日本自動車機械工具協会が第65回通常総会 OBD検査の円滑実施へ、スキャンツール補助は第2弾準備中 新副会長に今井祥隆氏

一般社団法人日本自動車機械工具協会(会長・柳田昌宏=バンザイ代表取締役社長)は2026年6月8日、第65回通常総会を開催した。令和7年度の事業報告・決算、公益目的支出計画実施報告、令和8年度の事業計画・収支予算を審議・報告したほか、役員改選を行い、イヤサカの今井祥隆社長が新副会長に就任した。来賓として国土交通省と経済産業省の担当官が出席し、OBD検査の円滑な運用やスキャンツールの整備に向けた連携への期待を示した。

この記事のポイント

  • 会員各社の自動車機械工具の製造・販売実績は前年比3.2%増の1,405億円。平成5年(1993年)以来31年ぶりに1,400億円を超えた
  • 令和8年度はOBD検査の円滑な実施に注力。Android対応スキャンツールの型式認定試験を新たに実施するほか、校正・試験業務の電子化を推進
  • 次回「第39回オートサービスショー2027」は令和9年(2027年)6月17~19日に東京ビッグサイトで開催
  • 役員改選で新副会長に今井祥隆氏(イヤサカ)、新常務理事に福元喜久弘氏が就任。斎藤 智義前副会長、小栁 誠前常務理事が退任

柳田会長あいさつ「技術力の底上げと標準化が一層重要に」

開会あいさつで柳田会長は、本年度の日本経済について緩やかな回復基調が続くと期待される一方、国際情勢の不安定化や地政学リスク、とりわけ中東情勢によるエネルギー価格・供給網への影響を挙げ、「今後の動向にも引き続き注視が必要」と述べた。

自動車整備業界については、電動化や先進安全技術の普及に伴って整備内容が高度化・複雑化しているとし、「整備機器や診断機器の重要性はこれまで以上に高まっている。業界全体として技術力の底上げと標準化への取り組みが一層重要になっている」と強調。少子高齢化による人材不足にも触れ、整備士など専門人材の育成・確保を「業界にとって喫緊の課題」と位置づけ、若い世代に整備の仕事の魅力と社会的意義を伝えていく必要性を訴えた。

令和7年度事業報告 製造・販売実績が31年ぶりに1,400億円超

第1号議案の令和7年度事業報告は、原案どおり承認・可決された。報告によると、会員各社の自動車機械工具の製造・販売実績は前年比3.2%増の1,405億円となり、平成5年(1993年)以来31年ぶりに1,400億円を超えた。製造コストや人件費の高騰に伴う価格転嫁の動きも背景にあるとした。重点的に取り組んだ事業は次のとおり。

新たな検査手法・検査用機器への対応

同協会は、車載式故障診断装置を活用したOBD検査の円滑な実施に向け、関係機関・団体が参加する「OBD検査モニタリング会合」や「OBD検査システム検査用スキャンツール技術連絡会」に参画。令和7年10月に開始された輸入車のOBD検査に対応し、検査用スキャンツールの型式認定試験を適正に実施できるよう、試験で使用するOBDシミュレーターの改修を行った。さらに国土交通省の委託を受け、指定整備事業者が所有する検査用スキャンツールの年次検査の必要性や使用上の問題の有無に関する調査を実施。軽自動車検査協会(軽検協)が所有するスキャンツールの点検も行った。

オートサービスショー2025を開催、来場者4万324名

令和7年6月19~21日の3日間、東京ビッグサイトで「次世代モビリティとともに歩む整備機器」をテーマに第38回オートサービスショー2025を開催した。104社・8団体が1,107小間(屋内1,095・屋外12)に出展し、来場者は4万324名にのぼった。セミナーに加え、工具の使用体験コーナーやキャリアサポートコーナーを新設し学生の来場促進にも注力。収益の一部から交通遺児支援などを行う公益財団法人2団体にそれぞれ100万円を寄付した。

