自動車は、同資料では「ガソリン・電気」というカテゴリーがあるものの、数値は示されていない。

これについて、次世代自動車振興センターのホームページを見ると、ハイブリッド自動車の軽自動車の保有台数は公開情報がないとある。そして、同センターでは該当年度を含む直近10年間の販売台数の合計を保有台数として掲載している。これによると、2022年3月末のハイブリッド車の軽自動車の保有台数の推計値は23万台程度であり、電気自動車の軽自動車の保有台数の10倍強の数量になる。

図1はこれらの情報源から次世代自動車の保有台数を並べたものである。登録自動車は自動車検査登録情報協会の数値(2015年3月末~)、軽自動車の電気自動車は軽自動車検査協会の数値(2017年3月末~)、軽自動車のハイブリッド自動車は次世代自動車振興センターの数値(2017年3月末~)を用いている。

これを見ると、2022年3月末時点の次世代自動車の合計は1,337万台になる。図を見てもわかるように、ハイブリッド自動車が大多数であり、全体の97%(登録自動車:80%、軽自動車:17%)を占める。時系列的に見ると、2017年3月末の次世代自動車の合計は714万台であり、2022年の対2017年比は2倍弱(187%)である。

ハイブリッド自動車は軽自動車より登録自動車のほうが多いが、伸びは軽自動車のほうが多い。2022年3月末のハイブリッド自動車の登録自動車は対2017年比で165%だが、軽自動車の比は487%である。ハイブリッド自動車の軽自動車の保有台数は参考値であるため、正確な議論ができないが、登録自動車よりも規模が急拡大していることが窺える。

同じ対2017年比について他の燃料ではどうだろうか。まず、電気自動車だが、登録自動車が187%、軽自動車が114%である。登録自動車の電気自動車はハイブリッド自動車よりも規模を拡大しているが、軽自動車はさほど拡大していない。プラグインハイブリッド自動車は248%であり、電気自動車よりも規模が拡大している。燃料電池自動車はさらに拡大し、4倍近く(392%)にもなっている。一方で、図にはないが、天然ガス自動車、メタノール自動車は減少しており、対2017年比でそれぞれ39%、63%となっている。

自動車検査登録情報協会が提供する登録自動車の数量は、乗用車、貨物車など用途別に分けられている。これを見ると次世代自動車は乗用車が圧倒的に多い。2022年3月末のハイブリッド自動車(登録自動車)における乗用車の割合は99%である。プラグインハイブリッド自動車の乗用車の割合はさらに高く、99.9%である。電気自動車、燃料電池自動車は98%と若干低いが、それでも乗用車が圧倒している構造は変わらない。内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)の自動車を含む自動車全体(3輪車以上の登録自動車・軽自動車)の保有台数では、乗用車の割合は79%であり、貨物車が18%、特種(殊)車が2%である(いずれも2022年3月末時点)。これらから、次世代自動車の特徴として乗用車の割合が高いと言うことができる。

内燃機関の自動車を含む自動車全体(3輪車以上)の保有台数は、同じ2022年3月末時点で7,830万台であることから、全体の17%が次世代自動車であると言える。十分予想できるようにその割合は増加している。2017年3月末時点の自動車全体の保有台数(3輪車以上)は7,766万台であり、そのうちの次世代自動車の保有台数は714万台と全体の9%であった。また、2017年に対する2022年の保有台数の割合は、先に示したように次世代自動車が187%であるのに対し、自動車全体は101%である。

図 1 次世代自動車の保有台数の推移(単位:台)

出典:自動車検査登録情報協会(登録自動車、2015年3月末~)、軽自動車検査協会(軽自動車の電気自動車、2017年3月末~)、次世代自動車振興センター(軽自動車のハイブリッド自動車、2017年3月末~)の公表データより作成

注:EV:電気自動車、PHEV:プラグインハイブリッド自動車、FCEV:燃料電池自動車、HEV:ハイブリッド自動車、登録:登録自動車、軽:軽自動車をさす。

 

