健康診断

健康診断はプライバシーの侵害?&労災の適用について

自動車整備士・整備工場の労務相談室

せいび界2012年2月号Web記事

Q1、社員の健康診断はプライバシーの侵害か?

うちの会社では、年1回の健康診断を行っている。各人の診断結果も会社に自動的に届くことになっている。しかし、社員の一人が「プライバシーの侵害だ!」と怒り、受診も拒否している。この場合、どうしたらいいのだろうか?

 A1.

会社は社員と労働契約を結ぶと、

○給料を支払う義務

○快適な職場環境を整える義務

○社員の安全と健康を確保する義務

が発生します。これは法律で決まっています。ですから、

○すべての会社は

○全社員に

○年1回以上の健康診断を

行わなければなりません。行わないと、50万円以下の罰金となります。ですから、会社は全社員に健康診断を受けさせる義務があるのです。

逆に社員にも受ける義務があります。ということで、今回のケースでも健康診断を受けない社員に業務命令を出して、受診させなければならないのです。これを放置すると、会社は責任を取ることになります。詳しく見ていきましょう。

例えば、

○健康診断を受診しない社員を放置

○その後、社員が病気になった

とします。

この場合、会社に責任がかかります。これが通常の病気でも、会社に責任がかかります。さらに、これが過労死に発展した場合、会社は「安全を配慮しなかった責任」を問われる可能性もあるのです。

ですから、会社は健康診断の実施だけでなく、社員の受診状況も管理しなければならないのです。健康診断を受けることは、社員の義務です。これをきちんと確認させましょう。

しかし、中には受診しない社員がいるかもしれません。こういう場合、「受診拒否 = 懲戒処分」という就業規則を作りましょう。健康診断の受診を社員の義務とするのです。

ここで労働局の就業規則をご紹介します。

従業員に対して、採用の際と毎年1回、定期的に健康診断を行う

健康診断の結果、必要と認める時は、労働時間の短縮、配置転換その他、健康上必要な措置を命ずることがある

しかし、ここには「受診拒否 = 懲戒処分」は書かれていません。これでは、

○社員が拒否しても強制力がない

○何かあれば、会社は責任を問われる

という「会社が弱い」状態になっています。

ですから、私は次の就業規則をご提案します。

会社は毎年1回以上の健康診断を行う

社員は正当な理由なく、健康診断を拒否できない

拒否した場合は、懲戒処分を実施することがある

こう書けば、会社を守ることができるのです。もちろん、定期的な健康診断は社員のためでもあるのですが……。

また、社員が50人以上の会社は健康診断の結果を労働基準監督署に報告する義務があるのです。これをしていない会社は多いですね。そういう義務があることを知らないことも多いでしょう。

しかし、これをしないと、調査で必ず指摘されるのです。さらに、「健康診断をしない = 検察に書類送検」ということもあります。もちろん、これは社員の人数は関係ありません。それだけ重要なポイントなのです。

 

Q2.労災の適用はどの範囲?

社員が仕事中に埋め込み式ピットの階段で転倒し、頭を打って意識不明になった。診断結果は、頭の骨が折れているとのことだった。労災事故として申請したいが問題はないだろうか?

A2.もちろん、この場合は労災保険が適用されます。労災保険は「業務中」、「通勤中」などに起こった事故に適用されます。今回の件も労災保険が下ります。

ただし、注意していただきたいポイントがあります。それは「労災保険でカバーしきれない金額もある」ということです。労災保険で下りる日数などの上限は労災保険法で決まっています。しかし、労災で下りるのは、

○治療費

○休んだ分の給与

○障害が残った場合の補償

○死亡した場合の遺族補償

などです。しかし、これ以外に損害賠償額も発生する場合があるのです。

例えば、

○労災保険で下りた金額 1,000万円

○遺族から請求された損害賠償額 5,000万円

としましょう。

この場合、5,000万円の是非が問われます。だから裁判になるのです。もちろん、遺族側が勝てば、会社は払わなければなりません。そのリスクに備えるため、民間の損害保険を利用するのです。

ただ、世の中には労災保険に未加入の会社もかなりあります。こういう会社は業務中、通勤中に何かが起こったら、治療費などの全額を負担しなければならないのです。本来は労災保険で下りる金額なのに……。

しかし、労災保険に未加入の会社は、

○事故なんて起きないだろう

○事務仕事だから大丈夫

と思っているのです。これは危険な考え方です。どんな会社でもこのリスクを抱えているのです。正直、未加入の会社で事故が起こったら、大変な金額になります。

労災保険の負担なんて、そんなに大きくありません。業種によって異なりますが、「給与の額面×0.5%」です。

また、大きな労災事故が発生したら、労働基準監督署が必ず調査に入ります。1年に何回も調査される場合もあります。これは、再発防止のために調査するのです。

それから、もう1つポイントがあります。社長も現場で仕事をしている場合です。基本的に労災保険は社員のための制度です。ですから、役員は加入していません。ということは、仕事中に社長が大きな事故を起こしても、労災保険は下りないのです。

しかし、これが下りる制度があるのです。それは「労災保険の特別加入」という制度です。これを使えば、役員でも労災保険に加入できます。ですから、社長が現場で事故を起こしても補償されるのです。死亡した場合、遺族への補償もされるのです。

これは大きなポイントですので、覚えておいてください(詳細は社団法人全国労働保険事務組合連合会 ☎03-3234-1481まで)。

労災事故を望んでいる人は誰もいません。しかし、いつ起こるか分からないのも事実です。もし、事故が発生したら、社員も会社も不幸になるのです。そのリスクを抑えるためには、労災保険への加入が必要なのです。

AD
 data-src=有償運送許可研修を毎月開催" width="650" height="178" >

有償運送許可研修を毎月開催

せいび広報社では毎月、事故車故障車等の排除業務に係る有償運送許可の研修会を実施しています。会員限定ではなく、全国どの地域からも、法人・個人事業主でもどなたでもご参加いただけます。研修の受講者は、会社の代表者・経営者に限らず、従業員の方でしたらどなたでも、会社を代表して受講していただくことが可能です。

CTR IMG