図 6 ハイブリッド車の中古車輸出台数

第119回:近年の中古車貿易量の変動

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により、社会は大きな打撃を受けた。中古車輸出市場も同様である。阿部(2020)では2020年4月までの中古車輸出台数を集計し、国境封鎖や都市封鎖などの影響で市場が縮小している状況が示された。

また、阿部(2021)では2020年5月までの中古車のほか、中古2輪車、中古衣類、中古テレビの輸出台数が算出され、相応に影響があったことが示された。

2021年1月28日、2020年12月の貿易統計の数値(確報)が公表された。それにより、2020年の輸出実績が明らかになった。では、阿部(2021)で集計した5月以降の中古車輸出台数はどうなったのだろうか。

本稿では、2020年の中古車輸出台数を示し、近年の中古車貿易量の変動について考察することとする。なお、本稿で示す2020年の数値は速報値であり、その後公表予定の確々報(2021年3月)および確定(2021年11月)で誤差程度の修正がされることに留意する必要がある。

 

2.中古車輸出台数の推移

まず、中古車輸出台数の年間推移を示す。図1は貿易統計上の中古車輸出台数のほか、輸出抹消登録台数の推移を示している。貿易統計上の中古車輸出台数は、近年は120万台から130万台程度で推移していたが、2020年は大幅に減少し、前年の82%の106万台となった。図では示されていないが、車種別にみると、バス、乗用車、貨物車はそれぞれ前年の84%、82%、84%であり、車種による特徴はなさそうである。

図 1 中古車輸出台数の年別推移

図 1 中古車輸出台数の年別推移

出典:財務省貿易統計、日本自動車販売協会連合会ホームページより筆者作成

注:バス、乗用車、貨物車の合計。貿易統計の2020年の数値は確報値

 

2020年の輸出抹消登録台数は、貿易統計と同様に大きく減少している。対前年比では85%であり、貿易統計よりはその減少割合は小さい。タイムラグがあることが影響していることが考えられるが、その他にも少額貨物の対象車両を受け入れる国の落ち込みが小さかったことなどの可能性は指摘できる。

図2は貿易統計上の中古車輸出台数を月別で見たものである。また、2020年の対前年同月比も示している。阿部(2020)(2021)でも見たように、新型コロナウイルス感染症の影響は明らかであろう。中古車輸出台数では2020年5月が最も少ないが、対前年同月比では4月の49%が最も低い。

図 2 中古車輸出台数の月別推移

図 2 中古車輸出台数の月別推移

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:バス、乗用車、貨物車の合計。2020年の数値は確報値。右軸は前年同月比の単位。

6月以降の前年同月比は徐々に増加し、9月、10月の前年同月比は98%、101%となっている。つまり、感染症の影響は一時的であり、徐々に対策が打たれ、回復してきたと言える。しかし、11月になると急減し、対前年同月比80%となっている。12月の対前年同月比は91%と多少持ち直している。

11月の減少については、コンテナ不足が指摘される。日刊自動車新聞の2021年1月12日付け記事では、11月に減少した要因として、「コロナ禍から回復して経済活動が盛んになった中国にコンテナ船が集中したことなどが影響した」としている。

これについては日本経済新聞の2020年12月25日付け記事にも「11月は中国でのコンテナ不足の余波で日本発のコンテナが確保できなかった」と書かれている。

 

3.仕向地別の変動

図3は、貿易統計から2020年の上位20か国の中古車輸出台数を見たものである。このうち、アラブ首長国連邦が最も多いが、やはり感染症の影響なのか2020年の対前年比は79%となっている。同国向けは2019年に大きく増加したこともあり、2020年は2018年よりも多い水準である。

図 3 主要仕向地別の中古車輸出台数

図 3 主要仕向地別の中古車輸出台数

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:バス、乗用車、貨物車の合計。2020年の数値は確報値。

