自宅待機

協調性のない社員を解雇?&自宅待機中の給料は?

Q2、自宅待機中の給料は?

先日、経理を担当していたフロントスタッフに経理上の不正が発覚したので、自宅 待機を命じた。この期間中の給料は支払うものなのだろうか?

A2、

社員を出勤させず、自宅にいさせる場合、次の2つの取扱いがあります。
(1) 処分が決まるまでの自宅待機
(2) 懲戒処分としての出勤停止

まず、(1)の「自宅待機」について考えてみましよう。

自宅待機は業務命令として実施されているため、法的には問題ありません。しかし、「自宅待機」と「給料の支払い」は別問題です。自宅待機であったとしても、会社は社員に給料を支払わなければならないのです。

これについて、参考となる判例があります。

<日通名古屋製鈦作業事件 名古屋地裁 平成3年7月>

○社員が暴力行為で自宅待機

○自宅待機中の給料は支払っていない

○その後、他の会社でもアルバイトをしていたことが発覚

○会社は社員を懲戒解雇

○社員は自宅待機中の「給料の請求」、「解雇無効」の2つを訴えた

そして、裁判所の判断は下記となりました。

○自宅待機中であれ、給料を払わないことは許されない
→ 「給与の請求」は社員側の主張が認められた (会社敗訴)

○他社での二重就労は就業規則の懲戒解雇の規定に抵触
→ 「解雇無効」は社員側の主張が認められた (会社勝訴)

また、この判例では下記のことにも触れています。

○「自宅待機=懲戒処分」ではない

○自宅待機は職場の影響を考えての措置

○自宅待機は単なる業務命令 つまり、自宅待機は「職場での通常の指示と同じレベルの業務命令」なのです。

また、別の判例も挙げましよう。

<中川印刷事件 大阪地裁 平成13年8月>

○ある社員の遅刻、早退が多い

○言われたことをやらない(業務命令違反)

○処分を検討する時間を自宅待機とし、給料の一部を支払停止とした

○自宅待機の終了後、懲戒解雇とした

○社員は「給料の一部の未払い」と「解雇無効」で訴えた

そして、裁判所の判断は下記の判断をしました(上記判決と同じ)。

○自宅待機中の未払いの給料を支払うこと

○解雇は有効

この2つの判例から分かる通り、

○自宅待機は「単なる指示」で、懲戒処分ではない

会社の指示で自宅待機しているだけなので、給料の支払いは必要

ということなのです。

ただし、自宅待機中でも給料を支払わなくてもいい場合もあります。それは、このまま出勤させると、

○不正行為が再発する可能性がある

○証拠隠滅のおそれがある

という場合です。

これらの場合は自宅待機中でも給料の支払いが不要なのです。しかし、現実的に「不正行為の再発」や「証拠隠滅のおそれ」を証明することは難しいことです。結果として、 自宅待機中も給料を支払うことが一般的となります。 これに対して、(2)の出勤停止の場合は給料の支払いは不要です。

まとめると、

○自宅待機の期間…給料を支払う

○出勤停止の期間…給料を支払わない

となるのです。

そこで、

○いつから自宅待機か?

○いつから懲戒処分としての出勤停止か?

を明確にする必要があるのです。

これを明確にする方法は「書面で社員に通知する」ということです。実務的には、呼び出して書面を渡す形式になるでしよう。「会社ではなく自宅にいる」という状態は同じでも、自宅待機と出勤停止は法的にレベルの違う行為なので、ご注意下さい。

なお、自宅待機、出勤停止について、次の2つの注意点があります。

○法律では一つの行為に対して、二重に罰を加えることを禁止している

例えば、
・出勤停止 (=懲戒処分) で給料を払わない
・出勤停止後の懲戒処分として、解雇する

ということはできません。

○自宅待機と有給休暇の消化について(上州屋事件、東京地裁、平成11年)
・降格により、自宅待機を命じた
・本人の承諾なしで、有給休暇や代休を消化
・本人がこの処理を不満に持ち、訴えた

これに対して、裁判所は、

○労働基準法39条(有給休暇の取扱い) に違反

○慰謝料の支払いを命じた

と判断しました。

実はこの裁判は、

○会社の担当者が「自宅待機は給料がない」と勘違いした

○有給休暇ならば、給料が出るため、温床措置として有給休暇とした

と間違えてしまったものです。

ただ、結果として違法だったのです。このように自宅待機中の給料の支払いは慎重な取扱いが必要です。

今回の話をまとめると

○不正の可能性があり、調査したい場合は自宅待機とする (給与は必要)

○調査の結果が出たら、解雇や出勤停止などの懲戒処分をする

○場合によっては、退職金もなし

という流れになるということです。一つ間違えると大きな問題に発展することもあるので、今回の話は覚えて置いて下さい。

大きなトラブルでも、最初のきっかけは本当に小さな不備であることが多いのです。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

 

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