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第155回 欧州使用済自動車規則案の経済学的な視点:行方不明車問題を中心に

山口大学国際総合科学部 教授 阿部新

1.はじめに

2023年7月13日、欧州委員会環境総局は使用済自動車に関する規則案(以下「ELV規則案」)を発表した。欧州連合(EU)における自動車リサイクルの制度は、これまでは使用済自動車に関する指令(Directive 2000/53/EC, 以下「ELV指令」)であったが、それからの大幅な制度改正である。

欧州委員会のELV規則案を紹介するウェブサイトを見ると、この規則案は正確には「自動車設計に関する循環性要件および使用済自動車の管理に関する規則の提案」(Proposal for a Regulation on circularity requirements for vehicle design and on management of end-of-life vehicles)とある。その説明では、既存の2つの指令をベースとして新たに設計された制度であるとする。1つはELV指令、もう1つは再利用可能性、リサイクル可能性、回収可能性に関する自動車の型式承認に関する指令(2005/64/EC)であり、これら2つの指令は廃止される。規則案は大きく9つの章に分けられており、序文で97項目の説明の後、57の条文と11の附属書が示されている。これまでのELV指令は、序文が31項目で、条文が13、附属書が2つであることからそのボリュームの大きさは窺える。

また、今回は「指令」ではなく、「規則」である。「指令」は定められた条文に基づいて各加盟国が国内法を制定するものであり、「規則」は条文そのものを全ての加盟国が直接適用する。例えば、ELV指令においては、最終所有者が使用済自動車を費用負担なく認定処理施設に引き渡すことができるように各国に「指令」をし、各国は最終所有者の費用負担がないことを前提として国内法を制定し、それぞれの事情に応じた独自の仕組みを作っている。よって、その仕組みは各国で異なることがある。今回の「規則」では、どこまで踏み込んで規定するかを丁寧に見る必要があるが、その内容によっては制度のばらつきはなくなる。

ELV指令は2000年に発効し、それから20年を経たタイミングで見直しの議論が出ていた。筆者もその見直しの論点を整理した欧州委員会の報告書(Williams et al., 2020)をサーベイしている(阿部,2021c)。それから2年以上経ったが、その間に開催された欧州の自動車リサイクルに関する国際会議では、その進捗状況が報告され、改正の方向性についてある程度は知られていた。そのため、今回の制度改正の論点も概ね予想されたものだった。

具体的にELV規則案の冒頭に示される説明用文書(Explanatory Memorandum)では、EUレベルで取り組むべき問題分野を以下の4つに特定している。

  • 自動車の設計・生産における循環性の結合が不十分で、一次原材料への依存度が高い。
  • 潜在的にはもっと多くの環境的・経済的価値を保持できる可能性があるが、実際の使用済自動車の処理の質は最適とはいえない。
  • ELV指令の対象となる「行方不明車」の大多数が適切な環境条件下の施設で回収されておらず、走行可能でない害のある多くの中古車が毎年EUから輸出されている。
  • ELV 指令の対象外にある車両には、潜在的に欧州グリーンディールの目的に貢献する循環が潜在的にある。

そして、同説明用文書では、これらの問題分野に対応して、大きく6つの政策オプションを示している。それらは、(1)循環型設計(Design Circular)、(2)リサイクル素材の使用(Use Recycled Content)、(3)より良い処理(Treat Better)、(4)より多く回収する(Collect More)、(5)拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility, EPR)、(6)より多くの車両を対象とする(Cover more vehicles)、である。欧州委員会のウェブサイトでもこの6つの項目を主要な政策として紹介している。

欧州委員会の使用済自動車に関するウェブサイトでは、自動車リサイクル政策の背景や目的などのほか、今回のELV指令の見直しのプロセスを示しており、そこに今回のELV規則案のリンクが示されている(European Commission, 2023a)。また、ELV規則案と並んで同日付で影響評価報告書も発表されており、政策オプションの内容やその対策、効果、見送られた対策などが示されている(European Commission, 2023b)。さらに、これらの発表の1か月前の2023年6月には、欧州委員会から委託されたコンサルティング会社らによる調査報告書も公表されている(Baron et al., 2023)。

それらはそれぞれが膨大な量の文書であり、丁寧に目を通すのは多大な労力を要する。本稿では、ELV規則案の中から主として行方不明車問題とその対応としての「(4)より多く回収する」政策に注目する。まずはELV規則案に書かれてあることを読み取り、影響評価報告書や調査報告書を適宜参考にしながら、経済学的な視点から論じていく。

 

2.行方不明車問題と無償回収制度

筆者はこれまでも欧州の行方不明車問題について言及してきた(阿部,2021a; 2021b; 2021c; 2023)。行方不明車問題とは、使用済自動車台数や中古車輸出台数のうち、公式統計に載らないものがあり、その行方がわからないというものである。その数は、前期末自動車保有台数+当期新車登録台数-当期末自動車保有台数によって算出される抹消登録台数(廃車台数)から、公式統計で示される使用済自動車台数と中古車輸出台数を差し引いたものになる。必ずしもそれが環境汚染などの不適正行為を引き起こしているとは限らないが、往々にして正式な手続きを経ないことにより節約をすることができるため、公正とは言えない。また、環境汚染を伴う場合は社会において被害(外部費用)を発生させている。