2番目に多かったのがロシアであり、前年よりも増加し、対前年比は103%となっている。新型コロナウイルス感染症の影響はあったはずだが、仮にそれがなければもっと多かったということなのだろうか。

3番目のニュージーランドから9番目のフィリピンまでは、対前年比が80%前後である。阿部(2021)で見たように、4月、5月の対前年同月比は、ニュージーランドが16%、36%、チリが29%、19%である。それから比べると、それ以降は盛り返したということだろう。

2019年よりも対前年比が100%を超えている国は、図3の範囲内では、ウガンダ(108%)、タイ(112%)、パキスタン(219%)、ナイジェリア(119%)、ガーナ(255%)である。一方で、対前年比が50%を下回っている国は、ミャンマー(42%)、スリランカ(38%)である。ナイジェリアやガーナのような西アフリカ諸国は、日本からの中古車輸出が少なかったが、他にも(図3にはないが)カメルーンなども増加の兆しが出てきている。

2019年と2020年の輸出台数の差で増加分が大きかったのは、パキスタン向けの12,762台である。それにガーナ(7,725台)、ロシア(3,827台)、オーストラリア(2,599台)、タイ(2,491台)が続く。

反対に、同じく輸出台数の差で減少分が大きかったのは、ミャンマー向けの36,682台であり、それにアラブ首長国連邦(35,573台)、ニュージーランド(23,798台)、ジョージア(22,695台)、スリランカ(20,320台)が続く。これらの数値は速報値であるため、今後確定値で多少の誤差が修正されるが、いずれにしろ減少分の方が大きいことが分かる。

図にはないが、アジアやアフリカなど地域別に見ると、北米を除いてほとんどの地域で減少している。ただし、減少の程度は異なり、対前年比で比較的減少幅は小さかった地域(アフリカ:89%、ロシア・中東欧:87%)もあれば、減少幅が大きかった地域(アジア:74%、中南米が77%と)もある。これが2021年にどの程度変わるかである。

全体におけるアフリカの割合は増加しており、2019年にアフリカがアジアを抜き、首位となったが、2020年はその差を広げている。全体におけるアフリカの割合は、26%(2018年)→25%(2019年)→27%(2020年)である。これに対して、アジアの割合は29%(2018年)→23%(2019年)→21%(2020年)と小さくなっている。

 

4.移動平均から見た変動

図4は阿部(2020)でも見た主要仕向地別の12か月分の移動平均の推移である。12か月分の移動平均とは、ある月について12か月遡り、その12か月分の中古車輸出台数の平均を算出したものである。主要仕向地とは図3にある輸出国の上位6か国のほか、変動の激しかった南アフリカ、ミャンマー、パキスタン、スリランカを加えたものである。

図 4 主要仕向地の中古車輸出台数(12か月移動平均)

図 4 主要仕向地の中古車輸出台数(12か月移動平均)

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:バス、乗用車、貨物車の合計。2020年の数値は確報値を用いた。

まず、アラブ首長国連邦の移動平均は2019年に増加傾向であったが、同年末から2020年初頭にかけて横ばいになった。その後、減少傾向に転じており、その傾向が続いている。新型コロナウイルス感染症による短期的な変動と言うことができるが、2020年初頭の時点で横ばいになっていることから、別の要因も見ておく必要がある。

次に、ロシアの移動平均は2018年の時点から増加傾向にあった。先に見たように2020年は前年を上回ったが、増加の程度は2019年よりは緩やかになっている。その意味では新型コロナウイルス感染症の影響があったとも言える。この増加傾向は何によるものなのか、継続するのかは別途議論が必要である。

ニュージーランドの移動平均は、2018年の段階から減少傾向である。そして、2020年にその減少に拍車がかかっている。4月、5月の減少から比べると緩やかになってきているが、アラブ首長国連邦と同様に減少傾向は変わっていない。

チリの移動平均も2018年末頃から減少傾向である。2020年4月の急減は同じく新型コロナウィルス感染症の影響と言えるが、7月を底として増加に転じている。この点はアラブ首長国連邦やニュージーランドとは異なっている。

