上司

残業代は支払われる?&ある上司の部下はすぐ辞める

Q、ある上司の部下はすぐ辞める

ウチでは定期的に部門間での人の異動を行っているが、どんなに入社年数が長い社員でも鈑金部門に配属されると辞めていってしまう。原因はどうやら工場長が傲慢なことにあるようだ。技術力はある人なので辞めさせる訳にもいかないのだが、どうすればよいか?

A、

上司が傲慢だと部下にストレスが溜まり、部下がどんどん辞めていく。会社の規模に関わらず、同じ話はよくあり、多くの社長が頭を抱えています。

なぜならば、①上司であるということはそれなりの在籍年数がある、②社長も頼ってきた歴史がある、③情に流される部分もあって強いことを言えない、からです。だからといって、部下に傲慢だという理由では解雇できません。しかし、程度問題によっては解雇できる場合もあるのです。

なぜならば、会社には、①職場の人間関係の調整、②職場環境の整備をする義務があるからです。ですから、何も対応しないこと=会社としての不備となります。

そこで、具体的な対策として、①就業規則にパワハラの禁止事項を入れる、②相談窓口を設置する、③調査委員会を設置する、などがあります。

調査委員会というと大企業が行う対策のような気がしますが、そうではありません。実際、5人程度の会社でも調査委員会を作るようにお伝えしています。なぜならば、このトラブルが裁判になる可能性を想定しているからです。

ここで、社長の決断(解雇など)が独断でなく、調査委員会の客観的判断にも基づいていることを証明したいからです。そして、調査委員会は部下が辞めた原因、背景などを調査するのです。この調査結果を元に、会社は、次のようなことを行います。

 ○ 本人(=上司)への注意
 ○ 就業規則に違反しているかどうかの判断→違反している場合は、懲罰を検討
 ○ 部下へのケア

もちろん、これで上司の態度が改善されればOK なのですが、正直、改善された事例を見たことがありません……。この結果、注意が一過性のものとなり、その後も、その上司の部下がクルクル変わる会社はよくあります。

だからこそ、会社は、「雇用を維持できない」「採用コスト、教育コストばかりがかかる」と判断したら、解雇の決断をすべきなのです。これに関して、参考になる判例があります。

 <バイオテック事件 東京地裁 平成14 年11 月>

  ○ ある上司の部下に対する態度が感情的
○ 指示などに一貫性がない
○ この上司の部下(複数名)が既に退職
○ 在籍する社員からも退職の申し出があり

上記のような状況に会社は、次の理由でその上司を解雇しました。

 ○ 業務に著しい支障あり
  ○ 他の従業員からも苦情あり

これに対して、上司は納得できず、裁判を起こしたのです。しかし、裁判所の判断は、「業務に支障が出ているのは明白」「解雇は有効」としたのです。

このように、「上司の傲慢=解雇は有効」という判決があるのです。もちろん、解雇するばかりが方法ではありません。配置転換などを行うことも対策の1つです。ただし、結果として改善されなければ、解雇するしかありません。この場合は裁判も想定するべきでしょう。

ちなみに、解雇を実施し、裁判になった場合、有効になるのが具体的な記録です。例えば、次の記録を残しておくことが重要です。

 ○ その上司を外して、退職時にヒアリングした記録
 ○ 在籍している部下からの苦情に関する記録

そのためには、日ごろから部下の苦情を吸い上げる機関の設置なども有効でしょう。しかし、放置されていることも一般的です。就業規則の改定も大切ですが、もっと大切なことは、「上司への厳しい指導」「部下へのヒアリング、ケア」です。

これが不幸な結果を出さないための手段なのです。いかがでしょうか。私は仕事柄、色々な会社の中身を見ることができます。社長の本音を聞くこともできます。その中で思うことは、「情に流される社長が多過ぎる」ということです。

弊社の見田村はよく、「情を忘れた冷たい人間になってはいけない。しかし、情に流されていいことは1つもない。誰よりも熱く、誰よりもドライな判断が経営には必要だ」と言います。

私も全くその通りだと思います。日本人的というか、情に流されてしまう社長は実に多いのです。しかし、その甘さがトラブルに発展する原因でもあるのです。決断すべき時は決断をしなければならないのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

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