行方不明車問題で重要なのは、使用済自動車が適正に流通するような経済的インセンティブがあるかどうかである。これは自動車に限った問題ではなく、様々な国・地域で使用済み製品や廃棄物の回収にインセンティブを設定する試みがある。多くは、費用負担のタイミングを変えたり、何らかの料金、税を設定したりする。具体的には使用済み製品や廃棄物の無償回収やデポジット・リファンド制度などがある。それは国、自治体が管理するものもあれば、生産者が管理するものもある。生産者に回収責任を課すものは拡大生産者責任制度として位置付けられる。

日本とEUの自動車リサイクル制度の違いは、日本が使用済自動車の分別後の物品を生産者が無償で引き取る制度であるのに対して、EUは分別前の使用済自動車そのものを生産者が無償で引き取る制度となっているところである。この規定はこれまでのELV指令では第5条第4項にあり、認定処理施設への引き渡しにおいて最終所有者が費用を負担することがない制度の構築を求めている。

EU型の使用済自動車の無償回収制度は、使用済自動車が非有償である場合、その放置、不法投棄を防ぎ、適正な流通を実現させることができる。しかし、使用済自動車が有償である場合は適正流通のインセンティブを生まない(阿部,2011)。その結果、有償の使用済自動車が不適正なルートに流れている可能性は否めない。行方不明車問題の解決においては、この有償の使用済自動車のコントロールが求められるが、今回の制度改正では使用済自動車の無償回収の枠組み自体は変わらないように読める。この点は阿部(2021c)においても予想はされている。各国で独自の制度が成り立っている中、現実的にもこのベースとなる使用済自動車の無償回収制度の枠組みを抜本的に変えることは難しいと想像できる。

今回のELV規則案を見ると、その第16条(拡大生産者責任)において生産者に無償回収を求めている。より正確には、全ての使用済自動車が認定処理施設に無償で引き渡され、認定処理施設が適正に処理することができる体制の構築を生産者に求めている。条文を見てもやはり、使用済自動車の流通の枠組みとして従来のELV指令との違いを見出せない。

ただし、これまでのELV指令との違いとして「拡大生産者責任」が強調されている点がある。これまでは「拡大生産者責任」という用語が条文にさえも使用されていなかったが、今回のELV規則案では第4章第2節に「拡大生産者責任」という節が設けられており、その節中の第16条から第22条まで生産者に関わる規定が示されている。もちろん、「拡大生産者責任」の用語も条文に多く盛り込まれている。具体的には、先に示した生産者の義務規定のほか、生産者の登録(第17条)や生産者責任組織(第18条)、拡大生産者責任の履行における認定(第19条)、生産者の金銭的責任(第20条)、料金の調整(第21条)、他の加盟国で使用済みとなった車両の費用配分メカニズム(第22条)といった生産者に関わる様々な規定が示されている。これらの規定が適正流通にどの程度関わっているかであるが、条文は権限や手続き、管轄の範囲などを規定するものであり、適正流通に効果的な具体的な政策を示しているかというとそうでもない。そのため、条文の限りでは拡大生産者責任が、行方不明車問題にどの程度関わっているかは判断できない。

 

3.検査の強化と車両登録制度

先に示したように、行方不明車問題はEUのELV規則案の中心課題の1つである。上記のように無償回収の仕組みが据え置きである中で、どのように行方不明車問題を克服しようとしているかである。欧州委員会の使用済自動車に関するウェブサイトでは、行方不明車問題の具体的な政策が示されている。それを見ると、「検査の強化」「各国の車両登録システムの相互運用」「中古車と使用済自動車の区別の明確化」「走行可能でない中古車の輸出禁止」といった対応が言及されている。これらが主要な政策として位置付けられていると読み取ることはできる。

まず、「検査の強化」は、いわゆる立入検査、査察のことである。規則案の序文(75)~(77)を見ると、ELV指令の見直しの議論でも検査に関する要件がないことが指摘されていたことや、方向性として検査の頻度、その範囲、検査対象施設の特徴に関する最低限の要件を定めるべきであること、毎年認定処理施設の少なくとも10%を検査対象とすべきであること、修理・整備事業者も検査の対象とすべきであること、検査が効率的な方法で行われるよう国内及び国際レベルでの協力メカニズムを確立すべきであることなどが言及されている。条文においては、第46条に書かれてあり、認定処理施設、修理・整備業者、その他使用済自動車処理施設・経済主体を対象とすると明記されている。

関心は非認定処理施設をどこまで取り締まることができるかである。日本でも現在は定かではないが、少なくともかつての廃棄物行政において、無許可業者が横行する中で許可業者が不満を漏らすことがあった。モニタリングすべきは無許可業者であるにもかかわらず、許可業者からすると自分たちばかりに検査が入っているように映ったのだろう。そのような法の執行の程度により、制度が効果的に機能するかどうかはわからない。多様なEUではなおさらであり、各国または自治体の姿勢にばらつきがあるのであれば、地域差も生じうる。