ケニアやモンゴルの移動平均も2019年初頭から半ばをピークに減少しており、2020年にそれが続いている。つまり、感染症が広がる以前に、減少する何らかの要因がある。

南アフリカとスリランカの移動平均も同様に2018年後半から減少しているが、その減少の程度は比較的大きい。南アフリカの移動平均はピークの2018年11月は7,675台だったが、直近の2020年12月は3,494台と半減している。スリランカの移動平均もピークの2018年10月の6,379台に対して、直近の2020年12月は1,051台と6分の1に縮小している。

パキスタンの移動平均については2017年12月の7,192から大きく減少し、2020年1月に882台までになった。その後は増加傾向に転じており、以前の水準には程遠いが、直近の2020年12月は1,959台にまでなっている。

ミャンマーの移動平均は2018年4月の8,508台をピークに減少し、2019年6月には4,055台と半減している。その後、再び増加傾向となり、2020年3月に5,599台と持ち直したものの、新型コロナウィルス感染症の影響なのか、それ以降は大きく減少し、直近の2020年12月は2,216台である。

以上を見ると、中古車輸出台数の変動は新型コロナウィルス感染症の影響以外の要因を含めて、仕向地別に見た方がよさそうである。

 

5.軽自動車、ハイブリッド車

次に車種別に見てみる。とりわけ軽自動車とハイブリッド車に注目してみよう。まず図5は、貿易統計で集計した軽乗用車(統計品目番号8703.21.915、660cc以下のガソリン車)の中古車輸出台数である。これを見ると、やはり2020年は減少しており、前年の81%である。ただし、2019年の時点で既に減少しており、前年(2018年)の84%である。

図 5 660cc以下(ガソリンエンジン)の中古乗用車輸出台数

図 5 660cc以下(ガソリンエンジン)の中古乗用車輸出台数

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:2020年の数値は確報値

仕向地別に見ると、2020年の対前年比は、アラブ首長国連邦、ロシア、スリランカ、ケニアが63%、83%、38%、67%と減少している。パキスタンは2019年の落ち込みが大きかったせいか、2020年は増加しており、対前年比が221%となっている。

これらにガーナ、ナイジェリア、フィリピンが続いているが、これらの国はいずれも増加しており、対前年比は248%、121%、231%となっている。

軽自動車は、2018年はほとんどの仕向地で増加している中で、パキスタン(23,443台減)、アラブ首長国連邦(3,298台減)、ミャンマー(1,408台減)といった上位の仕向地の輸出台数が減少し、全体的に2017年と変わらず、横ばいになっている。

2019年も同様であり、上位の仕向地であるパキスタン(22,551減)、スリランカ(10,293台減)が減少したことで全体も減少となった。つまり、特定の国で大幅に減少したことが大きいと考えられる。

また、図にはないが、供給側に関して、前期末自動車保有台数+当期新車販売台数-当期末自動車保有台数により、軽自動車(乗用車のみ)の抹消登録台数(廃車台数)を算出すると、その数量は増加している。

この数値は、中古車輸出台数と使用済み自動車台数の合計の近似値であるため、抹消登録台数の増加とともに中古車輸出台数が増加すると考えるのは自然だが、実際はそうなっていない。

抹消登録台数に対する中古車輸出台数の割合を示してみると、2013年に7%だったものが、2015年に8%、2017年に9%となっている。この時点では、普通車の水準にはほど遠いとしても、徐々に他国で軽自動車が受け入れられ、中古車輸出市場が拡大していると捉えることはできる。一方で、同割合は2018年に8%、2019年に6%となっており、縮小している。

これらは先に見たようにスリランカやパキスタンの影響が大きいと考えられる。つまり、供給は十分にある中で、軽自動車が使用される国が限られるのであれば、国内で処理されるということである。増加傾向にあるガーナやナイジェリア、フィリピンなどが今後どこまで増加するかである。

