採用後に前職の非行が発覚したら解雇できる?

刑事罰

自動車整備士のお仕事・労務について労務相談室

せいび界2014年5月号Web記事

Q、採用後に前職の非行が発覚したら解雇できる?

仕事のできるマネージャーを採用したつもりだったのだが、前職でセクハラ、パワハラ問題を起こしていた事実が判明した。そろそろ入社して1年が経つが、はたして解雇できるだろうか?

A、

前職の問題がどうであれ、一度採用してしまったら、なかなか解雇できないのも事実ですが、これに関する裁判があります。

教員を採用から3年後、前職でのセクハラ、パワハラが発覚した。学校は「採用時にセクハラ、パワハラでの問題を告知しなかった」ことを理由に解雇した。

教員は採用時にはその問題を聞かれておらず、「この解雇は無効だ」と主張し裁判所に訴えた。この訴えに対し、裁判所は以下の理由から、採用面接は虚偽回答のレベルではなく、解雇は無効と判断を下しました。

①質問に対しての虚偽の回答があってはならないが、応募者が採用面接時に、自分に不利益な質問を受けても、虚偽の回答をしていなければ問題ではない。
②自発的に告知をする法的義務はなく、応募者が自分 に不利なことを積極的に話す必要はない。
③採用の時に応募者がどんな人物なのかを審査するのは採用側の責任である。

この裁判により「採用面接での質問で、会社が質問をしないでスルーした場合、本人が積極的に話す必要はなく、採用面接とは応募者の人物像やスキルを会社が判断するもので、慎重を期し、注意を払って行うこと」ということがクリアになったのです。

仮に、前職でトラブルを抱えていたか否かについて、会社としても「想定しうる質問」を用意しておく必要があるのです。いきなり「セクハラ、パワハラで問題を起こしましたか?」とは質問できませんが、次のような質問から話題を狭めていくことが大切です。「前職の退職理由」「退職の経緯」「なぜ転職したいのか」「前職の会社や社員との意見の相違等があったときの状況→その時の本人の対応」「懲戒処分の有無」「懲戒処分を受ける可能性のある行為の有無」などの質問を現場や職位に合わせた形で質問することが大切なのです。

最終的には、セクハラ、パワハラに関して言えば、「 前職でセクハラ、パワハラの問題を起こしませんでしたか?」と質問してもOKなのです。

また、履歴書などで「賞罰の有無」を記載する欄がありますが、この「罰」とは通常は確定した有罪判決を指し、起訴猶予事件や公判中のものは該当しません。

よって、有罪が確定しなければ履歴書の賞罰の欄は「賞罰なし」の記載となるのです。もし、この事実を虚偽、又は、隠匿したら解雇は有効となる場合もあるでしょう。また、実際の裁判でも同様の結果となっています。

<メッセ事件 東京地裁 平成22 年11 月10 日>

〇賞罰の欄に虚偽の記載
〇解雇したが不当解雇と訴えらえた
〇解雇は有効(会社勝訴)

ここでもう一度、解雇が有効になる場合を整理すると、
○採用面接時に「虚偽の回答」を行った場合
○履歴書の賞罰欄に虚偽の記載をした場合

ということが第一の条件となるのです。まずはここをチェックすることが重要です。

また、内定を出す前に本人がフェイスブックやブログでどういう記事を書いているかをチェックしている会社もあります。
そういう部分には「本人の本音」が書かれていたりするものです。さらに、本人の名前をネットで検索している会社もあります。
実例ですが、採用後にネットで検索したところ、ある軽犯罪の常習者だったので、解雇した事例もあります。
しかし、こういうことは聞かなければ分かりませんし、そもそも聞くことをしていないということもよくあります。内定前にネットで検索することも重要でしょう。

最低限の質問するべき項目を検討し、その内容は必ず聞くようにマニュアルを作成することも必要です。そうしないと、質問する内容、レベルは面接者のスキル、気分によって変わってしまいます。
それは「最低限の確認事項を確認していないリスクを抱えた面接」ということになるのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)