次に、「各国の車両登録システムの相互運用」については、車両登録・抹消制度に関わるものであり、ELV規則案の範囲内では収まらないものである。ELV規則案の序文の(48)を見ると、車両登録された国と破壊証明書(使用済自動車が処理されたことを証明するもの)を発行した国が異なる状況を想定して、破壊証明書の発行の通知や承認を義務付けることにより、使用済自動車の所在をより適切に追跡できるようにするとある。また、序文(86)を見ると、車両の登録状況に関する情報を加盟国間でリアルタイムに交換できる効率的なシステムが存在しないことが指摘され、欧州委員会は自動車の登録書類に関する理事会指令(1999/37/EC)の改正を提案すべきであるとする。そこでは、加盟国は、自国で登録された車両について、使用済自動車として処理された場合や他国で再登録された場合、域外の第3国に輸出された場合、盗難にあった場合に、車両の登録抹消の理由を適切に文書化できるデータを電子的に記録することを義務づけるべきであるとする。加えて、一時抹消された車両の違法な解体や輸出を防止するため、車両の所有者は、所有者変更の際は国内の車両登録機関に速やかに報告する義務を負うべきであるとする。規則案では、第44条において当局間の協力と情報交換について、第45条において車両登録などに関わる情報を加盟国間で交換するために使用されるMOVE-HUB電子システムについて規定している。

これらの各国の車両登録システムの相互運用に関する政策は、国を跨いで制度を構築しているEUならではの課題である。また、ELV規則案の範囲を超えるものであり、今まで以上にその運用の難しさが感じられる。これらは、先の検査の強化と同様にこれまでの制度の不備を補い、強化するものであり、そこに驚きは感じない。尤も、これらは全体の土台となる政策として位置づけられると考えられ、まずはそこを補強することを重視しているように読み取れる。その土台の上に何を持ってくるかである。

 

4.使用済自動車の判別と中古車輸出規制

次に行方不明車問題の主要政策として、「中古車と使用済自動車の区別の明確化」と「走行可能でない中古車の輸出禁止」について見てみたい。日本においても、自動車リサイクル法が施行されてから中古車と使用済自動車の区分の問題の議論はあった。走行できず、客観的に使用済自動車と判断できても、修理により自動車として使用可能な場合がある。ハーフカット、分解したものを再製造することもある。自動車に限らず、中古品と称して使用済み品を取引し、規制の網を潜る行為は広く観察されてきた。そのため、使用済みという定義が難しいのは自然のことであり、規制の網を潜る行為の回避の議論が重要であることは確かである。

今回のELV規則案では、第5章の第37条から45条までにこのことが記載されている。第5章は2つの節に分けられており、第1節(第37条)で中古車の状態(使用済自動車との区分)について、第2節で中古車の輸出(第38条~第45条)について規定している。これまでのELV指令では中古車輸出についての条文はなく、また日本の自動車リサイクル法でも預託金の払い戻しについて輸出の言及はあるが、輸出そのものの扱いについての条文はない。あくまでも運用面でルールを設定してきた中で、今回のELV規則案での中古車輸出の規定は、ELV指令や日本の自動車リサイクル法にない新しさを感じる。

内容的には、使用済自動車のみならず、走行できない中古車の輸出に規制をするというものであり、条文では使用済自動車や走行可能という判断基準を規定している。ここでの「走行可能」は物理的なものではなく、制度上の定義であることが鍵である。また、中古車が輸出される際の情報伝達について徹底し、加盟国の管轄当局や税関当局間で協力関係を結ばなければならないことなども書かれてある。

まず、使用済自動車の判断について、規則案の第37条では、自動車の所有者はその車両の引き渡し時に、それが使用済みではないことを証明できなければならないと書かれてある。そして、その車両が使用済みでないかどうかを判断するために、附属書Iに定められた基準を満たしているかどうかを確認しなければならないとする。

この附属書Iを見てみると、使用済自動車であるか否かの判断基準として、自動車の修理可能性評価基準(パートA)と使用済自動車の基準の目安リスト(パートB)が設けられている。パートAでは、「切断または部品取りがされている」「焼失している」「水没している」などの基準が提示され、その基準の1つ以上に該当する場合に技術的に修復不可能であるとする。また、修理費用に対して市場価値が十分に低い場合も使用済みと判断され、さらにエンジンまたは電気系統の損傷、ドアが取り付けられていないなどの状態で修理をする場合は個別の技術評価を実施しなければならないとする。パートBでは、車両識別番号がないなどの車両を識別する手段がないことや所有者が不明であること、認定回収拠点や認定処理施設へ引き渡されたものであることなどの場合も、使用済みと判断する追加的な基準として使用できるとする。

このようなプロセスにより使用済みか否かを判断していくのだが、それで該当する車が使用済みではないと判断されたとしても輸出できるわけではない。ELV規則案では、第37条第3項において、「中古車は以下の場合に限り輸出することができる」とし、「(a)附属書Ⅰに記載された基準に基づく使用済自動車ではないこと」、「(b) Directive 2014/45/EUの第 5 条第1項(a)及び(b)並びに第8条に従って車両が最後に登録された加盟国において走行可能とみなされること」といった条件が示されている。つまり、(a)を満たしたとしても、(b)を満たさなければ輸出はできない。