なお、2020年は保有台数が未発表のため算出できなかったが、新車販売台数が減少していることから、抹消登録台数も減少することは予想される。

図6は、ハイブリッド車の中古車輸出台数の推移である。この数量はプラグインハイブリッド車やディーゼルエンジンハイブリッド車を含むものだが、99%は一般的なガソリンエンジンのハイブリッド車である。2020年はやはり減少しているが、前年の94%に留まっており、中古車輸出台数全体よりは減少幅は小さい。既に2019年の時点で前年を下回っており、軽自動車と同様にスリランカやパキスタンのような特定の国の影響が強いと考えられる。

図 6 ハイブリッド車の中古車輸出台数

図 6 ハイブリッド車の中古車輸出台数

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:2020年の数値は確報値

仕向地で見ると、モンゴル向けは、2019年にスリランカやパキスタンが大幅に減少する中、変わらず増加していたが、2020年は減少となった。前年比は94%である。

図3よりハイブリッド車以外を含むモンゴル向けの数量は前年比85%であるため、ハイブリッド車は比較的減少の程度が小さい。この減少は新型コロナウイルス感染症による一時的な混乱によるものか、あるいは需要が満たされつつあるのかである。

ロシア向けは増加しており、2020年の前年比は101%である。2018年、2019年の前年比はそれぞれ139%、157%であったことから、増加のペースが緩くなったと言える。ニュージーランド向けも前年比123%と増加している。図3よりニュージーランド向けは全体で79%と減少していたが、ハイブリッド車は増加したということである。

2019年に急減したスリランカ向けは2020年にさらに減少し、数量はわずか493台となっている。同じく2019年に急減したパキスタン向けは対照的に増加しており、2020年の前年比は226%である。

その他の国は軒並み減少しており、とりわけシンガポール、イギリス、フィジーの対前年比は非常に低く、27%、37%、23%である。ハイブリッド車以外のものを含めたこれらの国の中古車輸出台数の対前年比は32%、71%、78%である。ハイブリッド車が減少した要因として、感染症以外の事情があるかどうかである。

 

6.品目による影響はあるのか

2020年の輸出実績における「仕向地・品目」の組み合わせは全部で1,930件である。また、2020年に輸出実績はないが、2019年に輸出実績があり、事実上減少した「仕向地・品目」の組み合わせは358件ある。これらを合わせた2,288件の「仕向地・品目」の組み合わせのうち、2019年よりも増加したのは939件である。

つまり、新型コロナウィルス感染症の影響があるとされる中、41%の「仕向地・品目」の組み合わせで中古車輸出台数が増加した。これに対して減少したのは1,239件(54%)、横ばいが111件(5%)である。

一方、939件が増加しているものの、数量で見ると、増加は大きくはない。増加分の合計は7.3万台である。これに対して減少分の合計は30.7万台であり、差し引くと23.4万台の減少である。

表1は、2019年から2020年に輸出台数が増加した「仕向地・品目」の組み合わせについて、増加分の大きい10件を示している。これを見ると、輸出台数自体は多いわけではなく、また増加分も多くて5千台レベルである。

表 1 2020年の中古車輸出台数が増加した主な「仕向地・品目」の組み合わせ

仕向地品目輸出台数差(2020年-2019年)
2019年2020年
ガーナ乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc2,6127,6585,046
パキスタン乗用車、ハイブリッド車3,7848,4364,652
パキスタン乗用車、ガソリン車、660cc-1000cc1,9545,9523,998
ニュージーランド乗用車、ハイブリッド車15,02318,6653,642
ニュージーランド乗用車、ガソリン車、2000cc-3000cc16,33819,3993,061
ガーナ乗用車、ガソリン車、660cc-1000cc1,4993,7352,236
ロシア乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc32,40334,6112,208
パキスタン乗用車、ガソリン車、660cc以下2,9794,9561,977
香港乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc1,1563,0121,856
ナイジェリア貨物車、ガソリン車、2000cc以下7,1708,9631,793