3.新車販売台数

次に新車販売台数を見る。日本自動車販売協会連合会のホームページを見ると、2018年度から2021年度の4年間の燃料別メーカー別の新車販売台数(乗用車のみ)が示されている。ここでは、内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)の自動車のほか、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車、その他(LPG車等)に区分されている。

ただし、この数量は軽自動車のほか、登録自動車であっても貨物車などは含まれない。これに対して次世代自動車振興センターのホームページを見ると、軽自動車や乗用車以外の販売台数も示されている。図2は、それらを含めた次世代自動車の新車販売台数を示す。登録自動車のうち乗用車は日本自動車販売協会連合会のデータ、登録自動車のその他(貨物車等)および軽自動車は次世代自動車振興センターのデータを用いている。なお、登録自動車の乗用車の数値は、日本自動車販売協会連合会と次世代自動車振興センターで数千台程度の差があるが、その検証は別途課題とする。

図2を見ると、この合計は概ね横ばいであることがわかる。2018年度が150万台で最も多く、それ以降は減少し、2020年度は145万台であったが、直近の2021年度は147万台と若干回復している(対2018年度比は98%)。一方で図にはないが、ガソリンエンジン自動車の新車販売台数は減少している。ガソリンエンジン自動車(乗用車)の2018年度、2019年度、2020年度、2021年度の新車販売台数は153万台、150万台、136万台、107万台であり、2021年度の対2018年度比は70%程度である。この結果、全体における次世代自動車の割合は高くなっている。内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン)自動車と次世代自動車の新車販売台数の合計のうち、次世代自動車の割合は2018年度の47%から2021年度は55%となっている。

なお、日本自動車販売協会連合会のデータ(登録自動車、乗用車)ではメーカー別の数値も示されている。これを見ると、2021年度についてハイブリッド自動車の新車販売台数のうち、トヨタ、ホンダ、日産のシェアはそれぞれ52%、16%、15%であり、この3社で83%を占める。プラグインハイブリッド自動車については三菱が43%のシェアで最も多く、2位のトヨタ(シェア38%)と合わせて81%になる。電気自動車については日産(シェア53%)、輸入車(41%)で95%のシェアとなっている。燃料電池自動車に至っては99%がトヨタである。これらが今後どのように変わるかである。

図 2 次世代自動車の新車販売台数の推移(単位:台)

出典:日本自動車販売協会連合会(登録自動車の乗用車)、次世代自動車振興センター(登録自動車のその他(貨物車等)、軽自動車)の公表データより作成

注:EV:電気自動車、PHEV:プラグインハイブリッド自動車、FCEV:燃料電池自動車、HEV:ハイブリッド自動車、登録:登録自動車、軽:軽自動車、乗用:登録自動車・乗用車をさす。

 

4.リサイクル料金預託台数

自動車リサイクル促進センターは、『自動車リサイクルデータBook』においてハイブリッド自動車と電気自動車のリサイクル料金預託状況、使用済み自動車引取状況、中古車輸出状況(輸出返還台数)を掲載している。ハイブリッド自動車、電気自動車ともに登録自動車、軽自動車に分けられており、2021年度版では2012年度から2021年度の10年間分の数量が示されている。また、ここでのハイブリッド自動車はプラグインハイブリッド自動車を含んでいる。

図3はハイブリッド自動車と電気自動車のリサイクル料金預託台数を示したものである。ハイブリッド自動車は2018年度までは増加傾向と考えられ、2012年度の81万台から2018年度は132万台になっている。それ以降は増加傾向とは言えず、2020年まで前年を下回っていた。2021年に若干回復し、113万台になっている。

全体をけん引するのは登録自動車である。その預託台数は2016年度が最も多く、増減を繰り返している。2020年度は大幅に減少し、10年間で最も少ない。これに対して軽自動車の預託台数は2014年度の6万台から急拡大し、2018年に33万台にまでなっている。それ以降は同様に減少傾向になり、直近の2021年度は26万台である。ハイブリッド自動車全体における軽自動車の割合は2014年以降急速に拡大したが、直近5年は25%前後で横ばいである。