Directive 2014/45/EUというのはEUの車両検査に関する制度である。そのため、(b)の「走行可能」とはこの車両検査制度に基づいて走行可能と判断されたものになる。つまり、ここでの走行可能は「物理的に走行可能」なのではなく、「制度的に走行可能」という意味であり、EUの環境基準や安全基準といった制度上の要件を満たすものの意味が含まれている。ELV規則の序文(69)においても、「これによりEUの道路を走行するのに適した中古車のみが第3国へ輸出されるようになり、EUからの中古車輸出が第3国での大気汚染や交通事故の一因となるリスクを低減できるはずである」と言及している。これらから輸出先で中古車として使用されうるものも規制がかかっている。

これは日本の感覚からすると一歩踏み込んだ規制のように見える。しかし、かつての日本でも似たようなことはやっていた。具体的には輸出時に車両検査を行い、それを中古車輸出の条件としていた。日本自動車査定協会の『四十年の歩み』によると、1971年より当時の運輸省令に基づく自動車点検基準による点検整備を行った分解整備記録簿の写などの添付を義務付け、同協会が厳正に検査をしていたようである(日本自動車査定協会編,2007)。規制緩和の波からこの仕組みは1995年に廃止されている。

欧州委員会の政策の概要紹介では「走行可能でない中古車の輸出禁止」(a ban on exporting used vehicles that aren’t roadworthy)と書かれてある。制度上、走行可能ではない自動車は、その国・地域では使用済みという扱いにならざるを得ない。そして、そのような中古車の輸出は事実上、使用済自動車の輸出であり、物理的に使用済みとなる自動車と同等の扱いであるという解釈はできる。ELV規則案の序文(66)を見ると、使用済自動車は有害廃棄物に分類され、OECD非加盟国には輸出できないとある。つまり、走行可能でない中古車も同じ扱いであるということである。ただし、同(66)によると、使用済自動車であっても無害化されたものは廃棄物輸送規則に基づいて輸送されれば域外でも処理されうるとある。また、同(67)でも、使用済自動車がEU域内から第3国へ輸送される場合の手続きが言及されており、使用済自動車であっても輸出できることがわかる。これは承認の下で輸出を規制するバーゼル条約のスタンスと同じであり、走行可能でない中古車も無害化すれば輸出できるということなのだろう。

 

5.輸出規制の妥当性

このような物理的に走行可能な状態の中古車の輸出を制限することは、妥当といえるかどうかである。経済学においては市場競争の下でより高く購入する者が存在することでその国の富(社会的余剰)が最大化されるという立場である。そのため、中古車の輸出規制により輸出業者の取引機会が奪われ、より高く購入する者が市場に参加しないことで社会的余剰が減少するという説明になる。

また、輸出国において車両検査に通らない自動車には、修理・整備の費用が高いことで制度的に走行できなくなったケースも考えられる。輸入国で修理・整備をし、輸出国(EU)の基準で走行可能にすることができるのであれば、輸出時に走行できなくても輸出はできるという考えはある。日本でもかつての輸出車両検査の規制の際に、輸入国で修理・整備するほうが合理的であるとする主張があったとされる。尤も、様々な道を作ることは、管理が徹底できているということが前提である。それが抜け道となり、不適正な流通を誘発するのであれば、その道を作ることは非効率的となりうる。

経済学では自由貿易が原則であるが、一方で環境汚染により、被害(外部費用)が追加され、社会的余剰が減少するという考えもある。輸出国で車両検査に通らないような車は、輸入国でも故障などで早い段階で使用済みとなり、廃棄物を発生させやすいと考えることはできる。それが不適正に処理されれば外部費用は生まれる。また、基準を超える量の排出ガスは、より深刻な大気汚染の要因となり、その分の外部費用を生む。環境汚染に留まらず、安全性に不備があることで事故を起こし、被害が生じることも社会的余剰に影響する。

ただし、車両検査に通る車であってもタイミングは遅くなるかもしれないが、いずれ廃棄物になる。また、排出ガスが少ないものも汚染物質を排出している限り、程度の違いがあるが、外部費用を発生させているのは同じである。この費用を発生させていることを問題視し、輸出を規制するのであれば、究極的には新車も同じ扱いになってしまう。本来であれば、中古車の使用で得られる便益と外部費用の累積の大小関係で判断するのが妥当である。一方で、それを正確に算出することは難しく、運用面での効率性を考えて「走行可能か否か」で線を引くのが妥当という考えも理解できる。

尤も、このような輸出後の外部費用は、通常は政策において考慮することはない。本来、世界全体の余剰(地球益)を考慮して政策を実施すべきだが、経済学の視点ではその国の余剰の最大化を追求する。そのため、輸入国で廃棄物や排出ガスによる外部費用が発生したとしても、輸出国でそれを考慮した政策は行うことはあまりない。もちろん、社会的責任の観点から企業、業界レベルで輸出を控えるということもあるだろうが、一方で自由貿易の原則があり、その下で国の政策として輸出を一律に規制することはなかなかできないという事情もある。よって、EUの試みは興味深いが、経済学の考え方からは妥当であると言うことはできない。