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:2020年の数値は確報値。2020年に輸出実績のあった「仕向地・品目」の組み合わせのうち、2020年に増加した台数の多い10件を抽出した。

このうち、ガーナ、パキスタン、ニュージーランドはそれぞれ2品目、3品目、2品目が表1に含まれている。一方で品目は660cc以下のものもあれば、2000cc-3000ccのもの、貨物車など様々である。

つまり、増加は品目というよりは仕向地の影響がありそうである。新型コロナウイルス感染症の影響があるはずだが、それも仕向地による。また、これまでもあったように仕向地ごとに需要や規制等の何らかの事情があるものと考えられる。

第3節で言及したが、仕向地別の増加数では、パキスタン、ガーナ、ロシア、オーストラリア、タイの順に多い。このうち、パキスタン、ガーナは先に示した通りだが、それ以外ではロシアが表1に1品目含まれている。

ロシアは全体では増加したが、品目ごとに見ると減少しているものも相応にある。2020年に輸出実績のあったロシア向けの26品目のうち、前年よりも増加したのは12品目である。

オーストラリアとタイは表1に含まれていない。品目別に見ていくと、オーストラリアやタイは多くの品目で増加しているが、個々の品目の増加分が小さい。なお、表1にニュージーランドは2品目含まれているが、後述するように大幅に減少した品目があるため、全体的に減少した形となった。

表2は、表1と同様の作業を行い、2019年から2020年に輸出台数が減少した「仕向地・品目」の組み合わせについて、減少分の大きい10件を示している。これを見ると、表1と比べて輸出台数の多い組み合わせが多く、減少分も最大で2万台近くと大きい。

表 2 2020年の中古車輸出台数が減少した主な「仕向地・品目」の組み合わせ

仕向地品目輸出台数差(2020年-2019年)
2019年2020年
ニュージーランド乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc34,29314,703-19,590
ジョージア乗用車、ガソリン車、2000cc-3000cc14,152625-13,527
アラブ首長国連邦乗用車、ガソリン車、2000cc-3000cc21,05410,227-10,827
ミャンマー乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc14,3193,795-10,524
ミャンマー乗用車、ガソリン車、1500cc-2000cc13,6633,988-9,675
アラブ首長国連邦乗用車、ガソリン車、1000cc-1500cc56,69347,953-8,740
ミャンマー乗用車、ガソリン車、2000cc-3000cc15,2507,101-8,149
スリランカ乗用車、ガソリン車、660cc-1000cc13,1555,048-8,107
ニュージーランド乗用車、ガソリン車、1500cc-2000cc29,50021,920-7,580
アラブ首長国連邦乗用車、ガソリン車、660cc-1000cc18,09710,744-7,353

出典:財務省貿易統計より筆者作成

注:2020年の数値は確報値。2020年に輸出実績のあった「仕向地・品目」の組み合わせのうち、2020年に減少した台数の多い10件を抽出した。

まず、複数の品目が上位にある仕向地として、ニュージーランド(2品目)、アラブ首長国連邦(3品目)、ミャンマー(3品目)が挙げられる。これらは、第3節で示した減少分が大きかった主要仕向地に含まれる。また、ジョージア、スリランカも第3節で示した主要仕向地に含まれるが、表2ではそれぞれ1品目ずつ含まれている。

次に、品目を見ると先の表1ほどではないが、660cc-1000ccから2000cc-3000ccまで幅は広い。つまり、ここでも品目というよりは仕向地の影響で減少したと見る方がよいだろう。

ニュージーランド向けは、表1で見たように増加した品目もあるが、表2を見ると分かるように大幅に減少した品目があり、全体として減少した。表1からハイブリッド車と2000cc-3000ccのガソリン車が好調である一方、表2から1000cc-1500cc、1500cc-2000ccのガソリン車が不調であると言える。排気量の大きいものが相対的に有利になる政策や環境配慮車の優遇などがあったのだろうか。