電気自動車のリサイクル料金預託台数は、ハイブリッド自動車と比較すると図にはほとんど表れていない。2016年度までは1.5万台前後であり、2017年度になって2.4万台に増加している。その後は減少傾向となり、2020年度は1.6万台に落ち込んでいる。2021年は再び増加し、過去10年間で最多の2.6万にもなっている。このうち、軽自動車はわずかであり、登録自動車の割合は9割を超える。

なお、自動車リサイクル促進センターでは、預託台数全体におけるハイブリッド自動車、電気自動車の割合を示している。それによると、ハイブリッド自動車は2015年度から20%を超え、その後は概ね25%前後で推移している。直近の2021年度は26.8%である。電気自動車は1%にもなっておらず、最も高いのは直近の2021年度の0.611%である。

図 3 次世代自動車のリサイクル料金預託台数の推移(単位:台)

出典:自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook 2021年版』より作成

注:EV:電気自動車、HEV:ハイブリッド自動車、登録:登録自動車、軽:軽自動車をさす。

 

5.ハイブリッド自動車の行方

次に、ハイブリッド自動車の使用済み自動車引取件数(事実上の使用済み自動車台数と捉える)と中古車輸出台数を足し合わせてみる(図4)。これを見るとその合計は増加傾向であることがわかる。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響なのか、若干の減少であったが、2021年度は最大であり、25万台弱となっている。

この数量は抹消登録台数(=前期末自動車保有台数+当期自動車販売台数-当期末自動車保有台数)の近似値である。先に見たようにハイブリッド自動車の新車販売台数や預託台数は増加傾向とは言い難い。しかし、保有台数の増加が縮小すれば、抹消登録台数は増加する。例えば、ガソリンエンジン自動車からの買い替えではなく、ハイブリッド自動車からハイブリッド自動車への買い替えが増えれば、ハイブリッド自動車の保有台数の増加は縮小し、抹消登録台数が増加するという説明ができる。

図4のうち、全体をけん引するのが中古車輸出台数である。2021年度のハイブリッド自動車の中古車輸出台数は18万台であり、過去10年間で最多となっている。そのうちの登録自動車が圧倒的に多い。これに対してハイブリッド自動車の軽自動車は2018年に3万台弱となっているが、2021年度は1.4千台である。中古車輸出台数は輸入国側での規制により大幅に減少することがあるが、そのような事情と関係あるか、軽自動車全般の輸出状況なども見ておく必要がある。

一方、ハイブリッド自動車の使用済み自動車においても登録自動車が大多数で、増加傾向にある。また、使用済み自動車はその数量のみならず、中古車輸出を含めた全体におけるシェアも増加傾向にある。図4には登録自動車について中古車輸出の割合が示されているが、これを見ると2019年度から80%を下回るようになり、2020年度、2021年度はそれぞれ72%、76%となっている。それでもガソリンエンジン自動車などと比べるとハイブリッド自動車の中古車輸出の割合は高いが、徐々に国内で処理される割合が増えているとみることはできる。

また、図にはないが、ハイブリッド自動車の軽自動車について同じく中古車輸出の割合を見ると2015年度から2018年度は95%を超えていたが、2019年度以降は大きく減少し、2019年度、2020年度、2021年度は64%、42%、35%となっている。軽自動車全般の中古車輸出は基本的に少ないのだが、ハイブリッド自動車も同様になってきたということだろうか。それでも35%はガソリンエンジンの軽自動車と比べると高いほうである。

自動車リサイクル促進センターは、リサイクル料金預託台数と同じように、中古車輸出台数および使用済み自動車引取件数においても、内燃機関の自動車を含めた自動車全体におけるハイブリッド自動車の割合を示している。これを見ると、中古車輸出台数におけるハイブリッド自動車の割合は2018年度に10%を超え、直近の2021年度は13.8%になっている。これに対して使用済み自動車では2019年度にようやく1%を超え、直近の2021年度は1.99%である。徐々にその割合が高くなっていくのだろうが、リサイクル料金の預託段階のものと比べると、廃棄段階の数量の割合はまだ高くはない。