一方、外部費用以外の考え方では、輸出を制限することで資源が確保でき、それが国益に繋がるという主張はある。この議論は、中古車に限らず、資源の流出に関して伝統的にされてきた議論であり、昨今では経済安全保障というキーワードで再び関心が高まっている。国家間の緊張などの政治的なリスクとその回避の捉え方により国益は変わり、国内でも立場によって意見が異なる。サーキュラーエコノミーを推進するEUとしては、輸出先での環境汚染や交通事故というよりは、資源流出に重きを置いているように想像するが、それが果たして合理的か否かである。資源確保の観点で言うと、究極的には制度的に走行可能でない中古車だけではなく、新車を含む全ての自動車の輸出を禁止するというところまで行きつく。そのような根拠で輸出業者のみならず、より高く中古車を売却したいユーザーや販売店にとって、資源確保としての輸出制限を素直に受け入れるかどうかである。あくまでも経済学では自由貿易が原則である。資源の流出については地産地消と同じでそれを確保する便益、費用の累積分を比較する必要がある。いずれにしろ、走行できない中古車の輸出規制は興味深いものの、経済学的にはもう少し慎重に議論すべきである。

一方、ここでの原点は行方不明車問題である。つまり、中古車と称して使用済自動車が不適正に流通することが問題なのだが、使用済自動車のみならず、走行できない中古車の輸出禁止により、その抜け道は抑えられるかどうかも考えなければならない。

その中で、中古車として車両検査に通るようなものであっても価値がないことから、使用済みとして解体されるものはどうするのかという疑問がある。このような車は、使用済自動車として解体する予定であっても、その取引時に中古車と称して引き渡すことはできる。要は非認定処理施設が中古車を購入して解体するということである。ELV規則案では、認定回収拠点や認定処理施設へ引き渡されたことも判断の1つとされるが、非認定処理施設への引き渡しをどのように掴むかである。

このような事情について、日本の場合、リサイクル料金の扱いが関連し、自動車の取引時点で使用済みか否かが判断される。その判断は使用済みとして引き渡したほうが得か、中古車として引き渡したほうが得かになる。専門的な知識がないと取引時点でそれを判断することは難しく、それができるのは主として解体業者になる。これが関係しているかどうかは慎重に議論する必要があるが、日本では、結果的に使用済自動車の法制度上の最終所有者と引取業者は、概ね解体業者が担っている。最終所有者が解体業者となり、リサイクル料金を支払うという違和感のある制度となっており、改正や解釈変更を検討すべきであるものの、許可業者に使用済自動車が流れていることは確かである。

なお、上記の通り、今回のELV規則案では、「走行可能ではない中古車の輸出禁止」が提案されているが、検討段階においては年式や排出ガスによる中古車輸出規制も対策の1つとしてあったようである。欧州委員会の影響評価報告書をよく見てみると、行方不明車問題の対策として見送られたものがいくつか並べられている。そのうちの1つは「EUから第3国への全ての中古車輸出に関する年式と排出ガスの基準値の設定」(M47a)である。中古車貿易において新車販売促進などの理由から、輸入国で年式規制や排出ガス規制をすることは広く観察されるが、輸出国がそれを行うことはあまりない。面白いことが検討されていたようである。

M47aの説明を見ると、輸入側において具体的に輸入の要件を定めているところがあり、それを考慮せずに輸出を禁止すると不釣り合いな効果(disproportionate effect)をもたらすことがあると指摘されている。不釣り合いの効果の意味は正確にはわからないが、輸入国が想定している便益や外部費用があり、輸入側と輸出国側の方針が異なることで政策に不整合性が生じてしまうということなのだろうか。いずれにしろ、欧州委員会の影響評価報告書では、年式や排出ガスで輸出の基準を設けることは難しいが、EUの車両検査関連の指令(Directive 2014/45/EU)に従って判断された「走行可能」という基準が輸出の判断において提示されることで、年式や排出ガスにより古い車の輸出を禁止するものと似たような状態になりうると言及されている。

 

6.破壊証明書の扱い

これまでのELV指令では第5条第3項において破壊証明書(certificate of destruction)の提示が使用済自動車の抹消登録の条件となるように制度を設けることを加盟国に求めている。破壊証明書とは使用済自動車が処理されたことを証明するものだが、ELV指令のこの規定はあまり機能しなかったとされる。阿部(2021)においてもこの破壊証明書の運用に不備があることが指摘され、行方不明車問題の対応としてその拡充の必要性が言及されている(注:阿部(2021)では「解体証明書」と表記している)。これがどうなったかである。

欧州委員会の使用済自動車政策のウェブサイトでは、ELV規則案における行方不明車問題の主要な政策として破壊証明書の用語がなかった。登録制度の拡充や使用済自動車の区分の明確化と比べて優先順位が低いのかもしれないが、破壊証明書の提出は抹消登録などとリンクさせることで適正流通の1つの動機になりうるため、その用語がないことに筆者は不思議に思った。

