持病と労災

持病と労災の境界線は?&これってパワハラ?

Q、これってパワハラ?

お客さま感謝祭を開いた際、場を盛り上げようと、新人たちに着ぐるみを着てもらったのだが、その翌日に「着ぐるみを着用させたのはパワハラではないか?」と抗議を受けた。こんなことでもパワハラになるのだろうか?

A、

セクハラもそうですが、パワハラも「受けた側の主観」によるところが大きく影響するので、判断が難しい部分もあります。しかし、今回のご質問は結論からいうと、「パワハラに該当する」可能性がとても高いです。これに関する裁判があります。

<カネボウ化粧品販売事件 大分地裁 平成25年2月20日>

○平成21年7~8月の拡販コンクールで、美容部員が特定商品の販売目標を達成できなかった
○平成21年10月の研修会で、目標を達成できなかった美容部員に対し、あらかじめ用 意されたコスチューム(ウサギの耳のカチューシャ、易者のコスチューム)を1日中着用させた→会社は未達に対する罰ゲームと考えていた
○平成21年11月の研修会で10月の研修時の様子がスライドで紹介され、コスチューム姿 の美容部員が投影された
○ある美容部員は、うつ症状を伴う「身体表現性障害」と診断され休職し、約330万円の損害賠償を求めて、裁判を起こした

そして、裁判所の判断は以下のようになったのです(会社敗訴)。

○コスチューム着用は正当な職務行為とは言えない
○心理的負担を過度に負わせた
○会社側に22万円の支払いを命じた

その後、22万円の支払い命令に納得できない美容部員は控訴し、平成25年7月2日、福岡高裁にて和解となったのです。ちなみに、和解金額は公表されていませんが、地裁の判決以上の金額とのことでした。

この裁判での会社の主張は「コスチューム着用は研修を盛り上げる策、レクリエーション的な意味」となっています。これに対し、裁判所は「納得していない者にコスチュームを着用させることは手段として疑問」とし、民法の不法行為に該当すると判断したのです。

冒頭のご質問に戻りますが、納涼会で新人に着ぐるみを着用させる場合、「本人たちが納得して着用しているかどうか」がポイントとなります。また、着用を拒否する者には「させないこと」が必要です。

このようなことは会社の懇親会等で起こり得ることです。状況がどうであれ、結果として社員の意に反している場合、後で「パワハラです」と言われたら、そう認定される可能性が高いのです。

特に盛り上げ目的の行為は悪ふざけによって行き過ぎてしまうこともよくあります。しかし、勢いや雰囲気でその場が流れても、後で「パワハラとしての不法行為」が認定されることもあるのです。そして、高い代償を支払うことになるのです。ご注意ください。

 

ライター紹介

内海正人:日本中央社会保険労務士事務所 代表/株式会社日本中央会計事務所 取締役
主な著書:”結果を出している”上司がひそかにやっていること(KKベストセラーズ2013)、管理職になる人が知っておくべきこと(講談社+α文庫2012)、上司のやってはいけない!(クロスメディア・パブリッシング2011)、今すぐ売上・利益を上げる、上手な人の採り方・辞めさせ方!(クロスメディア・パブリッシング2010)

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