シリーズ車検を考える①車検業界の動向

車検整備の現状から今後の動向を探る!

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せいび界2014年1月号 再アップ

2014 年車検整備の明日はどっちだ?

いよいよ2014 年を迎える。新年を迎えるに当たって、本誌も内容をリニューアルする。この巻頭ページでは、今号より1 年間に亘って「車検」をテーマに構成していく。
例えば「車検でいかに売上を上げるか?」「いかに車検誘導を図るか?」といったテーマや、あるいは逆に「車検に頼らずに済む経営を目指すには」といったテーマを含めて、「車検」にまつわる話題を取り上げていく構えだ。

車検マーケットにまつわるマクロ的な視点

さて、第1 回目の今月は、車検マーケットの現状について探っていく。既に聞き飽きたことかもしれないが、ただでさえ少子高齢化によりメインの自動車ユーザー層とほぼイコールである労働人口が減少している。
その限られた層であるにも関わらず、志向の変化によりクルマよりも携帯電話(スマホ)などの通信機器・通信費用にお金を注ぎ込む若者が増え、若者のクルマ離れによって保有台数も頭打ちになっている。

弊社発行の「経営戦略データ」にて、毎年、継続検査台数の調査を独自に行っているが、それによると2012 年度の全国合計は3,220 万6,775 台となっている。前年度の2011 年度は3,231万2,988 台であるから、既に継続検査台数においても減少が始まっている。

しかも、「2014 年問題」と言われているように、3年前はリーマンショックと東日本大震災の影響で新車登録台数が激減した年であり、その激減した車両が1 回目の車検を迎えるのが2014 年なのである。当然、メンテナンスパックでディーラーが囲い込んでいることが予想されるので、この車両たちを自社に取り込むというのは、なかなかに容易なことではない。

だからといって悲観するものでもなく、整備白書によれば、2011 年度から2012 年度にかけて全工場平均の1事業場当りの車検整備売上高、車検入庫台数は増加しているのに対し、ディーラーにおいてはいずれも減少している! 一方、専業・兼業工場の合計実績は、売
上高、入庫台数共に増加しているのだ。

もちろん、全国平均なので、必ずしも全社が全社増加しているとは限らないが、少しは光が差しただろうか。しかし、実際のところどうなのか、弊社で独自に、主に関東の整備工場を対象に実施したアンケートを行った。その結果を元に、車検マーケットのより最新な状況を見ていこう。

アンケートに寄せられた意見や感想

さて各質問項目の集計結果をご覧いただく前に、アンケートに寄せられた主なコメントをここで披露しよう。コメントの数だけを見ても、やはり競争は刻一刻と激化しており、厳しい状況下に置かれていることが見て取れる。だからといってそう悲観したものでもなく、やり方によってはまだまだ車検で売上を上げることが可能であり、そのヒントが次ページ以降の集計に詰まっている!

状況は厳しい

● 車検だけでは厳しいけれど、きっちり車検をしないと客が減る。
● ディーラーでの車検入庫は安心をウリにしていますが、最近では値段での判断での入庫が増えています。
● 異業種の参入など、今後は車検での収益は見込めない。販売を強化したい。
● いつかは車検自体がなくなると思う。
● ユーザー代行業者の対策が必要だ。ユーザーは安さだけで判断している。
● ハイブリッド車が増加して不安です。
● 車販も鈑金もやらないとダメ。車検だけでは儲からない。
● 既存客の減少を増加(新規客)でカバーしてきたが、それでも減り始めた。
● 単価が下がって、売上も下がっている。もう上がることはない。
● 車両の電子化により、ディーラー等でないと作業できない部分も増え、一般修理工場ではできなくなるような気もします。メーカーもある程度、一般工場でできるようにした方がよい。

ウチではこうしてます

● ユーザーニーズに合わせた見積提示、請求書と一緒に交換部品/新品部品のDPE提示
● 修理の際、何でも新品交換するのではなく、中古品でも大丈夫な修理は大いに中古品の利用を勧めれば、ユーザーさんの、車検=高いというイメージがなくなってくると思います。よってそのアピールが特に必要だと思います。
● 走行距離が延びているお客さまが増えているため、交換部品も増えている。
● 満足させることが大事。本当に満足したら友達を紹介してくれる。

税金について

● 保険・税金が高過ぎると思う。自賠責の金額は本当にこれでいいのか?
● 税金等システムをもっとシンプルにしていただきたい。
● 重量税をユーザーが直接納税する仕組みを考えて欲しい。

 

 

Q1、最近の年間入庫台数は?

1つ目の質問は年間車検台数を聞いた。答えはそれこそ千差万別であったので、大きく5つに分類した。最も多かったのは101台以上500台以下で46%がこれに該当した。中でも実際に「500台」の回答が最も多く、年間500台といえば月間で約42台、2日で約3台のペースである。

以下はほぼ同じ割合だが、注目は1,001台以上2,000台以下と2,001台以上である。ここに分類されたのは、いずれも社名から判断するに専業工場である。最も多かった所では「2,300台」との回答があった。ではディーラーはどうかというと、501台以上1,000台以下に分類されたディーラーが多かった。中でも最も多かった回答が「800台」であった。

話を元に戻して、1,000台以上入庫している専業工場の秘訣は何か?ある工場は某車検FCに加盟していた。この看板効果も大きいのだろう。それ以外の共通点として、ほとんどの工場でインターネットによる集客を行っていた。今や一般的には車検に限らず、行く店をインターネットで決める人が多いため、整備工場もIT化を進めていくべきだろう。

■ ~50 台( 14%)
■ ~100 台( 14%)
■ ~500 台( 46%)
■ ~1000 台( 11%)
■ ~2000 台( 06%)
■ 2001 台~ (09%)

Q2、5年前と比較して最近の入庫台数は?