整備機器の適正使用・定期点検の推進

自動車整備用リフト等の使用中の事故防止を目的に、事故調査結果を分析しホームページや業界誌で公表。オートサービスショー会場ではリフト実機を設置し、正しい使用方法と定期点検の重要性をPRした。リフト点検資格者が令和7年度に実施した点検台数は2万6,266台・7,444事業所となり、目標を達成した。

海外調査・情報収集

国際委員会は11月8~10日、視察団15名を米国に派遣し「SEMA SHOW」と現地整備工場を視察。事務局職員4名は10月16~25日にフランス・ドイツを訪れ「EQUIP AUTO PARIS」の視察やドイツの校正機関訪問を通じ、検査用機器の校正方法や校正用器具の取り扱いを調査した。11月25~29日には中国(アウトメカニカ)へ3名を派遣。令和8年2月2~7日には、自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)が実施する米国の自動車検査制度に関する調査に2名が参加した。

校正・試験業務、人材確保

校正業務では、独立行政法人自動車技術総合機構(自動車機構)の審査基準改正に対応して機器の校正要領を改正し、老朽化した速度計試験機の校正用機器を更新。検査機器単位で発行している校正結果証明書を事業所単位の様式へ変更する準備も進めた。人材確保では、若手・中堅従業員の待遇改善や採用ページの刷新、オートサービスショー会場での学生向けキャリアサポートブース設置に取り組んだ。第2号議案の令和7年度決算報告、第3号議案の公益目的支出計画実施報告書も承認・報告された。

令和8年度事業計画 Android対応スキャンツール、校正業務の電子化へ

第4号議案の令和8年度事業計画・収支予算が報告された。重点事業は次の6項目。

  1. 新たな検査手法・検査用機器への対応……OBD検査モニタリング会合・技術連絡会への参画を継続。自動車機構がAndroid対応スキャンツールでのOBD検査を可能としたことを受け、当該スキャンツールの型式認定試験を適正・円滑に実施する。スキャンツールの年次検査の必要性等の調査、軽検協所有スキャンツールの点検も継続する。
  2. 第39回オートサービスショー2027の開催……令和9年6月17~19日、東京ビッグサイト東展示棟(1~3ホール)で開催。委員会を設置し、企画運営と広報に取り組む。
  3. 整備機器の適正使用・定期点検の推進……事故調査結果の分析・公表、リフトや門型洗車機、タイヤチェンジャー等の適切な使用方法の啓発、点検資格者研修テキストの見直しなど。
  4. 海外調査・情報収集……ドイツ訪問やアウトメカニカ会議への派遣、JASIC調査への技術員派遣、校正に関する海外動向の継続調査。
  5. 校正・試験業務の適正化……校正用機器の新型機具への移行、作業現場でのカメラ活用、証明書様式変更やクラウド化など電子化を推進。使用開始から10年が経過した試験業務システムと成績書作成ソフトの改修も行う。
  6. 人材確保……賃金水準の是正を最優先に、等級制度を基軸とした新たな人事制度の構築を進める。

会員から生成AI活用への提言も

質疑では会員から、業界全体で生成AIの活用が進むなか、協会内での利用や業界動向の調査、利用ガイドラインの策定などを検討してはどうかとの提言があった。事務局は「ちょうどプロジェクトを立ち上げ、規定改正を含め業界としてどう使っていけるかを検討しているところ」と応じ、今後の検討を進める考えを示した。

役員改選 新副会長に今井祥隆氏、新常務理事に福元喜久弘氏

第5号議案の役員選任では、全理事・監事の任期満了に伴い、9名の理事と2名の監事を選任した。総会終結をもって斉藤副会長(令和2年から6年間)と小柳常務理事(4年間)が退任。後任として、イヤサカ代表取締役社長の今井祥隆氏と、協会事務局長の福元喜久弘氏が新たに理事に選任された。総会後の理事会で代表理事等を決定し、新体制は以下のとおりとなった。