しかし、ELV規則案をよく見てみると、破壊証明書はやはり行方不明車問題において重要な位置づけにあることがわかった。規則案の序文の(47)~(49)では、破壊証明書の必要性や、それに関する加盟国、認定処理施設、所有者の役割などが説明されており、(48)においては行方不明車問題と絡めて破壊証明書のことが述べられている。

具体的な条文では、規則案の第25条第1項において、認定処理施設は、使用済自動車の最終所有者に対して車両ごとに破壊証明書を発行しなければならないとする。そして、同第4項では、加盟国の関係当局は当該車両の破壊証明書を受領した後にのみ使用済自動車の登録を抹消するものとするとある。さらに、第26条において、自動車の所有者が使用済み段階に達した自動車を認定処理施設に引き渡し、その後、自動車の登録抹消のために破壊証明書を提示する義務を規定している。

欧州委員会は、2023年6月にELV規則案が発表される直前に、ELV指令の見直しのための調査報告書を公表している(Baron et al, 2023)。これを読むと、ELV指令の第5条3項の書き方では、破壊証明書の提出は抹消登録の1つの選択肢であり、輸出、盗難、私有地での使用などの他の選択肢が適用される可能性があると解釈できるとする(p.152)。この条文を改めて確認すると、「加盟国は、破壊証明書の提示が使用済自動車の抹消登録の1つの条件(a condition for deregistration)となる制度を設けるものとする」とあり、確かに選択肢の1つである破壊証明書を提出しなくても抹消登録ができるように読める。

しかし、問題は「選択肢があるから」ということでもないように思える。日本でもそうだが、輸出も抹消登録の対象となるため、使用済みとして処理されることを唯一の抹消登録の条件とすることはできない。上述の調査報告書では、(永久)抹消登録の条件として、(a)破壊証明書の全国車両登録簿の提出のほかに、(b)車両が盗難車で行方不明であることを証明する警察の報告書の提出、(c)車両が輸出されていることを証明する書類の提出、(d)特別な要請による免除(例:ビンテージ車両の博物館保管)を示している(Baron et al. , 2023; p.164)。また、一定期間の一時抹消登録後の「自動的な」永久抹消登録の禁止、私有地での使用は永久抹消登録の理由にはならないこと、一時的登録抹消期間中の所有者変更の届け出の義務付けなどを提言している。

これらにより一時抹消登録状態のものが行方不明にならないように徹底するのだろうが、それは自動車登録制度の中で定められるものと考えられる。先にも示したものだが、ELV規則案の序文(86)においても1999/37/ECの改正を提案すべきであるとするとともに、「車両の抹消登録の理由を適切に文書化できるデータを電子的に記録することを義務づけるべきである」と述べている。あくまでもELV規則案で示される条文は、破壊証明書関連のものであり、その発行、提示の義務付けや抹消登録との紐づけ、および加盟国間での通知の徹底を求め、連携を強化することにある。

これらを見ると、破壊証明書関連の手続きでこれまで抜け穴となっていたものを1つ1つ埋めて行方不明を極力なくす、という方針の印象を持つ。筆者としては、そこに何らかの経済的インセンティブを設けることはできないのかと思うのだが、果たしてどうだろうか。

上述の調査報告書を見ると、自動車所有者に対して破壊証明書の提示と保険料、手数料の支払いの終了をリンクさせることの重要性が提示されている(Baron et al., 2023; p.161)。これは一種の経済的インセンティブである。これについて、規則案と同日付で公表された欧州委員会の影響評価報告書を見ると、M46に「破壊証明書の有効性を支えるインセンティブの実施に関する加盟国の交換」というものがあり、上記の保険料、手数料とのリンクのことが書かれてある(European Commission, 2023b)。しかし、同報告書によるとこの対策は見送られたと書かれてある。

具体的には、(1)保険の支払いの終了と破壊証明書を結び付ける、(2)行政手数料の支払いの終了と破壊証明書を結び付ける、(3)他の経済的インセンティブを設定する、という3つの経済的インセンティブのうち、最低1つの実施状況について報告することを義務付けるという対策である。しかし、この政策は補完性(subsidiarity)の懸念があることや、違法行為の可能性があることなどの問題が言及され、義務付けるには不十分であると述べられている。無償回収という大枠を抜本的に変えられないとすると、制度の手続きや監督の強化のみならず、別途何らかの経済的インセンティブがあったほうがよいように思うのだが、様々な国が加盟しているEUにおいて少なくとも統一的に経済的インセンティブを設定することは難しいのだろう。

 

7.見送られた対策

先に言及した欧州委員会の影響評価報告書を見てみると、行方不明車問題に対して様々な対策が検討されていたことがわかる(European Commission, 2023b)。そこには、第5節で示した年式、排出ガスによる輸出規制、第6節で示した破壊証明書と保険料終了とのリンク等などの見送られた対策も含まれている。

見送られた行方不明車問題の対策は上記以外に4つあったが、この中で興味深かったのは、「国内の自動車市場における報告義務に基づいた使用済自動車の強制回収目標の設定」(M43)というものである。「使用済自動車の強制回収目標」は、言葉だけで見ると使用済自動車の回収率のようなイメージを持つ。つまり、潜在的に使用済みとなった車両のうち、適切なルートに流れた車両の割合である。これが示されれば、行方不明車を限りなく減らすための目標値になりうる。