2問目では、5年前と比べて最近の入庫台数に変化があるかどうかを聞いた。大方の予想通り、最も多かったのは「減った」でほぼ半数の53%が回答した。この辺りは特集冒頭でも紹介したが、全国的には継続検査台数は減少傾向にあるため、こういっては何だがある意味順当な結果だったと言える。次点はこちらも予想通り、「横ばい」であったが、少し意外だったのがその比率で、こちらもほぼ半数になるかと思いきや、34%に止まった。その要因はもちろん、「増えた」と回答した工場で、13%と健闘した。

「保有台数が減ってきているのだから、いくら頑張っても手放す車の車検は取れないよ。だから横ばいがやっとでも仕方ないんだ」という声をよく聞く。しかし、実際に自検協発表の保有台数を見ると、2000年代後半は年々落ち込みを見せて、2009年末には7,904万2,056台となっているが、この年を境に上昇を続けている。2012年末時点で7,996万5,203台となっている。ということで、今後はともかく現時点では保有台数は増えている。「よくて横ばい」という言葉は、実は言い訳なのかもしれない。

■ 減った (53%)
■ 横ばい (34%)
■ 増えた (13%)

Q3、車検の台当たり単価は最近いくらぐらいですか?

3つ目の質問では車検の台当たり単価について聞いた。こちらもQ1の入庫台数同様に回答がマチマチだったので、6つの価格帯に分類した。
最も多かったのは「5万円以下」で半数近くの46%を占めた。この層の中で最も多かった回答は「4.5万円」で、3分の1が該当した。しかし、先ほども紹介した「整備白書」によると、2年車検における専業工場の1工場当たりの平均台当たり単価は49,615円、専業・兼業合計でも49,880円となっている。もちろん、この数字は2012年度のものなのだが、台当たり単価は下落傾向、価格競争はより激化していることが予想される。

そうした流れから、次点はより少ない単価の層がランクインするのかと思いきや、2位が10万円以下(18%)、3位が10.1万円以上(12%)と続いた。最も多い単価を回答したのは、ここでもディーラーではなく(大手)専業工場で、「16万円」であった。

ではそのディーラーの単価はどうだったかというと、いずれも5万円前後という回答であった。「整備白書」の同データは、71,816円なので、やはり競争は激化しているようだ。

■ ~2 万円 (06%)
■ ~3 万円 (12%)
■ ~3.5 万円 (06%)
■ ~5 万円 (46%)
■ ~10 万円 (18%)
■ 10.1 万円~ (12%)

Q4、5年前と比較して最近の車検台当たり単価は?

4つ目の質問では車検の台当たり単価が5年前と比較してどう変化したのか、あるいはしていないのかを聞いた。Q2とほぼ連動するのでは?
という予想通り、若干のプラスマイナスはあるものの、やはりQ2とほぼ同じ結果となった。「下がった」がきっちり半分の50%、「横ばい」がQ2より若干多い39%、「増えた」は逆にQ2より少ない11%という順番だった。

何度も紹介しているが、「整備白書」の1工場当たりの2年車検整備売上単価を見てみると、平均も含めた各カテゴリーが前年度から減少傾向にある中、兼業工場は2011年度が46,676円だったのに対し、2012年度は50,587円と唯一の増加を見せている。

ここでいう兼業工場とは、「兼業部門(自動車販売、部品用品販売、保険、石油販売等)の売上高が総売上高の50%以上を占める事業場」と定義されているので、車検誘導の一環で様々な関連サービスに力を入れるうち、いつの間にか車検の立ち位置が売上の中心から売上の1つに変化した、ただし相乗効果で総売上はともかく車検単価自体は上がったということなのだろう。

Q5、車検入庫促進のための施策は?(複数回答可)

最後の質問では、車検入庫促進のための施策について聞いた。複数回答可としたので、全工場に占める割合でなく、この質問に回答をいただいた工場数に対して、どれだけの工場が各項目を実施しているかということで集計した。

1位は予想通り「チラシの配布」で、ほぼ半数の42%が実施している。この辺りはよくも悪くも、整備工場ならではの施策だなあということで、ある意味安心したところもある。

次いで、DM発送やTELコールが来るかと思いきや、2位がオリジナル車検(38%)、3位がインターネットによる集客(35%)となった。ディーラーが躍起になって購入時に提案しているメンテナンスパックについても、6位(15%)と低調であった。

「ディーラーに対抗して、専業工場でもメンテナンスパックを導入すべし!」という声もよく聞くが、自社で0から構築するとなると大変な上に、既にメンテナンスパックを契約しているお客さまをこちらに引き込むというのは容易ではない。それよりはこの結果にもあるようにオリジナル車検の展開、さらには台数実績のある工場が実施しているインターネット集客の方こそ優先して実行すべきだろう。

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