ニュージーランド向けの品目について2020年の輸出金額/輸出台数で単価を算出すると、ハイブリッド車、2000cc-3000cc、1500cc-2000cc、1000cc-1500ccの単価は、48.8万円、41.8万円、41.2万円、30.9万円である。

このうち、ハイブリッド車、2000cc-3000ccは前年より単価が下がったのに対して、1500cc-2000cc、1000cc-1500ccは前年より単価が上がっている。この単価の変化がニュージーランドの増減に何らかの関係にあるのだろうか。ヒアリング等で確認する必要がある。

アラブ首長国連邦は、2020年の輸出実績のある28品目のうち、2019年より増加したのはわずか6品目である。このうち、ハイブリッド車のみが数量が比較的多く(2019年:3,590台→2020年:4,436台)、他の5品目は数台から数十台レベルの輸出台数(増加台数も1桁)である。

ミャンマーは、2020年の輸出実績のある25品目のうち、2019年より増加したのはわずか4品目であり、増加分は最も大きい品目で93台である。つまり、この国ではほとんどの品目で減少したと言ってよい。

これらが2021年にどうなるかである。いずれにしろ品目よりは仕向地の影響が強いことが窺え、仕向地別に動向を見る必要がある。

 

7.市場の低迷は短期的か

2020年の中古車輸出台数は減少している。これはやはり新型コロナウィルス感染症の影響と言うことはできる。阿部(2020)でも見たように、港湾機能が停止するなどで輸出が滞ったほか、最近ではコンテナ不足によるものもある。

また、感染症の影響で需要が低迷することもある。日本では航空・観光産業や外食産業などで人員を整理する事例が観察される。それは他国でも同様であると考えられ、それにより消費者の需要が低迷することが考えられる。また、需要を喚起するために新車の買い替え促進をすることがあるが、その際に中古車輸入を制限することがある。

一方、日本国内でも経済が低迷することで、新車販売台数が伸び悩み、その結果として中古車の供給量が減ることはある。日本自動車販売協会連合会によると、2020年の新車販売台数(登録車、軽自動車の合計)は2019年の88.5%である。2019年後半の消費増税による減退もあり、2020年後半は持ち直す形となったが、それが2021年になってどうなるかである。

これらの需要や供給市場の縮小は、市場の構造そのものを変えるものとは言い難い。今後しばらく感染症は続くとしても、相応の対策は施され、ある程度市場は回復していくと思われる。ただし、感染症の影響の程度は地域によって異なっており、その回復のスピードは異なるだろう。

本稿で見たように、多くの主要仕向地では新型コロナウィルス感染症の拡大以前から減少傾向にある。各国の事情があるのは自然だが、それぞれどのような要因があったかである。また、アフリカの存在感が徐々に高まってきている。特にガーナなど西アフリカ諸国がどこまで増加するかである。

さらに、軽自動車、ハイブリッド車の中古車輸出市場はパキスタンやスリランカのような主要仕向地の規制等により急激に変動している。供給が増えている中、新たな仕向地に分散するかどうかである。感染症の影響とともに、これらの動向は引き続き見ておく必要がある。

アフリカなどの需要の拡大や軽自動車、ハイブリッド車の仕向地の変化は、市場の構造を変えるものであり、中長期的な動きと捉えることができる。

一方、電動化、脱炭素化の動きにより、ガソリンエンジン車の中古車輸出市場の価格や需要にも変化が起こりうる。少子化やシェアリングエコノミーなどの社会の動きも含めて、これら中長期的な動きについても注視していく必要がある。

 

参考文献

  • 阿部新(2020)「中古車輸出市場の短期的変動:新型コロナウィルス感染症の影響を中心に」『速報自動車リサイクル』(99),66-76
  • 阿部新(2021)「中古品輸出市場の変動に違いはあるか」『速報自動車リサイクル』(100),14-23
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