これについて欧州委員会の影響評価報告書を読むと、やはり筆者がイメージした目標値のようである。しかし、驚いたことにその説明では目標値自体は既にあるとしている。なぜならば、これまでのELV指令では、第5条第2項において「加盟国は全ての使用済自動車が認定処理施設に確実に移送されるように必要な措置も講じなければならない」とあるからだそうだ。これは発生する使用済自動車の100%が回収されることを意味し、確かに回収目標値はあるといえばある。

一方、同報告書によると、この目標値の設定よりも「国内の自動車市場における報告義務」のほうが問題であるとする。その目標に到達しているかをどのように確認するかは難しい。具体的に加盟国により年間の輸出入の正確なトレーサビリティを含む、国内の保有車両に関する詳細な報告が必要となるという。国レベルでの比較可能な報告メカニズムやEU域内貿易のデータが不十分であることから、100%の回収目標を達成しているかどうかを評価することができないようである。その理由から、使用済自動車の強制的な回収目標を設定するのは時期尚早であるとしている。

確かに違法ルートに流れる車両を含めて潜在的な使用済自動車の台数を確定的に示すことは難しい。自動車保有台数と新規登録台数を用いて抹消登録台数を算出することはできるが、それには違法中古車輸出台数や抹消状態車両増加数も含まれるため、潜在的な使用済自動車台数は掴みにくい。推計値は出せても、規制に従わせるほどの説得性は十分とは言い難い。目標値の設定と達成義務により、何とかして回収率を上げる努力が生まれそうだが、算出台数の信頼性がない中で、回収率を上げることを国や生産者に求めるとすると、それなりの抵抗はあるだろう。

また、行方不明車問題の対策として含まれていなかったが、別の政策オプションに経済的インセンティブの検討がされていた。その1つがデポジット・リファンド制度であり、拡大生産者責任の政策オプションの検討項目に含まれていた。影響評価報告書の説明によると、「加盟国でのデポジット・リファンド制度の設置」(M26)、「欧州の単一機関が監督する欧州全体のデポジット・リファンド制度」(M49)が検討されていたことがわかる。このうち、M26は優先される対策から外れており、M49は優先順位をつける以前に対策から外されている。

M26について、影響評価報告書の説明を見ると、加盟国にEU共通の基準に基づいてデポジット・リファンド制度を設ける裁量権を与えるというものだったことがわかる。そこでは、欧州委員会は、新しい制度の発効後5年以内に、デポジット・リファンド制度の機能に関する調和基準を策定する権限を与えられるとする。さらに加盟国は、適用される料金の水準を含め、デポジット・リファンド制度の効率性について欧州委員会に報告することが義務付けられるとされている。この規定は、EU全域に一律に適用することが困難であり、補完性の観点から受け入れられない可能性があるとして優先される政策から外れたようである。

もう一方のEU全体の単一のデポジット・リファンド制度(M49)については、さらに現実的に難しかったのだろう。同じく影響評価報告書の説明を見ると、予備的評価の段階では、中古車の輸入比率が高い加盟国にとって、EU全体のアプローチがより有益であるとの結論に達していたようである。しかし、この措置は、EU加盟国間の使用済自動車の処理費用の違いに対応していないことが問題視された。そして、事例としてEU域外に輸出された車両について破壊証明書が不正に発行される可能性を指摘し、抹消登録に関して厳格に加盟国間で調整された規則と罰則が前提であることを言及している。確かにEU内で処理費用に地域差があれば、単一の料金では、リファンドのインセンティブ効果があるところとないところがあるだろう。また、不正行為が起きやすいところでリファンドされやすいということもある。このような議論の結果、この措置は時期尚早であるとされたようである。

 

8.まとめ

本稿では、2023年7月13日に発表されたEUのELV規則案の内容について、行方不明車問題に重点を置いて主として経済学的な視点で論じた。このELV規則案でセンセーショナルだったのは、再生プラスチックの新車利用の義務化である。その義務化は使用済自動車由来のものも含めており、難易度が高いとされることからさらに注目を集めた。

この再生プラスチックの案は以前から提示され、一部では話題にはなっていた。筆者も阿部(2021c)などでこれについては言及してきたが、日本ではまだ関心がなかったように思える。そもそも欧州の自動車リサイクルについて当時の日本では関心が遠のいていた印象を持つ。これに対して、2023年7月以降、この再生プラスチックの新車利用の義務化を含めたELV規則案が出されたことにより、欧州の動きや自動車リサイクルそのものへの関心が一気に高まった。様々な資料や記事、講演、展示会などでこのことが言及されている。

そのようなこともあり、本稿でも後段でこの再生プラスチックの新車利用の意義、問題点を論じるつもりで書き進めていた。しかし、欧州委員会の膨大な資料を読み進める中で、行方不明車問題で様々な興味深い記述が見つかり、気づけば想定する字数に達していた。当初、行方不明車問題は、自動車登録制度の拡充のほか、定義の明確化、加盟国間での連携といった運用面での強化が予想されており、実際にELV規則案の発表後も概要を見る限り、新しさはないと筆者は感じた。しかし、細かく資料を見てみると、本稿で見たように中古車の輸出規制に踏み込んでいたことや、経済的インセンティブも実は検討していたことなどがわかった。