先に言及したように、図4の数量にはプラグインハイブリッド自動車が含まれている。そこで第2節、第3節で用いたプラグインハイブリッド自動車の保有台数と新車販売台数から抹消登録台数を算出すると、2018年度~2020年度は2千台前後、2021年度は4千台程度である。つまり、図4の全体(20万台~25万台程度)からすると大きくはない。2021年に大幅に増加したが、それが今後どうなるかである。また、プラグインハイブリッド自動車の中古車輸出台数は2018年度~2020年度は1.5千台前後、2021年度は2.7千台程度である。その結果、中古車輸出の割合は2020年度を除けば60%~70%程度である。数量が少ないため、今後変動はあるだろうが、現時点の数値の限りでは輸出の割合は高い。ただし、ハイブリッド自動車よりは国内で使用済みとなる割合が高いと言える。

図 4 ハイブリッド自動車の使用済み自動車台数と中古車輸出台数の推移(左軸、単位:台)と中古車輸出の割合(右軸、単位:%)

出典:自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook 2021年版』より作成

注:登録:登録自動車、軽:軽自動車をさす。使用済み自動車引取件数を使用済み自動車台数としている。プラグインハイブリッド自動車を含む。中古車輸出の割合は登録自動車のものを示す。

 

6.電気自動車の行方

同じように自動車リサイクル促進センターのデータから電気自動車の使用済み自動車引取件数と中古車輸出台数を並べてみる(図5)。これを見ると電気自動車の数量も増加傾向であると捉えることはできる。ただし、ハイブリッド自動車と比べると量的には多くはない。その中でも登録自動車の中古車輸出が圧倒的に多い。使用済み自動車は2021年度が最多だが(登録自動車、軽自動車の合計)、それでもわずか676台である。

使用済み自動車台数と中古車輸出台数の合計のうち、中古車輸出台数の割合は、登録自動車では90%超、軽自動車で70%台後半である。そのため、国内で使用済みとして処理される数量は少ない。ただし、全体的に数量が少ないため、この割合は今後、変動する可能性はある。とりわけ軽自動車は中古車輸出と使用済みの合計で200台程度であることから、関連事業者の行動により市場構造が変わることはありうる。

自動車リサイクル促進センターの資料を見ると、全ての使用済み自動車台数における電気自動車の割合は増加傾向と言えるものの、最も高い2021年度でも0.022%である。この結果、ハイブリッド自動車と合わせても全体における次世代自動車の割合は2%である。同じく中古車輸出台数について全体における電気自動車の割合は直近の2021年度で0.628%であり、ハイブリッド自動車と合わせた次世代自動車の割合は14%になる。電気自動車の市場拡大はまだ先のようである。

図 5 電気自動車の使用済み自動車台数と中古車輸出台数の推移(単位:台)

出典:自動車リサイクル促進センター『自動車リサイクルデータBook 2021年版』より作成

注:登録:登録自動車、軽:軽自動車をさす。使用済み自動車引取件数を使用済み自動車台数としている。

 

7.燃料電池自動車の地域性

自動車リサイクル促進センターの資料には、燃料電池自動車の使用済み自動車引取件数は掲載されていない。そこで先の保有台数、新車販売台数から燃料電池自動車の抹消登録台数を算出すると、2018年度、2019年度、2020年度、2021年度は10台、-10台、25台、162台となる。マイナスの値は抹消状態の車両のストックが減少したとみることができるが、注目すべきは2021年度の162台である。それがどこで発生しているかである。

図6は燃料電池自動車の保有台数(2022年3月末時点)を都道府県別に見たものである。また、次世代自動車振興センターが公表している水素ステーション数(2023年1月現在)も併せて示している。保有台数の全国合計は2022年3月末の時点で7,113台であり、愛知県と東京都の2都県で48%を占める。また、他にも人口の多い大都市とその近郊が上位にあり、上位10都道府県で全体の81%のシェアを占める。これらの都道府県で廃棄されやすいと考えることはできる。一方で下位では島根県、長崎県、秋田県、岩手県の保有台数はゼロである。その他いわゆる地方では保有台数は少ない。全体的に規模が小さいことからその偏りの程度は今後変わっていくことが想定される。