役職 氏名 所属 区分
会長(代表理事) 柳田 昌宏 バンザイ 再任
副会長(代表理事) 今井 祥隆 イヤサカ 新任
専務理事(代表理事) 小田 曜作 協会 再任
常務理事 福元 喜久弘 協会 新任
理事 浜本 雅夫 アルティア 再任
理事 中谷 宗平 安全自動車 再任
理事 永瀬 道晴 サンコー 再任
理事 長藤 哲司 東洋テック 再任
理事 堀江 聡 ヤマト自動車 再任
監事 渡部 正健 興和精機 再任
監事 尾曽 秀幸 嵯峨電機工業 再任

退任あいさつで斎藤前副会長は6年間の協力に謝意を述べ、小柳前常務理事は「当協会が業界のための業界であり続けることを心より願う」と語った。新副会長の今井氏は「昭和56年に入社して技術部に在籍し、当時はたびたび協会を訪れていた。46年後にこうして立つとは思っていなかった。光栄であり、重責にプレッシャーを感じている。業界の発展とともに会員企業の役に立てるよう努める」とあいさつ。新常務理事の福元氏も「業務執行役員として協会の発展のため精励する」と決意を述べた。

なお総会後の理事会で再任された柳田会長は「自動車整備業界はOBD検査の本格運用に加え、電動化・先進安全技術の進展により大きな変化の中にある。人材不足への対応、とりわけ次世代を担う整備人材の確保・育成も重要な課題。変化に的確に対応し、業界の発展に貢献できるよう皆様とともに取り組む」と就任あいさつを行った。

来賓祝辞 国交省・経産省がスキャンツール整備へ連携を表明

国土交通省「スキャンツール補助、第2弾を準備中」

国土交通省物流・自動車局自動車整備課の多田善隆課長は、令和6年10月に始まったOBD検査が令和7年10月から輸入車にも対象を広げ、大きなトラブルなく順調に推移していることに触れ、会員企業や自動車技術総合機構の準備に謝意を示した。スキャンツールについては「令和8年度に補助したいと考えている。第1弾として5月29日に米国車対応スキャンツールの補助を公募したが、すぐに枠が埋まった。第2弾を準備中なので活用してほしい」と述べた。

そのうえで「自動車は100年に一度の変革期にあり高度化が進むが、5年後・10年後も自動車ユーザーがいつでもどこでも整備・車検を受けられる環境を整備することが国交省の最大の重要課題」と強調。汎用スキャンツールの開発に必要な情報を自動車技術総合機構が一括して入手しメーカーに提供する枠組みの検討を進めているとし、会員企業に高度な汎用スキャンツールの開発・販売への尽力を求めた。中東情勢に関しては、整備事業者向けの情報提供窓口を設置し経済産業省と連携して対応していることを紹介した。

経済産業省「車検制度の信頼性を根底から支える役割」

経済産業省製造産業局自動車課の髙木直樹課長補佐は、同協会が国交省と連携して自動車検査用機械器具の校正業務や基準適合性試験を担い、「車検制度の信頼性を根底から支える極めて重要な役割を果たしている。我が国の自動車安全行政を支える安全・品質確保の砦だ」と評価した。

オートサービスショー2025については「4万人超の来場者を迎え、前回を大きく上回る盛況だった。学生向けキャリアサポートブースは、業界全体で労働力不足が課題となる中で意義深い取り組み」と述べた。さらにCASEに代表される電動化・知能化の進展で「自動車は100年に一度の大きな変化の中にあり、高度化する車両に対応した機器や診断技術の重要性は一層高まっている」とし、「整備機器産業は自動車産業全体の安全・安心を下支えする基盤。経産省としても関係省庁と連携し、産業の高度化と持続的発展に向けた環境整備に努める」と語った。

第65回通常総会は、全議案の審議・報告を終えて閉会した。

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