筆者は、使用済自動車の無償回収制度の枠組みの中で、どのように行方不明車問題を克服していくのかに関心があった。残念ながら本稿で見た限りでは、経済的インセンティブを設定する動きは見つけられなかった。補完性原理などEU特有の事情から、加盟国が個々に設定していくようにも思える。その意味ではこれまでのELV指令下の枠組みとあまり変わらないが、今回のサーベイでその難しさを垣間見ることができた。

また、今回は十分に読み込めなかったが、行方不明車問題の対策として示されていなくても、この問題の解決に関係する政策オプションもあるかもしれない。本稿で示したような拡大生産者責任政策はその1つになりうるため、さらなるサーベイ、分析が求められる。また、ELV規則案では、「より良い処理」(Treat Better)という政策オプションの具体的な対策として、破砕前の部品回収の義務化が提案されている(第30条)。これが使用済自動車の市場価格に影響した場合、無償回収制度、ひいては行方不明車問題にどのように影響するかを分析する必要性も感じている。単純に非認定処理施設は義務を履行せず、より高い価格で使用済自動車を回収することは想定されるが、それを防ぐ何らかの仕掛けがあるかどうかである。

日本では自動車リサイクル法の施行に合わせて道路運送車両法における抹消登録制度が改正され、同じタイミングの2005年1月に施行した。日本でもそれ以前に一時抹消登録状態の自動車がそのまま輸出または使用済みとなり、その行方がわからないという問題が起きていた。そもそも一時抹消登録状態の車両の輸出や解体については手続きが不要だったからだが、その経験を踏まえて、改正法においては一時抹消登録状態の車両を輸出または解体した場合は、届出が必要であることにした。

一方、同じタイミングで施行した自動車リサイクル法では、分別後のシュレッダーダストの処分費用などを車両購入時に預託し、廃棄時の負担を軽減させた。ただし、同法施行当初は、預託されていない車両が多かったせいか、現在EUが直面しているような公式統計には乗らない行方不明車の問題が起きた。その後、自動車リサイクル法が普及し、預託された車両が増えるにつれて行方不明車の数は減少したが、それには預託金という経済的インセンティブの効果が強かったかどうかである。同時期に改正された抹消登録制度の効果のほうが強ければ、EUも経済的インセンティブを設定しなくても行方不明車問題は克服できるといえる。その意味で日本の経験を改めて振り返ることも重要である。

 

※本研究はJSPS科研費20K12299, 22H00763の成果の一部です。

 

参考文献

  • 阿部新(2011)「拡大生産者責任と廃棄物処理行動:自動車リサイクルを事例とした制度比較」『研究論叢. 人文科学・社会科学』,61, 1-14
  • 阿部新(2021a)「EUおよびドイツにおける抹消登録制度の内訳の現状」『速報自動車リサイクル』(100),46-58
  • 阿部新(2021b)「統計に表れない数量をどのように示すか:ドイツの中古車輸出台数等の算出方法」『速報自動車リサイクル』(100),60-71
  • 阿部新(2021c)「EUのELV指令の議論はどうなっているか」『速報自動車リサイクル』(101),34-46
  • 阿部新(2023)「ドイツの使用済自動車市場と違法処理の構造」『速報自動車リサイクル』『速報自動車リサイクル』(105),28-41
  • 日本自動車査定協会編(2007)『四十年の歩み』日本自動車査定協会
  • Robert Williams, William Keeling, Foivos Petsinaris, Yifaat Baron and Georg Mehlhart (2020), Supporting the Evaluation of the Directive 2000/53/EC on end-of-life vehicles Final Report, European Commission – DG Environment A.2., https://ec.europa.eu/environment/pdf/waste/elv/ELVD%20Evaluation-Final%20report%20Aug2020-rev1.pdf, (accessed 2024-04-01)
  • Yifaat Baron, Izabela Kosińska-Terrade, Clara Loew, Andreas Köhler, Katja Moch, Jürgen Sutter, Kathrin Graulich, Frederick Adjei Georg Mehlhart (2023), Study to support the impact assessment for the review of Directive 2000/53/EC on end-of-life vehicles Final report, European Commission, https://op.europa.eu/en/publication-detail/-/publication/2fa7e161-2083-11ee-94cb-01aa75ed71a1/language-en, (accessed 2024-04-01)
  • European Commission (2023a), Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on circularity requirements for vehicle design and on management of end-of-life vehicles, amending Regulations (EU) 2018/858 and 2019/1020 and repealing Directives 2000/53/EC and 2005/64/EC, https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:52023PC0451, (accessed 2024-04-01)

European Commission (2023b), Commission Staff Working Document Impact Assessment Report Accompanying the document Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on circularity requirements for vehicle design and on management of end-of-life vehicles, amending Regulations (EU) 2018/858 and 2019/1020 and repealing Directives 2000/53/EC and 2005/64/EC, https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:52023SC0256, (accessed 2024-04-01)

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