水素ステーション数を見ると、十分予想できるように保有台数と連動していることがわかる。次世代自動車振興センターの整理では、首都圏が58か所で最も多く、中京圏が49か所と続いている。あとは関西圏、九州圏、その他がそれぞれ19か所、15か所、22か所である。都道府県別では、図にあるように愛知県が36か所であり、最も多い。これに東京都(22か所)、神奈川県(16か所)、埼玉県(11か所)、福岡県(11か所)が続く。一方で、12県(青森県、岩手県、秋田県、山形県、石川県、鳥取県、島根県、愛媛県、高知県、長崎県、宮崎県、沖縄県)で水素ステーションがない。1か所のみ設置されている県も17県になる。インフラの整備により保有台数に地域差があることが想定される。今後、どの程度整備が進むかによるだろう。

図 6 燃料電池自動車の保有台数(左軸)と水素ステーション数(右軸)

出典:自動車検査登録情報協会の公表資料より作成

 

7.まとめ

本稿では、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車を中心に保有と廃棄に関わる統計を見てきた。ハイブリッド自動車や電気自動車は、登録自動車、軽自動車に分かれており、それぞれの統計をあたる必要がある。また、ハイブリッド自動車の軽自動車のように保有台数が公表されていないものもあった。それがますます無視できない規模になることが想定されるが、その推計はさらなる課題である。

直近の自動車全体における次世代自動車の割合は、保有台数で17%、新車販売台数で55%、リサイクル料金預託台数で27%である。これに対して、中古車輸出台数は14%と保有台数に近い状況になっているが、使用済み自動車台数(燃料電池自動車を除く)はまだ2%である。これは廃棄の市場が成熟していないということもあるが、中古車輸出に回っている数量が多いというのは当然にある。一方で、中古車輸出の割合は依然として高いものの、多少下がってきている様子は今回観察された。このまま下がっていくのかどうかである。

次世代自動車といっても様々であり、日本ではハイブリッド自動車が中心である。本稿の限りではハイブリッド自動車の保有台数や中古車輸出台数、使用済み自動車台数は増加傾向であったが、電気自動車はさほど市場が拡大していない。しかし、直近の新車販売台数を見ると、電気自動車の軽自動車は2022年に対前年比で4813.5%の2.7万台と示されている(日刊自動車新聞2023年1月13日付記事より)。そのため、2023年3月末の電気自動車(とりわけ軽自動車)の保有台数は大幅に増加することが予想される。燃料電池自動車も含め、次世代自動車市場がどのように展開するか、今後も注視していく必要がある。

 

参考文献

  • 阿部新(2014)「使用済み自動車等の流通量の現在」『月刊自動車リサイクル』(40),44-54
  • 阿部新(2019a)「ハイブリッド車の抹消登録台数」『月刊自動車リサイクル』(95) , 34-44
  • 阿部新(2019b)「ハイブリッド車の抹消登録台数および輸出割合の算出における課題」第30回廃棄物資源循環学会研究発表会
  • 軽自動車検査協会「管轄別、燃料別保有車両数」(平成29年3月末~令和4年3月末),https://www.keikenkyo.or.jp/information/information_000453.html(アクセス日:2023年1月21日)
  • 次世代自動車振興センター「EV等 保有台数統計」,https://www.cev-pc.or.jp/tokei/hoyuudaisu.html(アクセス日:2023年1月21日)
  • 次世代自動車振興センター「EV等 販売台数統計」,https://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbaidaisu.html(アクセス日:2023年1月21日)
  • 自動車検査登録情報協会(2022)『自検協統計 自動車保有車両数 令和4年3月末現在』自動車検査登録情報協会
  • 自動車検査登録情報協会「低公害燃料車の車種別保有台数(平成27年〜令和4年)」,https://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html(アクセス日:2023年1月14日)
  • 自動車リサイクル促進センター(2022)『自動車リサイクルデータBook 2021年版』
  • 日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」,http://www.jada.or.jp/data/month/m-fuel-hanbai/(アクセス日:2023年1月28日)
  • 日本自動車販売協会連合会(2020)『新車登録台数年報(第43集)』
  • 環境省・経済産業省・国土交通省(2020)『次世代モビリティガイドブック 2019-2020』
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